『代理戦』の決着は、ここに着きました・・・が―――どうしても納得できない部分があるモノと見え、

自分が負わせてしまった重傷を慰撫(い ぶ)するため、対戦相手に近寄ったのです。

 

 

 

リ:悪い事を・・・しちまったな、マリア。

 

マ:ううん―――いいのよ・・・。

  それより私、メイベルに申し訳のない事をしちゃって・・・どう云う顔をして会っていいか判らないわ。

 

リ:あいつだって―――きっと判ってくれるはずさ・・・。

  それでも万が一の時には、この私に云いな。

  何とか説得して見せるから。

 

ミ:その様な根拠なき自信・・・一体どこからくるものやら―――不安だな。

 

リ:ははは、判っちゃいるさ・・・自分自身の事だものな。

  それより・・・マリアのこの腕―――・・・

 

 

 

マリアの利き腕を、見事に使いモノにならなくさせてしまった事を詫びたリリアでしたが、

マリアも、以前自分がしてしまったことへの罪悪感があるからか、今回自分の身に起こった事は、そのことへの「償い」なのだと思っていました。

 

それに・・・このこと自体、全くの赤の他人が見た場合、とても不思議にして奇妙な光景に映っていたのです。

 

なぜならば、「相反する存在」・・・先程までは、火花を散らすまでに激闘を演じていたと云うのに、

総てか終わった時、そこには「怨恨」は存在していなかったのですから・・・

その逆に、互いの健闘を讃え合い、相手の負傷を気遣う―――やもすれば、両者は劇的なまでの「和解」をしていたのです。

 

 

それはともかく・・・当面は、負傷をしているマリアの左腕を、なんとかする為に思案に暮れていたリリアでしたが・・・

やはり自分如きではどうする事も出来ず、つい―――思わずもミリティアの方に目配せをしてしまい・・・

 

 

 

ミ:我の方を見て、なにをせよ―――と?

  己の実力不足の所為で、どうする事も出来ぬから、すぐに他人を当てにしようなどと・・・

  それが、(なれ)の竪子たる由縁(ゆ え ん)だと云う事が、判らぬか・・・

 

マ:(あ゛〜・・・)ねぇ、ちょっと・・・あの、ミリヤ様によく似てらしてる、あの方・・・って―――

リ:はは・・・いや、なあ〜〜この私よりか口悪ぃの・・・。

  もうこれまでに、何度心をポキポキ折られた事か・・・トホホ〜〜

 

マ:なるほど・・・同情するわ〜〜

  あの方の事を知らない私でも、傍から聞いてて「キツイ」と思うもの・・・

 

 

 

目と目を合わせたタイミングが悪かったのか―――そうした意味合いに取られてしまい、またしても挫けそうになるリリア・・・

するとマリアも、どことなくミリティアの事が気にはなっていたようで、

自分達「ディーヴァ」のメンバーの一人に、よく似た風貌に風合いを醸す一人の少女に、やり込められているリリアを慰めた処・・・

 

 

 

ミ:聞こえているぞ――― この「淫売(ビ ッ チ)」が・・・

 

マ:(い゛・・・)え゛え゛〜〜っ?! わ―――私の事を、「淫売(ビ ッ チ)」ぃ?!

  そ・・・そんなあ〜〜・・・

 

ミ:そうであろうが―――どこの馬の骨とも知れぬ男の後について行き、

  挙句には、仲間を裏切った(なれ)には、似合いの言葉であろうが。

 

 

 

自分でも自覚をしていた処はありましたが、その事を、殊更口の悪い人物から云われ、哀れマリアも、リリアと同じく心の根元をポッキリと折られてしまったのです。

(この後―――マリアが好意を寄せるクラウドマン(ヨヴ)から慰めの言葉を貰い、どうにか立ち直る事が出来たようです。)

 

それはそうと、今回の本題には未だ一寸も触れられてきていないわけであり―――・・・

そこで―――・・・

 

 

 

ミ:それはそうとバクストン、あの「小童(クソガキ)」はどうしたのだ。

パ:まもなく、到着を致します・・・。

 

マ:え〜と・・・あの〜―――状況の説明、して貰えないわけ?

リ:してやりたい〜〜のは、やまやまなんだけどもな・・・

  実は私の方でも、あんまし理解できていないんさ。

  だけど、大まかな事なら判ってるぜ、なんだかは判んないんだけどさ―――これから重要な事が行われるんだとさ。

 

 

 

何が行われるかは判らない―――けれど、とにかく「重要」なこと・・・

その事が行われようとしている事を、リリアは(ひし)と感じていました。

 

それこそが『会談』・・・宇宙(せ か い)の両極にある人物二人が、直接会って話し合う事象―――

 

その当事者の一人である「小童(クソガキ)」―――ザッハークの到着を催促する言葉が、ミリティアよりあったのでしたが・・・

その人物より先に、こちらの人物が―――・・・

 

 

 

ダ:やあ、少々遅れてしまったかな?

 

ミ:(・・・)この我を待たせおるとは、また良いご身分になられたモノだ―――なあ? 「小僧」・・・

 

ダ:あっははは―――敵わないなぁ〜君には。

 

マ:(!!?)あ・・・あなた様―――は??

 

 

 

一体いつからそこにいたのか・・・いや、その言葉通り、今到着したばかり・・・とも思われたのでしたが、

この場に現れていたのは、この『会談』の当事者の一人―――「天帝・ダンテ」なのでした。

 

そしてそこで、ダンテとミリティアが、程度のコミュニケーションを交わした処で、マリアからは驚きの声が・・・

それと同時に、これまで謎だった、もう一人の当事者・・・「ザッハーク」なる者の風貌も判明してきたのです。

 

それはなぜかと云うと―――

 

 

 

マ:ザッハーク様・・・?? いえ―――でもなんだか違う・・・

  あの方は、少し影があって・・・あなたみたいには明るく振る舞われなかったわ・・・

 

ダ:やあ―――マリア、驚いたようだね。

  けど、ここ最近ずっと君と一緒に行動をしていたのは、このボク・・・だったんだけどね。

 

 

 

初対面の筈のマリアとダンテ―――でしたが、なぜかマリアはダンテの事を知っていた・・・

と云うより、自分を隷従下した「ザッハーク」なる人物と、見間違ってしまっていたのです。

 

それにダンテからも衝撃の事実が―――・・・

それが、この度マリアを(そそのか)し、「ディーヴァ」から一時離反するように進め、またマリアを一時的に自分の庇護下に置いていたことを告白したのです。

 

その事に、ショックを隠しきれないマリアでしたが・・・

 

そうしている間に、「もう一人の当事者」が到着したモノと見え・・・

 

 

 

ザ:―――・・・

 

ミ:(・・・)相も変わらず暗いな。

  まあよい、ではそろそろ始めるとするか・・・。

 

 

確かにその存在は、「正反対」―――・・・

「寡黙」で「静寂」で、そうかと思えば「熱烈」で「煽情的」な『彼』・・・

それが、「天帝」と双極を為す「アビス」の長―――ザッハーク=アビィス=カリギュラ・・・

そして、両者が対峙したこの時こそが、この先の・・・「未来」の、宇宙の新たなる契約が結ばれる歴史的瞬間でもあったのです。

 

 

第二百五十六話;『会談』

 

 

しかし・・・その実情は―――と、云うと・・・

 

 

 

ダ:やあ、お久しぶり・・・元気そうで何よりだよ。

ザ:―――・・・

 

ダ:相変わらず・・・だね。

  でも、それが君らしい―――お喋りで社交的なボクなんかより、孤独を愛し寡黙を好む・・・

  それがボクに隠された、「もう一人のボク」とも云うべき、君―――「ザッハーク」なんだからね。

 

 

 

そう・・・元々、「ダンテ」と「ザッハーク」とは、「同じ存在」でした。

 

ただ、判断基準が固定されていては、窮屈この上ない事である事が理論的に証明され、

ならば「もう一つ」の判断基準を設ける為、二つに分けられた存在・・・それが「ザッハーク」なのでした。

(但し、「天帝」の細胞を用いて純粋培養された時には、「純白」にして「潔癖」であったがため、「穢し役」と云う、汚れ役を担ったのがジィルガだったのである。

ところが、その手続きの最中にイレギュラーが生じてしまい、なぜかザッハークはレイアの下へ・・・それ以後の展開はご存知の通り)

 

 

しかし、折角の『会談』も、一方通行のまま・・・

いくらダンテが呼びかけようとも、ザッハークからは返事の一つもなかったのです。

 

ですが、それはそれで、100億年の彼方から繰り返されてきたこと・・・

別に珍しい事でもなく、「当たり前」と云えば、当たり前の事なのですが・・・

一般的な常識に照らし合わせると、そんな事は「非常識」に映ってしまうワケであり―――

だからなのか・・・

 

 

 

リ:おい! くぅおら!!

  あんな奴でもお前に話しかけてるんだから、シカトはないだろうがよ!!

 

マ:(!)ちょっ―――リリア?! この人になんて事をするのよ!!

 

リ:はあ〜? マリア・・・あんた、まだそんな奴の肩を持つってのか?

 

マ:そうじゃなくて―――・・・

  この人は、ほんのちょっとだけ、コミュニケーションの取り方が下手なのよ。

  だから、不器用な(かたち)でしか表現できないの。

 

 

 

無反応なザッハークに、いきなり背後から・・・しかもかなり強めに殴りつけるリリア―――

すると当然の如く、自分が受けたこの不当な仕打ちに対し、挙動が不審になるザッハーク・・・

 

するとそこへ、この人物に隷従されていたからこそ判っていたマリアが、すかさずザッハークの事を庇い出したのです。

 

そのことで、マリアへの呪縛は解き放たれたのでは・・・と思っていたリリアが、この時点でマリアがザッハークの事を庇うと云うのは、

本当は呪縛は解き放たれていなかったのでは・・・と、疑い出したのです。

 

ですが・・・隷従していたからこそ判っていた事実―――

普段のザッハークは、物静かにして無反応・無関心・・・けれど突破的に、人格の奥底に隠されていた残忍性、獰猛性が顔を覗かせる事が、時偶(ときたま)にあった・・・

だからこそ、ザッハークの取り扱い・・・と、云うべきか、対応と云うモノが、リリアよりマリアの方が一日の長があった・・・と、云えたのです。

 

ところが・・・リリアに殴られた―――と、云う事からなのか、それまで閉ざされていたモノが、解放されてきたものと見え・・・

 

 

 

ザ:いたい・・・ではないか―――

 

リ:はああ〜? やっと声出したかと思ったら、それかよ!!

  つ・・・たく、なんか無性に腹が立ってきたから、も一発()っとくかあ?!

 

ミ:止めよ―――その辺にしておけ・・・

  それより、やるべき事は判っていような。

 

ダ:そうだね。

  それじゃ・・・さっさと終わらせるとしようか。

ザ:で・・・あるか―――

 

ダ:では・・・

  『(いにしえ)の契約に基づき、我ら両者の合意の下、新たなる契約を求め・・・また結ばん』

ザ:『(すなわ)ち、我らが再び出会いし時まで、世の均衡を保つべし』

  ・・・で、あるか―――

 

 

 

ダンテとザッハークが、差向かう様にして向き合い、一言二言、言葉を交わし合いました。

 

そして「それだけ」―――・・・

 

一見して、『会談』とは、何か大仰な事でも催すのではないか―――とした、リリアの予想は全く当てが外れ、

また、こうしてここに、「新たなる宇宙の秩序」と云うべきモノが、始動し始めたのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと