対極の立場に立つ或る二人の人物の、代理立ち会いの下、ある取り決め事―――「会談」が行われることが決定されたのですが、
その「会談」を行う際に、どうしてもやっておかなければならない事が、一つだけあったのです。
では、「どうしてもやっておかなければならない一つだけの事」・・・とは―――
パ:それより・・・この「会談」を成功させるに際し、そちら側の手にある『ツクモ』をお返し頂きましょう。
ヨ:(・・・)それは、非常に難しい条件ですな。
第一『ツクモ』は、元々は我々の・・・
パ:それは横紙破りも甚だしい―――
第一『ツクモ』は、我が主が見初めた「寄り添いし者」。
それを・・・半ば「花嫁泥棒」も同然で、あなた方の主が横取りしたのです。
リ:(・・・)中々、話しの筋が見えて来ないんだが?
ミ:まあ、そうであろうな。
ただ偏に云えるのは、今回の要員を起こしたのは「小僧」の方であり、また「小童」であるとも云えるのだ。
パ:(・・・)ミリティア様―――
ミ:そうであろうが―――あの「小童」めが、あたら「七人の魔女」に興味を示し、「過去」のメンバーを唆して、
全く別の意義を持つ組織を創らせ、宇宙を混沌へと導こうとしたのは事実であるし、
その動きを察した「小僧」は、自ら「小童」になり済まして、「小童」の配偶となるべき『ツクモ』に近付き、現在も行動を共にしておる・・・。
リ:ん〜〜まあ〜〜―――「小僧」だの「小童」だの、誰を示しているのか判って来たけど・・・
そもそも『ツクモ』って何なんだ?
ヨ:(・・・)『ツクモ』と云うのは―――どれだけ犯そうが、嬲ろうが、凌辱めようが、決して「穢れる事のない」・・・純粋無垢な肉体を持つ者の事です。
「あの「小童」も、元々は「純白」であった・・・なれど、「ある計画」により、何者にも染まらぬ「黒」に染め変えられてしまったのだ・・・。」
「それであるが故か、どんなに穢しても、穢しきれぬ存在に、興味を抱いたのやもしれぬかな・・・。」
ミリティアの言葉は、「ある人物」の事を示していたモノでしたが、次第にリリアが気になり始めた事とは、
ヨヴが、ここ数刻の間で厳しい表情になりつつあった事に・・・でした。
なぜ、彼が―――・・・?
当面のこの問題は、彼らの主―――「小僧」と「小童」の問題である・・・と云う事は、いくらリリアでも薄々は感付き始めていましたが、
なぜか・・・そう、なぜか―――バクストンが『ツクモ』の話題を切り出してきた時から、どこか焦燥の色が濃くなってきたモノと感じ始めたのです。
ならば・・・この一連の会話で、重要な「キー・パーソン」とも云える、『ツクモ』なる存在とは・・・?
すると―――・・・
ミ:とは云え・・・このまま議論ばかり続けていても、始まらぬモノは始まらぬ―――
それで・・・その「娘」は、今はどこにいる?
ヨ:(・・・)『斗』の内に、匿われております―――
「闇」側の代理、バクストンからの請求を、妥当なモノだと捉え―――
その為にミリティアは、必要な「ある手段」を講じてきました。
そして―――恐らくは・・・その所動作は、例の『ツクモ』なる存在を、この場へと呼び寄せるモノだと云う事は判りました・・・
それと云うのも、開いていた両の眼を閉じ―――た瞬間、「少女」の額が横に割れ・・・その割れた場所には、ある驚くべきモノが・・・
それはまさしく―――
リ:(!!)「第三の眼」・・・それじゃ―――やっぱりあんたは・・・
紛れもない「第三の眼」・・・そう、リリアが初見で見間違った様に、ミリティアには、リリアがこれまでに築きあげてきた絆の環の内に、
同じような特徴を持つ人物がいる事を知っていました。
それが「ミリヤ=アゲット=ロックフェラー」・・・
やはりミリティアは、リリア自身もよく知る「ミリヤ」と、何らかの因果関係があるのでは―――と、思えてならなくなってきたのです。
ですが、「その能力」は、明らかに違っていました。
ミ:(・・・)『來』―――!
リ:(・・・)
(・・・!)
(!!!)あ・・・あんたは―――!?
「念動力」による、遠隔からの物体移動・・・
それは、そのものの意思によるモノとは全く関係なく―――云わば半強制的に、術者自身が希望する場所へと転移させる事が出来る「御業」・・・
しかし・・・そう―――その「御業」が及ぼす範囲は、フランソワの「それ」とは比較になりませんでした。
いえ・・・「比べる」―――そのこと自体が余りに失礼であるかのようにも思われた・・・
それほどまでに、桁外れの能力―――と、云えたのですが、
リリアが驚かずにいられなかったのは、ミリティアの能力・・・なのではなく、むしろ―――その能力によって、半強制的に転移させられてきた『ツクモ』の正体にあったのです。
それと云うのも、この『ツクモ』なる存在とは―――・・・実は、リリア自身もよく知っており、また交流もしていた「あの人物」・・・
マ:あっ??! ここは・・・一体??
リ:マリア・・・? マリアじゃないか!
でも、なんで・・・ (!)―――と、云う事は・・・
どうして自分が、一瞬の内に見知らぬ場所に飛ばされてきたのか・・・マリアには判ろうはずはありませんでした。
それよりも、強力な「御業」によって呼び寄せられた、自分と同じ「キー・パーソン」、『ツクモ』の意外な正体が、
「ディーヴァ」でも随一の戦闘力を誇る『ドゥルガー』・・・マリア=ルヴィ=モルガンであった事に、リリアは驚かずにはいられなかったのです。
しかし、これが現実・・・
それよりも彼らは、この場所に「天帝の后」と『ツクモ』を一緒にさせて、何をさせようとしているのでしょうか・・・
しかし―――それは紛れもなく・・・
第二百五十五話;「けじめ」の着け方
ミ:さて―――始めて貰おうか・・・
リ:はい? 「始める」・・・って、何を―――?
ミ:汝も感じているのだろう・・・竪子よ。
「勝負」―――だよ。
まず「会談」を始めるに際し、『代理戦』を・・・云わば「寄り添いし者」同士で、その優劣を付けるのだ。
マ:(!)なるほど・・・それで、私の相手が―――リリア、あなたなのね・・・
ミ:ほう・・・そちらのお嬢さんは、理解できたようだ。
それで? 汝はどうするのだ―――竪子・・・
リ:(〜・・・)やってやろうじゃないか―――
それに、あんたとは一度、「けじめ」を着けなくちゃならない―――と、思ってたんだ。
私もさ・・・ずっと「借り」をつくったまんまじゃ、寝覚めが悪くていけねぇや―――
両者の合意により、この『代理戦』は成立しました。
それにしても・・・まさかこの期に及んで、直接対決―――までには至らなかったものの、
実力の差と云うモノを感じさせられた事のあるマリアが・・・自分の「相手」になろうとは―――
それも、この宇宙の運命すら左右しかねない『代理戦』で―――とは・・・
その事だけでもリリアの内に気負うモノがあったのですが、実を云うとマリアには、以前に少々の「借り」があったのを、この時に思い出していたのでした。
そう・・・彼女達が初めて会った時―――
その、戦闘技術の高さと云うモノを、まざまざと見せつけられた時―――
まだまだ自分は、「強い」とは云い切る事は出来なかった―――
その事を、知らしめてくれただけでも、リリアはマリアに感謝する処があったのです。
「私が・・・目指すモノは、まだ遙か遠くにある―――・・・」
「そこに近付く為には、最低でもこいつを越えなければ―――!」
そして―――両者は闘争の火花を散らし・・・
リ:でやあぁっ―――!
マ:はあぁっ―――!
やはり―――迅さに措いては、マリアの方に分があったモノと見え、
ですが・・・リリアも、初対面の頃とは、明らかに違っていた事があったのです。
そう、それが―――・・・
リ:(いっ・・・ちちち―――やっぱ迅さでは、マリアには勝てんなぁ〜〜・・・)
(今の一発貰っちまったけど、これから・・・)
(!!)マリア―――? あんた、その腕・・・
マ:(・・・く―――これが、『无楯』なる業―――・・・)
フ・フ・・・一気に決着を―――と、思っていたけど、その程度しかダメージを負わせられなかったとは・・・
それに、あなたのそのダメージ、私の拳によるモノじゃないわ・・・
そのマリアの言葉は、マリアの拳を、リリアが所有する戦闘技能で受け切ったがため、その反発作用によって後方に飛ばされ・・・
その場にあった岩などの障害物に激突してしまった事によるもの・・・である事を示していました。
そう・・・『无楯』―――技能保持者の、身の安全を完全に保証する「万能の楯」・・・
しかし、その完全さゆえに、その『楯』毎リリアを貫こうとしたものの―――逆にマリアの腕が傷付いてしまったのです。
それに・・・マリアは早期決着を―――それであるが故に、フル・パワーで挑んでいた事もあり、
利き腕は無理にでも動かす事が出来ないまでに、無惨にも破損してしまったのです。
けれど・・・その様を見てしまったリリアは―――・・・
リ:ああっ・・・マリア! そんな・・・っ―――わ、私の『无楯』が、あんたの腕を・・・
マ:らしくないわね・・・リリア!
今はあなたの相手である・・・「敵」である私に、そんな情けをかける余裕があると云うの?!
それこそ、「闘争者」にとっては最大の屈辱であり、侮辱よ!
私の腕が、無様に砕け散ったのは・・・あなたのその戦闘技能―――『无楯』が有用に働いたから・・・
そして、あなたの戦闘技能を、甘くみた私の不覚!!
それに・・・まだ決着はついていないわ―――・・・
「万能の楯」に刃向った報い・・・自分の意思の儘にならず、だらりと下がったマリアの左腕が、そのことを如実に物語っていました・・・。
しかし―――あたら顔見知りでもある人物の、身体の一部を使用不能させてしまった事により、
リリアの、本来の「良さ」と云うモノが、裏目に出てしまうのでした。
そのことは、つまり―――・・・
マ:リリア・・・覚悟―――!!
リ:(く・・・っ)くうぅっ〜―――!
「仲間意識が芽生えた時点で、この人物は「仲間」には牙を剥かない」
而してその事は、窮地に陥った「仲間」には優しく手を差し伸べ・・・そしてまた、こうして―――何かしらの理由により、対立をしてしまった時には・・・
マ:(・・・)なぜ―――なぜ・・・?
「なぜ」・・・マリアには、どうしてリリアが「そう」しないのか―――理解に苦しみました。
そのことは、かつて・・・同じくの仲間同士でありながら、何の躊躇いもなく『カーリー』のメイベルを傷付けた事があったから―――なのですが・・・
だからこそ、一層―――マリアには、リリアが『无楯』を出さなくなった理由が判らなかった・・・
マ:なぜ・・・なぜ、どうして・・・
『无楯』を出して私の攻撃を防がないの? リリア―――!
リ:どうして・・・って、そりゃ・・・見ちまったもんな。
私の『无楯』によって、使いモンにならなくなった、あんたの腕―――・・・
マ:(!!)でも―――・・・
リ:あんたからの攻撃―――全部『无楯』で防いじまってもいいけど、そしてらあんたはどうなる?
それに、ここには・・・あんたが好きな、クラウドマンだっているんだぜ―――
マ:(?!)クラウドマン・・・? どうしてあなたが―――・・・
ヨ:―――・・・
リリアからの告白と―――自分が、本当に想いを寄せる人物が、この場にいる事を知った途端、マリアの闘気は極端に減退してしまいました。
「痛い・・・傷付いたこの左腕が―――ではなく、顔見知りを打ったこの右拳や、両脚・・・そしてこの私のココロが・・・」
「見ないで・・・見ないで・・・こんな私を見ないで―――私が本当に想いを寄せる人よ・・・」
あれだけ優位に戦闘を進めていたのに・・・も、拘わらず―――
云わばメンタル的な面でダメージを負ってしまったマリアは、両膝を着き・・・自由な右腕を地に着けて、自分に戦闘意欲が失くなってしまった事を示しました。
そして―――それによって・・・
ミ:ふむ・・・見た処、「勝負あり」と云った処であるかな。
リ:え?
(・・・)こんなん―――勝負なんて呼べるかよ・・・
ミ:だが、「勝」「負」の区別は着けるべき―――
リ:そんなんいらねえよ!!
私達にこんな真似をさせて・・・あんた等は充分に、その欲求は満たされたんだろうさ!!
ミ:黙れ竪子―――
未だ、世の理の半分に満たぬことさえも知らぬ未熟者が・・・
リ:う・・・っ―――・・・
くうぅ〜っ・・・
ミ:(・・・)フン―――まあよい・・・。
ではバクストン、至急「会談」場所に、「小童」を呼び出せ。
そして―――ここに居る者全員で、「新たなる契約」を見届けるのだ。
『代理戦』の決着―――しかし「勝者」は、明らかにダメージを負っているリリアであり、
第一こんな決着のつけ方や対決自体そのものが、リリアの望む処のモノではなかったのは、云うまでもなかった事なのです。
その事に強く反発するリリアに対し、ミリティアからは厳し過ぎる言葉に態度が・・・
その事によって少し怖気づいてしまうリリアなのでしたが、次にミリティアから発せられた言葉とは・・・
いよいよ以て、「ダンテ」と「ザッハーク」の二者による、『会談』―――・・・
それこそが、「新たなる宇宙の契約」となるのです。
=続く=