まるで、自分に当てつけるかのように、同じ容姿・・・同じ雰囲気を醸す存在に、ミリヤの胸中にはただならぬ感情が去来していました。
そのことに、ついミリヤも語彙を荒げてしまうのですが、その存在は、当のミリヤよりも冷やかなる態度、対応にて、
その存在自身本来の目的の為に、その場に留まったのです。
それにしても、ミリヤも「所詮人の子」・・・と、そう思い、安心するのですが―――・・・
ミリ:全く・・・お気楽ね、この子は―――
メ:は・・・はい?
ミリ:私は、先程から『月詠』を展開してる―――にも拘らず、この者の思考は全くと云っていいほど詠めないのよ。
それも、以前「クラリス」と云う、宇宙会議議長や、「サヤ」と云う・・・恐らくはヴァンパイアの様に、この私の『月詠』に対抗して、そうしているわけではないの・・・。
云うなれば「完全なブロック」―――この者も、私と同程度の思念波を出し、相殺させているみたいなのよ。
メ:(!!)そ―――そんな・・・そんなことが?!!
メイベルは、依然として信じる事ができませんでした。
自分の主と同程度の思念波を出せる存在が、この世にいるモノなのか・・・
しかしその事は、実はメイベル自身が証明していたようなモノでした。
それと云うのも、メイベルが、ミリヤの事を・・・「所詮人の子」―――と、思っていたのを、ミリヤの『月詠』によって詠まれていたのに対し、
ミリヤは未だに、ミリティア某の思考を詠めずにいたのだから・・・
そこでミリヤは―――もしかするとこの人物が、自分の能力の事を予め知り、その為の防護策を取っているのでは・・・と云うのが、
先程のミリヤの科白に裏打ちされていたのです。
閑話休題―――・・・
依然として不明なのは、この・・・ミリティア某の「本来の目的」・・・
この人物は、一体なんの目的の為に、リリアを伴い、この地球へと来ているのでしょうか・・・
それは―――・・・
リ:なあ―――なあ―――それよりジョカリーヌさんはどこへ行ってんだ??
久しぶりに戻ってんだからさぁ〜顔くらい見せてくれたって、いいもんじゃんか―――なあ?
ミト:我が盟友は・・・既に旅立たれた・・・。
後事を―――この地球の未来を、お前に託して・・・な。
「そこでこの人物は、きっと・・・「え〜〜なんだよそれ・・・面倒臭っ!」―――と、云うに違いない・・・」
ミトラは、随分も前からリリアの人となりと云うモノを知っていました。
優れた能力がありながらも、「その性格」故に、雑多な手続きを回避―――逃避してきた事を・・・。
勿体のない・・・真面目に取り組みさえすれば、自分の盟友にも負けず劣らじの成果を出すのだろうに・・・
それにまた―――今回も、同じ事を云って自分達を落胆させ、自分の盟友の行為を無碍にしてしまうに違いない・・・
・・・と、そう思っていたら―――
リ:あ゛〜〜そか・・・やっぱそう云う事になってくるんだろうなぁ〜〜―――
面倒臭っ・・・じゃなくて―――判ったよ、判りました。
ジョカリーヌさんにそう見込まれてんだ、断るわけにゃいかんだろ・・・。
ミト:(!?)お前・・・??
リ:ん? どうしたぁ〜? 鳩がブッパされた時の様な面してぇ〜w 面白いぞwww
ミト:(・・・)いや―――それよりも・・・今お前が云った事、判っているのか?!
メ:そうですよ! 喩え辺境とは云え・・・一つの惑星を任せられると云う事は―――
しかもあなたは、政治を統る―――と云う事が、嫌いではなかったのですか??
「そうだ・・・その通りだ―――」
「私達の目の前にいるこの人物こそは、政治を統る事を面倒臭がり、長年、逃避行動を繰り返してきたではないか・・・」
だからその場で、「了承した」との言葉を聴き、少なくともここしばらくのリリアの行動を知らないでいる者達は、不思議がったモノなのでした。
しかしそんな・・・呆気にとられているミトラ達を見て、この人物は・・・
M:ふむ・・・中々に趣き反応をするモノだな、汝らは・・・。
だが、そうだな・・・今にして思えば、なぜ「彼女達」が、このような竪子を殊の外高く評価するのか―――知れてきた気がしたわ。
メ:「彼女達」・・・? 誰の事なのです?
ミト:恐らくは・・・我が盟友とその姉妹のことではないか。
ミリ:(それにしても「竪子」だなんて・・・)あなた―――・・・
M:無駄口はそれまでにして貰おう。
我の「待ち人」が来たようなのでな。
ジョカリーヌ達三姉妹がリリアに対して高い評価をしていた―――その事はミトラも直感で判ったようなのでしたが、
実はそれは、モノの半分も当たってはいなかったのです。
それにリリア自身も、当初は拒絶はしていたものの、いざ取り組ませてみれば歴代の「后」以上の働きを見せたので、他の者達の感心も寄りつつあったのです。
第二百五十九話;『「あの者」の復活も近い・・・ならば、この者が「運命」なのかもしれない』
そのこと自体は、ジョカリーヌの方でも判っていたのでしょう・・・
だから今回の「辞令」に対しても素直に受け止め、また自分の運命も受け入れる事が出来たのかもしれない・・・
あの「娘」も、云わばリリアと同じ―――・・・
心の準備が出来ていないからと、随分と先延ばしにしてきたのだから・・・
だが―――「あの者」は、そうしたこちらの事情に関係なく、そうしてくるに違いない・・・
なぜなら・・・「あの者達」を引き裂いたのは、「賢下五人」なのだから・・・
この宇宙の創生より、有った「二人」―――
互いに、想いを寄せあっていた「二人」―――
しかし、刻の推移により、闘わなければならなくなった「二人」―――
その「二人」を引き裂いた、「賢下五人」―――・・・
然る後、「あの者」は封印を施され、145億光年の彼方に飛ばされたと云う・・・
どうしてか、「賢下五人」に恨みがなかろうはずがあるまいか―――・・・
今回ミリティアは、そうした経緯もあり、まず自分が批難の矢面に立つ覚悟をして来ていました。
けれど・・・現在を生きる者達に、罪はない―――・・・
「あの者」の怒りは凄まじい・・・
あの当時で、幾つもの星系が一瞬のうちに消滅した事か・・・
それにもし―――今回「あの者」が復活すれば、その被害はあの当時とは比較にすらならない・・・
そうした事を鑑み、ガラティアやジィルガが、まさにその為の手立てを完成させているとは云え、
所詮それは、以前のデータでしかない・・・
「あの者」も、封じ込められている間、そのままではいないはず―――
なぜならば、遥かな過去、自分が施した封印の効力が、日に日に薄まるのを感じているのだから・・・
そして―――「あの者」の復活も、当初予定されていた刻より、早まっているのを感じているから・・・
ミリティアが、今回地球へ来た理由―――とは、実は殊の外重要でした・・・。
だからこそ「賢下五人」の内でも連携を取り合い、恐らくは今期最大になるであろうと思われる、ある「争い」の為・・・ミリティアは「関係者」を迎えに来ていたのです。
そして―――「地球の代表」を、リリアに引き継ぐ為、赴任先から一旦戻ってきたジョカリーヌは・・・
ジ:(・・・)戻って来たんだね―――リリア・・・それに・・・
M:フ・・・久しいな、「じゃじゃ馬娘」―――
ジ:ははは・・・これは手厳しい。
ですが私も、あなたにしてみれば所詮はそんなモノですからね・・・。
ミリ:あなたほどの方が・・・それにどうして「じゃじゃ馬」などと―――
M:「創造」と「破壊」・・・その両面性を持っているからだよ―――
ミト:(??)それにしても・・・なぜその事が、ジョカリーヌの「悪口」に繋がっていると―――?
M:ふむ・・・ならば―――その言葉自体の意味は知っておろう。
メ:素直に受け止めれば・・・「創って」「壊す」―――ですよね。
M:いかにも、そしてこの「じゃじゃ馬」こそは、己が気に入らなんだ世界を「壊し」、また「生んで」きたのだ・・・。
ミト:(・・・!!)あぁ・・・っ―――
リ:―――・・・
メ:(??)しかし―――そんな莫迦な?!
そちらのフロンティア理事の方は、そんな悪い評判は・・・
なぜミリティアが、やもすれば不名誉とも思える発言を繰り返したのか・・・
それは、ジョカリーヌの過去に関わる、「ある事実」があったからなのでした。
(ここで注目をすべきは、ミトラとリリア・・・ミトラに関しては、以前のシリーズ「XANADO/SaGa編」からの付き合いもある為、そうした「片鱗」がある事を知っている。
但し、注意しておかなければならないのは、所詮それは「片鱗」だと云う事。
殊リリアに至っては、ミリティアと共に地球へ来る時、それまでの経緯を知らされていた・・・と、見るべきであろう。)
それこそが「創造」と「破壊」―――
存在や意義を「創造」り出す一方で―――それを「破壊」してきた・・・
しかし、メイベルたちが聞く「噂」や「評判」などでは、ジョカリーヌにはそんな二面性などない―――とはしたかったのですが・・・
ですが、ジョカリーヌ本人からは、驚愕の事実が伝えられ―――・・・
ジ:いや・・・全部本当の事なんだ。
メ:な・・・なぜ?! でもあなたは、生きることの素晴らしさや争うことの愚かしさを、講義してきた経緯もあるではありませんか?!
M:いかにも―――それもこの者本人・・・
メ:だったらなぜ?! 今になってそのような事を―――・・・
M:黙れ、凡愚めが―――
その事を知ったとてどうだと云うのだ、ただ・・・今は、過去の事を悔い改め、「天帝の后」を介して、愛慈しみある者へと産まれ変わった・・・そうは思わぬか。
メ:(〜〜)・・・。
リ:はは―――ミリティアさん、もうそのくらいで・・・
何もメイも悪気があってさあ〜・・・
M:そんなことより、早く終わらせるがよい―――
余り時間も残されてはおらぬのだぞ。
ジョカリーヌ本人が、否定すらしない事実に、ついメイベルは激しく追及してきました。
しかしその事は、ミリティアの一喝の下に伏せられ、萎縮させられたモノだったのです。
それにしても不思議なのは・・・ミリヤ―――
自分子飼いのメイドが丁々発止―――怒られ悄気返るまでの間、その会話の中に割り込まずにいたのですから・・・
それは―――なぜ・・・?
それは・・・あの「竪子」と云う言葉―――その言葉が気になっていたから・・・
そして、その言葉の意味を知っていたミリヤは―――・・・
ミリ:確かその言葉の意味・・・私が知っているモノであれば、「子供」「愚者」「未熟者」・・・ですが、
なぜかあなたは、別の意味で使っているモノだと感じるわ・・・
リ:(!?)その意味―――って??
ミリ:判らない・・・判らないわ・・・だって、云われているあなた本人でさえ明かされていない事実を―――私如きが判るわけないじゃない!
この・・・他人の思考を詠むことでしか効力を発さない、私の能力で―――!!
ミト:(・・・)いや、何もそう悲観することではありますまい―――やはり私には、何か別の意図する処があるように思う・・・。
それに私達は、あなたによく似たこの少女と―――リリアとの馴れ初めも・・・そしてまた、関係の構築の過程も知らない・・・
だから恐らくは、私達が知らない間に、そうした事があったからではありませんかな。
ミリヤだけは、その言葉の意味―――「竪子」と云う意味を知っていました。
けれどもそれは、リリアも知らされた事のある、一般の意味・・・それも悪い意味で―――
だけど、使っているミリティア某は、どこかそう云う・・・云わば「悪口」の意味合いで使っているのではないことが、その雰囲気のみで理解出来たのです。
ですが・・・当の本人―――云われているリリアは、未だその事には気付いてはいなかったようで、ミリティア某が使っている意図を聞き出そうとするのでしたが・・・
ミリヤの能力―――『月詠』とは、他人の思考を「詠む」事に長けており、そもそもミリティア某の思考を詠めないでいると云う事は、
どんな意図をして、その人物がその言葉を使っているか、判らないでいたのです。
しかし・・・それが「現実」なのであれば、自分達はその「現実」を受け入れなければならない―――・・・
けれど「現実」は、ある象で突き付けられて来るのでした。
=続く=