この度の、格別の配慮により、自分の出身である地球に戻る事を赦されたリリア・・・
万感の思いで、「春禺宮」より遠ざかって行く艦影を見つめ、天帝とその「后」は・・・
ダ:まったく、君も人が悪いね。
いいのかい・・・「その気」にさせちゃって。
レ:さぁ〜て、ぼちぼち始めるとするかいのぅ。
ワレに一々構いよったら、どんどんじょうに嵩んで行きよるけんのう。
ダ:ヤレヤレ・・・喰えないのはどっちなんだろうね。
「死せる賢者」の一人・・・「拳帝神皇」の、レヴェッカ=カストゥール=フェルナンデス。
その「噂」は、やはり「噂」ではありませんでした。
レヴェッカこそは、「死せる賢者」の一人にして、その通り名を「拳帝神皇」と呼ばれていたのです。
そして・・・彼と彼女との間で二・三言葉を交わすと、不敵な笑みを漏らすレヴェッカ・・・
それは、今回言語化にして尽くさなかった、レヴェッカの有る思惑が進行中であることを意味していたのです。
「これは・・・」と、突然ユリアが声を発しました。
そしてその事に、一体何があったのだろう・・・と、彼女の下に集まってきた者達は―――
ミリ:何があったと云うのです。
ユ:ミリヤさん・・・コレを見て下さい。
ミリ:・・・「コレ」は?
こんな、陳家で低俗なモノしか載せない雑誌を、それをこんな時期に・・・あなたって云う人は―――
ユ:(・・・)「それ」は、あのレヴェッカの「双子の妹」である「エリーゼ某」が、『ランカータ』と云うPNで掲載をしている雑誌です。
このわたくしが、不覚にも声を出してしまった理由・・・『ランカータ』の作品である、『てのひらをたいように』―――
その、「次号予告」は、どうなっていますか。
ミリ:(・・・)「作者の都合により、しばらく休載致します―――」
ユ:単なる「取材等」の為であれば、作家は「一号」か「二号」は休載するとも云います。
しかし・・・「しばらく」―――と云う事は、「一定のめどが立っていないから・・・」とも捉えられなくも有りません。
ミリ:(・・・)では―――
ユ:はい・・・。
これで、わたくしの「ある仮説」が濃厚となってまいりました。
イ:「ある仮説」・・・とは??
ミリ:(・・・)「彼女」も、「死せる賢者」だと云うのですね。
「そのこと自体」は人気作品を連載に持つ作家には、「よくありがち」なことでした。
しかし、ここにくるまで、或る事情を知っていたユリアにとっては、その「よくありがち」な行為であっても、そんな風には映らなかったのです。
それに・・・エリーゼは、レヴェッカの「双子の妹」である―――
何もこの事実は、ユリアだけではなくミリヤも知っていた事なのですが・・・
しかしミリヤは、「漫画雑誌」を「低俗なモノ」としか捉えておらず、昨今有名である『ランカータ』が、エリーゼであると云う事は、露ほども知らなかったのです。
確かにユリアも、「漫画作品」そのものには興味はありませんでしたが、ここ最近騒がれているレヴェッカの動向に注目し、
ならば「双子の妹」であるエリーゼが、何らかの反応を取るはず・・・と、当たりを付けていた処に、この「お知らせ」は、
高度な知能を兼ね備える「死せる賢者」が、今のこの世に起こりつつある「何か」を感じ取り、動き出しているのだ・・・と、感じるようになったのです。
その頃地球では・・・シャクラディア城の一室に籠りっきりになり、滅多と人前に姿を見せなくなった、大皇・ジョカリーヌがいました。
そして、「あの時」の事を―――・・・
逆らえない人物からの命令だとは云え、自分を慕ってくれている者に、つい見せてしまった弱気の姿勢を省み、恥入ってしまっていたのです。
その事に心配をしているミトラ―――・・・
政治の運営などは、彼女一人でもどうにかなってはいましたが、あらゆる面での「象徴」が姿を見せなくなった影響を慮って、説得を試みてはいるのでしたが・・・
一方通行なだけの交渉事が実を結ぶはずもなく、こうした時に「あいつさえいてくれれば・・・」と、半ば都合のいい事を思い浮かべたりもしたのです。
そうした「総統」をみて、テラ国から出向してきている、たまもと市子は・・・
市:あの・・・ミトラ様―――
た:また・・・駄目じゃったか。
ミト:ああ・・・これで何かしらの反応があれば、手ごたえを感じるのだが・・・まるで箸にも棒にも掛からない―――
一体何があったのかくらい話して貰えれば、対応ができようモノなのに・・・
市:それに・・・リリアさんも、依然杳として行方が知れずのまま―――
あの人の身に、何かがあったのだとすれば・・・
た:そこが問題なのじゃ。
そればかりは、わしらが気を揉んだ処で、どうにかなるものでもあるまい。
ただ・・・ジョカリーヌ殿は、そこの処の原因なり、事情なりを知っての上だから・・・こそ、話せぬやも知れぬ。
全く・・・あの阿呆めが、他人に心配ばかりかけおって。
ジョカリーヌが塞ぎこんでしまった、そもそもの「原因」・・・
それを、ジョカリーヌ自身の口から云って貰えるのであれば、解決への糸口が見つかると云うモノなのです。
けれど、それすらも話して貰えず・・・
こうして引き籠ってしまっては、現代版の「岩戸の天隠」であるとも云えたのです。
それに・・・奇妙な事には、リリアが同時の、「謎の失踪」―――
どうやら「その原因」を、ジョカリーヌが知っているからこそ、彼女が塞ぎこんでしまっている原因にも、なり得ているのではないか・・・と云うのが、たまもの推論だったのです。
そんな事とは露知らず―――
鳥籠から放たれた小禽は、「自由」と云う翼を得、一路地球を目指しているのでした・・・。
リ:いっやぁ〜〜それにしても、レヴェッカさんには、お礼を山ほどしないと―――な!♪
ル:よきかげんで なにより・・・
エ:エッヘヘ〜♪ リリアさんの出身て、どんなとこなのかな〜♪
第二百十三話;―――てか、なんであんたらが、私と一緒に?
エ:いやですよぅ〜♪ うちは〜これからの作品のネタ集めに〜〜じゃけんねぃ♪
ル:わっちは・・・おまえさんが うまれいずるところにて ゆかしぞかし・・・
ゆえに、みになるモノと おぼゆなりけるを
エリーゼが所有する、巡宙艦「リトワールヴュッフェ」で、地球を目指すリリア一行・・・
その内には、この艦の持ち主であり、ここ最近一気に親交を深めた、「レヴェッカの双子の妹」であるエリーゼと、
なぜか、「アカデミー」の職員であるルーシアがいたのでした。
そして、その理由づけに断る処もなく、一応は納得するのですが・・・
勿論彼女達二人には、「本来の目的」があって、リリアと共に地球を目指していたのです。
(しかし・・・そうした「本音」を明かさないところも、「死せる賢者」ならでは・・・と、云った処ではないでしょうか)
ともあれ―――地球に着いたリリア達は・・・
リ:ほぁ〜〜着いた〜〜!♪
・・・は、いいんだけどさ―――良かったのか?「入管」通んなくて・・・
ル:ほ・ほ・ほ・・・おまえさんも そうしたことには かたいものとみゆるかし
げにも いとをかしきなり―――
リ:(・・・)じゃなくってさぁ〜〜
エ:てへへ〜♪ だってうちら、お忍びじゃもんねぇ〜♪
リ:「お忍び」・・・ねえ〜〜
ま・・・私が帰ってきた事を、あいつらが急に知ったら、さぞかしびっくりするだろ〜〜なぁ〜w
現在―――リリア達がいるのは、「地球のある地点」であり、この惑星の「入星管理システム」がある、『月の裏側港』を通過してはいなかったのです。
つまる話し・・・正規の手続きを踏まずに、地球へと「入星」している事に、リリアは気にはなっていたのですが・・・
「アカデミー」で教鞭を取っていた「Dr」ルーシアは一笑に附し、「ネタ集めに来た」と云っているエリーゼは、自分達の「本音」を、ほんの少しだけ吐露したのです。
そう・・・「お忍び」―――
その事にも、一応リリアは気にはなってはいたのでしたが―――・・・
リリアの見えない処で、ルーシアがエリーゼに云うのには・・・
ル:このうつけめが・・・まあ おたがいが うつけであったことが せめてものすくいと いいべけるものを・・・
エ:え・・・えへへへ〜〜・・・ごみんなさい・・・
ル:ほむ
なれど 「目的」を みうしなうにあらじ
エリーゼとルーシアの二人が、地球にこうしている理由―――・・・
その事は、未だ定かにはされてはいませんでしたが、レヴェッカを始めとする旧くからの仲間が、まるで示し合わせたかのように、一斉に活動を始めた理由こそが、
現在二人が「リリアと共に行動をしている」理由にも繋がっていたのです。
=続く=