本来の目的は遂げられた―――やはり、過去に自分達の仲間であった、あの人物が、時機を見計らい、

自分達・・・果てまたは、全宇宙を混沌と化す為に動き出していたことが判ってきたのです。

 

それでは、次に自分達が取るべき行動は・・・?

そこは最早云うまでもなく、先程のレヴェッカの言葉に裏打ちされていたのです。

 

―――と、云う事で、本来の目的は達せられたわけなのだから、早急に立ち去れば良かったのですが・・・

(いま)だエリーゼは、今回分の原稿が半分しか仕上がっていない状況で・・・

 

 

 

エ:う〜ん、うぅ〜〜ん―――・・・

 

ル:どうやら・・・「ガス欠」とみゆるかし―――

  されば、「編集長」どのがおほされたよしに、「もうそろそろ潮時」―――とな。

 

エ:(!!!!!)そ・・・そりゃあ〜いけん!!

  今の連載打ち切られたら、うち「ニート」さんや「フリーター」さんと同じになるじゃん!!

  ん゛ぐあ゛あ゛あ〜〜!! キタ・・・キタキタキタぁ〜〜!!!

 

 

 

「はは・・・本当に容赦ねーのな・・・。」

そうした職業ではないリリアでも、「Dr」から紡ぎだされる言葉が、エリーゼにとっては効果抜群である事が理解出来ました。

 

そして・・・あれから20分―――

 

 

 

エ:で・・・でけた〜♪

  ありがとね、ありがとね〜ルーシアちゃん♪

  やっぱうち―――ここへきて正解じゃったわぁ〜♪

 

ル:なにをいいけるか、わっちにあうを いといしものを(嫌がっておったくせに)

 

エ:てへへへ〜・・・

 

リ:(!)なんで判んの?

レ:そがいなもん、簡単なことよ―――こんないつは、いつも締め切り間際にゃ、Dr(ド ク)に世話んなりっぱなしじゃけぇの。

  ほれに・・・Dr(ド ク)も、こう云う時のこんないつだけにゃ、殊の外厳しいけぇのww

 

 

 

どうにかギリギリに原稿を仕上げ、急いで出版社の編集部へと転送をするエリーゼ・・・

これで、こちらも目的を達せられたわけなのですが・・・

 

 

 

ル:それより・・・このうつけは、さきほどより なにをしており―――

 

リ:ん? いや―――まあ・・・眼が前髪で隠れてるから、見えてんのかなぁ〜と、思って。

 

ル:みえておるよ。

  おまえさんの、その「阿呆面」もな。

 

 

 

「歯に衣着せぬ物言い」―――知り合って、まだそんなに間もないのに、「大宇宙の支配者」に(じゅん)ずる権限を持つ、「その后」であるにも拘らず、何一つ容赦ない言葉・・・

その事に、当のリリアは激怒するモノかと思いきや。

 

 

 

リ:「アホ」? ・・・「アホ」―――

  だぁ〜っはっはっは!w ダヨナ〜w

  ほら、私ってばさ、周囲(ま わ)りから云われてるほど賢くねーのに、やれ「評議員」だの、「天帝の后」だの―――押しつけられちゃってさぁ〜〜

  だからさぁ〜〜あんたの方からも、そこんところ云ってくれね?

 

 

 

「破顔一笑」―――莫迦にされて怒るどころか、その人物は笑い飛ばした・・・

そしてあたかも、そんな地位に就いていいはずもないのに、自分が現在そうした地位を占めている事が不当であるかのような物云いをしたのです。

 

その事にルーシアは、そうした思惑の総てを汲み取り・・・

 

 

 

ル:さなりとて・・・おまえさんが、このわっちに、「斯様な御仁」を ひきあわさんとしたりゆう―――と、

  「当今(とうぎん)」が、このごじんを「后」とせんとしたりゆう―――が、な・・・。

 

レ:フッ・・・そう云う事よ、この子は、なるべくにしてなった―――わてらの時もそうじゃったように・・・のぅ。

 

リ:はあ? な〜に云ってんか、判んねぇんだけど・・・

 

レ:「今は」判らんでもええよ―――その内、厭でも判ってくるけん。

 

 

 

この・・・一見(いっけん)して判ったような、判らない様なやり取りは、「少なくとも」現在のリリアでは判らずにいたのです。

 

それもそのはず、なぜならば、現在のリリアを取り巻いている三人―――「レヴェッカ」「エリーゼ」「ルーシア」は、「経験者」なのですから・・・。

だからこそ、「后」の有用性と云うモノを判っていたのです。

 

それに、現に―――・・・

 

 

 

ル:さりとて、いかがなするつもりなりか―――

 

レ:(・・・)「一応」―――あの小僧とかけおうて、一旦リリアちゃんを地球へと帰す・・・

  穴倉に籠ったままの「(むじな)」が、出てきやすいように・・・のう。

 

ル:げにも。

  「「現在の后」が出回っておる」とおほせしことは、ぞくせよりかくれておる「アカデミー」にても、まことしやかにささやかれておるよし。

  あやつめが、このきかいをのがすてはあるまいて。

 

  それに・・・てはずはととのえているのであろう。

 

レ:はんっ―――わてを誰じゃ思うとんのい。

  それに、これはの・・・「カチコミ」と同じことよ。

  正々堂々とやっちゃらあや!

 

 

 

「「天帝の后」の有用性」とは―――もしその存在に弓引けば、いくら「宇宙軍」でも「賊軍」とみなされてしまう・・・

それに、もしそうするには、余程の覚悟を伴わないといけない・・・

 

つまり、「世の摂理」と同等の存在を穢す行為は、同時に、「その世界に存在してはならない」事にも繋がっていたのです。

 

 

しかし―――この、レヴェッカとルーシアの会話に、側耳を立てていたリリアは・・・

 

 

 

リ:お二人して、何話し合ってんのか全然判んねぇんだけど・・・

  話しの筋からして、私・・・地球へ帰れるのか??

  そしたら・・・またあいつらと、会えるんだよな?!!

 

 

 

世界の運命など自分には関係ない―――

ただ、自称を「天帝」とか云う存在によって強制的に(む  り  や  り)連れて来られ、仲の好かった者達と離れ離れになっていた事こそが、リリアにとってはひどく心残りだったのです。

 

しかしそれが・・・レヴェッカの取り成しで、地球へと戻る事が出来ると云う・・・

そのことに、リリアはこれまでにも見せた事のない、嬉しい表情を浮かべたモノだったのです。

 

その表情を垣間見たエリーゼは・・・

「今期のお后さまは、史上最強―――」

そう・・・思考の中で紡いだものだったのです。

 

 

第二百十一話;ハチアワセ

 

 

片や―――地球では、なぜか・・・九魔忍軍の者と、あの市子が対峙していました。

しかも、この九魔忍軍の者・・・

 

 

 

し:(まずっちゃったな〜・・・怪しいヤツを追っかけてたら、ばったり出くわしちゃったよ・・・。

  向こうさん―――誤解しちっゃてんだろうなぁ・・・。)

 

 

 

「隠密」の仕事の為か、顔を覆面で隠している為か、どうやら市子に誤解を招かせてしまっているしの。

 

つまり彼女は、「怪しいヤツ」―――ここ最近、良ろしからぬ噂の源ともなっている連中を追っていた処、

偶然か否か、「ばったり」と市子と遭遇をしてしまっていたのです。

 

しかも、しの自身、数人の手下まで連れている―――と云う、「おまけ」までつけて・・・

 

これでは「誤解するな」と云うのが無理な話しではありましたが、よくよく冷静になってみれば、自分達は顔見知りで、

しの自身の正体を明かせば、この誤解も解けるだろう―――と、そう思い・・・

 

 

 

し:(・・・)―――細川様、ボクです! しのです!!

 

市:(・・・)「しの」? 第13代目加東段蔵である、あのしのさんですか?

 

し:あ、はい―――! あと、それとこれ・・・

 

市:(「幻術」・・・)では、最初からあなた一人で―――

 

し:そうなんですけど・・・怪しいヤツ追っかけてたら、途中で見失っちゃって―――

  それで挙句、細川様とこうなっちゃってるってわけなんですよ〜。

 

市:(・・・)いえ・・・いいのですよ―――・・・

 

 

 

「あ〜あ、それにしても、どこ行っちゃったのかなぁ〜」

そう云って、来た(みち)(きびす)を返すと、背後ではなんと市子が・・・刀を振り上げ、その兇刃を、そのまましのに振り下ろしたのです。

 

しかし―――・・・

 

 

 

市:(ぬっ? 消えた?? それでは、これも幻影―――・・・)

  (うっ! これは・・・っ―――か、身体の自由が・・・!?)

 

 

 

寸分の違いもなく、しのを斬り付けた―――そう思った瞬間、しのの姿は霧のように消え失せたのでした。

それとほぼ同時に、なぜか自分の身体の自由を奪われてしまっている事に気付く市子・・・

 

すると―――市子の背後からは、先程から聞き覚えのある声が・・・

 

 

 

し:可笑しいとは思ってたんだよね。

  だって市子さん、この世に二人といないもの―――

  それに・・・市子さんて、「細川様」と呼ばれるの・・・嫌いなんだよね。

 

  そうですよね―――「細川様」w

 

市:しのさんたら・・・それにしても、この私に化けるとは―――覚悟の方は出来ているのでしょうね。

 

し:まあ〜まあ〜待って下さいよ―――色々とこいつには、訊きたい事があるんですから。

 

 

 

しのが、先程に会っていた「市子」を、「贋者」だと断定できた理由・・・

それは、贋市子の背後に、本物の市子が見えていたから・・・

 

それに、こうした手合いは、こちらが油断していると見せかけると、そうした「手」によく引っ掛かる・・・

そのことを踏まえた上で、しのは、父親より譲り受けた術で、自分の幻術を創り出し、しの自身は自分の影へ―――・・・

そして、素早く相手の背後へと回り込み、()(ない)で相手の影を縫いつけることで、相手の自由を奪っていたのです。

 

それにしても・・・現在では、しのは「常磐」―――市子は「ノーブリック」へと居を移していると云うのに、

そんな二人がどうして鉢合わせになってしまったのか・・・

 

その理由は―――・・・

 

 

 

市:まさか・・・とは思っていましたが、あなたの方でも―――

し:はい―――

  ボクは、「妖改方(あやかしあらためがた)」の任で、追いかけてはいたんですが・・

 

市:巧く・・・機能をしていないと云うのでしょうね・・・。

し:そんなにひどいんですか・・・

 

市:私も、話しの上で聞くのには、ここ1年と10カ月の間、外部との接触を断っていると・・・

し:・・・リリアさんが突然いなくなってしまって、もうそんなに経つんですね・・・。

 

 

 

その理由とは至極簡単。

しかし、理由は簡単であっても、そうなってしまった原因は、簡単とは云い(にく)かった・・・

 

しのと市子が鉢合わせをしてしまった「理由」は、二人とも同じ標的を追っていたからなのですが、

そうなった「原因」と云うのが・・・

 

リリアが謎の失踪を遂げてからと云うモノ、地球の管理体制に何らかの支障をきたしていると云うのは、

しのや市子にも理解出来ていた事なのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと