自分達の組織の、一部の構成員達が、何者かによって掃討された事実を聞き、

地球の各地に散らばって小悪事を働いていた「メイトリアーク」達は、これを機会に一斉に蜂起してきました。

 

しかし、各地にいた武術の達人達により、この騒動はすぐに鎮圧されてしまったのです。

そして、首班共々、大皇(おおきみ)の前に引き出され、最後の弁明の機会を与えられた時に・・・

 

 

 

メ:フ―――ク・ク・ク・・・こんな我らを捕えたとしても、手柄の一つにもならんぞ・・・

  なんせ、そもそも我らは―――・・・

ジ:単なる陽動・・・偵察部隊―――そこは良く心得ているつもりだよ。

  けれど、判らないことが一つある・・・

  元々あなた達は、集団で行動をしていたはず―――なのに、今回に限っては、どうして「各地で騒ぎを起こす」・・・などと?

 

メ:(・・・)弁明した処で、信じてはもらえまい・・・

ジ:(・・・)ならば、人質―――

 

 

 

その言葉が発せられた途端、首班の顔色が変わりました。

 

種族の特性のみならず、組織の行動性の特色などを良く判っていたジョカリーヌは、

どうして今回だけ・・・地球だけ、そうした行動パターンに(あて)がわれない事をしていたのか・・・その反応を見て、総て得心に至ったのです。

 

そう・・・つまりは、何者かによって大切な人達を人質に取られ、それを盾にされて、云うがままとなっている・・・

しかし、「小」なりとは云えど、「犯罪」は「犯罪」・・・けれど、情状酌量の余地はあるモノとみたジョカリーヌは、

「メイトリアーク」の全員に、「禁固30日」の実刑を科したのでした。

(一見して、厳罰の様に思えるが、これは彼らを護るため・・・つまり、「口封じ」等の手段によって、外部からの妨害工作を阻止する手段であるとも云える。)

 

そして・・・「オンライン・ネットワーク」を通じ、「北」「東」「西」「南」の各大陸に駐在する、今回の賊討伐に功のあった者達を集め、改めて(ねぎら)いの言葉をかけたのでした。

 

 

 

ジ:皆・・・ありがとう・・・。

  お陰で、大事となる一歩手前で喰いとめることが出来たよ。

  けれど・・・

 

た:『ふぅむ・・・手応えが感じられなかった処を見ますと、あの連中はわしらの戦力を見図る為の、「捨て駒」だったやも知れませぬな。』

 

ジ:やはりそこに気付いていましたか・・・。

  ですが、彼らを背後で操っていた者の顔が、未だに見えてきません・・・

  ですから、そこの処の警戒を、今一度怠りなく・・・

 

 

 

久々に政務に顔を出したジョカリーヌではありましたが、やはりどこか精彩を欠いている感は否めなく、

モニター・ディスプレイを通しても、一抹の不安が残ったモノでした。

 

とは云え・・・尖兵が損なわれたとあっては、警戒を怠る術もなく、尚一層気を引き締めるよう、各地に通達されたのです。

 

 

一方その頃・・・

解放されて、のんびりとしているリリアと、そんな彼女の取り巻きである、ルーシアとエリーゼは・・・

 

 

 

リ:はあ〜〜のんびりしていられるのは良い事なんだけど―――なんかつまんねえなあ〜〜

 

ル:たいくつせしか―――なれど じきに とをからじなり(そうならなくなりますぞ)・・・

 

リ:へ? なにそれ・・・

 

ル:ポルックス―――「状況」を・・・

 

エ:ん〜とねぇ・・・「白い」んと「赤い」んとが、この惑星(ほ  し)に降下して来とるんは、間違いないみたいなんよ〜。

 

ル:「白」と「赤」・・・ほむ、「源氏星」と「平家星」なりか―――

  また うるせし(厄 介 な)やつらと てをくみしかば―――

 

 

 

第二百十八話;「源氏星(リ  ゲ  ル)」と「平家星(ベテルギウス)

 

 

 

この惑星(ほ  し)に―――既に潜入しているモノと見られる、何者か・・・を、ルーシア達は知っているようでした。

 

それが、「白」と「赤」・・・対照的にして、非にて似たる者・・・

それが、「オリオン座」付近を根城としている、通称を「源氏星(リ  ゲ  ル)」と「平家星(ベテルギウス)」と呼ばれている「兄弟」の傭兵なのでした。

 

しかし・・・彼らは、これまでにも、何者かと組んで仕事をこなしてきた事はない―――

それが、この地球を標的に見定めたと云うのも、ルーシアからしてみれば疑問とした処なのでした。

 

なぜならば・・・オリオン座付近の宙域には、少なく見積もっても地球と同程度の環境の惑星は、いくらでもあったし、

わざわざ太陽系方面に出向いてこなくても、そうする道理が見つからなかったのです。

 

ならば・・・何者かに、(そそのか)されたと考えるべき―――

では・・・一体何者が―――

その答えは、単純にして明確なのでした。

 

そう・・・現在自分達が、その動静を監視し続けている、「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」の、残る三人の内の誰か・・・

今の処は、その三人の誰か―――の、特定に、時間を割こうとしていた矢先・・・

 

 

 

平:フッハハハァ〜―――見つけたぞ! 奴めがそうだ!!

源:ハンス―――あのバカが・・・見境なく突っ込みおって・・・

 

 

 

上空より、標的(ターゲット)を見定め、まるで猛禽類が獲物めがけて飛びかかる様な素早さで、襲撃を開始する「平家星」―――こと、ハンス=ベテルギウス=ヴィンセント・・・

そして、その彼とは対照的に、相手の出方を見定めようと、傍観する「源氏星」―――こと、トーマス=リゲル=ヴィンセント・・・

 

そして・・・軽率な者の言動にて、知れてしまう・・・現在のリリアの立場―――

そう・・・彼らこそは―――

 

 

 

ハ:ハ〜ッハッハァ〜! 「后」! その(くび)、貰い受けたぁ〜〜!!

 

リ:(!!)なんっ・・・だと?!! お前―――もう一度云ってみろ!

 

ハ:ああ〜〜何度だって云ってやるさ!

  おい―――「天帝の后」! これから貴様は、このハンス様に討たれることになるのだ〜〜!

 

 

 

あら、にくし(なんと、余計な事を)―――」と、内心舌打ちをしながらも、(いず)れは知られてしまう事でもある・・・と、割り切っていたルーシアでしたが、

リリア当人にしてみれば、未だに自分がその立場である事に、一緒にいたルーシアにエリーゼを睨みつけると・・・

 

 

 

リ:おい・・・どう云う事なんだ―――これは・・・

  私は・・・私は・・・

 

ル:はあ〜〜あやつめ・・・ながいきは できませんかな。

  かようなるひじを やすやすとさらけるなど・・・そうはおぼわじ―――「后」どの・・・

 

リ:(!)うっせぇ・・・うっせえよ!! あんたら、私を騙して―――

 

エ:(・・・)ごみんね・・・リリアさぁん。

  ほじゃけどね、うちのおねいちゃんが―――

 

リ:(!)あの人が・・・? ―――じゃあ、今あそこにいる、あの人の真意・・・って・・・

 

ル:そのことはげせり―――か・・・

  ほむ ヴェクターのいうように いとゆかしきごじんなり(非常に興味を持たれるお人ですかな)

 

 

 

その名前・・・どこかで聞いたことがあると思っていたら、頭の中で真っ先に浮かんできたのは、「クラウドマン」こと、ヨヴ=ヴェクター=マクドガルの事でした。

 

しかし、実戦の最中に、考え事とは良くないモノ―――事実、その隙をついて、ハンスがリリアを害しようとした時・・・

 

 

 

エ:ふんにゅぅ〜〜! リリアさんには、あんたちらの指一本と触れさしゃせんけえね!!

ハ:どけえ〜!デカ女が!! どかねば、前に貴様を―――

 

ル:やれやれ いとをろかにしていますかり(とんだバカ者もいらっしゃいましたことよ)―――さはおぼわじ・・・「源氏星」

ト:フッ―――だが、奴めは強いぞ・・・

 

ル:さなりとて(そうでありましょうよ)―――あまねく(普   通) ならば・・・な

 

 

 

そうルーシアが云うと、少しばかりエリーゼに変化が認められました。

 

それこそは「禁句(タ ヴ ―)」・・・触れては、云ってはならない事―――

しかし、その「禁句(タ ヴ ―)」によって、戦意を失くしたりするけれども、今は寧ろ、その逆―――

 

禁句(タ ヴ ―)」を云われてしまった・・・大人しいと思われた、身長の(おおき)い女性は―――・・・

 

 

 

エ:今・・・何を云うてくれたんね―――

  うちが・・・うちが〜〜一番気にしよる事を゛〜〜!!

 

  あんたちら―――こらえんけんね! ぶち泣かしちゃるまで、こらえんのじゃけえね!!

 

ハ:ヘッ―――莫迦か貴様は・・・そんな事で、このハンス様が―――

 

 

 

するとその直後、ハンスの足下に地割れが生じ、遠く離れた、背後にあった大岩が崩壊したのでした。

そして、目の前の身長が(おおき)い女性を見てみれば、拳を地表に押し付けていた・・・

 

しかし、それはそう―――

ハンスの足下に生じた「地割れ」も、遙か背後あった大岩が、「地割れ」の延長線上にあり、崩壊したのも・・・

総てこの女性が為した業―――・・・

 

破壊神(ジャグワーノート)』・・・それこそは、破壊を極めた、荒ぶる神が為したことでもあったのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと