「天帝の后」―――と、云う大役に就いて、既にいくらか経った頃・・・
やはりリリアは、不満をクラウドマンにぶちまけていました。
リ:んがあ゛〜〜クソッ! もうやってらんねー!!
ク:また・・・ですか、あなたもいい加減に―――
リ:「いい加減にしろっ!」てのは、こっちの科白だよっ!!
大体何なんだよ・・・あん時は、折角「戻れた〜」と、思ってたのに。
ク:(・・・)ああ――― 一度地球へ郷帰りをした時のことですか。
いかがでしたか・・・お仲間のご様子は。
リ:え? いや・・・なんて云うかさぁ〜あいつら・・・好い顔をしてたよ。
それに・・・私がいなくても、ちゃんとしてたしな・・・。
でも、いざとなった時、私がいないとダメなんだなぁ〜とも感じたよ・・・。
ク:ほうほう、そうでしたか―――それはなによりです。
リ:それにさあ〜〜・・・って、あれ?
おい・・・ちょっと待てよ、そんな話しの流れじゃなかっただろうが!
ク:(ち・・・)気付いてしまいましたか―――仕方がない・・・
リ:あ〜っ! てんめえ〜〜このヤロウ〜〜よくも私をからかいやがったな!?
「いい加減に諦めて、現在の自分の職務に全うしてはどうなのか―――」と、クラウドマンは云いたかったようなのですが・・・
元々リリアにしてみれば、「状況の作用」によって、「天帝」の業務の一部を代行している象でもあった為、
半強制的に拘束され、厭な「面倒臭い事」を、「やらされている」とあっては、そうした意識も手伝ってクラウドマンに噛み付いていたのです。
しかし―――クラウドマンも然る者・・・
こうした人物の扱いには手慣れているモノと見え、話しの方向性を全く違う方向に向かわせようとしたのです。
そうした事にようやく気付いたリリアは、再びクラウドマンに噛み付こうとしたのですが―――・・・
よく考えると、「天帝の后」と云う「役職」は、上司でもある「天帝」から、『「后」は必要なくなった―――』と、云いさえすれば、また元の鞘に収まる仕組みだったわけなのです。
ですから、ここで「天帝」の部下の一人でもあるクラウドマンと口論になっても、状況は何も進展しないわけであり・・・
(ここで一つ留意しておかなければならないのは、『「后」は必要なくなった―――』と、云う言葉の裏の背景には、
全く以てそう云う意味なのではなく、「后」と云う補助役が必要ない位に、「天帝」としての職責を全うできるまでになった・・・と、云う意味なのである。)
リ:てか・・・なんかも〜〜どうでもいいわ―――・・・
それより・・・あいつ今どこへいるんだ?
ク:「あいつ」・・・
リ:すっ惚けやがんじゃねぇ〜よ! このヤロウ―――・・・
ダンテだよ、ダンテ! 大体今までの流れからして、あいつ以外誰がいるってんだよ・・・
すると・・・クラウドマンからは、「それは―――・・・」と、どこか重たくなる様な口調がこぼれ・・・
その事をリリアは―――・・・
リ:(はあ゛?! ん゛だよ・・・またどっかヘと行ってると云うのか?!!)
とどのつまりは、「そう云う事」―――
それにリリアは、「そのコト」を学習したモノと見え、今現在の『春禺宮』には、「天帝・ダンテ」が「いない」―――ことを、口外することはしなかったのです。
しかし・・・その事に対しては、一定の理解を示すモノの、また重要な事柄を自分に丸投げにしようとしている「天帝」自身は、
「どこの空」―――とも云えない状況に、終ぞ腹立たしくもなってきたのです。
すると・・・ここでクラウドマンが―――・・・
ク:(・・・)ならば、会って頂きたい方がいるのです・・・。
リ:はぁあ? なんなんだよ―――唐突に!
それに、なんかその流れ・・・以前に一度やったよな?!
まあ―――あの時は、話しの判る人だったけどさ・・・。
ク:それでは、早速手配を致します―――・・・
なにか―――どこか云い難そうだった・・・
だからこその、脈絡のない話しの切り出し―――・・・
この男は・・・これから自分に・・・一体何をさせようと云うのか―――
そうした事も踏まえながらも、クラウドマンと一緒に、『春禺宮』の外へと出た時・・・
ク:ふ・う・・・これで気兼ねなく話せると云うモノです―――
『春禺宮』では総てが筒抜け―――口にする事はもとより、頭の内の思索ですら明らかにされてしまいますからな・・・。
ですが―――このように、『春禺宮』から離れでもすると、このように「フリー」にできるのです。
リ:面倒臭ぇ〜やっちゃなあ―――で、あいつは今どこにいるんだよ。
ク:「天帝」様ならば、現在、ある重要な案件を推進中です・・・
リ:な・・・っ!
おい―――なんでそこではっきりと云わねえんだよ!
もう何云ったって平気なんだろう?!
ク:(・・・)申し訳ない―――こればかりは、詳しい事までは云えないのです・・・。
リ:(!)まさか―――・・・この宇宙の存在自体が危ぶまれるまでの・・・??
するとクラウドマンからは、「その事を判っていてさえくれれば充分です。」―――と、云った様な表情で促されたのでした。
そう・・・いくら「自由」になったとは云っても、殊の外重要なことまでは口外してはならない―――その事はリリアでも判ってきたのです。
だからこそ・・・なのか―――今回、自分が会おうとしている人物とは何者なのか・・・
もしかすると・・・今回の重要な鍵となる程の人物なのか・・・
するとクラウドマンからは―――・・・
ク:恐らく・・・今回であなたの―――「后」としての役割は終わりを告げることとなるでしょう・・・
それに、現在「天帝」様が推進中である、「ある計画」に―――今回あなたがあって頂く人物の「力」が必要なのです。
リ:なに? それじゃ・・・そいつと会いさえすれば、今度こそ私は地球へと戻れるのか?!
ク:まあ・・・極論から云えば、そうなりますが―――
得てして今回の人物は―――・・・
リ:いやっほぅぃ〜♪
いやっはあ〜―――それ聞くと、急に肩が軽くなった気分だわ!
じゃ―――さっさと会いに行こうぜ〜♪
これから―――何か重要な事をクラウドマンが発しようとしていた・・・にも拘らず、リリアは飛び上がって喜び、
その「重要な事」を聞くまでもなく、その人物に会おうとしていたのです。
ですが―――・・・
クラウドマンが発しようとしていた「重要な事」とは、まさしく「重要な事」のそれであり・・・
リリアの様に、気軽に会おうとしては行けなかったのです。
それでは・・・クラウドマンが発しようとした、「重要な事」とは―――・・・
そんな二人も、その人物が住まうと云う―――惑星『レセンプラーティア』に着いた時・・・
リ:それよりさあ・・・これから私が会おうとしてる奴―――って、どんな奴なんだ?
ク:(・・・)ヤレヤレ―――今更それですか・・・
リ:なんなんだよ―――その云い方。
ク:実を云いますと・・・私事で恐縮なのですが、今回「彼女」に、あなたを会わせるのは、私は反対なのです。
リ:「彼女」? 女性なのか??
それより何だ―――? お前自身が反対なんて・・・だったらどうして、私に会わせようとしてるんだよ。
ク:これは・・・「賭け」なのです―――
しかも、「いつかはやらなければならない」・・・
それが「今」となってしまったのも、「天帝」様が描いていた構想より、遙かに物事が進展し過ぎてしまった・・・
その「調整」を行う為、現在「天帝」様は、自らが動いている次第なのです。
リ:(・・・)なんか―――豪く凄ぇ状況になってきてんのな・・・。
だけど―――私には、そうした逼迫さは感じられないんだが??
宇宙は・・・未曾有のうちに、「危機的状況」になりつつあった―――・・・
しかし、そうした「事の重大さ」を感じることなく、時間が経過をしていると云うのは、
それほどまでに「天帝」の持つ「顕現」の影響の方が大きい事だとも云えるのです。
しかしながら・・・ならばなぜ、「賭け」にも似た行為を、リリアにさせよう―――と、クラウドマンは思ったのか・・・
ですが、本当にこればかりは「賭け」―――・・・
リリアが「その人物」と会って、どう転んでしまうかで、宇宙の命運もまた変わってくる・・・
そう云っても過言ではない位に、「重要な事」だったのです。
それと云うのも、これからリリアが会おうとしている「人物」というのも―――・・・
第二百三十九話;賢下五人
リ:「賢下五人」―――??
何なんだ?そりゃ・・・
ク:あなたは既に―――「レヴェッカ様」「エリーゼ様」「ルーシア様」そして「ガラティア様」と、お会いになっている・・・
それに、その四方様からは、非常に好い印象を持たれています。
そして、これからあなたがお会いになると云うのは―――云うまでもなく最後のお一人・・・
それが、「ミリティア=ミスティ=ミザントロープ」―――その方なのです。
リ:(「ミリティア」・・・?)なんだかあの人を思い出すような名前だな―――・・・
それに〜私が、レヴィさん達から好い印象を持たれてる・・・って―――・・・
ク:そう・・・だからこそ、私は「この賭け」に出てみようとしたのです。
リ:な・・・なんか―――それ聞いてて・・・急に腹が痛くなってきた・・・
それならそうと、早く云ってくれよ〜〜・・・
私なんかと会って、そいつ・・・ああいや、その人―――ヘソでも曲げられでもしたら〜〜・・・
ク:―――・・・
リ:何なんだよ・・・その顔―――つて、もしかしなくても〜〜??
この世に措いて・・・『死せる賢者』と確認されている個体が「五人」いる―――
だからこその「賢下五人」・・・
我々人類の常識と云うモノを、遙かに超越した存在―――
けれどリリアは、なぜかその内の「四人」とは、巧くやってきた経緯があったのです。
だからこそ、クラウドマンも「賭け」にも似た行為に踏み切れたようなのでしたが・・・
ふとリリアが不安を口にした時、クラウドマンの表情が、「拙いコトこの上ない」と行ったモノに変化してしまった―――
そう・・・「最後の一人」―――こと、「ミリティア=ミスティ=ミザントロープ」らしき人物は、彼ら二人の延長線上にいたのです。
とは云っても・・・今の事を知られたとしても、門前まで来ておきながら、踵を帰すわけにもいかない・・・
そう思いながら、恐る恐る「その人物」の側まで近付いて行くと・・・?
リ:(・・・)―――あれっ?! あんた・・・ミリヤさんだよな??
なんだ・・・私が会う人かと思ってたら、あんただったのかよ―――
そか・・・あんたも、ここの人と会う為にやってきたみたいだな。
それで・・・どうだった? やっぱなんか難しそうな人だったか―――?w
(・・・ん?)おい、どしたぁ―――クラウドマン・・・何か私・・・
そう云い掛けた途端、リリアは現在自分が置かれている状況を理解しました。
・・・と、云うより―――そうするだけの状況が、その場には用意されていたのです。
『今まで以上にもない、拙いことこの上ないクラウドマンの表情』・・・
『知った顔と思っていた人物からの、「無視」』・・・
そう・・・今まで、親しく(・・・と、云うより「慣れ慣れしく」)接していた人物こそが、「本人」だったとすれば―――・・・
まさしく、「拙いことこの上ない」状況の下で、両者は最初の接触を果たしてしまったのです。
=続く=