鋭く空を裂くヘッド―――
軽やかな音と共に、彼方へと消えて行く、白く小さな球・・・
そして―――・・・
キ:ファ〜〜 OBです!
その瞬間、「マスターズ」出場への予選を兼ねてプレーをしていた、ある選手の「予選落ち」が決定し、
それと共に、自分の「キャディー」を怒鳴り散らす、その選手こそ・・・
ヱ:シュターデン!! お前の目測、全然違うじゃないの゛!!!
エ:あっれえ〜〜おかしいねえ・・・
私の目立てじゃ、バッチシの筈なのにさぁ〜〜
ヱ:じゃあ、どうしてOBになるのよ!!
エ:そりゃあ〜お前サマが・・・「○゛○力」だから・・・(ボソボソ)
ヱ:なによ、ボソボソと・・・はっきり云えば良いでしょ?! 「バカ力」だって!!
エ:(自分で云ってリゃ世話ないって・・・)
ヱ:全く・・・お前と組んだら、勝てる試合も勝てやしないわ・・・。
余程ベイガンの方が、役に立ったわ!
エ:そりゃあ〜僻みってなもんだよ。
それに、今じゃあの子の方が、宇宙の賞金王なんだしさ。
それをお前サマは・・・あの子の才能が、妬ましいだけなんじゃないのかい。
ヱリヤが唯一制覇していない「G−1」・・・『ユニヴァーサル・クラシカル・マスターズ』―――
その予選と云っても、並みいる強豪も参加をしており、楽に通過できるほどに生易しくはなかったのですが・・・
それでも、ヱリヤほどの「ベテラン」なら、そんなには苦戦を強いられない―――と、思っていただけに、
この時ばかりは絶不調だったものと見え、「+10」の予選最下位とは・・・
だから、つい厳しい口調になってしまっていたのです。
しかし、この時ヱリヤのキャディーについていたエルムも、自分の相棒の足を引っ張る為にそうしたつもりもなかったので、
こちらもつい、云いたくもなかった事を愚痴めいてしまったのです。
そうした、エルムの愚痴が、気に障ったヱリヤは―――・・・
ヱ:(・・・)ええ―――そうよ・・・妬ましいわ・・・
それに、元はと云えば、お前がそうしたのよ! 「エネマ」!!
前回までの―――お話しの流れとしては・・・
エルムの過去を辿って行くと云うモノでしたが、それがなぜ今回は、また何の脈絡のない流れから始まったのか・・・
と、そう思っていたら、不意にヱリヤの口から出た、個人を表す「名前」・・・
しかし―――この「名前」の持ち主は、これまでのお話しの流れまでにも、一度たりとも出て来なかったのです。
だと、したら―――・・・
そのことは、次のヱリヤの言葉が、総てを物語っていたのです。
第二百七十話;過去の存在を変えた存在
ヱ:お前は、私の知っているシュターデンを変えた・・・。
私の面倒をよく見てくれて、可愛がってくれていた、あの頃のシュターデンを返せ! エネマ!!
エ:(・・・)そいつは、無理ってなもんだよ―――お前サマ・・・
私「達」は、「同化」してしまったんだ・・・
そう―――・・・「あの時」を境に・・・
読者諸兄も、疑問に感じた事でしょう・・・
エルムの人格の、余りにもの変わり様に・・・
あの当時のエルムは、ヴァンパイアに成り立てとは云え、未だ敬虔なマハトマの信者でもあり、周囲りの面倒見が良い人物だと見られていました。
それが・・・その後のエルムと云えば―――どこかフェミニンで、どこかコケティッシュな・・・それでいてお色気を際立たせており、とても同一人物とは思われないのです。
だとしたなら・・・どこかの機会で「入れ替わった」??
いえ・・・実はそうではなく―――
場面はまた、過去へと一転して―――・・・
新たにヴァンパイアの「男爵」として迎え入れられたエルムは、仲間達への面通しも兼ねて、
当時その地方を治めていた「シャクラディア帝国」の都である、「シャクラディア城」へと来ていました。
そして、ここで思わぬ人物に遭遇していたのです。
この時より少しばかり以前、新たに自分の「父」となったエルムドア大公爵が、自分の仲間を呼ぶ為に席を空けたのと入れ違いに、
その辺りを通っていた、この国の女官と思わしき人物と・・・
誰:(おや、あそこにいるのは―――・・・)
随分と懐かれているみたいですね。
エ:(え?)ああ―――まあ私も、小さい子は苦手ではありませんし・・・
あっ、コラ、髪を引っ張らない。
ヱ:ちゃはは♪ でもおねえたんのかみ サラサラスベスベで、ちもちいい〜♪
誰:あははは―――
それにしても・・・この子は人見知りが激しくてね、それが初対面の人なのに・・・これだけの笑顔を見せれるなんて、相性が良いんですね。
エ:えっ?? そうなんですか?
誰:うん・・・ねえ、このお姉ちゃんの事、好きかな?
ヱ:ううん! だぁ〜いちゅき!!
その女官らしき人物の言葉より、この「外見とは不釣り合いな成人女性」が実は、激しく人見知りをする性格だと云う事が判ったのです。
ですが、その場を見る限りでは、よそ者にも等しいエルムに、こうも懐いてくると云うのは、
その女官の云う様に、「相性」の問題ではないのか・・・とも思えてくるのです。
それにしても・・・この女官らしき者は、何者―――と、そう思っていたら、
先程まで晴れやかだった「外見とは不釣り合いな成人女性」の表情が次第に曇り始め・・・
そしてとうとう―――天も割れんばかりの声を張り上げ、泣き出してしまったのです。
ヱ:あ゛うあ゛う・・・あ゛あ゛〜〜・・・あ゛あ゛あ゛〜〜ん゛!!!!
誰:ええっ?! あっあ・・・ど、どうしたの???
突破的に泣き出した子供の対処に、余り手慣れていないと見えたその女官は、それからどうしていいのか判らずうろたえ始め・・・
すると、その時―――だったのです、「我が子」同士が交流している時分を見計らい、親同士がその場へと来たのは・・・
しかし―――状況は、親達が思っていた以上に奇天烈になっており・・・
ラ:遅くなってしまった―――な(???)
大:なにをしているかと思えば・・・何をやっているんだ、あんたは。
誰:ああ〜〜いや、ははは・・・・
どうにもこの子が泣きやまなくて〜〜なんだかこっちの方が泣いてしまいそうだよ・・・
自分の娘同士の交流は、娘達に任せるとして・・・
その、事の経緯を自分達の君主に報告する為、スターシアとエルムドアはシャクラディア城へと来ていました。
そして、仲良くなった娘達を伴い、君主の御前へと向かおうとした処・・・
なんと、計らずも―――
ラ:なにをなさっているのですか・・・女禍様―――
エ:(女禍・・・)ええっ?! じ・・・女禍―――って・・・あの・・・
「シャクラディア帝国」の「皇」である、女禍=ユピテール=アルダーナリシュヴアアラ様??
ラ:そう云う事だ―――フロイライン・・・道理で、時間通りに来ないわけだ・・・
エ:それより・・・あなた・・・
ラ:なにをジロジロと、失礼じゃないか。
エ:あ、いえ・・・スミマセン・・・
ラ:それより・・・私達としては、どうしてあなた様がこのような処に・・・なのですが、まさか「また」―――・・・
女:そんな、他人聞きの悪くなる様な事は云わないでもらえるかな。
それに、私だってたまの息抜きは・・・
大:「必要」だ―――しかし、毎回その理由を使われては、「また逃げ出したのではないか・・・」と、思われても仕方のないと云った処ですかな。
エ:(あははは・・・)大変―――なんですね・・・
女:判ってくれると云うんだね、ありがとう・・・
それに、今までどうにかやって来れたと云うのも、「皇」としては適任を欠いている私が―――ではなく、
優れた「官」・・・「丞相」が切り盛りしてくれているからなんだ。
自分達よりも先んじて、娘達と面通しをしていた人物こそ、この国・・・シャクラディア帝国の皇―――女禍なのでした。
それにしても、どうしてこのような状況になったのかと云うと・・・
(飽くまでも女禍本人の云い分ではw)「息抜き」の為に城内を散策していた処、仲睦まじくじゃれあうヱリヤとエルムに遭遇し、自分もその輪の内に入った処・・・
粗相をして急に泣き出してしまったヱリヤに、慌てふためいてしまった―――と、云う事のようです。
そんな、この国の君主様を横目に、実に手際よくヱリヤの下の後始末を終えたエルムは、
そのままの・・・彼女の人生を全うできた時、会うはずも、必要もなかった大人物と、何気なく会話してしまっている事に、驚きの色は隠せなかったのです。
それはそうと―――・・・
当の目的は果たせられたところで、女禍の方からこんな話題が持ちかけられるのでした。
女:実は・・・お前達に行って貰いたいところがあるんだ。
その場所は―――お前達も既に耳に入れているとは思うのだが・・・
「コクトー」と云う地域近辺に、最近「落下物」があった―――と、云うのだ。
そこで、その近辺に流れている情報を総合的に纏めると・・・どうやらその「落下物」とは、「巡宙艦」らしい・・・
ラ:「巡宙艦」・・・すると―――?
女:うん・・・可能性として考えられるのは、「密航」か「漂着」―――そのどちらかだと考えられる。
そこで・・・ラゼッタ、マグラ―――お前達二人には、そのどちらか・・・の確認と、
あとできれば、その「巡宙艦」に乗っている人物を保護して貰いたいんだ。
「当時」の地球は、大規模な宇宙開拓事業団である『フロンティア』が入植しているとは云え、
まだまだ外宇宙との交流が交わせるだけの「技量」と「度量」を兼ね備えてはいませんでした。
そんなところに、「不審な落下物あり」の一報―――・・・
それに「当時」では、外宇宙からの「訪問」も「管理」されていなかった為、
半ば両極端な軸で物事を考えなくてはならなかったのですが・・・
実は―――「この出来事」こそが、「現在」に通ずる出来事だったならば・・・
我々はまた―――「運命」と云う名の、「神々の気紛れ」に翻弄されてゆくのです・・・
=続く=