「七人の魔女」の下位の四人の掃討を終えたユリアは、今度は「それ」とは別の用件の為、
実質的に「ディーヴァ」を纏めている「ラクシュミ」のミリヤと、詰めの協議に入っていました。
しかも、その「別件」と云うのも―――・・・
ミ:そのお話し、承服するわけには参りません。
メ:ミリヤ様・・・
ユ:「難しい」・・・と、こう仰るわけですね。
確かに―――あなた方「ディーヴァ」は「秘密機関」であり、「第90宙域」の治安の安定を図り、また担って来た・・・そこは判ります。
ですが・・・敢えてそこを曲げて―――
以前イリスと共に、ジョカリーヌから、地球の更なる治安維持のため、「隠密捜査」や「武力制圧」等の技能に長けた「秘密機関」を、
その総てまでは叶わないまでも、その一部だけを貸してくれないモノか・・・と、云う依頼を受け、ミリヤに最接近出来た機を見計らい、
その話しを切り出してみた処、敢え無く玉砕―――体よく断られてしまったのです。
しかしながら、ミリヤが断る理由も、どことなく理解していたユリア・・・
永らく「第90宙域」の、「治安の安定」と「維持」を担ってきた「秘密機関」が・・・そう易々と離れられる道理がどこにもない―――
そう・・・とばかり思っていたら―――
(ここで参考までに・・・この「第90宙域」とは、「惑星オンドゥ」や「惑星クーレ」がある宙域の事で、「地球」がある「第186宙域」とは、約38万光年離れている。)
メ:あの・・・っ―――ミリヤ様、差し出がましいようですが・・・
ミ:お黙り、メイ―――・・・
この問題は、あなたが口を挟んでいいモノではないわ。
それに・・・どうやらあなたは誤解をしているようね。
いいえ・・・あなたに拘わらず、私の側にいるこの子でさえも―――
確かに私達は、シュトゥエルニダルフの身柄の確保のため、あの惑星へと足を向かわせた事がありましたが・・・
しかしそれは、所詮「任務」にて―――何も「観光」目的ではありませんでしたからね・・・。
ユ:(!)それでは―――・・・
ミ:ええ・・・今度は、「そちら」の目的も兼ねて―――そして、誰を駐在させるか、悩まなければならないでしょうね。
それに・・・フフフ―――「あの」あなたが、そんなにまで変わってしまった要因と云うモノを、見定めると云うのもまた一興と云うモノ・・・
ミリヤが最初に「お断り」を切り出したのは、何もユリアやメイベルが思っていたようなことが原因だからではありませんでした。
確かに「一度」は、罪悪人確保のため、地球へと来た事はありましたが、その当時は「その目的」でのみの来訪であり、
何も、「長期」にしろ「短期」にしろ、「滞在」が目的ではなかった為、そちらの条件で適合しているかどうかも判らなかった・・・
その為「お断り」をしただけだったのです。
それに、ミリヤはユリアが「ヱニグマ」であった事を知っており、全宇宙に指名手配をされるまでに名を馳せていた人物が、
どうしたらこんな風になったのか・・・に、興味を示し、自分とメイベルが見聞をして、「適」以上だったならば考えなくもない意思を、その場で示して見せたのです。
こうして・・・互いの意志交換を終えさせたユリアは、宇宙港に待たせてあったイリスと合流し―――
ユ:イリスさん、お待たせを致しました・・・
イ:ユリアさん―――・・・
云われていたように、周辺30宙域の「不可」・・・調べておきました。
ミ:(・・・)「云われていたように」しか出来なかったの―――あなた・・・
イ:(・・・)あの―――この方は・・・
ミ:今は、私があなたに話しかけているの。
ちゃんとこちらを向いて話しなさい!
イ:(・・・)それは失礼を致しました―――
ですが・・・「云われていなかった」件に関しては、「第三者」に掲示するのはどうかと思われますので・・・
ミ:―――・・・・。
フッ―――フフフ・・・及第点よ、あなた・・・。
喩え、恐喝・恫喝されようとも、微塵として揺るがないその「ハート」・・・
それに、「重要事項」は「重要」である事をよく理解出来ている・・・
どこぞのバカの様に、命の危険を臭わされた時、軽々しく口にしないと云うのは、それがあなたの「信念」だと云う事なのよ・・・。
もしあなたが「フリー」ならば、「七人目」の「ディーヴァ」に加えてもよろしかったのですけれど―――・・・
イ:あの・・・この方は一体―――
ユ:この方は、「ディーヴァ」の一員である―――・・・
イ:その事は既に存じ上げております。
以前、地球に来られた記録を拝見しておりましたので・・・
ですが、先程のモノの云い方は、これまで私が渉り合って来た「各代表」の「それ」と同じ・・・
けれど、あの「彼ら」の言葉は、上辺だけの薄っぺらなモノ―――そこへ行くと、この方の、それでいて「重々しい何か」・・・
ひょっとするとこの方は、「経営の長」たる方なのではないでしょうか。
そんなに言葉を交わしたわけでもないのに、イリアはミリヤの「モノの本質」と云うモノを見事なまでに捉えていました。
確かにミリヤは、「現場」からは遠のいているモノの、依然として隠然たる発言権を「ディーヴァ」の内で有していた、優れた「経営者」であり「企業人」でもあったのです。
ともあれ・・・気になってくるのは、ユリアから指示の出ていなかった・・・つまり、イリアが独自で調べていた「件」についてなのですが・・・
ユ:ではイリスさん・・・伺いましょうか。
イ:ですが・・・この方々は―――
ユ:この方々は、最早「同志」です。
イ:(!)そうでしたか・・・
それでは―――私がこれまで、気になって調べていたのは、「七人の魔女」と云う集団の事です。
ミ:(!!)そのことを・・・あなたがどうして―――・・・
イ:その内の4人に関しては、既に報道発表となっていますし、今まで不明とされていた正体も―――
「現役のアイドル」や「元軍人」、それに「某財界人の秘書」や「宇宙会議の現職議員」・・・と、各方面に亘って波紋を呼んでいるようです。
メ:何者の仕業・・・その件に関しては、秘密裏に処理されるはずなのに・・・
ミ:そう云うわけにもいかなくなったのでしょうね―――
それも、恐らくは・・・「タイミング」は、早い方が残りの三人への、いい牽制になると踏んだのでしょう。
イ:ああ・・・あとそれから―――「七人の魔女」に関して、調べて行く内に色々と面白い事が・・・
この「組織」―――と、云っていいのかは判りませんが、これと同じ名称を持つ「集団」が、過去にも存在していたようです。
ミ:(!!)まさか―――・・・あの「ログ」が公開されたと云うの??
イ:あの「ログ」―――・・・?
ユ:さある「大事件発覚」の証拠となり得ている「物件」です。
現在は、UPの最下層に、厳重な監視下に置かれているはず・・・
それが「公開」されたと云うのであれば、元々「アレ」の所有者であったマエストロが、そう主張した事に他ならないわけですが・・・
イ:そこまで・・・と云うワケではありませんが、過去にそうだと名乗る人物が、現在一部のネット上で騒がれておりますので・・・「ひょっとしたら」―――と、思ったのですが・・・
ミ:(・・・)誰―――なのです・・・
イ:・・・「ジェノヴァ」―――但し、本文はなく、飽くまで「ハンドル・ネーム」だけで・・・
その―――「過去のメンバー」と思わしき人物が残した「足跡」があるサイトは、
一時間単位で「数億」もの閲覧がある、数ある「交流サイト」の中でも、最大手のコンテンツでもありました。
しかし・・・今回そこでは、『お名前』以外は無表記―――『件名』も『内容』も、何も書かれていない状態だった・・・
けれど、こうした他人を惑わす様な「悪戯目的」のログは、この一件だけではなかったので、
イリスも、自分なりの推理で、「そうではないか」―――と、思っていたのでしたが・・・
イ:あの・・・どうされたのです? 二人とも―――・・・
ミ:(・・・)事の重要性はね―――あなた・・・その「HN」を使用していた「魔女」が、実在していたからなのよ。
そう・・・では、「オリジナル」達が、動き出していると見ていいわけね・・・。
ユ:そのようですね・・・それに、遅々として進展のない私達に、静観の時期は過ぎた・・・とも捉えられなくもないようです。
イ:あの・・・「オリジナル」―――って??
ミ:あなたの云う、「過去のメンバー」・・・
それに、元々の「七人の魔女」は、悪事を助長させる組織ではありませんでした。
まあ・・・尤も、「正義の所在」がどこにあったかはこの際問題ではなく、「彼女達」は、個々が修めた知識の数々を、無知なる私達に分け与えてくれたのです。
その際に利用されていたのが、『魔女達の呟き』・・・UPの最下層に眠る、その「最終ログ」は、「過去のメンバー」であった誰か・・・
つまり、「マーリーン」が暴動を起こす前兆を見せた、唯一の「物的証拠」でもあるのです。
次々に明かされてくる重要事項の数々・・・ここまで明確にされてしまえば、現在ミリヤ自身が所有している情報も、「宝の持ち腐れ」になるモノと思い、
イリスに続いて情報の開示を行ったのです。
そして・・・これによって、断片的になっていたモノが、一つになり始めた・・・
現在の「七人の魔女」は、単なる犯罪者の集団であり、過去の「七人の魔女」は、知識を分け与えた集団・・・
それに、今回「足跡」を残した「ジェノヴァ」に関しても、本人かどうか疑わしい限りなのに・・・
ここ最近、周辺で起こっている状況を察していく内、恐らく「ジェノヴァ」本人からなされた、ある種の「メッセージ」ではないか・・・と、ミリヤにユリアは捉えたのです。
こうして、このまま停滞していくわけにはいかなくなった彼女達は、急遽地球まで向かおうとするのですが―――・・・
ミ:なんですって―――?!! 便が・・・一日を待たないとないと云うの?!
(・・・)ならば―――私、ミリヤ=アゲット=ロックフェラー・・・この私の名義で、一便チャーターして頂けない?!
受:は・・・はあ〜―――そうは申されますが・・・
現在この宇宙港に措いては・・・
ミ:(〜・・・)ええい、もういいわ―――!
ああ・・・なんてこと・・・この私とした事が、この展開を予測できないでいたとは・・・
ユ:ミリヤさん・・・御心配には及びませんよ。
イ:ユリアさん・・・もしかすると―――?
ユ:ええ、先程確認が取れました。
メ:でも・・・この宇宙港には、在機がない―――と・・・
ミ:(「この宇宙港「には」」・・・??)
・・・では、別の場所にある―――と、仰るのね?
車椅子の美少女からそう問われると、菫紫の長髪を靡かせた淑女は、「にこり」と微笑むと、この宇宙港にある「ドッグ施設」へと場所を移動しました。
そう・・・確かに、この宇宙港の「運営区画」ではなく、「整備区画」にて、その艦影は悠然と佇んでいた・・・
しかも―――この艦影は、ミリヤとメイベルには既によく知っているモノらしく・・・
メ:(!!)こっ・・・これは―――!!
ミ:(・・・)「ソレイユ」の・・・「縮小版」??
でも・・・マエストロは―――・・・
ユ:この艦を建造したのは、現在に措いてのわたくしの盟主・・・その盟主の妹であるジルから、許可を頂くまでもないと思いますが・・・
現在の、ミリヤ達「ディーヴァ」を象創った「発起人」・・・ジィルガ=エスペラント=デルフィーネが所有する、宇宙艦「ソレイユ」・・・。
この艦は、宇宙でも屈指の超巨大艦として知られており、今もまだ尚、改修に改修を重ね、現在では全長30万Kmを誇っているのだとか・・・
けれど、そのドッグ施設内に収まっているのは、あの超巨大艦の艦影をそのままに、幾分か縮小させた「モデル」がそこに・・・
しかも、驚くべきは、寧ろそこにあるのではなく―――・・・
ミ:(・・・)まさか―――とは思いましたが・・・あの艦と同等・・・いえ、それ以上の機能が凝縮されている・・・?
では・・・これは―――・・・
ユ:はい・・・わたくしの盟主であるガラティアの、「理念」に措ける賜物・・・
『コンパクト且つハイパワー』・・・
それに、この艦の建造計画自体、ジルには内緒だったようです。
ミ:(〜・・・)なんだか、見える様だわ―――あの方の悔しがる顔が・・・
それで―――この艦の名は、もう決めていらっしゃるの?
あの超巨大艦「ソレイユ」の機能と同等―――若しくは、それ以上の優れたモノを搭載している最新鋭モデル・・・
それこそが、これからユリアが母艦とする「ハラフワティ」―――なのでした。
第二百十話;ハラフワティ
=続く=