「現在」の「七人の魔女」のNo,1である『ヴィヴィアン』の滅亡を機に、全宇宙を「混沌」に導こうとしていた悪意の火種は、ここに鎮まりました。
その一方で、「混沌」側の代表である、「ある存在」の代理が、「ある人物」の下に、何かしらの提案を持ちかけてきたのでした。
そしてその場所には、「現在」の「天帝の后」である、リリアの姿も・・・
リ:(?)おい、あいつ誰なんだ?
ヨ:(・・・)「来るべき時、来たれり」―――の、ようです・・・。
リ:はあ? だから何なんだよ!
そんな謎かけなんていらねぇ〜よ!
ミ:騒がしいぞ、竪子―――
それで、何ようなのだ・・・バクストン。
パ:(・・・)連れないお言葉を―――
私が今、ここにこうしているのが「どうしてなのか」―――あなた様にはご理解済みの筈だ。
一見して「特徴のなさそう」な・・・
「強そう」にも「弱そう」にも見えず、「いかつそう」にも「優しそう」にも見えなかった・・・
いわばその「中間」―――
しかし、その人物が、どうにも「混沌」側の人間には見えなかったのです。
そこが、この人物―――ミヤコン=グレビッチ=パクストン・・・通称を「MIG」と呼ばれている者の、特徴でありまた不気味さでもあったのです。
そのバクストンが、ミリティアに面会を求めたのも、「ある提案」があったからなのですが・・・
そんな事を知る由もないリリアは、側にいたヨヴ―――「クラウドマン」に、バクストンの正体と、彼が何をしに来たのかを訪ねたのですが・・・
ヨヴからは、ただ端的に―――「来るべき時、来たれり」のみ・・・
そう―――「来るべき時」・・・
そのために、ミリティアに「仲介役」を務めて欲しい・・・それがバクストンからの提案だったのですが、
なんとミリティアからは―――・・・
ミ:なんとも、まあ・・・都合のよい事だ・・・な。
我をこのような処に幽閉しおいて、汝らの都合が悪くなったら、我にしがみつきおるか・・・
パ:(・・・)返す言葉も・・・ございません・・・
ミ:ほざけ―――
去にて汝の主に云うが云い、この我を蔑にした罪―――取って貰う・・・と、な。
ヨヴ、汝も、あの「小僧」に伝えおくのだ。
ヨ:確と―――
それで・・・提案の方は? いかがなされるおつもりで・・・
なんとも、不機嫌極まりない態度に返事・・・
しかし、どうにか「提案」の方は、聞き入れられて貰えるようでしたが、リリアにはどうしても理解し難い部分がありました。
それと云うのも、ヨヴ―――こと「クラウドマン」は、今までの付き合い上、「天帝」の側近である事が判っていたし、
ならば、この場にいる「バクストン」なる人物も、「天帝」に抗する事の出来うる立場側の人間・・・の側近であることは、容易に推測できたのです。
ならば、この二人が、この少女に対し、頭を低くする理由と云うのは―――・・・
リ:そ・・・それより〜〜「提案」―――て、何?
ミ:(・・・)バクストン―――
パ:・・・は?
ミ:『没』―――
すると、突然・・・音も上げず、一人の男が―――血を撒き散らしながら、この場から消滅しました・・・
そんな突然の出来事に、近くにいたリリアは、腰が砕けたかのようになり、その場にへたり込んでしまったのです。
それよりも・・・どうして・・・こんなにも突然に―――
少女は余程に機嫌が悪かったのか―――それとも蟲の居所が悪かったのか・・・
ですが、またすぐに―――
ミ:(・・・)『甦』―――
パ:ぱ! はあぁ〜〜っ・・・!
リ:(!!)も・・・戻ったぁ?!
一体・・・何がどーなってやがんだか・・・
一つの「言の葉」をして、影響を与える者―――『話術師』・・・
時に、その少女は・・・自分の気分次第で「存在の有無」すら自在に操るのでした。
しかしそれでは・・・
この「少女」―――ミリティアが幽閉された理由も、どことなく判ってくるのでしたが、
ならばなぜ、相反する頂上の存在の側近の二人が、ミリティアに「お願い」をする象となっているのか・・・
そのことを、まだリリアは理解しかねましたが、この一見「八つ当たり」にも見える事、そのものが―――・・・
パ:(はぁ〜・・・)「お願い」をする度毎にやられはするものの・・・どうにも慣れません―――
「やられる」時には、一声お声かけを・・・
ミ:(・・・)もう一辺、『没』んどくか―――
パ:(!)いえいえ、もう御勘弁下さい―――もう沢山です・・・
リ:(・・・)ナニ?このやり取り―――
ヨ:「承諾」して下さったのですよ―――我らからの「提案」を・・・ね。
リ:だからさぁ・・・なんなんだよ、その―――お前らの「提案」・・・て。
ヨ:一言で云ってしまえば―――「会談」です・・・。
ミ:それも、「全宇宙」の「運命」を左右するほどの・・・な。
リ:(!)お・・・おいおい―――脅すなよ・・・って。
ミ:「脅す」? 汝のような竪子を脅して、なんの面白味があるか。
リ:(〜〜・・・)なんか凹みそ―――泣いてもいいか〜?
ヨ:ミリティア様・・・いびるのはその位にしておいて下さい。
ミ:諾―――まあよいわ・・・
だが、これは「脅し」でもなんでもない、「事実」なのだからな。
ミリティアが、「秩序」「混沌」―――その両方からの「提案」を「受諾」した・・・
それにしても、荒っぽい仕様なのでは―――と、リリアは思うのでしたが、
それ以上にも増して驚くべきこと・・・
「会談」―――
それも、「全宇宙」の「運命」すら左右すると云う―――リリアにしてみれば、重た過ぎること、この上ないのですが・・・
またしても、ミリティアの「あの口調」で云われたモノだから、少しばかり精神的に平常ではなくなってきたのです。
しかし―――ミリティアからの、そうした説明は「事実」そのものなのでした。
それと云うのも―――・・・
第二百五十四話;この「宇宙」の真理
ミ:竪子―――ならば汝に問う。
この世にある「善」と「悪」の線引きは、何処にありや。
リ:(・・・)は?え??
な―――なんかまた、簡単なようで難しい事を・・・
う〜ん・・・「善い」事をする奴が「善く」て〜「悪い」事をする奴が「悪い」・・・んじゃ、ダメなのか?
ミ:(・・・)ふむ―――まあ、初歩的にはそうよな。
ならば、こう云ったらばどうか―――『この宇宙が産まれし時、「善」「悪」は存在しなかった』
リ:(!)で・・・でもそれじゃ―――
ミ:ただ・・・それでは「曖昧」だと、誰しもが思い始めた・・・が故に、「判断をする為の基準」を設けたのだ。
その一つとして、「天帝」を「秩序」「善」側の代表とし―――あ奴めの細胞を純粋培養させて「もう一人の彼」を創ったのだ。
リ:「もう一人の」・・・「あいつ」?!
でも・・・それより〜〜あのヤローを「秩序」「善」の代表―――って云うのも・・・
ミ:フ・・・まあそこは、敢えて口を差し挟まずにおこうか・・・
それよりも、「もう一人の彼」には、強制的に「ある役目」を負わせる事にしたのだ。
それが、『アビス』―――と云う、「混沌」「悪」を代表する組織の長となること・・・
そして「小僧」と、「宇宙の均衡」を取らせようとしたのだ。
リ:「宇宙の」・・・「均衡」―――
ミ:竪子―――汝に今一つ問う。
この世の総てが「善」なれば、この世はいかになるべきか。
リ:「この世の総てが善」・・・それはそれで結構な事なんじゃないのか?
ミ:なれば―――ここに一つ例を上げよう・・・
ここに一人の、非常にお腹を空かせた子供がいました・・・。
そこでその子は、道端にある「道祖神」に供物として置かれている「食べ物」に手を出し―――そして、空いていたお腹を充たしました・・・。
これは「善」であるのか「悪」であるのか。
リ:(・・・)別に―――仕方がない事なんじゃないのか?
いや、むしろ・・・その「食べ物」が腐ってやしないかどうかが問題だろ。
パ:(ほう―――・・・)
ヨ:(ふむ―――・・・)
ミ:(・・・)正解は―――「悪」だ。
リ:(・・・)えぇ〜っ?! なんで?どうして〜!
ミ:なにより―――その「食べ物」は、その子供の所有物ではない。
「道祖神」に捧げられる以前は、他人の所有物だからだ。
ゆえに・・・法に照らし合わせてみれば、お腹が空いていようがいまいが、その子供のした事とは「窃盗罪」になるのだ。
リ:そんな・・・いいじゃんかよう!
お腹が空いてんだろ? だったら、ほんの少し暗い目を瞑ったって―――・・・
ミ:よいか竪子―――その「少しくらい」と云う様な事は、「秩序」「善」側にはあってはならぬのだ。
その為の「法」であり、宇宙を治める「天帝」が、自らその「法」を歪める様であっては、今度からはその「歪んだ倫理」が「宇宙の基準」となる事を知るがよい。
なぜ・・・「会談」と云う仰々しいモノが、近く開かれようとしていたのか―――
その成り行きを、ミリティアから聞かされたリリアは、驚きの余りに言葉を失うしかありませんでした。
「些細な悪事でも赦される事ではない」―――
それはまさしく「善」であり「秩序」であり、喩え生きる為とは云え、罪を犯してはならないことでありました。
しかしリリアは―――修行の旅の途中でも、そうした光景に当たるのは、一度や二度ではありませんでした・・・
今にも息絶えようとしている者がいる―――時には自分の食料を分け与えてやったり、まさにミリティアの喩え話と同じ状況に遭遇しても、見て見ぬふりをして見逃してやったり・・・
ですが―――そんな事が本来ならば「悪」・・・「善ではない事」だと云う・・・
それでは、そんな事を看過させた自分も「そう」ではないのか・・・
そう問おうとした時―――
ミ:なればこそ・・・我らは考えた―――
もし、些細な罪で断罪を続けると云うのならば、この宇宙の発展は望めぬし、それどころか衰退―――いずれは滅んでしまうやもしれぬ・・・とな。
そこで―――我ら『賢下五人』は、相互の話し合いにより、ならば「もう一人の天帝」・・・云わば「悪側の中心人物」を創ったのだ。
こうして「善」「悪」の判断基準が設けられ、その時点から均衡を見定める役目として、「天帝の后」が設置されたのだ。
リ:な・・・なんか〜ここに来て、いよいよ重た過ぎる事になってるじゃんよ〜〜
ミ:なれども―――それも最初期での話し・・・
今の汝の様に、その役目が重責だと感じた「后」により、制度の改定が行われたのだ。
だが、その改定を行うに際し、非常に時間を要した・・・その時間は、こちらの感覚で「100期」―――
パ:「1期」は約1000年に値します。
ヨ:そして、その制度の改定に当たられた方が・・・その当時のお名前で―――女禍=ユピテール=アルダーナリシュヴァアラ様・・・
リ:(ぶっ!!)ジョ・・・ジョカリーヌさんが―――10万年も??!
はは・・・そりゃ、苦労をかけたなぁ〜〜
ミ:まあ・・・そのお陰もあってか、あの「じゃじゃ馬娘」も、自分がしなければならない事が判ってきたみたいでな。
どうだ、汝の様な竪子が、こんなにも似合いではない役目に就いた理由も、どことなく理解できただろう。
リ:(!)そうか・・・だからジョカリーヌさん、あの時―――・・・
この宇宙の真理とは、斯くも単純簡単そうに見えて、複雑奇怪・・・
それに、真に宇宙の真理そのものが「善」ばかりだとすれば、「不平等」が成立してくる事こそ「矛盾」であるとし、
そうした矛盾点に苦しむ弱き者の立場になって考えた先駆者がいました。
そのお陰もあり、そうした矛盾点に苦しむ弱者への救済策はなりましたが、そうした事を許容するに当たり、歪みが出来てしまったのも、また「真理」とも云えたのです。
そして、その「歪み」や「善悪の均衡」を監査する役目として、「天帝の后」を設けた・・・
それが、巡り巡って現在は自分―――・・・
それに聞けば、気の遠くなるような期間、リリアが「尊敬する人」にして「恩人」は、まさにその事の為に奔走をしていた・・・
あの時・・・なぜあの人が、あんなにも寂しそうな表情をし―――また同時に、更なる期待を寄せる表情を見せたのか・・・
今、ようやくになって判ってきた様な気がする・・・
あの人は―――知っていたんだ・・・役目によって、人は変われると云う事を・・・
けれど―――私は・・・あの人が寄せる期待に、応えられるまでになったのだろうか・・・
「尊敬する人」にして「恩人」である人物の偉業に、宛らにして感嘆するリリアがいたのでした。
=続く=