この度より、自分の母艦となった「ハラフワティ」で、一路地球を目指すこととなったユリア達・・・
その道中で、尽きぬ話題となったのが、ここ最近「天帝の后」と行動を共にしていると云う、「レヴェッカ」なる存在に関してなのでした。
イ:それで・・・その「レヴェッカ」と云う方は、どんな人物なのでしょうか。
ミ:実にいい質問だわ、あなた。
しかしね・・・彼女は、今ここにいる誰よりも長く歴史を紡いでいる存在なの。
だと云うにも拘わらず、未だその実態は知られていないのよ。
メ:「今ここにいる誰よりも」・・・と、云う事は、3000年近くを生きていらっしゃるミリヤ様でさえも―――と、云われることなのですか。
ユ:つまりはそう云う事です。
それに、一説によれば、彼女は「リッチー」だとも・・・
「死せる賢者」―――その肉体は死していようとも、飽くなき探求心故に、「人」と云う存在ではなくなった・・・云わば「怪物」―――
人は・・・「獣」や「怪物」を畏れるモノ・・・けれど、いつしか人の持つ「業」や「慾」が、人から「人に非る者」を創り上げてしまった・・・
高位の魔導師や僧侶が、「不死化」の術式契約によって為さしめられる、あの「ヴァンパイア」をも凌駕すると云う、
最強の部類に入ってしまうと云う「怪物」―――それが、「死せる賢者」・・・
しかしながら、このお話しで真っ先に思いつくのは、「あの人物」だけ―――・・・
それが、ならばどうして、「レヴェッカ」も、「そう」であると云えるのか・・・
ユリアは、そこの処を自分の推理を交えた上で話す事になったのです。
ミ:「死せる賢者」・・・けれど、世間的には、あなたが盟主と仰いでいる方しか、現在では確認されてはいないはず・・・
ユ:はい―――
ですが現在の処、「死せる賢者」がわたくしの盟主である「ガラティア」のみであると云う事は、
逆説的に云えば、世間に公表しているのは「あの方しかいない」・・・とも云える事なのです。
そもそも「死せる賢者」は、「人との縁を断ち切った時点」で、既に俗世とは隔離した営みをしているとも云われています。
ですが、あの方は、そうした既成の概念に捉われることなく、寧ろ「そのコト」を前面に押し出して営みをされておられるように見えるのです。
ですから、わたくしが思うに、その「レヴェッカ」なる方も、「公表」まではしていないまでも、俗世とは何らかの絆を産みだし、それに縋ろうとしている・・・そう思えてならないのです。
そう・・・このお話しに措いての「死せる賢者」は、ガラティアただ一人のみ・・・
では、なぜ今更になって、「レヴェッカ」が「そう」ではないか―――と云う疑いが浮上してきたのか・・・
それにはある理由があるのでした。
そう、ここ最近の、「レヴェッカ」が関わっているとされる「ある事件」の事を考察したところ―――・・・
それに、そうした推理をユリアがするのには、ある根拠があったからなのでした。
ユ:もし・・・「あの噂」が本当ならば―――総ての辻褄が合ってきます。
ミ:「あの噂」・・・?
ユ:『「オリジナル」の「七人の魔女」―――その大半が、「死せる賢者」で占められている・・・』
これは、あるネットのスラングで書き込まれていたとされた、その当時では「話題性を集める為のモノ」としか見られてはいませんでしたが・・・
メ:「そう」ではなかった―――と・・・
ユ:この書き込みの後・・・「ある事件」の計画が発覚され、幸い未遂には終わりましたが・・・
その証拠物件が、今も尚UPの地下施設にて、厳重な監視の下保管されています。
ミ:「仲間」の誰かによる・・・「情報漏洩」?
ユ:そうであるとは、考えられてはいなかったようです・・・。
事実、それまでに彼女達七人は、互いを信頼し合っていたようですから・・・
メ:では何者が―――・・・
ユ:その張本人が誰であるのか・・・どうやらわたくしの盟主には、目星がついていたようです。
メ:でも・・・目星がついていたのに、その公表まで至らなかったと云う事は―――・・・
ユ:ええ―――恐らくは、他のメンバーの方も、気づいてはいたのでしょう・・・
けれど、喩えそうであったとしても、口外出来なかったと云う事は―――・・・
それは・・・口外してしまった途端、それまでの信用や信頼に、破綻が訪れる・・・と、云う事―――
事実、その書き込みをした張本人と見られていた「ある少年」は、その日を境に姿をくらまし・・・
後日、「七人の魔女」の一人である「マーリーン」の前に姿を現し、破綻と混沌を招こうとしていた・・・
しかし、その事前に事態が発覚し、だからこその「未遂」に終わっていたのです。
・・・が―――
実はその計画は、そこで頓挫をしてしまったのではなく、時機を見計らった上・・・
つまりは、「未来」である「現在」に、発芽をしようとしていたのです。
ならばレヴェッカは・・・その事を事前に察知し、その事を未然に防ぐために行動を始めているのではないか・・・と、思われたのですが―――
その当の本人はと云うと、なんと、「天帝」が居座ると云う「春禺宮」に、「その后」を伴って現れていたのでした。
レ:おう―――邪魔するでぇ。
ダ:―――やあ、レヴェッカじゃないか・・・お久しぶり、元気していたかい。
レ:(ち・・・こんなぁ―――)
ワレぁいびせなぁ奴よのう、スカした事を抜かしやがってからに・・・。
ヨ:カストゥール様・・・お人目があります―――・・・
レ:やかましいわい! おう―――なんなら、おんどれら何を見よるんなら!!
小さい形なれど、迫力満点―――それがレヴェッカの持ち味でもありました。
現にその場でも、某星系星域の有力者が、何かしらの交渉の為、「天帝」であるダンテに謁見を求めていたようなのですが・・・
こんなにも粗暴な口の利き方をするレヴェッカに畏れを為したモノと見え、その場を足早に退散したみたいだったのです。
そして・・・改めて、自分の交渉を切り出すレヴェッカに―――・・・
ダ:ヤレヤレ―――彼ったらしつこくてねぇ〜、お陰で助かったよ、レヴィ。
レ:調子のええことを抜かすなや! なにカバチを垂れよんなら・・・
おう―――それよりよ、この子を住んどった処に戻しちゃれ
ダ:(・・・)それは、喩え君の頼みと云えども、聞けない相談だねぇ〜。
それに、その事が出来ない理由を、君は既に知っている・・・。
レ:じゃけんよ―――じゃけん・・・わてがここへと来とろうが。
なにものう、「ただで」して貰おうとは思うちょりゃあせんよ。
況してや、ワレに「ただで」頼んだ日にゃ、後でじょうに・・・高うつくことじゃけぇの・・・
ダ:なぁ〜んだ、判ってんのか・・・
それで? 条件は―――
レヴェッカは、いわゆる処の「ヤクザ者」・・・粗暴で、野蛮で、触れる者を立ち処に傷付ける者・・・
けれどその一方で、「仁義」「任侠」を弁えた・・・『混沌の秩序』の属性を持つ存在でもあったのです。
そして、誰が云うとでもなく、彼女の事を「善く」も「悪く」も評した、一つの表現―――
それが・・・
第二百十二話:極道の女
そう・・・つまりレヴェッカは、闇の世界の顔役であると同時に、その世界でも「秩序」を護らせようとする、稀有な存在だったのです。
しかも彼女は・・・
レ:フフン・・・このわてが、この子の代わりになっちゃろう―――これならどうない。
ダ:(・・・)フフフッ―――ヤレヤレ、そう来たか・・・
レ:「イヤ」とは云わさんぞ。
それによう・・・わても「経験」があることじゃけえの―――この子よりかは、流れが早うなると云うもんよ。
ダ:・・・だってさ―――どうする、ヴェクター。
ヨ:まあ確かに・・・経験の「有」「無」は、何事にもモノを云いますからな・・・。
それにしても前代未聞です、得てして「后」の経験者は、二度はやりたがらないと云うのに・・・
レヴェッカと一緒にいたリリアも、不思議に「ヨヴ」―――こと、クラウドマンが口にしていた事は理解出来ました。
得てして、高い地位と絶大な権力を約束されていると云うのに・・・二度はやりたくない―――
その事は、産まれついての性格が、「面倒臭がり」なリリアだったから―――なのだと思われたのですが、
クラウドマンによれば、過去の経験者である「誰しも」が、「そう」だと云うのです。
ならば・・・リリア自身の「身の自由」と引き換えに、レヴェッカ自身が「身代わり」となろうとしている事は、
まさしく「前代未聞」だったと云う事なのです。
=続く=