ミ:(・・・)どうしても―――行かれるのですね・・・。

ジ:うん・・・こればかりはね、仕方がないんだ・・・。

 

ミ:(・・・)また―――いつものように・・・

ジ:今回は・・・それはできないんだ。

  それにね、今回の事は、「姉さん達からの・・・」だったら、どうにか喰い下がっていられたんだけど―――

  だけど・・・今回ばかりは違う、或る人との、ちょっとした約束なんでね・・・後の事は、宜しく頼んだよ。

 

 

 

ある特定の部屋の(なか)での二人の会話は、「別離(わ か)れ」を意味していました。

 

それも、永年愛着のある場所から、離れると云う・・・

 

それでも、「今まで」は、どうにか理屈をつけて、自分のわがままを通していたモノでしたが―――

「今回ばかり」は、そう云うわけにはいかない・・・

 

それと云うのも、「フロンティア理事」の一人であるジョカリーヌに辞令を発したのは、

ジョカリーヌの二人の姉、ガラティアとジィルガよりも、上の立場の存在からだったのですから。

 

つまり、これまで通りの、自分のわがままは通せない・・・

 

しかも、自分達よりも上の立場の存在との、「ある約束」もある・・・

 

それに、「ジョカリーヌだけ」という「前例」を、「フロンティア」で創ってはならない―――・・・

そう思ったからこそ、喩え盟友からの強い要望を受けても、ジョカリーヌは転任の話しを受理したのです。

 

 

第二百五十八話;転任

 

 

それに、こうした「転任」の話しは、これが最初と云うワケではなく、実はガラティアからもジィルガからも、

「一度は地球を離れ、どこか別の宙域へ赴いてはどうか」―――と、云われてはいたのです。

 

しかし、ジョカリーヌは―――この「地球」と云う惑星に辿り着いた時から・・・

この惑星の、虜になってしまった・・・

 

「愛着」―――と、云う表現では(なま)(ぬる)い・・・むしろ「溺愛」とでも云うべきだろうか・・・

 

それにジョカリーヌは、この惑星と運命を(とも)にしたい―――とさえ、二人の姉に漏らしていた事がありました。

 

しかし「それは出来ない相談だ」・・・と、二人の姉から、口を揃えて云われた事があったそうですが・・・

それと云うのも、「圧倒的な経験不足」が、その要因だったようです。

 

だからこそ―――僅かな・・・短い期間で良いから、別の宙域を担当して、経験を得てくればいい・・・と、ガラティアは諭すのですが、

依然としてジョカリーヌは、頑なに態度を崩さず、「現在はこの惑星の推移を見守らなければならない」と主張し、それが現在まで続いていたのです。

 

そんな事態を、余りよろしくない傾向だと思ったからなのか―――・・・

それとも、進行しつつある「ある事態」の事を考慮してなのか―――・・・

 

(いず)れにしても、自分達が所属する「フロンティア」の、「絶対責任者」とでも云うべき存在から・・・

『貴下を、第1231宙域の監督官に任ず』

 

この書面を見た時・・・と云うより、この辞令がどこから来たのか―――と云う、「宛先」を目にした時・・・

ジョカリーヌも、「ついに(きた)るべき時が来てしまった」―――そう思う様になったのです。

 

 

しかし、判らないことと云えば、ジョカリーヌほどの人物が、(いず)れはこう云った主旨の書面が来る事は、判っていたのだろうに・・・

けれども、その事も裏を返してみれば、余程にこの地球から離れたくはなかった・・・

それにまた、二人の姉も―――可愛い妹が、そう思っている事など百も承知で、これから背負わなければならない重荷がある事を知っていたから・・・

だから、敢えて強い口調には出来なかった―――ならなかったのです。

 

けれども、それももう「終わり」―――・・・

 

こうした辞令を発した存在に、「フロンティア」に所属する者は逆らえなかった・・・

なぜならば、その存在こそが、「フロンティア」の「代表」でもあったのだから・・・

 

 

そして、このお話しでの冒頭のやり取りは、そうした決意をし、後事を盟友であるミトラに託した時のモノだったのです。

 

 

それからしばらくして、地球は「停滞」をしていました。

 

後事を託されたミトラであっても、やはり自分の器量(う つ わ)では、背負うモノが違い過ぎる―――そう思ったからなのか・・・

そうであったとしても、地球側から一方的な「交流の遮断」・・・唯一の窓口であった「月の裏側」も一時閉鎖し、

「外」からも・・・また「内」からも、流出・流入が出来ない様にしてしまったのです。

 

しかし、そう―――・・・地球には、「閉鎖」される以前にも、非常に多くの宇宙人が来訪していたわけであり、

そうした者達の不平や不満は、紛糾しないわけではありませんでした。

 

斯く云う、こちらの人物のクレームたるや凄まじいモノがあり、こうなった原因を追及する為、

現在、代理となっている総統・ミトラを問い詰めていたのです。

 

 

 

ミリ:全く・・・どうしてこう云う事になったのか、判り易く説明して頂けないものかしら―――

ミト:(・・・)あなた様の、云いたい事は非常によく判ります―――

  ですが、この事は私の盟友との固い約束ですので・・・

 

ミリ:(・・・)先程からそればかり―――

  全く・・・「官僚」と云う連中は、自分の都合が悪くなると、途端に口を濁すだけ―――それはどこも変わらないものね。

ミト:正直・・・耳が痛い限りです。

  しかし、これだけは判って頂きたい・・・ミリヤ=アゲット=ロックフェラー様。

  この惑星の未来を託されたのは、この私・・・ではなく、別の人物―――

  ですが、その人物が、この地球上のどこにもいないので、「宙外の交流」・・・などと云う重要な判断も、一時的に凍結せざるを得なかったのです。

 

ミリ:―――・・・。

メ:あの・・・ミリヤ様?

 

ミリ:本当に・・・全く・・・煩わしいったらないわね。

  それで? その「大人物様」は、今どこにいらっしゃると云うの。

 

ミト:誠に申し訳ありませんが・・・その様な重要な事は、私如きまでには知らされていないのです。

  それに・・・私の盟友であるジョカリーヌもそうなのですが・・・ジルの方に問い合わせてみても―――「宇宙一の重要機密だから・・・」とだけ・・・

 

ミリ:それだけで十分だわ―――

  はぁ・・・なによ、本当に「大人物様」じゃない・・・

メ:(??)あの・・・私には、全く判りかねるのですが・・・

 

 

 

すると、ミリヤの口から、思いもよらぬ「存在の正体」が明かされたのでした。

 

そして、その存在の概要も知らされ、思わずも固唾を呑んでしまうミトラとメイベル・・・

それにミリヤも、不承不承ながら、「ならばご到着まで待つしかない―――」と、したのです。

 

 

それはそうと―――・・・ガルヴァディア大陸の、ある地域に・・・

 

 

 

リ:ぃよっ―――と・・・どうやら着いたようだな。

  悪ぃな、送って貰っちまって。

 

M:礼は、良い―――それよりも、先を急ぐぞ。

(今回のお話しでは、「ミリヤ」「ミリティア」と、重複するのが二文字以上なので、以降「ミリヤ」と「ミリティア」が同じお話しに存在するときには、「ミリティア」を「M」と表記いたします。)

 

 

 

宇宙艦を使用するでもなく―――ある特定の場所から、時空因果律を変動させての「移動」・・・

それも、自己の意思によってそうさせた存在―――ミリティア=ミスティ=ミザントロープ・・・と、

この度、ようやく「天帝の后」としての役目を終わらせてもらい、これから悠々自適の生活が送れるモノ・・・と、そう思いこんでいる―――リリア=デイジィ=オデッセイア・・・

 

リリアにしてみれば、折角の帰郷の情も束の間―――しかしながらミリティアには、これからしなければならない事がある為か、

足早にある場所へ―――リリアを伴って「瞬間移動」をしたのです。

 

しかも、その場所とは―――・・・

 

 

 

ミト:―――うん?!

メ:(この感じ・・・)何か来ます―――!

ミリ:(・・・)騒がないで―――どうやら「待ち人」のようだわ・・・

 

ミト:なんと? では―――・・・

 

 

リ:ぃよっ―――と・・・

  お〜い、戻ったぜ・・・って―――なんだか随分とサービスが良いなぁ。

 

ミト:(!)リリア?!

メ:リリア・・・さん?!

 

リ:おいっす〜♪w

  てか、珍しい事もあるもんだなw ミリヤさんにメイベル・・・それにあとミトラさんも私を出迎えてくれるなんてな。w

 

 

 

シャクラディア城・大皇執務室・・・しかもその場所は、先程よりある議論が交わされていたのです。

 

そして、奇しくもこの現場に現れたのは・・・ある意味では、ミトラとミリヤが待ち受けていた存在―――

ですが・・・その存在と一緒についてきた存在に・・・

 

 

 

ミリ:(・・・)それより―――こちらの方はどなた・・・?

ミト:(!!)そんっ・・・な―――?!

メ:ミリヤ様に・・・そっくり―――??

 

M:ふむ・・・なるほどな。

  (なれ)が我の事を見紛(み ま ご)うのも、無理はなかった・・・と、云うべき処の様だな。

  それより、あの「じゃじゃ馬娘」は何処(い ず こ)に。

 

リ:あっ―――ははは・・・まあ〜まあ〜まあ〜〜皆して云いたい事はよく判るけど、ちょいとこっちの事情もあるんでな。

 

ミリ:待ちなさい―――それでは、私の質問への返答にはなっていないわ。

  こちらの・・・私の真似をしているのは、どなた―――と、訊いているの。

 

リ:あああ〜〜っ・・・ちょ・・・ちょっと〜―――あのさぁ・・・

 

M:云われずとも、我の方から消えて差し上げる。

  なれど・・・今しばらく―――ここで待たせて貰う事にしよう・・・。

 

 

 

ミリヤの面影を宿す「もう一人のミリヤ」・・・

仕草も雰囲気も似通っていたので、思わずもミリヤ本人からは厳しいまでの言葉が・・・

しかし―――その、「もう一人のミリヤ」は、まるで云われ慣れているかのように・・・(あたか)も、春風が頬を撫ぜるかのように聞き流し、

本来の目的であろうと思われる、「じゃじゃ馬娘」に会う為、その存在を待つ事にしたのです。

 

 

それに・・・次第にミトラの思考も、正常を取り戻しつつありました。

 

「そう云えば・・・現在地球は、一時的な交流の凍結をしているはず―――なのに・・・」

「なのに・・・なぜ、この二人はここへと―――いや、地球に現れていると云うのだ?」

「現在の・・・それまでの地球の「そうした窓口」は、「月の裏側」にある宇宙港、ただ一つだけだと云うのに・・・」

「それを介さず―――どうして今、ここにいられると云うのだ??」

 

彼女達は知らない・・・また、知る由もない―――・・・

「本来の目的」の為に、自らの存在を隠し続けた者の事など・・・

そして今―――明かされる・・・その人物の「本来の目的」を・・・

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと