エクステナー大陸のテラ国で起こった未曽有の自然災害・・・『ユーニス大震災』から、(はや)、二年目が来ようとしていました。

 

この震災により、壊滅的なダメージを負ってしまったテラ国の首都「ユーニス」・・・

この首都の機能を、そのまま「旧オデッセイア国」の首都であった「ノーブリック」へと移し、

比較的軽傷で済んだ「鉄腕宰相」ギルバートの下、着々と復興への道を歩んできたのでした。

が・・・そこには、ガルヴァディア大陸のパライソ国からの支援が、少なからずあったと云っても過言ではなかった事でしょう。

 

それに、そうした「支援」を取り付ける為に、テラ国女王・ソフィアの意思の下、彼女の意向を汲んだ二人の人物が「出向」と云う(かたち)を取り、

パライソ国の首脳に色々と働きかけてもいたのです。

 

その「二人の人物」の内の一人である市子は、今回の復興交渉の段取りを「総統」であるミトラと終え、

現在自分達が宿泊をしている施設へと、帰ろうとしていた処に・・・

 

 

 

市:(今日の分はこれでよし・・・それでは、明日はこの件に関して―――

  それにしても・・・この地球も活きていた・・・こんな基本的な事を、知らずに私達は・・・)

 

 

 

今回の震災を機に、判ってきたこと・・・それは、自分達はこの惑星に息づいている「生命体」であり、

当然のことながら、その「生命体」を活かし続けている「惑星」もまた、「生命体」でなければならない・・・と、云う、

根本的にして、かつ基本的な事を、今まで知らないでいられたのは、本当に重要な物事こそ、意識しないでいられると云う「真理」である事を、市子は知らしめられたのです。

 

そして、これを機にこうも思い始めたのです。

『私達は、活きているのではない・・・この地球に、活かされているのだ・・・』

と云う事を・・・

 

それに、市子がそう思う様になった原因も、自分達が住んでいる地域での、あの災害だけではなく、

小規模ながらも、各大陸での頻発を耳にするようになった、「台風」「竜巻」「噴火」「地震」「津波」・・・

これらの、そもそもの起因が、「地球は活きている」ことの証拠と足り得ていたからなのです。

(現に、この二年余りの内で自然災害に見舞われ、パライソ国による「災害復興支援」を受けている国と地域は・・・

「テラ国」「ロマリア国南部地域」「トロイア国北西部地域」等々・・・50に余っていると云われている。)

 

そんな想いを巡らせている市子に、不意に背後から忍び寄る、何者かの影が・・・

 

 

 

謎:誰ぁ〜れだっ!♪

 

市:(・・・え? この声に―――この感触は・・・??)

  リリア・・・さん??

リ:へっへ〜当ったりぃ〜♪

 

 

 

第二百十四話;リリア故郷へ帰る

 

 

 

両手で市子の両目を覆い隠し、それが誰なのかを当てる、昔ながらの遊び・・・

それを、誰がそうしてきたのかを、当ててしまう市子・・・

謎の失踪から二年が来ようとしているのに、変わらないあの声―――そしてこの肌の感触・・・

そこで振り向いてみれば、幾分も変わらない雰囲気で佇んでいる人物に、

なんと市子は―――・・・

 

 

 

市:おのれぇっ―――!

 

リ:う・・・うわっちっと!!

  ふへ〜〜焦ったぁ―――

 

  市子ぉ、私だってば、私・・・

 

市:黙れぇ! リリアさんの姿を騙り、私を惑わそうとする不逞の(やから)めが!!

 

 

 

常に携えている仕込み杖にて、神妙の抜刀・・・けれど、リリアと見られる人物は、素早くそれを(かわ)したのでしたが、

どうやら市子は、現在自分の目の前にいる人物が、ここ最近人心を惑わしている「不逞の輩」ではないかと怪しんだのです。

 

すると・・・市子から、「リリアの贋者」だと、怪しまれた人物は―――・・・

 

 

 

リ:・・・どうやら、噂は本当だったみたいだな―――

市:「噂」・・・?

 

リ:ああ・・・私が戻ってきた時に、既に二・三回間違われた。

  喰ってもいやしねぇ団子の代金の請求をされたりさぁ・・・たまったもんじゃねえよなあ〜〜。

  けどさぁ―――つまんないことで揉めんのも厭だからさ・・・私が代りに払っといてやったんだけどさ―――

 

 

 

自分に、身に覚えのない代金の請求・・・これはまた、誰かの悪戯であるとはしながらも、こんな些細なことで揉めている時分ではないと判っていた人物は、

不当だとは思いながらも、適当な理由を見繕い、その場をやり過ごしたと云うのです。

 

とは云え・・・その人物からの申し立てを、総て信用するには至らなかった市子。

すると、そんな彼女の前に―――・・・

 

 

 

誰:ほむ・・・これまでの けんぶんよりさっするに 「メイトリアーク」とみて あやまたじ(間違いはないでしょうな)

 

リ:めいとり?? 鳥の一種かなんかか??

 

誰:違いますよう〜〜。

  「異種の魔術師」―――それにどうやら、「カメレーナ」かも知れんねぇ。

 

市:(?!)この人た―――・・・(お、(おおき)い??)

 

リ:おお―――悪ぃ悪ぃw 驚かすつもりじゃなかったんだけどな・・・

  それよりだな、こっちのちっこいのは―――

 

ル:ルーシアとまうしあげる・・・たのみまほしけれ(以 後 、 よ ろ し く)

 

リ:ん〜〜で、こっちの・・・は―――

 

エ:うちは〜エリーゼ云いまする〜♪ 仲良くしよーねっ♪

 

 

 

一人は、小さき動物のような存在ながらも、どこか高い知性を臭わせるかのような言動をする「ルーシア某」・・・

もう一人は、一目見ても人目を惹く、長身(約3m)の持ち主である「エリーゼ某」・・・

 

この二人もの未知なる人物は何者なのか・・・果てまたは信用に足る人物なのか・・・市子には計り兼ねることばかりでしたが、

そんな市子の顔色を窺った「ルーシア某」から・・・

 

 

 

ル:ところでごじん たちばなしも いかがなものかと おぼゆかし

  ゆえに あすこの「休み処」にて そほうの「事情」なりとて あけていただければ さいわいいなり

 

 

 

一見一聞にしても難しいモノ云いをする小動物に、前例があるからなのか市子は素直に応じました。

 

そして、一息ついた処で―――・・・

 

 

 

市:それで・・・あの・・・リリアさん? この方々は―――・・・

リ:いやな、この人達勝手に付いてきちゃったんだ。

 

ル:いまは それがおもきにあらじ

  このような「警備体制」の ととのはぬところにて たにんのすがたやしぐさをまねるは いとうるさけり(大 変 厄 介 で す ぞ)

 

市:そう云えば、先程からそのような事を・・・

  では―――・・・

 

ル:ほむ

  なれど そのようなもんだい じきにとけるなりけり

 

  さはいえども わっちがみみにしておるに ここは「局地災害」にみまわれておるとか

  なれど いままでにわっちがめにしたモノとは そのようなさま みうけけられませなんだが・・・?

 

リ:ああ〜それってな・・・ここじゃねえんだ。

  「ノーブリック(こ     こ)」より、ほんのちょっと南に行った処・・・「ユーニス」ってとこなんだ。

 

ル:ほむ どうやら かたたががへ したまえけるを

  なればこそ そちらへとむかわばまし

 

 

 

自然災害が起きた、そのどさくさにまぎれ、この地方の各地で悪事を働いていると云う連中・・・

市子は現在、そうした者達の行方も追っていた処でしたが、そうした最中(さ な か)に今まで行方知れずであったリリア・・・及びに同行している二人と出会い、

このリリアが「当人」かどうかを見極めようとしていたのです。

 

そうした処、「ルーシア某」からは、彼女が一体何を知っているのかまでは判りませんでしたが、

今現在市子が抱えている問題は、近い未来に解決するとの見通しを付けたのです。

 

そのあと、同じく「ルーシア某」からは、被災した事実を知り、その事の手助けの為にやってきたモノと市子は捉え始め、

これを()って、現在自分の目の前にいるリリアが、「当人」だと云う事が判ってきたのです。

 

 

それはそれで良かったのでしたが―――・・・

あれから二年が経とうとしている、震災が起きた現地・・・「ユーニス」―――

そこの復興の進捗度合いを見図ろうと、足を向かわせてみた処・・・

 

 

 

リ:おお―――私がいない間でも、随分と(はかど)ってるみたいじゃないか〜♪

 

 

 

絶望的に崩壊し、瓦礫の山となっていたユーニスは、ようやく総ての瓦礫が撤去され、これから新しい建造物が立つ予定―――と、云う段階まで来ていました。

 

しかし・・・この状況を一見した、ルーシアは―――

 

 

 

ル:これにて? あないとをかし(嗚呼、 何と滑稽な事か)・・・あやつめは いったいなにをしつるか

 

リ:へ? いや・・・げど―――ジョカリーヌさんなら、凄く献身的で積極的に協力してくれてるぜ?

 

ル:あはれ(嗚  呼)・・・いとおろかなり(な ん と 愚 か し い 事 よ)―――

  「フロンティアの幹部」がおられるぞかし なれどこの「進捗度合い」・・・

  これはちと 「喝」がひつよう―――いな なればこその この「体たらく」・・・なのやもしれぬ

 

リ:(・・・)ナニ自分で納得してんの―――

 

ル:ほむ

  「云うは易し、なれど行いしは(かた)し」・・・ゆえの 「論より証拠」―――と いいたまへるなり

  ここは このわっちにまかせるなり

 

市:・・・よろしいのですか?

 

ル:ほむ・・・さりとて このようなじたい ほねをおるまでもなきこと―――

  なればこそ あやつめは・・・わっちのしょうがいのともである ガラティアのいもうと・・・「女禍」は なにを おろか(い い 加 減) にしておるのか―――と いいたまへけるを

 

  どれ―――・・・

 

 

 

そう云うと、偉そうな口ばかり叩く小動物は、空間に何かしらの所作をすると、次元立体型の操作端末が現れ、

そこで何かしらの操作を始めると、次の瞬間には―――・・・

 

 

 

 

リ:お・わ・・・な、な、なんだあ〜〜?

市:い・・・以前にも増しての―――華やかな街並みに、(みち)が・・・

  あ、あの・・・一体何を―――?

 

ル:ほむ・・・まあ こういったところ なりしかば―――

  さりとて これくらいのことは このわっちでなくとも できたというモノ・・・

  それを いままで おろか(な お ざ り) にしておるといいしかば ひとえに あの「小僧」がやらかしてしまったことに たんをはっするなりけり!!

 

リ:あの〜〜だからさあ・・・自分だけで納得すんな―――って・・・

 

エ:まあ―――まあ―――ルーちゃんも、そんなにあの子の事を責めんと・・・ね?

 

ル:・・・この いたずら(役 立 た ず) にしておろか(お 莫 迦)なりしものめが―――

 

エ:(!!)ふにゅうっ! うぐっ・・・ひぐっ―――ひぐっ―――・・・

  ひっどぉ〜い!! ルーちゃん、うちの悪口いっだぁ゛〜〜!!

 

リ:ああ・・・おい、ちょっと―――

市:え? この人―――・・・

 

リ:ああ、おい―――コラ市子! お前も引くなって!!

  ああ〜〜ちょ・・・ちょっ―――・・・

 

 

 

何かの魔法か・・・一瞬にして更地(さ ら ち)だった場所に、以前よりもまだ更に輪をかけて発展をしたインフラ整備を前に、リリアや市子は驚嘆しました・・・。

しかし、ルーシアにしてみれば、今彼女がして見せた事は、苦労の内にも入らない事だともしていたのです。

 

だからこその、「今まで疎(おろ)か(な  お  ざ  り)にしておると云いしかば」・・・

 

あたら怠けているのではない―――手つかずのままにしているのは、重要な決定をし、行動をしなければならない人物が、

ある人物により精神的な負荷を負わせられてしまったから・・・

 

そこの処は判るにしても―――とは思うのですが、このまま放置しておくわけにもいかないので、少しばかり・・・手助けをしてやったに過ぎなかったのです。

(とは云っても、所詮ルーシアにとっては、「手を貸してやる」程の意味も持ってはいないのです。)

 

それに、どうやらもう一人の長身の女性が、ジョカリーヌの事を庇ってやろうとしていたようですが、

何が気に入らなかったのか・・・その長身の女性―――エリーゼが日頃気にしている事を口にし、泣かしてしまったのです。

 

すると・・・さあ―――そこからが大変・・・

悪口を云った当人は、見知らぬ顔を決め込み、果てまたは、市子もその様子を見てドン引きをする始末。

 

そしてリリアは、なんとかエリーゼを宥めすかせるのに、このあと10時間はかかったと云います。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと