「成功者」の「妻」の依頼は、ここに完遂されました。

 

あらゆるメディアに通じ、顔が利いた「成功者」・・・

そんな彼の事を(うと)ましく思った「政」「財」のトップである二人―――ロムスカとロイド・・・

しかし、この二人の不自然過ぎる死は、当然・・・彼らの主である、現「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」のメンバーの一人―――

 

 

 

ロ:(あの二人の生存反応が消えたか・・・まあ、私の手駒にしては、よくやった方か―――フフフ・・・)

 

 

 

『ロクサーヌ』は、密室で・・・自分の配下でもある二人の存在が途絶えた事を知りました。

・・・が―――『ロクサーヌ』にしてみれば、所詮ロムスカとロイドの二人も、彼の者が抱える数多くの「手駒」の一つに過ぎず、

消失しても何ら惜し気さえも見せなかったのです。

 

しかし・・・あの二人の反応が途絶えた経緯を知る内に・・・

 

 

 

ロ:(ほう・・・あの二人を抹殺してくれたのは、『ビース・メイカー』か・・・

  確かこの存在は、私の同志である「あの者」の・・・『ヴィヴィアン』と同じ組織に所属している「フランソワ」とか云う者らしいな・・・。

  それに・・・やはりそうか―――その「フランソワ」とか云う者と繋がりのある・・・『賞金稼ぎ・クルセイダー』としても知られている「ヘレン」と云う者も・・・

  フ・フ・フ―――これは面白くなってきた、曲がりなりにも、私の手駒を抹殺してくれたのだ、ここは一つ・・・礼を尽くさねばならんか・・・。)

 

 

 

自身が操作する端末で、ロムスカとロイドが急死した経緯を知って行く『ロクサーヌ』・・・。

その中で、『ピース・メイカー』であるフランソワが、何者かの依頼によって、その依頼を果たした経緯と・・・

また別の経緯で、『賞金稼ぎ・クルセイダー』であるヘレンが、フランソワに協力していた事をはじき出していたのです。

 

そしてその事実を―――フランソワとヘレンが所属している組織「グレゴール正教会」にいると云う、『ロクサーヌ』の同志に情報を流出(リ ー ク)させたのです。

 

それはそうと・・・ここ数日、ヘレンは浮かれ気分になっていました。

 

 

 

ヘ:フン・フ・フ〜ン♪

 

ス:(・・・)随分とまた、機嫌が好いようだな。

 

ヘ:へ・へ〜ン、わっかるぅ〜?

  とうとうあいつに告られちゃったあ〜♪

 

ス:(・・・ヤレヤレ―――)

  我が世の春を謳歌しているというのか―――まあ、別に構わんがな・・・

 

ヘ:あっれぇ〜?w もしかして妬いちゃってんのぉ〜?ww

 

ス:(・・・)お前―――

 

ヘ:羨ましいだろ―――

 

ス:(!!)この――――

  (!!!)

 

 

 

普段ならば、しなさそうな鼻歌交じりで・・・しかも、旋律(メロディ)もどこか軽やかで嬉しそうだった・・・

そこの処を、ヘレンが今回の件で、ハタルドゥーミ教会を離れていた時に留守を預かっていたスターシアが指摘した処、

ヘレンからは少々苛立ちを覚える仕草が・・・

 

そうした事に、ついスターシアは怒りを覚えてしまうのでしたが、この時、この教会に何者かが訪れてきたのです。

それで、ヘレンが出迎えてみた処・・・

 

 

 

宗:この教会に、ヘレン=サピロス=カーネギーはいますかな・・・。

 

ヘ:(・・・「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」?)はい・・・ヘレンならば私ですが―――

  それにしても、なぜ「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」がここに・・・

 

 

 

同じ組織内の人間だからこそ、その服飾(み な り)を見ただけで「そう」だと判った・・・

 

「グレゴール正教会」の教義に反したり、「異端」・・・つまり、その宗教以外の宗教を屈服させ、その教義の下に須らく教化を行う・・・

しかしそれは、言葉を変えれば「侵略」であり、神に仕える組織には、余り似つかわしくもない「武力集団」でもあったのです。

 

そんな部署に所属する者が「訪問」するのには、理由は限られていました・・・。

つまりは、「また」ヘレンは、教会の教義に反することをした・・・

(ここで、「また」と云う表現の仕方をするのも、以前にヘレンは、「集会」が行われた時分に、フランソワに掴みかかっており、

その場面を「異端審問員」を束ねる者に見られ、二人とも「お説教」をされている。)

 

だからそこで、二・三の注意を受けるだけ・・・だと思っていたら―――

 

スターシアは、この「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」が教会の扉口に立った時から、感じていました・・・

そう―――「彼」の、「殺意」と云うモノを・・・

 

その事が判らないヘレンではないはずなのに・・・だとしたら、今回の事で余程に浮かれていたのでしょうか―――

だから、「彼」から差し向けられた凶器に―――・・・

 

 

 

ヘ:(!!)え―――・・・

 

審:ぐああっ!!

 

 

 

一瞬反応が遅れてしまったヘレンでしたが、寸での処で難を逃れた・・・と、云うより―――

スターシアの超反応によって、逆に腕を捻り上げられ・・・呻き声を挙げる「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」―――・・・

そして、こんな「問答無用」な事をする教会側に、思う処となったヘレンは―――・・・

 

 

 

ス:ふむ・・・曲がりなりにも、レディーに対する礼儀(マ ナ ー)がなっていないようだな。

  お前達の宗教とは、そんなモノなのか―――

 

ヘ:そ・・・それにしても、どうして―――いきなり・・・

 

ス:さてな・・・

  では、そろそろ色々と喋って貰おうか―――

 

審:く・・・くそ―――離・・・ぐああっ!

 

ス:因みに云っておくが、私にお前達の教会とやらの理屈は通じんぞ・・・

  なにしろ私は―――

 

 

第二百四十七話;無神論者

 

 

ス:なのだから・・・な―――

 

審:フ・フ―――そうか・・・ならば先に、お前の方から教化を・・・ぐおおぉっ!

 

ス:(・・・)いちいち喚くな―――そんなに力は入れてはいない・・・

  それにしても、滑稽なモノだな・・・哀れさえ感じる。

  しかし、なるほど―――実力に見合わぬ大口を叩く・・・と、云うのは、こんなにも惨めで憐れなモノなのだな・・・

 

ヘ:あんた・・・

  ―――でもあんたは、充分に強いじゃない・・・それに、「神を信じない」・・・って―――

 

ス:「強い」? この私がか??

   あっ―――ハハハ! こいつは愉快だ、今のあなたが目にしている私の強さなど、取るに足らんよ。

  それは得てして、私が強くなっているのではない・・・云ってしまえば、この私より弱い連中が多くなったからだ・・・。

  それを証拠に、こんな私など片腕で捻じ伏せる存在の事を、私は幾つも知っている。

 

  それにな・・・私が「無神論者」を謳ったのも、単にあなた達の宗教の神を信じていない―――と、云う事に過ぎない。

  まあ・・・(もっと)もそれは、あなた達の神よりも、信じるに足る存在があるのを、私は知っているから・・・なのだがな。

 

 

 

スターシアは・・・「神」を信じない―――

しかしそれは、一信に念じ・・・祈り上げても、実益のない「神」を信じる―――と、云うのではなく・・・

「自分が信じるに足る存在」・・・つまりは、「フロンティア」所属の、あの「三姉妹」のことを暗に仄めかしてもいたのです。

 

それに・・・今現在ヘレンが目にしているスターシアの「強さ」にしても、別に謙遜をしているつもりはありませんでした。

ただ―――それが真実なのですから・・・

 

それはそうと、同じ教会の人間であるヘレンを、何の理由もなく粛清を図ろうとする「異端審問」に対し、尋問は開始されたのです・・・。

 

 

 

ヘ:ねえ―――ちょっと、これはどう云う事なのよ。

  どうして私が粛清の対象にならなければならないわけ?

 

ス:そう感情的になるな―――フロイライン・・・

  こう云った手合いは、上からの命令を忠実に遂行するだけだ。

  そうなのだろう・・・

 

審:(・・・)―――・・・

 

ヘ:え? でも・・・こいつらを束ねている奴―――って、ここまでの無茶はしないわよ??

 

ス:だとしたら・・・余程に猫を被るのが巧いのか―――それとも、外部から圧力をかけられたか・・・

 

 

 

捕縛され、二人の前に座らされても、その「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」は一言も吐きませんでした・・・。

 

これには、深い事情まで知らされていないとする反面、「異端審問」を執り行う部署の長が、何者かの圧力に屈し、

邪魔だと思われているヘレンを粛清にかかった―――モノと思われたのですが・・・

 

ただ一つ・・・スターシアには心当たりがありました・・・

だからそこでカマをかけたのです。

 

すると、その事が判らず、思わず安堵してしまった「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」の表情を読み取り、ある事実に突き当たったスターシアが・・・

しかしその事は、その場では一言も口にしなかったのです。

 

それに・・・だからか、スターシアはこの後、或る信じられない行動に出たのです。

そう―――・・・

 

 

 

ス:ふむ―――よし、もう判った・・・お前の戒めを解いてやろう。

  そして、お前の主の下に帰るがいい・・・

 

ヘ:(・・・な?!)ちょ―――ちょっと!待ちなさいよ!

  こいつ・・・何も喋っちゃ―――

 

ス:その前に一つだけ・・・帰ったらお前の主に云っておくがいい・・・

  「これから(じか)に、会いに行く」―――と、な・・・

 

ヘ:(!)なによ・・・それ・・・ワケの判んない事を云ってんじゃないわよ!!

 

ス:(・・・)いや、これでいい―――

  それより改めて聞きたい事があるのだがな、フロイライン・・・

 

ヘ:なによ・・・それに、私の事を「お嬢」―――だなんて・・・

 

ス:これは失礼・・・いやそれよりも、あなた達の云う「異端審問の長」―――とは、誰の事を云うのだ。

 

 

 

折角捕縛した「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」の戒めを解き、みすみす彼の主の下に帰した―――・・・

しかも、「伝言」つきで・・・

 

その事にヘレンは、何が何だか判らなかったようでしたが、スターシアにしてみれば、今回の一連の事象で既に判ってきていたのです・・・。

 

 

そう・・・「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」の「長」こそ―――・・・

 

そしてその情報を、意図的に・・・現在「その場」に向かっているユリアに流し―――

 

 

 

ユ:ええ・・・そう・・・判ったわ―――

  それではあなたも、抜かりのなきよう・・・

 

ス:「フ・フッ―――まさかお前に心配をされようとは・・・な、私も落ち目になったモノだ。

  では、現時点を以て私は、『アカデミー』にいる『ロクサーヌ』を始末する・・・」

 

ユ:―――・・・。

  (それにしても・・・やはり『ヴィヴィアン』とは、彼の者の事でしたか・・・

  ジルの端末の「最終ログ」を見て、どこか宗教関係の匂いが漂っているモノと思っていましたが・・・

  ですがこれで―――現「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」の全容が判明してきました。

  後は・・・壊滅に追い込むのみ―――と、云う事ですわね・・・。)

 

 

 

地球にて、結果報告のみを聞くモノだとばかり思われていたユリアでしたが、

実はすでに・・・現「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」のNo,1と目されている、『ヴィヴィアン』の下に向かっていたのです。

 

それはそうと―――オンドゥにいるヘレンとスターシアは・・・

 

 

 

ヘ:ちょ・・・っ―――今の連絡・・・

 

ス:うん? 気にすることはない・・・私は私の役目を果たすのみだ。

 

ヘ:いや、そうじゃなくて・・・

  「異端審問の長」である、レイア=アルゲディ=メーテルリンクが・・・「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」の一人??

  それに・・・『アカデミー』には、『ロクサーヌ』が・・・って―――・・・

 

ス:(・・・)ふむ―――なるほどな、確かに面倒だ・・・

  あたら総てを知ってしまうと云う事が、こんなにも不便なモノだとは・・・な。

 

ヘ:(!)ちょっと―――あんたねぇ、誤魔化してんじゃないわよ!

 

ス:まあ・・・今回の事を簡単に説明してやると、今回私が帯びた任務とは、現「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」の掃討・・・だ。

  私は『ロクサーヌ』を―――ユリアのヤツは『ヴィヴィアン』を・・・そして残る『テレジア』は―――・・・

 

 

 

既にユリアとスターシアは、「ある人物」からの命を受け、残る「現「七人の魔女(セヴン ・ シスターズ)」」の三人の一掃を計っていました。

 

つまりは、そう・・・もう既に、ユリアとスターシアは、残る三人の「正体」と云うモノを知っていたのです。

 

しかし、「残る三人」に対し、彼女達は二人・・・どう見ても、あと一人足りないわけなのですが―――

ならば「残る一人」は、二人が協力をして・・・と、云う事も考えられなくはないのですが・・・

 

実は、『テレジア』に関しては、既に「ある者」と、火花を散らしている最中―――だったのです・・・。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと