「そんなに意識はしていない」とは云いながらも、「想って」いないわけではなかった異性からの、「思わぬ告白」にヘレンは戸惑ったモノでした。

 

それに・・・今まで、すれ違いだった関係の人物からも「祝福」を受け、満更ではなくなった処で・・・

 

 

 

ヘ:「そ・・・それより〜〜あ、あの話しはどうなったのよ・・・。」

 

ジ:(プw)―――ヘレン、紅潮(あ か)くなってますね。

 

ヘ:「ちょっ・・・ジゼル! あんた、からかうんだったら、後でただじゃおかないわよ!」

ビ:「まあ〜まあ〜、今は仲間割れしてる場合じゃないだろ。

  それより・・・計画(プ ラ ン)―――なんだが・・・オレ達はどうすりゃあいい。」

 

 

 

嬉し、恥ずかしの感情を、どうにか抑え・・・「いつも」のように振る舞おうとするヘレンでしたが、

如何せんモニター越しでもあった為か、少しばかり頬を紅に染めた処を、ジゼルに見咎められてしまい、

そのことに、つい「いつも」のように怒鳴るのでしたが・・・やはりどこか「いつも」のようには、迫力が欠けていたようです。

 

そんなヘレンを(なだ)め透かしながら、相棒であるビリーは、これからの「計画」について訊いたのです。

 

 

 

ジ:―――簡単な事ですよ・・・

  先程も説明したように、あなた達二人には、例のアパートの一室に「コレ」を取り付けて貰えればいいだけです。

  そして、その一室には、こちらにいる『ピース・メイカー』が、偽名で借りる手筈になっています。

 

ビ:「な〜る・・・つまり、オレ達は工事屋を装い、その小型機器を、(あたか)も「自然」に取り付けるだけ・・・てな訳かい。

  で・・・それだけなのかい。」

 

 

 

端末に、触れると触れないのとでは、前後の人格が一変してしまう―――「二重人格者(ダヴル ・ スタンダード)」ジゼル=ぺルラ=オーチャード・・・

「普段」の彼女は、どことなく不安気で、大人しく、どちらかと云えば「いじめられっ子体質」でした。

 

しかし、今回フランソワに誘われてからと云うモノは、寝る時以外は端末に触れっぱなし・・・

だから、その時のジゼルは、あのミリヤの様に、優秀な戦術・戦略を練れる、臨時の司令官に成り得ていたのです。

 

そして、そこでジゼルから下された「指令」とは―――・・・

 

 

第二百四十五話;偽りの取材

 

 

それはそうと、場面は一転し―――・・・

「宇宙会議」の、与党大物議員であるロムスカは、遊説先である惑星アルレシャの、「スター・グランツホテル」の「ロイヤル・スゥイートルーム」にいました。

 

そして、彼が(くつろ)いでいる時に―――俄かに部屋の外が騒がしくなったので・・・

 

 

 

ロ:どうしたのだ、騒がしいぞ・・・何事か。

S:あ・・・いえ―――それが・・・

  雑誌だか新聞だかの取材が訪れて・・・

 

ロ:(・・・)ああ、例の奴か―――構わん、入らせ給え。

 

 

 

部屋の入り口付近で、議員の身辺警護を担当する者と、(あらかじ)め「取材」を求めての許可を取っていた「記者」との間で、少しばかりの問答が生じていたのです。

 

その事をロムスカは、事前予(ア ポ イ ン ト メ ン ト)を取っていた者が来たのだろう・・・と、思い、入室を許可させたのです。

 

そして、入室してきたのは―――・・・

 

 

 

記:今晩は、議員さん・・・

  今回取材をさせて頂く、カーネギーと申す者です。

 

 

 

一見、派手そうに見えてそうでもない・・・モノの云い方にしても、実にはっきりとしていて、そうかと思えば印象はそんなに残らない・・・

それに所属も、大物議員であるロムスカにしても、そう関心を寄せる処ではない・・・

そんな処からの取材を、よく受けたモノだ―――と、ロムスカを警護する者達は思っていたモノでしたが、

ロムスカにしてみれば、これも一種の「政治ゲーム」としての「パフォーマンス」になると思っていたのです。

 

しかし・・・(まぎ)れもなく、この「記者」とは―――

 

 

 

ヘ:ここの処紛糾している、現議長への不信任案についてなのですが・・・

  これは議員、あなたが提出したとの噂がありますが・・・どうでしょうか。

 

ロ:ハハハ―――云い難い事をズバリと聞いてくるモノだな。

  だが、私はそう云うのは嫌いではないよ。

  「完全オフ・レコ」で構わないなら、教えてやらない事もないが・・・

 

ヘ:是非―――お願いいたします・・・。

 

ロ:まさしく、その通り―――だよ。

  それに、現議長であるクラリスを引きずり下ろした暁には、次のポストは私・・・との確約もある。

 

ヘ:「確約済」・・・とは、まるであなたの「上」に、誰かいる様ですね・・・。

 

 

 

その「記者」とは、やはりヘレンなのでした。

 

それにヘレンは、ロムスカがなぜこの時期に「遊説」を行っているかの動機付けについても、そのままズバリを指摘したのです。

 

しかし・・・それも総ては、ジゼルの読み通り―――

 

つまり、「現議長」である、クラリス=サダルスゥド=ロッテンマイヤーへの、不信任可決による退陣・・・

また、それによる、ロムスカ自身の議長就任―――・・・

 

そのことを、ロムスカ本人の意思ではなく、まるで彼の「(バック)」に、そうする様に示唆する動きがあるかのような言動に、

ヘレンも言及してきたわけなのですが―――・・・

 

すると途端に、先程の自分の言動が「(まず)かった」とでも云う様に、ロムスカは急に態度を覆し・・・

 

 

 

ロ:な―――何を云っている!お前!! そんなわけがないだろうが!!

  い・・・いいか、お前―――今私が云った事は、速やかに忘れるのだ・・・さもないと・・・

 

ヘ:(・・・)「さもないと」―――フ・フ・・・「余計な事を云う輩は、排除しなければならない」・・・

  ―――と、そう、お前の「ご主人さま」である『ロクサーヌ』から云われてる・・・だろう?

 

ロ:(!!)な・・・!? なぜそれを―――お・ま・・・

 

 

 

そう、何かを云い掛けようとした途端、ロムスカの意識は途絶されました。

 

而してそれは・・・一人目の暗殺の終了―――

 

 

そして(おもむろ)に、腰掛けていた椅子から崩れ落ちるように、床へと倒れ込むロムスカ・・・

それを見たヘレンは、計画通りに嬌声を挙げ、取材の最中に異変があった事を、部屋の外にて待機しているSPに知らせたのです。

 

そして、SPが部屋へと踏み込んだ時には―――・・・

こめかみから大量の血を流して絶息しているロムスカの姿―――と、こんな状況に遭い、怯えているヘレンの姿・・・

この対照的な二人の姿しか確認することが出来なかった為、ならば誰が―――・・・一体、ロムスカを殺害したのか・・・

 

取り敢えずは、参考人として、ヘレンから聴取をするのですが・・・

 

 

 

ヘ:そ・・・そんな事云われても・・・私は知らないわよ・・・。

  それに、取材をしている最中に、急に血を吹いて倒れるんだもの・・・それはびっくりするでしょう?

 

 

 

そこにはまるで、「賞金稼ぎ」らしからぬヘレンの姿がありました―――

 

こんな光景など、日常茶飯事的に見ていると云うのに・・・

 

まるで、普通の女の子の様に、怯え―――怖がった・・・

 

しかし、これこそが、(あらかじ)めジゼルから云い含めさせられている、「お芝居」の範疇だとしたら・・・

 

 

 

ジ:―――そうですね、ここは一つこの作戦で行ってみましょう・・・。

  ヘレンには、「記者」に扮して貰って、ロムスカに偽の取材を行って貰います。

  そして、そこをフランソワが狙い、撃つ―――

  すると、一番近くにいるヘレンが、まず疑われ、ロムスカを警護しているSP達から、程度の尋問・聴取を受けることになろうかと思われます。

 

ヘ:「はあ〜? なんで私が、そんなん―――貧乏くじみたいな事を・・・」

 

ジ:―――ですが・・・普通に考えたら、こんな大事件は、UPに通報しない事は、ない・・・と、思います。

  況してや―――今回ロムスカは、遊説の為にアルレシャを訪れている事ですしね。

  そこで・・・重要参考人となるヘレンを―――・・・

 

ビ:「なるほど、そこでオレの出番―――てなわけかい。」

 

ジ:―――そう云う事です。

  UPに扮したビリーが、近隣のUP署にヘレンを護送・・・するのではなく―――

  まあ・・・その後は、二人の「お愉しみ」―――てなことで・・・

 

ヘ:「(・・・)あくどい事考えてんじゃないわよ、全く―――」

 

ジ:―――それより・・・大変なのは、フランソワになろうかと思います。

  なにしろ、7000光年離れた、もう一人の「標的(ターゲット)」・・・ロイドの方も済ませなければならないんですからね。

 

ヘ:「それよ・・・大体こいつも、もう一人いるわけじゃないんだから―――」

 

ジ:―――だからこそ・・・の、この「装置」なのです。

  この「装置」の開発に携わった、「Dr」ことルーシアからは、『「10000光年」の うちなれば がへんぜるなり』・・・との説明を頂きました。

 

 

 

「Dr」ルーシア・・・その名を聞いて、生唾を呑むヘレンとビリー・・・

 

そう、彼ら二人は知っているのです、優れた頭脳を持つ半面―――危険極まりない思想を持つことでも知られている、

『アカデミー』随一の「マッド・サイエンティスト」のことを・・・

 

けれど、そんな彼女の発明したモノに頼らざるを得なくなっている一方、そうしたモノは、まず間違いがない事も知っていたのです。

 

だからこそ・・・の、「事前準備」―――

 

恐らくロムスカの死は、どんなに遅くとも一両日の内には、『ロクサーヌ』や、朋友であるロイドには知られてしまうだろう・・・

 

しかし―――逆を返せば、その間こそが、ロイドを狙う絶好の機会・・・

 

それに、ジゼルは、ロイドの「ある癖」をも知っていました。

 

それが・・・

「カード・ゲーム」に興じ始めると、喩え何者であろうとも邪魔はさせない・・・。

喩えそれが、彼自身の「ご主人さま」である、『ロクサーヌ』であったとしても・・・

 

だから、ロイドがポーカーを愉しんでいる間は、まずロムスカの死はロイドへは伝わらないだろう・・・

伝わるとすれば、ゲームが終了するか、何かしらの原因で中断され、部屋から出た時―――

おそらくそこが、狙い目となってくるだろう・・・

 

(いず)れにしても、彼らへの闇の帳は、降ろされようとしていたのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと