さある事件の捜査現場にて―――・・・
突如として現れた、「黒い形状」をした何者かは、その後の捜査の攪乱を狙って・・・なのか、少なからぬダメージをそこに与え、
自身が何者であるかの痕跡さえ残さず、その場を去ったモノでした・・・。
しかし捜査班は、自分達が襲われた・・・と、云う事実を、UP上層部に伝えた処、その事実を調査する「班」が特別に編成され、
その現場に着任しました。
それにしても、この現場に着任した「調査員」とは・・・
メ:今回、当該事件の捜査を阻害した容疑者を、調査する為に派遣されてきたメイベル警部であります。
捜:ああ―――例の「調査班」か・・・
また豪く早いな―――
メ:はっ―――本庁勤務の本部長である、バルディア様からの命により、不肖、私めが承った次第であります。
因みに、当該事件の管轄は、そちらにありますので・・・こちらは、あなた方の邪魔にはならないよう、配慮いたします。
捜:はっ―――そいつは願ったり叶ったりだ。
こっちも面子てのがあるし・・・な。
ま、お互い仲良くやって行こうや・・・
例の、捜査班襲撃の一報を受け、一体何者が襲ったのか・・・を、調査する為、現地に派遣されてきた「調査員」と云うのが―――
なんと、「ディーヴァ」の一員でもある、『カーリー』ことメイベルなのでした。
しかもこの時、自らの事を偽り、UPの一警部を騙るとは・・・
しかし、その「裏」の背景には、同じく「ディーヴァ」の一員であり、総責任者兼指揮官である『シャクティ』ことバルディアからの指令があったから・・・の、ようですが―――
ただ、メイベルは・・・「ディーヴァ」の、もう一人の指揮官でもある『ラクシュミ』・・・ミリヤの護衛でもある為、
そうそうミリヤの下から離れられないのでは―――と、そう思えてくるのです。
但し―――ならば・・・その『ラクシュミ』・・・ミリヤからも、今回の指令の事で一言あった・・・と、云う可能性も、なくはないのです。
では、真相の方は・・・?
メ:(バルディアと云われる方も・・・ミリヤ様も・・・随分と無茶を云われる。
まあ、二人が「良し」とするから仕方のない事だけど・・・
それにしても・・・何から手を付けて良いのやら・・・)
どうやら事情の方は、「その通り」だったようで―――
けれど、「暗殺」を生業としているメイベルだからこそ判る事がある―――
件の「襲撃者」の、何と鮮やかな手並みである事か・・・
メイベルは、自身が未だ「暗殺者」でもあることから、現場に遺っている「遺留品(物)」に、細心の注意を払ったのです。
たった一つの欠片でも、現場に遺せば立ち所に「足が着いてしまう」事になる―――
けれど、「同業者」の内には、故意と「遺留品(物)」を遺し、後の捜査の攪乱を狙ったりもする輩も、いることはいるのですが―――・・・
しかしそれは、数多の修羅場を潜り抜け、奸智に長けた者のみが、なせれる業である事を、メイベルは知っていました。
斯く云うメイベルも、徐々にそうしたレヴェルに達しようとしていたのですから・・・
それに・・・今回の「襲撃者」も、どこか自分と同じ「臭い」がする―――
同量の血を啜り・・・武道・武術の道では、『達人』とも云われている者―――
それでいて・・・やはりどこか、「闇」の社会に措いては、荒削りで稚拙である者―――・・・
それに・・・メイベル自身も、どこかで判った節でもある―――・・・
『やはり・・・この「襲撃者」は―――』
そうしたメイベルの予感は、すぐに的中するのでした。
それと云うのも、メイベルが「調査」のため・・・と、着任してきた「当日」に、「訪問してきた者」がいたのですから・・・。
しかも―――その「好ましからざる訪問者」と云うのも・・・
メ:(・・・)やはり、あなたでしたか―――マリア・・・
マ:メイベル・・・そう―――やはり、あなたが来たのね・・・
メ:多くは聞きません―――大人しく、私と一緒に来て、ミリヤ様の前で釈明をすれ・・・
メイベルが―――その言葉を云い終るか終らないかの内に、最速にて接近してくるマリア・・・
しかも、メイベルは言葉を発していたのだから、戦闘の為の集中力を欠いていた処は、どうしても否めないワケであり・・・
容易に、懐に入るのを赦してしまったのです。
けれども・・・メイベルも一時期では、『ウイッチ』の通り名で呼ばれた事のある「暗殺者」・・・
警官の衣装は破られはしても、暗殺者としての装束は、綻びすらしていませんでした。
しかし―――これで・・・互いが「敵」同士である事を認識し・・・
マ:(・・・)フッ―――流石ね、メイ・・・
敢えてUPの制服だけを切らせるとは・・・
メ:それはお互い様です―――
それに・・・フフフフ――――
マ:「いい機会」―――でしょう・・・
メ:そうですね・・・私も―――あなたと私と、どちらが「上」なのか・・・興味は尽きませんでしたから・・・。
それに―――・・・
マ:「あなた」と「私」・・・同じ組織に籍を置かなければ、本当は敵同士・・・
「犯罪者」と「警察官」が、「仲良く」―――だ、なんて・・・とんだお笑い草だわ。
第二百三十七話;死 闘
その瞬間―――現場には、云い様のない緊張感が漂ってきました。
しかもそれは、単なる「仕合わせ」ではない―――『Dead or Alive』・・・
この「闘争」が終わりを告げた時・・・どちらかが無傷である事は、有り得ない―――
もし、二人のどちらかが、この「闘争」で命を亡ったとしても、もう片方は五体満足ではいられないはず・・・
それだけ、マリアとメイベルの実力は、拮抗していたのです。
けれど・・・始められてしまったモノは―――収まり様・・・収め様がつかない・・・
振り上げ、振り下ろされた「真剣」が、途中で止められよう筈もない・・・
万が一にでも、そう云う事があった場合には、どちらかに「そう云う気」がなかった・・・と、云う事になる・・・
それに、拮抗した実力の持ち主同士が、真剣勝負で・・・そうした心構えで臨むのは、ご法度―――
すれば、必ずや・・・その者は、命を落とす羽目となる―――
こうしてお膳立てられた真剣勝負は、合図のないまま始められ―――
二人とも、互いの命を断つため・・・体力を削る為の、容赦ない攻撃を繰り出したモノでした。
メイベルは―――暗殺者時代に、こよなく愛用してきた「デス・サイズ」を主体とし、あらゆる「暗器」を適宜に操りながら、マリアに仕掛けてきました。
片や―――マリアは・・・「ディーヴァ」の『ドゥルガー』だった頃、いつも身に纏っていた「バトル・スーツ」・・・に、よく似たモノを、その時に身に纏い、
メイベルからの攻撃を薄皮一枚で躱していました。
両者は・・・対照的―――
メイベルは先制攻撃を仕掛け、マリアは「後の先」を択ったのです。
それに・・・数を撃てば当たるはずの鉄砲も、総てを防ぎ切られてしまえば・・・
その為の動揺や焦りは隠しきれるモノではなく、またそうした兆候は、次第に攻撃の手数が減ってきたことで、相手に容易に判ってしまうモノなのです。
そうした一瞬の気の迷いから―――隙を生じさせてしまったメイベルを・・・マリアが見逃すはずもなく・・・
メ:(!)しまっ―――
喩え・・・かつての「仲間」であったとしても、容赦ないマリアの拳は、メイベルを襲いました・・・
そして決着は―――呆気なく訪れ・・・
メ:ぐ・・・ふぅっ・・・ふ、不覚―――・・・
ですが・・・ミリヤ様・・・このメイベル・・・相手に楔を打ち込んで・・・・
マ:(!)自分の命と引き換えに、私の腕を―――!?
見事よ・・・メイ・・・けれど、私はこんな処では終われない!
『カーリー』の身体を貫いた『ドゥルガー』の拳を、使いモノにならなくさせる為の手段を講じてきた『カーリー』に、
止めを刺すべく『ドゥルガー』の対の腕は振り下ろされました・・・
・・・が―――
ここで興味が尽きないのは、止めを刺す為に振り下ろされたはずだったマリアの拳は、メイベルの命を奪ったわけではなく・・・
メイベルもまた、瀕死の重傷を負いながらも、どうにか一命だけは取り留めることができたのです。
=続く=