自分の後継者に・・・と、手塩にかけて育成してきた人物を、巨大な権力を有する人物に横取りされてしまった・・・とは、どこの世界にもあったようで、
ここ最近のジョカリーヌも、そんな目に遭った人間の一人・・・と、云っても差し支えはありませんでした。
それに、「その役目」は自分もなった事があるから判るのですが・・・だからこそ、当面の間は地球へと戻って来れない事も、判っていたのです。
「天帝の后」―――あの役目は、天帝自身が怠けて・・・なのではなく、
当期に措いての諸業務(惑星の死滅や生誕の許可等)が、煩雑になってきたから、それを補佐するため・・・と、
天帝自身が、どうしても外せない事務手続きをしなければならない時、同時に、渉外の為の来訪の予定が組まれていた際に、
その代理を務める役目を担っていたのです。
その為、その役目に従事する者は、同時に天帝と同じ権限を持つ事を赦されていた・・・
つまり「后」は、「二人目の天帝」であるとも云えたのです。
そんな役目に就いたリリアが―――こうも短期間で戻って来られた・・・
そこは、疑問とする処ではありましたが、嬉しさに変えられるモノではなく、強く抱擁してしまうのでした。
しかし―――同時に・・・ジョカリーヌの眼の端に飛び込んできた二人の姿を見て・・・
ジ:リリア―――! ああ・・・好かった・・・戻って来られたんだね・・・
リ:あはは・・・ジョカリーヌさん、苦しいって。
(・・・?)ジョカリーヌさん?
リリアに随行してきた二人・・・それは、ジョカリーヌ自身も、その二人の事をよく知っていました。
自分がまだ、青く若い時分に指導を受けた事のある者達・・・
姉のガラティアと、交友のあった者達・・・
そして、自分が「后」だった時に、あらゆる面で補佐してくれた者達・・・
だからこそ―――・・・
ジ:あなた達が・・・なぜここに―――・・・
その疑問の言葉が云い終らないうちに、ジョカリーヌは理解しました。
なぜ・・・任期半ばにして、リリアが地球へと戻って来られたのか―――と、
なぜ・・・この二人が、リリアの随行者として、共に行動をしているのか―――と、
今・・・この宇宙で、進行しつつある、「ある事象」のことを―――・・・
すると、だからこそルーシアは、程度の返事をしたのです。
ル:ほむ・・・おまえさんのかおが いそぎみゆるかし
「本心」・・・は、やはり語って貰えない―――けれどそれは、ジョカリーヌ自身も判っていたからこそ、語って貰う必要などなかったのでした。
それに・・・「理由」など幾らでもある―――
そのことは、「姉」と同じく、高い知能を有しているからこそ云えた事でもありましたし、事実、ルーシアには「とある目的」があって、今回の「護衛役」に志願してもいたのです。
それにしても―――・・・
リ:あれれ? ジョカリーヌさん・・・この人達の事知ってんの?
ジ:―――・・・
リ:ねぇ・・・ジョカリーヌさん―――
ル:ほむ
よくしっており―――なぁ・・・「女禍」どの
ジ:(・・・)「Dr」には、御機嫌麗しくにして、恙無きか―――と・・・
ル:ふ・ふ・ふ・・・あれ かなわじ――― さように 「他人行儀」にされましては・・・な
エ:でもさ〜〜「ジョカリーヌ」ゆうて、ぶちかわええよネ♪
ル:やれやれ・・・こやつめは はりつるをむげにせむ―――
ジ:エリーゼ様も・・・お変わりなく。
それにしても、お二方が居られますと云う事は・・・
ル:ほむ・・・「七人の魔女」をつりだするため――― そのあんを こやつめのあね「イセリア・クィーン」から だしんせしるを
それに・・・「モノのついで」ということも べかりならざりけり
喩え地球を統括してはいても、頭の上がらない人物はいくらでもいる・・・
その事の証明は、天帝であるあのダンテだけに留まらず、この二人をしてもそうでありました。
しかも、そうとでも云う様に、実に丁寧な対応をするジョカリーヌを見て、
この二人が殊更凄い人物なのだと思う様になったリリアは・・・
リ:ジョカリーヌさんがそう云う風にするの・・・って、あんたら本当は凄かったんだな!
ル:の・ほ・ほ―――ようやくきづきたまへにけり
エ:てへへ〜〜照れちゃうよん〜♪
ジ:済みません・・・御無礼ばかり―――
ル:ほむ・・・さりとて さきのお前さんを みゆるかし げになつかし―――
リ:えっ?? 以前の・・・ジョカリーヌさん??
ジ:いやぁ・・・実を云うと、以前の私は、君達に指導・指摘が出来る存在ではなかったんだよ・・・。
エ:うん〜ほじゃけどね〜〜どこかツンツンした態度が、うちらの間では受けがえかったんよね〜♪
「これはお恥ずかしい」―――と、ジョカリーヌは顔を赤らめながら、当時を振り返るのでした。
まだ、この世の理の半分も理解していなかった自分が、姉と・・・それと同等の知能を持つ者達から教えを受けた時、
自分の未熟さを思い知らされた事はなかった―――・・・
自分は、こんなにもモノを知らず・・・それだけではなく、何もかもを判ったような気になっていた―――
その事を責めるではなく、正しき道へと導いてくれたことに、感謝窮まる処でもあったのです。
しかも今回、リリアが地球へと戻ってきたと云うのも、ここ昨今、世間を騒がせている悪しき者達を誘き寄せる為、
最上の「囮役」だと云える、「天帝の后」を宛がっていた・・・
そして、その案を思い付いた、「原始の七人の魔女」の一人である、HNを「イセリア・クィーン」と名乗る人物の知能の高さに、関心するのでした。
第二百十七話;ある「決まり」
しかし―――そう・・・
リリアは未だ以て、「天帝の后」のままだったのです。
とは云え、リリア自身すら無自覚であると云うのには、「ある決まり」をリリアは知らなかったから―――・・・
それこそが―――・・・
ダ:フフ―――あれあれ、あんなに喜んじゃって・・・真相を知ったら、かなり怒るだろうね。
レ:そがいなことで、あの子は怒りゃせんよ。
ダ:これは随分な自信だねぇ―――レヴィ。
レ:フン・・・ほれに、「あの事」自体、宮中の秘事でもあるけぇの。
もしこれが漏れる様な事があるんなら、問題は現職の奴らのしでかしたことよ―――ほうじゃろうが。
ダ:フフ―――・・・それにしても、巧い事を考えたもんだ・・・。
このボクの、「辞めてよし」の言葉がなければ、「后」としての任を解かれたわけではない・・・ってね。
レ:フン―――こがァな事は、一度こっきりで十分よ。
ワレの口から、「辞める」事を吐かさにゃ、締まるもんも締まらんようになる。
そこで、周囲りの者は思い知る処となるんよ、天帝の一挙一投足・・・一言一句には、「それだけの権限がある」・・・云う事をのぅ。
そう・・・そこには、ある「決まり」が―――
つまり、天帝自身が、天帝自身の口から「后」の免職を宣下した時、初めてその者は解き放たれる事が出来るのです。
だから今回、リリアが任期中とは云え、一時的に地球へと戻れたのも、今期の后の代理を申し出た者からの「ある提案」によって、
天帝がその事を許可したから、二人の護衛を付けてそうさせているからに他ならなかったのです。
では・・・今期の后の代理―――レヴェッカの思惑とは・・・
現在の「七人の魔女」を誘き出す為、最上の囮に「后」を持ち出す―――と、云うこと・・・
そして、『発明王』に『破壊神』は、まさにその為の「護衛」・・・
「知」のルーシアが、残りの三人の「七人の魔女」と遭遇した時、どんな方策を取るのか・・・
そして、「武」のエリーゼが、直接的に武力を行使して、外敵の駆除を図る・・・
そこには、攻防一体の機構があったのです。
=続く=