現在から約500年もの昔―――当時、ガルヴァディア大陸随一の武力を有していたのは、「カルマ」と云う国でした・・・。
しかしその国家は、新興国家であった「パライソ」に敗北り、事実上の滅亡・・・
そして、パライソ国を勝利に導いた立役者の内には、セシルの姿もあったのです。
そう、彼女は・・・当時をしても、パライソ国内にて並び立つ、「十人の有能な士」の一人に数えられ、
その武は、500年を経た現在も尚、衰える処を知らなかったのです。
彼女が・・・軽い準備運動に―――と、愛用の聖剣『イクセリオン』を振るうと、
その威力と、老いを感じさせないその美貌に、反乱軍は路を開けざるを得ませんでした・・・
それに―――140年の長きを生きながらも、美貌の「花の騎士」は、そのまま「アーク・ゼネキス」へと入城してきたのです。
セ:失礼しまぁ〜・・・
ナ:セシル〜―――!!
セ:ナオミ!
私達が知らない間に、大変なことになっちゃっているみたいね・・・
ナ:でも助かったよ〜あんたが来てくれて。
実はさ―――私一人じゃ心許なかったんだ。
セ:あなた一人??
そう云えば、シズネやレイカは?
セシルが入城するなり、懐かしさ余って飛びつくナオミ・・・
そして彼女は云いました、自分一人で・・・ルリやこの城を護りきるのには、限界が来ていた―――と・・・
そこでセシルは疑問に思ったのです。
それと云うのも、マグレヴの宮中には、140年もの昔、自分と共に戦った「勇敢の士」・・・シズネとレイカの二人がいるのを、知っていたのですから。
けれども・・・その場に見えていたのは、ナオミのみ・・・
それでは―――今頃あの二人は、ルリの護衛として・・・
そうセシルが思い掛けた時、衝撃の事実がナオミから語られてきたのでした。
ナ:(・・・)いないんだ―――あいつらは・・・もう・・・
セ:―――えっ??
ナ:こいつらが反乱を起こした時・・・一番の矢面に立って―――・・・
立派だったよ・・・自分の身の危険も顧みず・・・ただ一言―――「ルリを頼む」・・・って・・・。
セ:そんっ・・・な―――っ?!!
そう・・・あの二人は、凄絶なまでの最期を遂げていたのでした。
日が変わる毎に報じられて来る戦況・・・外縁都市の陥落に―――
ならばこそ、ここは自分達が出陣て、反乱軍を喰い止めるしか、この国が生き残る道はない―――と、し、
それぞれが各地を転戦したのでしたが・・・所詮は多勢に無勢、
その最期は、焔燃え盛る外縁都市と共に、その命を祖国に捧げたのでした・・・。
そうした戦友達の、凄絶に過ぎる最期を聞いたセシルは、否が応でも闘気を奮い立たせ・・・
セ:そう・・・判ったわ―――
それに連中は、己の身の栄達しか視野には入れていない・・・
そんな、カルマと同義の連中を、これ以上この世にのさばらせておく道理がありますか!
ナ:セシル―――・・・
「彼女」・・・セシル=ベルフラワー=ティンジェルは、「雪」のイセリアや「月」のリリアと比べれば、些か地味な様に周囲りの眼からは見えていました。
しかしそれは、華々しい二人がいたから、彼女は一歩退いていただけ・・・
その事はつまり、彼女一人だった場合、まさしく「花」の称号に相応しい勇将に違いはなかったのです。
そしてそれからは、セシルの参戦と共に、戦局は大きく変わり始め、また優れた軍略家でもあったセシルの指揮の下、
包囲されていた網を潜り抜け、救援の使者をパライソ国に送ることに成功したのです。
そうしたお陰もあり、形勢は逆転―――アーク・ゼネキスも、首都としての機能を取り戻し、
それが喩え、首都の内だけだとしても、平穏な日々が取り戻し始めた頃に・・・
兵:セシル様―――反乱軍の本隊と見られる部隊が、トゥルーヌ平野に着陣!
恐らく最後の決戦を挑んでくる様子にございます!
斥候から齎された一報に、セシルは耳を疑いましたが、これで内乱が終着するモノと思えば、心配に越したことはないと思い、敢えて受けて立つ事にしました。
しかし・・・それにしても、「このタイミング」で―――??
パライソ国からの救援もあり、挟撃される象ともなっている反乱軍が、まさか捨て身の攻勢に出るモノとは―――・・・
彼らが反乱を起こした動機には、偏に「自分達の身の栄達」・・・これだけであり、
ならば、この「玉砕覚悟」の戦法は、いくらなんでも矛盾をしている・・・
セシルがこの時、疑惑に感じていた事とは、まさにそれでした。
このまま降服し、裁きを受け、牢獄に繋がれる―――・・・
(因みに・・・マグレヴでは「死刑制度」は撤廃をされている、それはパライソ国に措いても同様)
そこは、身の自由とは引き換えに、「生」だけは保障されたモノでしたが、
こうした「一大決戦」ともなると、戦中に措いて没してしまう事もある・・・
なぜ・・・どうして・・・こうも死に急ぐのか―――が、セシルには判りませんでした。
・・・が―――結果として、反乱軍は終に追い詰められ、その最期を迎えようとしていた時・・・
第二百二十一話;内乱の終着
ル:セシル―――・・・
セ:(!)ルリ・・・あなたどうして―――
ル:彼らを・・・このまま死なせるのには、余りにも忍びなくて・・・
彼らの運命が、軍団の崩壊と同時に訪れようとしていた時・・・
なんと、マグレヴの女王であるルリの姿が、最前線にいるセシルの陣中に見えてきたのです。
しかし、そう―――・・・
現在、マグレヴ軍を指揮していたのは、紛れもなくセシルでしたが・・・
実は彼女は、「総大将」ではなかったのです。
そう・・・どんなに城中の奥にいたとしても、マグレヴ軍の総大将は、「女王」たるルリなのです。
そして―――敵の総大将が、のこのこと戦場に・・・それも、最前線に現れたのを見計らって・・・
反:(!!)そこにいるのは、女王ルリと見たり〜―――! 覚悟ぉ!!
反乱軍の首謀者たる者は、この時を待っていました・・・
・・・と、云うより、女王であるルリの性格を、宜しく研究していた―――
必ずや、この国の女王は、自分達が壊滅するとなると、そんな自分達を憐れんで戦場に出てくるに違いはない・・・と―――
その彼の、予測はなかんずく中っていました。
マグレヴの女王であるルリは、喩え反乱を起こしたとは云えども、そんな彼らを悼み・・・憐れみ・・・
生命の華が散ろうとする間際で、救いの手を差し伸べてきたのです。
『それは・・・彼女が以前、永きに亘ってお仕えした、パライソ国初代女皇の、慈悲深きお姿そのままでありました。』
(『セシルの手記』より)
反乱軍を鎮圧する為の軍を率いていたセシルの眼には、当時のルリの姿は、「パライソ国初代女皇」・・・
つまり、アヱカ=ラー=ガラドリエルを彷彿とさせる姿に見えていたのです。
けれども・・・情けをかける相手を、間違えていた―――
反乱を起こした首謀者は、自分達を救おうとしている、女王の手に唾を吐きかけてきたのです。
そしてそれは、主謀者の手から放たれた、「何か」によって、為されようとしていた・・・
その「何か」は、セシルの頬を掠め―――そのまま一直線にルリの下に・・・
そしてその「何か」が、高速回転する鋭利な刃である事に、セシルは気付くのでしたが、
時、既に遅く・・・セシルが気付いた時には、首謀者が投げた兇刃は、ルリの馘を―――???
セ:・・・ルリ―――?
ルリ〜〜―――!!
マグレヴで起きた反乱は、まさしく女王ルリを狙った、大がかりな「テロ」でした。
そして―――セシルがルリの名を叫ぶと同時に、「ぼとり」と地上に落ちる、一つの馘が・・・
けれどそれは、女王ルリのモノではありませんでした・・・
そう―――彼女を護ろうと、命を張った・・・「一体の人形」のモノだったのです。
=続く=