ここは―――・・・ この宇宙・・・ 「第七宇宙」 の最果て・・・
その宙域より後背部は、ただ寂寥たる闇が広がるのみでしたが・・・前面部はさんざめく星々達が、眩しいまでに輝いているのでした。
そして「この場所」こそは・・・とある「邪悪なる者」が封じられし場所―――・・・
しかし、その「封」の効力も今や弱まってきており、いつ「邪悪なる者」が封を破り、また世に禍を招かんとしているかは、判り切っていた事なのでした。
しかも、「邪悪なる者」は、この封印の地で、己の強大な顕現を更に進化させ、かつて封印された時よりも、手強くなっているのでした・・・。
ですが・・・「邪悪なる者」は、容易には「封」を破って出てくるような事はありませんでした・・・。
それと云うのも、以前に敗れ封印された時に、学んだ事も多くあったから・・・
あの時は・・・自分一人―――・・・
自分一人が、多くの対立する者達と拮抗し、渡り合い・・・
そして、敗れた―――・・・
その原因が判っていたからこそ、封印されてから現在まで、ずっとその「種」を撒いてきた・・・
そう・・・その「邪悪なる者」の字である、『不和と争いの女神』の名と共に―――・・・
そして・・・時は来た―――
今度こそは、自分と対立してきた「賢下五人」達と同等の・・・勢力を築いてきた―――
これで勢力は五分五分―――
あとは、「賢下五人」と、自分の顕現の優劣が、勝敗を分かつのみ―――
それに、「顕現の優劣」も、最早実証済み―――
なぜならば、「賢下五人」個々の顕現では、自分に優っている者など、おりはしなかったのだから・・・
だから・・・もう・・・これで終焉としよう―――
その「邪悪なる者」が、封印の地に施されていた「封の第一階層」を破った時―――
その影響は「第七宇宙」全体に波及したのでした。
そして・・・その影響は・・・
ここ地球も、その例外には漏れなかったのです。
第二百六十三話;未来から過去へ
自分の役目を終わらせたリリアは、仲間達がいる「テラ国」へと戻り、誰に制限をされるでもなく、自由を謳歌しているのでした。
リ:はあ〜あ! これこれ〜―――♪ のんびり出来るってのは、好いよなぁ〜〜♪♪
さあ〜て・・・と、あいつら、どうしてるかなあ〜―――
以前に戻った時には、満足に言葉を交わす事すら出来なかったからなぁ・・・
それに―――「あいつ」には待たせてばっかだったし、そろそろ出迎えに行ってやらないと・・・な。
前代表より受け継いだ「役割」を、重要な取り決め事以外では発動させないよう「制限」を設け・・・
自分は出来るだけ、この惑星に住む者達の意見を聞き取る為に・・・と、わざと自分の名と役割の事を押し隠し、市井に紛れていたのです。
そして今も、以前に交わしていた約束を、今度こそ果たす為に―――
その約束を交わしていた人物の下へと出向き・・・
リ:ぃよ〜う! 元気してるかぁ〜?!
し:はーい! なんでしょ・・・
あれ?リリアさん―――?? ・・・て、リリアさん! いつ戻って来たんですか?!
リ:よう―――しの!
まぁ、積もる話はあとだ、それより「あいつ」はいるか?
し:「あいつ」・・・ああ―――
「テラ国」と同じ大陸、エクステナー大陸にある「常磐」・・・
その国の随一の繁華を誇っている「穢戸」と云う街の、「吉原」と云う区画で、奉公として働いている「しの」と云う娘・・・
しかしリリアの当初の目的は、この娘にあるのではなく、以前まではこの娘・・・しのと深い友誼を交わしていた人物―――
すると―――・・・
秋:おっ―――誰でぇ・・・と思ってたら、お前さんだったかい。
いつ戻ったんだ、皆心配してたんだぜ。
リ:おう―――秋定。
悪ぃな、こっちも立て込んでたんだ。
光:にょ〜ほほほ―――おぅ、すぅい〜とう!♪
―――むぎゅ・・・
遠:ほぉう―――御前の性的悪戯を、いともあっさりと躱す事が出来る様になったとはな・・・
しばらく見ぬうちに、成長したようだな―――リリアとやら。
この建物・・・「播磨屋」に集合していた「彼ら」・・・
「鷹山秋定」「水戸光圀」「遠山金四郎」らが顔を覗かせ、しばしの談話がなされたのでしたが・・・
なぜかその場には、彼らの仲間でもあるはずの「ある人物」がいなかったのでした。
そこでリリアは、現在その人物がいるとされている場所をしのから聞き、その場所へと足を向かわせてみると・・・
リ:お〜い、たま〜―――いるんだろ〜! 姿を現せよ〜い!
その場所とは・・・或る神様―――「稲荷」を奉る神聖なる場所・・・
以前に深い友誼を交わしていた人物から聞くのには、「彼女」は現在、この「稲荷神社」にて自ら蟄居をしているのだと云う・・・
その事を聞いたリリアは、自らが出向いて「彼女」を保護する―――と云う名目で、稲荷神社へと来た・・・は、良かったのでしたが、
その場所には、誰もいなかった―――・・・
お参りに来る者も・・・
神社にて世話をする者も・・・
それにこれでは、最早・・・まるで監禁をする場所―――
そう思ったリリアは、今度はあらん限りの大声を絞り、叫ぼうとした処―――
彼方から一陣の風が吹き・・・
た:(・・・)やかましいヤツよの―――充分に聞こえとるわい。
リ:たま・・・
(・・・)悪かったな―――今まで放っぽといて。
た:全くじゃ―――あの時しのの代わりに〜と云うておった途端に、ぬしはわしの事を放ったらかしにしてくれおったのじゃからな!
リ:悪かったってぇ〜
こっちもさあ・・・退っ引きならない事情ちゅうもんが―――・・・
た:お陰でな! わしはまた討伐の対象になりおるし・・・
しかし、あ奴らの協力もあってな、神社で大人しくしておると云う条件付きで、事なきを得たのじゃ。
リ:悪かった〜ちゅってんだろが!!
大体私だって、色々あって大変だったんだぞう〜〜
この宇宙の運命左右する様な事が、次々と圧し掛かってきやがるしぃ〜〜
た:それは・・・耳にしておったから、ある程度は知っておったが・・・
本当の事じゃったとはのう―――
リ:おまけによう〜〜「竪子」だの―――なんだの・・・罵らっぱなしだし〜〜
第一、仲良くなってたと思ってたヤツと、対決しなけりゃならない羽目になっちまったりなぁ〜〜
ま・・・それはそれで、丸く収まる事が出来たんだけど―――
た:それは・・・本当に大変じゃったのう―――
それにしても・・・「竪子」―――とな?
リ:ん〜? 知ってんのか・・・?
た:う〜ん? むう・・・まあ・・・な―――
思えば・・・この人物―――「たまも」の以前の保護者である「しの」に無理を云って、保護者の役目を代わって貰ったモノだったのに・・・
自分の本意とは反対に、離れ離れにならなくてはならなくなり―――
そこから二人は、数奇な運命を辿らなくてはならなくなった・・・
たまもはまた、その能力を危険視する者達により、「討伐」の対象にされてしまい、
そこをどうにか「妖改方」の工作により、存在そのものの存続は赦されていたようなのです。
一方のリリアは、これまでのお話しの通り、色々と大変だったようで―――
たまもに語る際にでも「半ベソ」を掻きながら・・・の様子を見て、たまもも気の毒に思うしかなかったようです。
(しかし・・・リリアの「ある告白」に、たまもも思う処があった模様―――
しかもその様子では、例の言葉・・・「竪子」の真の意味を、心得ているように見えるのだが・・・?)
そして―――ひとしきり語らい終え、ようやくこれから約束を果たそうとしていた時・・・
リ:はあ〜あ・・・ヤレヤレ―――なんか、ま・・・もうどうでもいいけど―――よ。
た:全く・・・淡白な奴よの。
して―――これからどうするつもりじゃ。
リ:う〜ん・・・そうだなあ―――取り敢えずは・・・
あっ、と・・・そう云えば、市子と蓮也にもしばらく会ってないなぁ。
た:然様か・・・じゃな―――
あの二人も、ぬしの事を慕っておったからな。
リ:はは―――そうだよな!
んじゃ・・・決まりだな、早速あいつら迎えに―――・・・
た:(ぅん?)なんじゃ・・・この気配―――?
たまもと一緒に、また以前通りの生活を始めようとの計画に、もう二つ欠けていた存在・・・
それが市子と蓮也―――
やはり自分は、あの二人の存在なくしては、ならないモノだと思い・・・
あの二人と一緒に―――と、思っていた矢先・・・
その事象に、逸早く気付いたのは、たまもでした。
そのたまもから後れる事一・二秒―――
しかしその一・二秒の差は、事象が二人に作用するのには十分であり、
何より・・・その感じた差異こそが、またしてもリリアとたまもを引き裂くのに、充分過ぎる瞬間でもあったのです。
而して―――その事象とは・・・
この地球上でも、極付近で見られる事があると云う・・・「オーロラ」によく似た現象なのでした。
ですが、事象そのものの作用は、似て非なるモノ―――・・・
しかも、その事象の作用そのものの煽りを受けたのは―――・・・
リ:うわわ・・・なんだ?こりゃ―――
に・・・虹の・・・七色の光が、私・・・を?!!
た・・・たま―――助けて・・・このまま、またお前と・・・
た:うぬっ! お主を一人にはさせまいぞ―――!!
当初は、リリア一人だけに・・・その光は作用を始めていましたが―――
その事象を逸早く察していたたまもは、すぐさま反応するに至り・・・
しかし・・・ですが・・・それは同時に―――・・・
二人の存在の消滅―――
いやしかし、その説明だけでは、本来の説明の十分の一にも充たしていませんでした。
それでは正確には―――・・・
二人は、現在のこの時間軸に、存在をしなくなっていた―――・・・
そう・・・「時間軸」―――
「現在」と云う時間の軸に、存在をしてしまわなくなってしまった―――と、云うのは、
二人は「未来」か・・・果てまたは「過去」へと、その身の置き所を変えただけ・・・
しかしその体験こそは―――ある意味で、リリア達の知らなかった出来事を、知る機会にもなるのでした。
=続く=