とある「成功者」を、闇へと葬った黒幕の一人は、ここに誅殺されました。

 

しかし問題なのは、もう一人の黒幕・・・「ロイド保険会社」会頭ロイド―――

 

それと云うのも、この第二の標的は、最初の標的より7000光年も離れている場所にいたと云うのですから。

 

それに、最初の標的である、「宇宙会議」大物議員ロムスカの、不自然な死が伝わるのは、どんなに遅くとも一両日の内・・・

 

つまりこれは、どんな高速艇を使っても、「ほぼ同時」に、この二人を抹殺することは困難であることを示唆していたのです。

 

 

しかし、実はこの問題も解決済み・・・

それと云うのも、こうした問題をある程度予測し、『ピース・メイカー』であるフランソワは、

『アカデミー』随一のマッド・サイエンティストとして知られている、「Dr」の協力を仰いでいたのです。

 

そして、「Dr」ルーシアから授かった「小型機器」により、

7000光年離れた、現在でもポーカーに興じていると見られる、ロイドの「別荘」―――の見える、「アパートの一室」に辿り着いていたのです。

 

 

 

フ:(・・・まだ―――部屋から出る・・・と、云う気配は見られないわね・・・。

  余程の好ゲームなのか・・・それとも・・・)

 

 

 

「7000光年離れた」―――とは、一口には云うけれども、本当はそんなには生易しくはないのでした。

 

現にフランソワは、「転送酔い」とでも云う様な軽い恍惚を覚えてはいましたが、それでもそんな事を一言も出さず冷静さを保っていられたと云うのは、

それが彼女の強さの現れであり、女性でありながらS級に指定されるまでの暗殺の腕前を持っている事の証明でもあったのです。

 

それに・・・「別荘」の部屋の出入り口からは、人が出入りする気配は未だ感じられなかった―――・・・

 

しかし? フランソワのプロフィールにもある様に、彼女は「完全な盲目」・・・

(こんな表現の仕方になると云うのも、このお話しでは以前に、自発的に目を閉じて「盲目」を「演じていた」市子の存在があったから。)

 

なのに、S級に指定されるまでの、神懸かり的な狙撃の腕前があったのです。

 

それではどうして・・・フランソワは、まだロイド達が部屋から出て来ないのかが判り、

そしてS級の腕前を持つ、超一流の狙撃手(ス ナ イ パ ー)に成り得たのか・・・

 

その事は、現在―――相棒のビリーと移動中の、ヘレンが知っているのでした。

なぜなら、彼女とフランソワは、元軍隊の、同じ隊に所属していたのですから・・・

 

 

 

ヘ:あいつの強みってね―――目が()える健全な私達と違って、あらゆるモノが「()える」・・・いや、「感じている」と云った方が正しいのかしらね。

ビ:ん〜? どう云う意味だ?そりゃあ・・・

 

ヘ:あいつの優れた処は、「魔弾の射手(ザ  ミ  エ  ル)」と云う、特殊能力にあるの・・・

  あいつの放った「魔弾」が、あいつの「目」であり「耳」であり「鼻」でもあるのよ。

ビ:おいおい―――そりゃ・・・まるっきり・・・

 

ヘ:そう―――この、なんの変哲もない「鉛弾」が、あいつ自身の「レーダー」であり「ソナー」なのよ。

  それにね、笑っちゃうようだけど・・・あいつ自身の射撃の腕前ってね、そんなには大したことないのよ。

ビ:(?!)なら、なんで・・・

 

ヘ:気付かない? なぜあいつや私が、時代錯誤も甚だしい「鉛弾」を、未だに使っているか・・・

  とっくに軍や警察では、「エネルギー弾」を採用していると云うのに・・・ね。

ビ:(!)云われてみりゃ・・・そうだなあ―――

 

ヘ:つまりね、射撃のテストの時には、必ず「それ」になるから、目が視えないあいつにとっては不利なの、

  けれども・・・こう云った、「物質系」の弾丸を、使用した時・・・

 

 

 

而してそれこそは、「念動力(サイコキネシス)」のなにものでもなかった・・・

 

現に、今でも―――フランソワが事前に放っていた弾丸は、部屋の出入り口付近に留まり、

その場所には誰もいないことと、近くの部屋からは「卓」を囲んで向き合っている四人の存在と、

別の一室では、四人のSPと見られる八人の存在の確認が取れていた・・・

 

「非物質系」のように指向性のある軌道ではなく、自身が持つ能力によって軌道を自在に変えられる「魔弾の射手(ザ  ミ  エ  ル)」―――

それこそが、フランソワを「超一流」にまで押し上げた理由なのでした。

 

 

それはそうと・・・今回に限っては、ロイドは全くついていませんでした。

それと云うのも、連続して、彼の「()」には、彼自身が最も忌み嫌うモノが入っていたからなのでした。

 

そう・・・「トリス・カイ・デカ・フォビュア(“13”     恐     怖     症)」である、彼の手元には―――・・・

 

 

 

ロ:(ち・・・またか―――)

  悪いが、この勝負下ろさせて貰う・・・

仲1:またか・・・では、オープンを・・・

仲2:「K」のスリー・カード・・・それも、今チェンジしたばかりのヤツではないか?

仲3:我々にしてみれば、「ついている」というのに―――卿にしてみれば、「ついていない」―――とは・・・皮肉なモノだな。

 

ロ:なんとでも云い給え・・・。

  それより―――私のツキを戻す為に、ここでひとまず休憩をすると云うのはいかがかな。

仲1:ヤレヤレ―――卿には敵わんよ・・・

仲2:私共とすれば、このまま勝ち続けていたいモノだが・・・

仲3:それによって、卿の機嫌を損ねては、元も子もないからなぁ。

 

 

 

またしても・・・の、「K」―――

しかも、交換したばかりの三枚が、揃いも揃って「K」だとは・・・

 

それに、どうもここの処、こんな事が立て続けに起こっているので、或る悪い予感も、この時のロイドの頭を(よぎ)っていたのかもしれない・・・

しかし現実としては、そんな悪い空気を払拭させる為に、一度休憩を申し出て、今までカード・ゲームに興じていた部屋から出た時・・・

 

 

 

S:(!)ロイド様―――至急お知らせしたい事が・・・

 

ロ:ん?なんだ―――どうした・・・

  (・・・!)なに―――それは本当か?!

 

S:はい―――先程届いたばかりで、真実の程は定かではないのですが・・・

 

 

 

自分の護衛であるSPの一人が、何かしらの報せを持ってきた・・・

しかしそれは、ロイドにとって不都合な事だったらしく、珍しく動揺した姿を見せる彼がいたのです。

 

けれど・・・それは間違いなく、彼の朋友でもある―――ロムスカの訃報・・・

 

そして―――それとほぼ同時に・・・

 

 

 

ロ:(・・・うん?)なんだ・・・?あれは―――

  部屋の隅に、留まっている・・・何―――か・・・

 

 

 

その瞬間、ロイドの真額を貫いたモノがありました。

 

自分達がポーカーに興じる為、部屋に入る時には、その場所には何もなかったと云うのに・・・

それに、そう云った確認をすると云う事は、疚しい彼らの、まさしく疚しいと云った根拠であり、

常に他人を疑って何かに脅えていた証拠でもあったのです。

 

 

第二百四十六話;whit rabit

 

 

そう―――今ここに不慮の死を遂げざるを得なかったロイドにしても、また、彼より先に死んだロムスカ・・・

果ては、そんなロイドと共にカード・ゲームに興じていた彼の仲間達にしても、皆一様にして、不当な手段によって現在の地位・利益を得た者たちばかり・・・

そして、そんな者達の末路と云うモノは、「一夜にして総てを失う」―――・・・

 

今、遊興仲間の一人が、自分達の目の前で不慮な死を遂げた事によって―――

ある一人は腰が砕けた様にその場へとへたり込み、失禁をする始末・・・

またある一人は、「次は自分の番だ」―――と、泣き叫ぶ始末・・・

そしてまたある一人は・・・茫然自失をして、魂が抜けた様になる始末・・・

 

―――と、この様に、いずれもロイドの交友関係には、常に「ドス黒い何か」は、付き纏っていたようです。

 

それよりも・・・今しがた、自分の雇い主の額を撃ち抜いた「モノ」の、その規則性に心当たりがある様なSPの一人は・・・

 

 

 

ゼ:(アレは紛れもなく「魔弾の射手(ザ  ミ  エ  ル)」―――すると、今回の件は「ヤツ」の仕業か!!)

 

 

 

そのSP―――ゼクス=リュー=ハインライン・・・

その彼は、元々UPの警官の一人でした・・・が―――過去に、自分が担当していた「証人」を、何者か・・・

つまり、『ピース・メイカー』によって()された為、已むなくUPを辞職するしかなくなり、

現在では、犯罪者同然の者達の身辺警護をして、生計を立てるまでに落ちぶれてしまっていた・・・

 

そう―――元はと云えば、『ピース・メイカー』の仕業・・・

「正義」を司る職を追われ、こんな事をしなければ、明日をも活きて行けない様な立場にしてくれたのは、総てあの女の仕業なのだ・・・

 

いつしかゼクスは、フランソワの事を激しく憎むようになりました・・・。

 

そしてこの時も―――心当たりのある場所を他のSP達に当たらせ・・・自分だけは・・・

 

 

 

ゼ:見つけたぞ―――フランソワ=エヴァ=ベアトリーチェ・・・

  いやここは、敢えて『ピース・メイカー』とでも呼ぼうか。

 

 

 

予測通り―――修道女(シ ス タ ー)の格好をしていたその女は、「しれ」とした表情で、この惑星から離れる手続きを宇宙港の窓口でしていました。

 

そこを呼び止め、(あまつさえ)・・・裏社会では何と呼ばれているかを云ったと云うのに―――・・・

それであるにも拘らず、この女は・・・

 

 

 

フ:私の事ですか?

  それにしても・・・私の事を「平和の使者」―――だなんて・・・

  嬉しくは思うのですが、まだまだ私は至らぬ身・・・ですが、いつかはそう呼ばれたく、精進する―――

 

 

 

「よくもそんな、空々しい事を・・・」と、その男は思い、一人の修道女にいきなり殴りかかってきました。

 

確かに―――ゼクスにしてみれば、フランソワが自分の雇い主であるロイドを殺害したのは、明確な事実・・・

だとはしても、それは所詮ゼクスにしか判らない彼の道理であり、他の人間がそんな光景を目の当たりにすれば、

横暴極まりない一人の男の所作そのモノが、そこに浮き彫りにされるだけだったのです。

 

―――が・・・しかし・・・

 

不思議とその現場は、そうはならなかった・・・

それと云うのも―――・・・

 

 

 

ビ:ヒュ〜♪ 危ねえ―――危ねえ―――

  あんた、このシスターさんに、何の怨みがあるのか知らねえが・・・自棄(ヤ ケ)を起こすもんじゃねえぜ。

  で、ねえと、神様に祟られちまうぞ。

 

ゼ:(!)な・・・お前―――

 

 

 

ゼクスからの拳を遮ったのは、何とあのビリーなのでした・・・。

 

そして、今回の協力者の一人である彼が、この場にいることで・・・「あの存在」も一緒に来ていると察するフランソワ―――

 

そう・・・確かに、その女性はその場にいました―――

それも・・・

 

 

 

ヘ:シスター・フランソワ・・・大丈夫ですか―――

  それにしても不敬虔な者もあったモノです。

  グラスゴー正教会のシスターに、手を挙げると云うのですからね・・・

  しかし―――心よりの懺悔を捧げるならば、寛大なる(しゅ)は、あなたを赦して下さいますでしょう・・・

 

 

 

まさしく「それ」は、他の誰から見ても、仲間のシスターを救った、同じ教会のシスターの姿・・・

それに、これ以上事態が悪化しては、あとあと面倒な事になりかねないと思ったSPは、

一時的にこの場は退く事にしたのでした・・・。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと