この広大(ひ ろ)い宇宙のどこかに―――「成功者」はいました・・・。

 

その「成功者」は、比類なき才能の持ち主で、そうした才能により数々の成功を収めてきました・・・。

 

「メディア」「トップ・マネジメント」「プロデュース」etc・・・

 

そうした絶頂にある中、突然―――「成功者」は奈落に突き落とされたのです。

 

確かに、各業界にも多大な影響力を与えていた「成功者」は、そうした意味では、ある・・・ごく一部の人間には妬まれ、また忌み嫌われてきたのでしょう・・・。

 

ですが、そうした困難に障害を乗り越え、「成功者」は常に成功を収めてきたのです。

 

しかし・・・やはり、そうした者を余り快く思っていなかった「存在」が、次第に大きくなりすぎて行く「成功者」を危険視し始め、

かつて「成功者」と争い、そして敗れて行った者達を利用する(かたち)で、「成功者」を奈落に突き落とす為の準備に取り掛かったのです。

 

而してその計画とは、決して「存在」自身が表には出ず、かつて「成功者」に敗れた「敗北者」をカモフラージュにする(かたち)でなされ、

そして今、その計画は実を結びつつあったのです・・・

 

 

そう―――・・・あれは、まだ「成功者」が「成功者」として成る以前(ま え)・・・

とある苦境が、「成功者」の前に立ちはだかった時の出来事でした。

 

その苦境は、当時まだ未熟だった「成功者」一人の実力(ち か ら)では、どうにもすることもできませんでしたが、

かつて「成功者」と競い合い、そして敗れ去っていた「敗北者」が、そんな「成功者」を見かね・・・

「協力をする」と云う名目で、「成功者(かつてのライバル)」に近付いてきたのです。

 

勿論―――その当時は、本心で、苦境に陥っていた、かつての好敵手(ラ イ バ ル)を見過ごす事が出来ず、

真摯な気持ちで「助けたかった」と云う感情で行動(う ご)いていたモノでした。

 

実際、「成功者」は、その・・・「敗北者(かつてのライバル)」からの申し出が、非常に有り難くも感じ、また背に腹を変えられなかった事情もあった為、

敗北者(かつてのライバル)」からの申し出を受けてしまったのです。

 

そして―――しばらくは、互いに協力し合い、やがて彼らは「良き理解者」同士になりました・・・

 

 

が―――しかし・・・

この当時から、少しずつ頭角を現し始めた「成功者の才能」を危険視し、(いず)れは排除するつもりでいた「存在」は、

腹心の部下に「計画」の事を話し、「成功者」の『破滅へのシナリオ』の種を、ここで捲いておくことにしたのです。

 

そう・・・今となっては、「親友」でもあり、「良き理解者」となっている、「敗北者(かつてのライバル)」の下に・・・

かつての屈辱を、絶好の機会で晴らせると云う、「計画」を―――・・・

 

そしてその「芽」は、思わぬ処で・・・

 

しかも、「成功者」が絶頂を迎えていた時に、「発芽」をしてしまったのです。

 

 

その出来事は・・・スキャンダラスな一大事件として、全宇宙のマスメディアに大きく取り上げられ、

連日連夜、「成功者」の『黒い噂報道』は、ひっきりなしだったのです。

 

そして・・・その「裏」には、「親友」・・・だと思っていた―――「良き理解者」・・・だと思っていた―――

敗北者(かつてのライバル)」の「裏切り」・・・

 

その事実(コ ト)を知り―――また、それを苦に・・・「成功者」は、自らの命を断ってしまいました・・・

 

ところが・・・まだ早すぎる「成功者」の死に、各関係者は惜しみない涙と同情を捧げ、

こうして「成功者」は、「英雄」とまでに祀り上げられたのです。

 

あんなにも・・・「黒い噂報道」が為されていた最中(さ な か)には、「成功者」のことをバッシングしていたにも拘らず・・・

 

 

しかし―――そこで一番面白くないのが、「成功者」を破滅へと追いやった「存在」・・・

 

まさかこれほどとは・・・

これほどまでに彼が慕われていたモノだったとは・・・

 

しかも想定外だったのは、「成功者」が興した事業は、彼一代では潰えず、その志は次代へと受け継がれたのです。

 

その事に、思わずも「存在」は、苦虫を噛み潰すのですが―――

少し思い直し、「次代の者」と「成功者」を比較対照してみた処・・・

果たして、「成功者」の様な「才能」はあるのか・・・「カリスマ」はあるのか・・・「運」は・・・「直感」は・・・「度胸」は・・・???

 

その事を思い巡らせると、結論的には、『「次代の者」は、「成功者」には及ばない』・・・

つまりは、「成功者の事業」は、直に消えてなくなるモノだと、そう判断を下したのです。

 

 

それから200年後―――・・・

人々が、例の事件の事を、その記憶から忘れ去られようとしていた時・・・

ある「人物」が、「何某(なにがし)か」に依頼をしてきたのです・・・

 

 

 

第二百三十話;その命を賭して

 

 

 

妻:(本当に・・・来るのかしら・・・。

  噂では、時間に厳守だとは聞いていたのだけれど・・・

  それに・・・今は、藁にでもすがりたい気持ち、あの人の無念を晴らす事が出来るのならば、どんなことでも・・・!)

 

 

 

その、ある「人物」とは、「成功者」の「妻」でした・・・。

 

それにどうやら、この時「何某(なにがし)か」に依頼をしてきた経緯も―――

自分の亡き夫の知人が、哀しみに暮れる自分を見かね、「他言無用」を条件に、

この自分の無念を、金銭によって解決してくれる「何某(なにがし)か」の事を教えて貰ったのです。

 

そして、ようやく・・・「何某(なにがし)か」とのコンタクトが取れた―――と、夫の知人からの連絡があり、

今は、待ち合わせの場所に指定された、美術館の・・・ある「絵画」の前にて、「何某(なにがし)か」の事を待ちわびていたのです。

 

而してその「絵画」とは―――・・・

地球にも、そうした題材として描かれた事のある、『審判の日』の画・・・

一様にしておどろおどろしく、罪業深い人間を、「鬼」とも「悪魔」ともつかない存在が、罰し続ける・・・そんな画―――

 

そして、待ち合わせの刻限が近付く中、「妻」は・・・本当に、自分の無念を晴らしてくれる「何某(なにがし)か」が来てくれているのかが心配になり、

つい、辺りを見回す等、挙動不審になりつつあったのですが・・・

 

すると―――・・・

 

 

 

某:・・・視線を動かさず、真っ直ぐ画だけを見ていなさい。

 

妻:(! この・・・声は・・・女の人?!)

  あ・・・あの―――・・・

 

某:背後(う し)ろを向いてはダメ・・・

  内容を話すときには、自然体で・・・決して周囲(ま わ)りからは、私と話していると思われては、ダメよ・・・。

 

 

 

夫の無念を、晴らしてくれると云う「何某(なにがし)か」は、もう既に待ち合わせ場所に来ており、

そこから「(自分)」の挙動を見極めていたかのようでした・・・。

 

そして「妻」が、「何某(なにがし)か」の事を確認しようとした時、「何某(なにがし)か」からは、決して背後を振り向いてはならない―――と、釘を刺されてしまったのです。

 

けれども、目の端で見てしまったのです・・・

とは云っても、個人の特徴が最も現れる「顔」は確認できなかったものの、容姿全体は把握したつもりでした・・・

 

而して「何某(なにがし)か」は・・・今の「(自分)」の様に、黒い・・・「喪服」の様な衣装を纏っていた―――・・・

(自分)」と、同じような存在・・・

これで或いは、周囲(ま わ)りからは少なくとも怪しまれずに済むのだろう・・・

「妻」は、そんな思いと並行させて、依頼の内容を話す事にしました・・・。

 

 

 

妻:実は・・・私の夫は、数々の成功を収めて来た「成功者」として知られていました・・・。

某:(・・・)続けて―――

 

妻:それが・・・どうした事なのか、ある「きっかけ」をして失脚させられ、最終的には自らの命を断ってしまったのです。

  その事を・・・当初、私は、同じ業界の人間が、夫の事を妬んでしたのだろう―――ぐらいのことしか思ってはいませんでしたが・・・

  それが実は、違っていたのです・・・

 

 

 

「妻」は―――夫の自殺の原因が、他にあることの経緯を突き止め、

この怨念渦巻く、復讐にも似た自分の依頼を受けてくれそうな「何某(なにがし)か」に話しました・・・。

 

そして、そもの夫の自殺の、大元の原因と云うのも、同じ業界の人間の仕業などではなく・・・

況してや、自分の夫が「親友」と見込んでいた「敗北者(かつてのライバル)」でもなく・・・

夫の事業を、快くは思っていなかった「存在」の仕業なのだ・・・そう思うようになっていたのです。

(なぜか―――と云うと、今回の一連の事で、「妻」に協力をしていたのは・・・「敗北者(かつてのライバル)」だったから。

その後、「敗北者(かつてのライバル)」は、自分のした事を気に病んだのか・・・自殺をしている(他殺の可能性あり)。)

 

そして、また別の知人に「何某(なにがし)か」の事を紹介され―――現在に至っているのですが・・・

 

そうした経緯を聞く内、嘘偽りがない事を認めた「何某(なにがし)か」は・・・

 

 

 

某:判ったわ―――あなたのその願い、引き受けましょう。

 

妻:(!)おお―――そうですか、有難うございます・・・!

  それで・・・あの・・・つきましては依頼料の事なのですが・・・

 

  実は、今の私には全くの持ち合わせがないのです。

  あれだけの稼ぎを得・・・一時(いっとき)には数十億・・・数百億―――或いは兆単位の資産を持っていると、世間では騒がれてきましたが・・・

  失脚をさせられた事が原因で損失が増え、莫大な借金を抱えてしまい、今では生活保護を受けることで、日々の生活が精一杯なのです・・・。

 

  それに、あなた様の事は、夫の知人からも云われました・・・

  「法外な依頼料を迫られる事もある」―――と・・・

 

  実際・・・私の依頼の相場が、5000万かかるモノとは思ってもいませんでした・・・

  それに・・・フフフ―――今の私には、そんな大金・・・ありませんもの・・・。

 

  けれど・・・決めたのです―――・・・

 

  今ここで、私が死ねば・・・私の生命保険金が、私の代理である夫の知人に支払われます・・・。

  額面は1000万しかありませんが・・・それでどうか引き受けて貰えないでしょうか!?

 

 

 

依頼の内容は判りましたが、そこで問題となってきたのは、この依頼に関わる料金の事―――

実は今現在、「妻」と夫の家には、かつて噂された「巨万の富」はどこにもなく、

今回の依頼料でさえも、引き受けて貰えるモノかどうか、疑わしい限りだったのです。

 

そうした事を、相談に乗って貰えた夫の知人に打ち明けると、

何某(なにがし)か」は、そうした高額の依頼料を求める一方で、真摯さを前面に出せば、或いは・・・

つまり、「妻」自身の命を賭けた依頼であれば―――と、アドバイスを貰えたのです。

 

しかし・・・その―――「妻」の命を賭けた行為でも、「何某(なにがし)か」が求める金額の半分にも及ぶモノではなく・・・

 

ですが―――・・・

 

 

 

某:(・・・)そう―――判ったわ・・・

 

妻:(!!)

  おお―――おお・・・有難うございます!!

 

 

 

何某(なにがし)か」は、その事をも了承し、快く引き受けてくれた・・・

 

そう感じた「妻」は、深い感謝を現すと共に、隠し持っていた小型の拳銃で、自らの命を断ちました―――

 

そして・・・薄れ逝く意識の狭間で、自分の依頼を引き受けてくれた「何某(なにがし)か」の姿を確認したのです。

 

その「何某(なにがし)か」は・・・やはり、「黒」を基調とした「礼服」でした―――

けれど、今の「妻」自身が着ている「喪服」とは、どこかが違う―――・・・

 

その「礼服」とは、神に仕える者が纏う・・・「聖職者の服」―――・・・

 

けれど・・・この・・・自分の「怨み」にも似た感情を、引き受けてくれた・・・

 

だからなのか、「妻」には悔いが残りませんでした・・・。

 

喩えこの先―――自分の魂の行きつく先の果てが、「地獄」であろうとも・・・

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと