虹色の―――謎の七色の光に包まれ・・・存在自体を蝕まれていく感覚に陥ってしまうリリア・・・

 

それは・・・以前に―――瞬間的に遙か遠く離れた場所に移動するとき、どこか恍惚にも似た・・・と、云う様な、好いモノではなく・・・

「自分」と云う存在自体を―――内臓を・・・脳内を・・・(まさぐ)られているかのような、気色の悪いモノ・・・

 

そんな感覚に、思わずもえずきそうになるのでしたが、それにも()して意識の方が混濁し始め・・・(つい)には喪失してしまったのでした。

 

 

そして次に―――ようやく意識を取り戻し始めた時、リリアは、一種異様な体験をしてしまうのでした。

 

それと云うのも―――・・・

リリアの意識が取り戻し始めた時、リリアは、自分の身体が大木の根元に横臥(よこたわらされて)いる事を、まず認識しました。

そして・・・自分が、何者かに介抱をされている―――と、云う事実も・・・

 

 

 

リ:(・・・う)うぅ〜ん・・・

 

誰:あっ?! 気がついた―――・・・?

  あの・・・大丈夫ですか?

 

リ:(う・・・う〜ん・・・)え? あんた・・・は?

  うっ―――! いちちち・・・

 

誰:ああっ―――ダメです! まだ安静にしていなくては・・・

  少し待っていて下さい、気を落ち着かせるお祈りをしますから。

 

 

 

まだ―――頭の中が、巨大な金槌で殴られた時の様に、「ワンワン」と鳴っていて、現在の自分がどんな状態か・・・さえ、把握しきれないでいる時、

どこかで見た様な美女が、自分の事を解放してくれているようだった・・・

 

その事だけが、現在のリリアの(なか)で、確認が取れている事でした。

 

 

「それにしても―――・・・この人誰なんだ?」

「どこかで見た事はあるんだけどなぁ〜・・・」

「あれ?! そう云えば・・・私―――は・・・」

「そうだ! 私は、リリア=デイジィ=オデッセイア―――」

「ああ〜〜良かった・・・どうやらいつかの様に、記憶を失ったわけじゃなさそうだな・・・」

「(・・・)だとしたら―――ここは??」

 

 

その前に―――以前にリリアは、記憶を失った経験があり、またあの時の様に周囲(ま わ)りに迷惑をかけるのではないかと思い、

急いで自分自身の確認―――つまり、自分の名前を思い出すのですが、そこはどうやら心配のなかった様子・・・

そのことに、一時の安堵を取り戻すのでしたが、再び自分が置かれている状況の確認をしようとした時、

またもや意識の方が朦朧とし始め・・・また・・・眠りの淵に就いてしまったのです。

 

 

そして再び―――目を覚ました時、今度は先程の様な曖昧なモノではなく、はっきりと明確に自分の意識だけは把握できたのです。

 

 

 

リ:(・・・ここは? さっきの場所とは違う―――・・・さっきは木の根元だったけど、今は・・・建物の(なか)??

  それにしても―――・・・どこなんだ?ここは・・・)

 

 

 

相も変わらず・・・自分が置かれている状況は把握しきれずにいるリリア・・・

 

それと云うのも、直感的に感ずるものがあるとすれば、今まで自分がいた世界とは、どこか似たような感覚があり・・・

「風」も「臭い」も、植生している「植物」も、似たような処があった・・・

 

けれど―――現在の自分が身を置いている「この世界」が、今まで自分が身を置いていた「世界」と、どこか違っているようにも感じたのでした。

 

その原因が―――「建物の様式」・・・

 

その事は、現在身の安静を図る為、自分が横臥させられている寝台がある、この部屋一つをとっても云えたからなのでした。

 

確かに・・・似ている処はある―――が、しかし・・・どこか古めかしい・・・

 

それは・・・この寝台の装飾や、壺―――そしてその壺が置かれている台が、自分が知っている様式よりも、どこか古く感じたからなのでした。

 

 

すると―――・・・そんなリリアの身を案じてなのか、様子を見に訪れた・・・

 

 

 

修:お加減は、いかがですか―――

リ:あっ、はい・・・(あ・・・れ? あの人とは違うよなあ―――)

  ええ〜と・・・あの・・・あの人は?

 

修:「あの人」―――・・・ああ、あなたをこの修道院にお連れした、「異端審問(インクィジター)」の方ですね。

 

リ:「異端審問(インクィジター)」??

 

修:ええ、そうです―――我が「マハトマ教」の教化に応じない「異教徒」に対し、正しき教えを広める・・・まこと素晴らしきお役目の事です。

 

 

 

しかしリリアは、その事を教えられると、「逆にそれは違うんじゃないのか?」とは思いましたが、口に出した処で面倒な事になると思い、敢えてそうはしませんでした。

 

それにしても、「マハトマ教」・・・

その名称を聞いた時に、リリアはどこかで聞いた事がある―――とは思いましたが・・・

 

リリアが驚く事になるのは、まさにこれから―――・・・

そう・・・行き倒れとなっていたリリアを救ってくれた「異端審問員(イ ン ク ィ ジ タ ー)」こそ―――・・・

 

 

 

第二百六十四話;エルム・・・その過去―――

 

 

 

異:あっ―――良かった・・・気が付かれたようですね・・・。

 

リ:あっ―――あんたは・・・

 

異:はい―――行き倒れとなっていたあなたを介抱した、マハトマ教の異端審問員・・・

エ:エルム=シュターデン=カーミラ―――と、云います。

 

リ:(・・・え?)えええ〜〜〜っ??!

  エ・・・エル・・・ム―――??

 

エ:は・・・はい? あの―――どうかされましたか?

 

リ:い・・・いやぁ〜〜その〜〜私と知っている人と、良く似てたから〜〜・・・

 

エ:そうだったのですか―――急に大きな声を出すモノだから、ビックリしました。

 

 

 

「いやぁ〜〜ビックリするもなにも―――この人が?? 「あの」・・・エルムさん???」

「名前がよく似てるけど・・・まさか「本人」じやないよなあ?w」

「だってさ―――あの人、この人の様に純情可憐じゃないもの。」

 

 

やもすれば―――この場にエルム「本人」がいたなら、失礼この上ない事をリリアは思うのでしたが・・・

そう・・・リリアが驚くのも無理はなく、なんとリリアを介抱してくれていたのは、リリア自身がよく知っている「エルム=シュターデン=ヴァルドノフスク」―――に、全く良く似た・・・

その名も、「エルム=シュターデン=カーミラ」だったのです。

 

しかし・・・賢明なる―――そして、「XANADO」よりご愛読いただいている読者諸兄には、既にお判りでありましょう・・・

そう・・・リリアを介抱し、彼女の目の前にいるこの人物こそ―――・・・

あの、周囲(ま わ)りに愛嬌を振り撒いている、「ヴァンパイアの真祖」にして、「公爵」である―――エルムその人だ・・・と、云う事を。

 

だとすれば・・・現在リリアが身を置いている、この時間軸こそ―――・・・

 

いやしかし―――リリアもこの時ばかりは、現在、自身が体験している「この事象」自体、受け入れる事が出来ずにいたのです。

 

けれども、そんな心配顔をしているリリアに、少しでも不安を取り除いてあげようと、この「エルム」によく似た宗教人は・・・

 

 

 

エ:大丈夫ですよ・・・あなたの様な人を、私達が崇める神―――マハトマ教を創始されたミトラ様は、温かく見守って下さいます・・・

 

リ:ああ〜―――そう・・・

  (つか、「ミトラ様」―――って・・・ああ〜〜なんだあ? あたしゃバカになっちまったのかぁ??)

 

 

 

そう・・・リリア自身、未だに自分が「過去」に来ているモノとは、思ってもいませんでした。

第一、そんな常識外れな事が、自分の身の周囲(ま わ)りにだけ、起こっていいはずがない・・・

 

しかし―――そう・・・「自分の身の周囲(ま わ)り」・・・

そう云えば、確か―――自分がこうなってしまう以前に、側にいた人物がいた筈・・・

そう思い、それとなく聞いてみると―――

 

 

 

リ:あの〜〜さ・・・それはいいんだけど〜―――私の他に、誰かいなかったか?

 

エ:「誰か」?

  さあ―――・・・私があなたを見つけた時には、既にあなたしかいませんでしたが・・・

  それより、一緒にいた人がいるのですか?

リ:え? ああ・・・はい・・・こんくらいの〜〜ちっこい女の子―――なんだけど・・・

 

エ:そうですか・・・

  修道女(シ ス タ ー)さん―――そんな子は見かけませんでしたか。

 

修:さあ―――・・・それに、近頃は「カルマ」の連中が、子供を攫っていると聞きますし・・・

  以前はここも、通りを元気良く駆け回ったり、遊んでいる子供をよく見かけたモノでしたが・・・

  そんな事が横行するようになって、めっきりとそんな姿を見かけなくなりました・・・

  異端審問員様―――どうかあなた様のお力で、カルマ達を退けて下さいませんか?!

 

エ:(・・・)やはり―――その噂は本当でしたか・・・

  実は私も、コトの真相を確かめる為に、この地に赴いたのです。

  判りました・・・この事実の報告は、私が所属をしている異端審問の直属の上司―――異端審問長のキュクノスに揚げるのと同時に、

  至急討伐隊を編成して再びこの地に参りましょう。

 

 

 

「また私達は・・・不本意ながらも、離れ離れになってしまった―――」

「それに・・・もう・・・こうなってしまった以上、二度とあいつには会えないのかもしれない・・・」

 

リリアには、事態がこうなってしまう直前に、一緒にいた存在がいました。

しかも気が付いてみれば、現在は自分一人となっており、事態の直前まで一緒にいた人物の行方は、知れる処ではなかったのです。

 

が・・・しかし―――ここで最も重要なのは、後世の歴史では、エルムの敵となっている、エルム自身の上司―――キュクノスの存在・・・

 

このお話し(O d y s s e i a)」の主人公であるリリアが生きている時代は、彼女(エ ル ム)達がその存在を賭けて争った時代よりも、随分と後の世の話し・・・

 

しかし、「この時点」でのエルムは未だ「人間」であり、不死者である「ヴァンパイア」ではない―――・・・

 

 

そう・・・今回からのお話しは、云うまでもなく―――

如何にしてエルムが、「ヴァンパイア」になったか―――の、経緯・・・

 

そしてリリアは―――自身でさえ知らずにいた、身の毛が弥立つまでのおぞましき事実と云うモノを、目の当たりとしてしまうのです。

 

 

それはそうと―――幾分か快復し終えたリリアは、お礼もそこそこに修道院をあとにすると・・・

 

 

 

リ:いやぁ〜〜参ったなあ・・・たまのヤツとは(はぐ)れるし、何より〜〜「あの」エルムさんが―――・・・

  悪い夢でも見てんなら、早くに醒めて貰いたいもんだよなぁ〜〜

 

 

 

未だに・・・夢と現実の区別が付かない様な―――そんな不思議な体験をしているお陰で、まるで自分に言い聞かせるかのように、納得をしようとするリリア・・・

 

しかし―――こんな状況を受け入れられず、右往左往するリリアを・・・

そんな彼女を、遠くから見つめている「目」があるのを―――

リリアは、気付く余裕すらなかったのです・・・。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと