ようやく、自分達が置かれている状況と云うモノを呑みこみ始めたリリア達・・・

そう・・・今現在、自分達が身を置いている「時代」は、本来いるはずの時間軸より遙か過去だったのです。

 

そして、これからどうすべきか・・・を、考えあぐねていた時に、ふと、こんな風聞を耳にしたのです。

 

 

「おいおい―――聞いたかい、街道の峠に出ると云う、「人斬り」の話しを・・・」

「ああ―――それなら聞いた事があるぜ、なんでも男と女一組の「人斬り」が出る・・・って噂をな。」

「しかもよ―――その「人斬り」、街道を通るヤツより、寧ろそいつらを狙って出没する、賊を襲っているって話しだけどよ・・・本当なのかね。」

 

 

ここ―――コクトーから、華やかな都へと通ずる「街道」の「峠」に、ここ最近・・・男女一組の、凄腕の「人斬り」が出没する・・・と、云う噂。

しかも聞けば、その「人斬り」は、行商人や旅人を標的とはせずに、そんな彼らを狙って出没すると云う賊の方を目当てに、出没するのだと云うのです。

 

そんな風聞を、この街の酒場で聞き耳を立てていたリリアに玉藻前ではありましたが・・・

 

 

 

リ:おい・・・聞いたかよ、たま。

玉:うん? うむ・・・中々殊勝な心がけの者もおるモノじゃのう。

 

リ:(・・・)あのさあ―――もしかして・・・

玉:「あの二人」だとしたなら、少々話しが出来過ぎておる。

  わしがお主と一緒に、この時代へと送られてきておるのは、お主の近くにいて、しかも身体の一部を密着させておったから・・・と、そう思うておる。

  それを、全く違う場所におる「あの二人」が、わしらと同じくしてこの時代に送られてくるなぞ、滑稽にも程があるわ。

 

 

 

善良な者達を襲わず、悪劣な者達を襲う・・・

そんな殊勝な行為をする者達に、リリアは希望的観測を述べたのですが、それを玉藻前は一蹴し、そんなに出来過ぎた話しは流石にない・・・と、したのです。

 

 

しかしながら―――真相の方は・・・?

 

 

 

第二百六十七話;偽りの仮面

 

 

 

賊:へっへっへ―――待ちなぁ〜〜

旅:ひいいっ・・・お、お助けを〜!

 

賊:(・・・)兄貴―――ここまでは巧くいきやしたが・・・

賊:(・・・)ああ・・・噂―――なら、そろそろだよな・・・

 

 

 

やはり、噂が流布されていたとしても、出没が後を絶たない賊・・・

今も、旅人を襲う為に出没したようですが、流石に例の噂は聞き及んでいるモノと見え、(きた)るべき時の為に身構えるのです。

 

すると―――・・・

 

 

 

女剣:お待ちなさい―――!

 

男剣:その非道・・・赦しおくわけにはいかぬでござる!

 

 

 

その場を(とお)る―――澄んだ声に・・・

冥府の長を思わせるかのような―――重厚な声・・・

 

そう、この賊も例外ではなく、瞬くの間に平らげられてしまうのです。

 

が・・・判らないことと云えば、こうなる事が判っておきながら、未だに旅人を襲う道理がどこにあったのでしょうか。

 

しかしながら・・・そう―――この賊は、こうした時の為に・・・と、ある者達を雇っていたのです。

 

 

 

賊:へへ―――へへへ・・・さ、流石に手強い・・・

  オレ達なんか相手になりゃしねえな・・・。

 

  だがよ―――先生〜〜先生〜〜!! 出番ですぜ・・・

 

 

 

「賊を襲う人斬り」対策の為に、この賊達は「先生」と呼ばれる、仮面をした用心棒を二人・・・雇っていたのでした。

 

が・・・しかし―――??

 

 

 

女剣:(?!)あなた―――は・・・?

 

仮剣:へへへ―――・・・よそ見してると、怪我ァするぜ・・・

 

 

 

女の人斬りは、どことなく・・・その仮面をした女流剣士風の用心棒に心当たりがあるようでしたが・・・

そうした隙を見逃さずに、仮面の女流剣士風の用心棒は、素早く間合いを詰め―――女の人斬りと激しいつばぜり合いを始めたのです。

 

 

 

女剣:(・・・)あ、あなたはもしや―――?!

 

仮剣:へへっ―――無駄口はあとだ・・・さっさと片付けるぜ・・・

 

―――市子・・・

 

 

 

女の人斬りは、自分の名を呼ばれた時に、間違いないと確信しました。

 

そしてもう一方の、男の人斬りと対峙していた、仮面の妖艶なる呪い師の方でも・・・

 

 

 

男剣:そなたらは・・・もしや―――・・・

 

仮呪:フッ・・・まさか茶番よりも出来過ぎておったとはのう・・・

   じゃが―――これまでじゃ・・・

 

 

 

その、仮面の妖艶なる呪い師が発した合図と共に、賊の用心棒をしていた相方の女流剣士も一斉に(ひるがえ)り、さんざんに賊を懲らしめたのです。

 

そして―――・・・

 

 

 

市:リリアさん! どうしてこんなことを・・・

リ:あ? ああ・・・こうした方が、早くあんたたちかどうか確認が取れるかと思ってな。

  そ〜れより、ビックリしてるのはこっちのほうさ、どうして市子に蓮也が・・・

 

市:それよりも、これは一体どうなっているのです?

リ:ここ・・・ってさ、私達がいた時代より、随分な「過去」みたいなんだ。

 

市:えええっ?! そ・・・そんな―――常識では・・・

玉:考えられぬ事が、既に起こっておる―――そこの処は認識せんと行かんな、市子殿。

 

市:玉藻前様・・・しかし、そのお姿―――

玉:わしが存在しておったよりも、相当な過去故に、わし自身が施しておいた封の効力も失せたモノと見受けられる。

  じゃがの、ご覧の様に正気は保っておるぞ。

 

 

 

着けていた仮面を外し、見知っている顔を見せたリリアと玉藻前・・・と、やはり予想していた通り、この時代に送られていた市子と蓮也・・・

両者とも、再会した喜びを分かち合うのでしたが・・・やはり疑問とすべき点は、どこかで見た様な事があるけれども、少しずつ違うこの世界のあり方に、

常識では考えられないとはしながらも、とある人物の態様と説明を前に、納得せざるを得なかったようです。

 

それはそうと―――・・・

 

 

 

市:それにしても・・・少しは安心しました・・・。

  もう二度と、あなたに会う事などないと思っていただけに・・・

リ:へへっ―――そう寂しくなる様な事、云ってくれてるんじゃないよ、市子・・・

  けど、もう・・・私達は、離れたくとも離れられない―――そんな「絆」の力を手にしたから、こうなってるんじゃないのか・・・そう私は思っているんだ。

 

玉:なんとも、前向きな考えよの―――ある意味幸せ者じゃわ。

  じゃがしかし・・・今の処は須らく事態を説明できぬから、その理屈で片づけてしまわねば、どうにもなるまいてのう・・・

 

 

 

リリアの不意の失踪を経てから、もう二度と会う事はないと思っていた市子・・・

しかし、市子だけに限らず他の者も皆そう思っていた節があったからこそ、不意に戻ってきたリリアの姿に驚いたモノだったのです。

 

それにしても―――・・・そもそも事態がこうなってしまった原因を、今一度考え直してみると、

リリア達がこの時代に送られてきた時の様に、市子や蓮也も「虹色の光に包まれた」そうで・・・

では、その「虹色の光」の出処を探っては見るのですが―――・・・

これが中々、手応えさえもなかったのです。

 

 

それはそうと・・・こちら、マハトマ教の異端審問員であるエルムは・・・

 

 

 

エ:お待ちしておりました―――審問長・・・

 

キ:うむ、ではこれより―――世に仇なすカルマ共を、掃討せよ!!

 

 

 

今回の討伐隊の拠点となった教会に、指揮を()る審問長キュクノスの到着を(もっ)て、カルマ掃討の号令が下されました。

 

しかし・・・「生贄の子羊」は知らない―――

 

今回の討伐劇そのものは、既に仕組まれていたモノであった事など・・・

そして、ある者の裏切りのタイミングも―――・・・

 

 

世間を惑わせ続けるカルマを懲らしめる為、今回結成された討伐隊・・・

そして定石通り、計画を半ば過ぎた頃合いに・・・

 

 

 

エ:大人しく折伏されなさい!

  そして、正義の前にひれ伏すのです!

 

魔:フン・・・フフフ―――なんとも、活きのいい小娘もいたモノよ・・・

 

エ:(!)お前は・・・フォルネウス=クシィ=ダグザ!!

  まさか・・・なにしおうカルマの三傑が、今回の裏で糸を引いていたとは・・・

 

  しかし! お前達の悪行もこれまで―――キュクノス審問長! お早く・・・敵の・・・総・・・大・・・

  (?!)キュクノス様? 何を・・・何をなさっているのです!?

 

 

 

今回の事件の糸口を裏で引いていたと見られる、思っていたよりも以上の大人物を前に、

今の自分の実力では敵わないと判断したエルムは、自分達を指揮する上司に応援を要請したのですが・・・

 

そこでエルムが肩越しに見た光景とは・・・

 

今まで苦楽を分かち合った仲間達を・・・そんな者達を、何の感情もなく手に掛けるキュクノスの姿が―――・・・

 

エルムには、未だに信じる事ができませんでした・・・

 

異端審問庁の内でも、揺るぎない信仰心を持ち、何よりも未熟な自分よりも、確たる信念・教義を持つはずの人物が・・・

 

どうして―――・・・?

 

どうして、相手方の大人物が出現した(とき)を、見計らったかのように・・・

今度は自分達に、その拳を向け始めたのか・・・

 

けれどそれこそが、彼らの描いていた計画の通り・・・

 

そして―――外道へと堕ちた、野獣の牙は・・・未だ穢れを知らない聖職女の身に、(あまね)く降り注いできたのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと