もはや、程度の抵抗をする気力も萎え果て、まるで俎上の魚の心境に陥ってしまうエネマ。
そんな彼女を尻目に、フロンティアでもかなりの発言権を有していた、この人物は・・・
ジ:それよりもねぇ・・・あなたが載っていて墜っこちちゃった、あなたの艦―――
あれ、使いモノにならないみたいだわ。
エ:へ? は・・・しょ―――しょほなのでしゅか・・・?
ジ:それにねぇ―――実は私も、「あの連中」から聞かされていた話し、半分までしか信用していなかったのよね。
エ:は・・・あ? 「あの連中」―――???
なぜ・・・「管理・登録」をされていない者が、今まで・・・この地球でのうのうと過ごす事が出来ていたのか―――・・・
その理由は、まだそうした「システム」が、この当時には確立していなかった事も多いにあったわけなのですが・・・
ならばエネマは、悪質な「密航者」か―――果てまたは、何らかの事情により「漂着」してしまったのか・・・
ジィルガからの説明は、そこの処の原因究明に言及していたのです。
そして、あらゆる場合を考察・検証してみた処・・・
エネマは、乗っていた巡宙艦が故障し、地球へと墜落してきた「漂着者」であることが判明したのです。
それにしても・・・不可解なジィルガからの言葉に、エネマは更なる疑問を増やすのですが―――・・・
本来ジィルガは、実はこうした業務は、彼女の管轄外―――だったのです。
しかし・・・今回、可愛がっている「妹」から・・・
女:「ああ、姉さんですか―――実は・・・」
ジ:ああ〜んらん♪ 女禍ちゃんじゃなぁ〜い♪ どうしたの?今日は・・・珍しいわねぇ♪
女:「(あははは・・・)いえ―――それがですね・・・至急、姉さんに会いたいって云う人達がいるんですけど・・・これから会って貰えませんか。」
ジ:(私「に」会いたい・・・ふぅん〜―――)
まあいいけど・・・一体誰なのかしらね?
割とよくある話し(?)―――で、こちらは溺愛して已まないのに、あちらは最近、鬱陶しくさえ思っている・・・
だからこの時、可愛がっている妹の方から連絡を入れてくれると云うのは、ジィルガにしてみれば手離しでも喜びたかったのです。
・・・が、しかし―――
その妹からは、「自分に会いたいと云う地球人がいる」―――と云うだけ・・・
それはそれで、少しガッカリしてしまうのでしたが―――同時にジィルガは・・・
この当時の地球に措いては、自分の「存在」など、一部の地球人にしか知られていない(主な例が、「ミトラ」ことブリジット)・・・はず、なのに??
つまりは、生来からの興味本位も手伝い、「ある者達」に会ってみる事にしたのです。
第二百七十三話;絶対に 笑ってはいけない 「雑技団」
ジ:(・・・)あなたたち―――なの?
雑1:はぁ〜い♪ これから私達が、日頃磨いてきた技の数々を〜見せてあげまする〜♪
それでは最初に〜〜
雑2:え・・・あ、は―――はい・・・
お、お皿を回し〜〜きゃっ?!!
ジ:(回してもいないのに・・・)割れちゃったわねぇ・・・
雑1:あはは〜〜・・・最初はご愛嬌、ご愛嬌♪
さてさて次なるは〜〜?
雑3:お? で・・・は―――せ、拙者の刃の上にて・・・こ、こ、独楽・・・ぬぅおおっ?!
ジ:(載せて回す前に・・・)落ちちゃってるぢやないの・・・
雑1:あ・・・あははは〜―――これも、ご愛嬌wご愛嬌ww
さてさて次なるは〜?
雑4:(・・・)―――
雑1:(お、おい、なにやってんだよ・・・さっさとしろよ!)
雑4:じゃからわしに何をせいと―――!
わしは云ったはずじゃぞ、「わしの術は見世物ではない」と・・・それを―――このような事などやっておれるか!!
ジ:(始める前から・・・)喧嘩始めちゃって―――何をしに来たの、あなた達・・・
妹からの推薦もあり、急遽会ってみる事にしたのですが―――・・・
この「ある者達」、全員が仮面をしていて素性の判らぬ者達にして、「軽業」を生業としている―――のかと思いきや・・・?
未熟過ぎる上に統率も取れていない事に、流石のジィルガも呆れ果ててくるのです。
しかし・・・? この者達は―――???
雑1:あ〜ははは・・・しょうがねえなあ・・・それじゃ最後に、この私が―――
ジ:もういいわ、あなたがこれから何をしようが、この私の心は動かされはしないでしょう。
まあ〜女禍ちゃんを介して・・・と云うのは、少しは知恵が回った様だけれどね・・・
所詮は「それだけ」―――ちょっとだけでも期待をしてしまって、損をした気分だわ。
失敗続きの「絶対に笑ってはいけない雑技団」・・・
そのトリを務めあげようとしている、先程までは他の団員達を紹介・案内役をしていた、「団長」と見られる女性団員が、
自ら修めた「雑技」を披露しようとした処―――・・・
こうした「芸能」の分野でも極めていたジィルガは、それまでの「雑技」の技の粗さと云うモノを目にしていた為、
トリを務める女性団員の「それ」も、それほど変わらない・・・大したものではない―――と、多寡を括っていたのです。
ですが・・・「細工は隆々、仕上げを見てごろうじろ」―――
それまでの三人の失敗など、既に織り込み済み・・・
実を云うと、トリを務める女性団員が披露するモノで、十分過ぎるほどだったのです。
なぜならば・・・このトリを務めた女性団員から紡がれた「噺」と云うのが―――・・・
雑1:実は、私達・・・「未来」から来た―――って、信じる?
なんとも―――突拍子もない・・・これまで以上に「笑えない話し」。
普通ならば、大抵の者が失笑し、その場にいた団員全員を蹴り飛ばしてまで追い出すモノでしたが―――・・・
なんと、ジィルガは―――・・・
ジ:(・・・)なにそれ―――今更冗談を云って、私を笑わかそうとするつもり?
雑1:私が冗談を云っているかどうかは―――この目を見てから云いなよ・・・
ジ:(・・・)ふぅ〜ん―――なるほど・・・そう云う事ね。
判ったわ、聞いてあげましょう、あなたからのその話し・・・
別段、失笑もせず―――芸の下手な雑技団員達も見咎めなかった・・・
ばかりか、何やら前もって知っていた―――知らされていたモノと見え、トリを務めた女性団員と、やり取りを交わすと、
これからの「本題」を話し合う為の「席」に着く事にしたのです。
それにしても・・・なぜジィルガは、噴飯にも似た、この女性団員からの一言を信じようとしたのか・・・
それがどうやら―――・・・
ジ:私も・・・未だ俄かには信じられないけれど、どうやらあなた達が「そう」だと云う事の様ね。
雑2:あの・・・どう云う事なのでしょうか? 私には、何が何やら・・・
雑4:それは、わしとて同じじゃ―――こ奴の突飛な計画に振り回され、策を練る暇すらなかったのじゃからな!
雑3:それにしても・・・なぜそなたは、拙者達の事を信じられたのでござるか。
雑1:(・・・)「今」―――は、どうかは知らないけど・・・私達の時代で「宇宙会議議長」をしている、
「クラリス=サダルスゥド=ロッテンマイヤー」―――て人がいる・・・
ジ:フフフ・・・それだけで十分よ。
その人は「今」も、あそこの「議長」よ―――
それにしても奇遇・・・いや、あの人の顕現からしてみれば、至極当然な事なのよね。
雑4;(?)それは、どう云う事ですかな??
雑1:「予言」―――・・・そのクラリスって人は、少し「未来」のことが判るらしいんだ。
ジ:そう・・・それがあの人の、『予言者』と云う顕現―――
そして、あなた達に会ってみよう・・・と、云うのも・・・
この謎の仮面の雑技団達と会う一週間ほど前に・・・ジィルガは旧くから付き合っていた「友」とも呼べる存在から、一つの「予言」を与えられていました。
『あなたは近々・・・この時代の人間ではない者達と会う事になるでしょう・・・。』
その「予言」の内容とは、不可解かつ奇妙極まりないモノだと云えましたが、他ならぬ旧知の付き合いと云う事もあり、
ジィルガはクラリスからのモノだけに対しては、何の疑いもなく信用することにしていたのです。
それは、ロジック的な―――と云うだけではなく、遙かな過去に誰しもが信用するに足らない「予言」を行い、
そのことが「事実」として起こってしまった事があったのですから・・・
(ここで余談として・・・では、そのクラリスの「予言」の「当事者の一人」というのが、ジィルガだとしたならば・・・・?)
だから今ここで、「未来から来た」と云う、噴飯甚だしい事を云う、仮面の雑技団員からの言葉を鵜呑みにできたのです。
それにどうやら、ジィルガは、この・・・「未来から来たと云う者達」が、どうしてそうなってしまったのかと云う事に、少なからず心当たりがあるようであり・・・
ジ:実は・・・もう一つのあの人からの「予言」で・・・
『今から約100万年後の未来で、ある畏るるべき存在が、目覚めるでしょう・・・』
『そして、その者の覚醒により、「未来」から飛ばされてくる者達が、あるのかも知れません・・・』
―――と、ね。
そしてあなた達が「そう」である確信を、私は得ました。
雑4:本当・・・ですかな? わしらが虚言を申しているやも―――
ジ:その可能性は、限りなく低いと云えるでしょう。
なにより「クラリス」が、「宇宙会議議長」をしている事自体、今現在の、この時間軸に措ける純粋な地球人の知識の内には、あろうはずもありませんからね。
それに・・・そこのあなた、あなたは「后」を経験している―――
雑1:へえええ〜〜判るんだ。
ジ:ええ、勿論。
その「徴」は、あなた達常人には見えなくとも、私には見えるのよ。
そして女禍ちゃんも―――・・・
不思議には思わなかった? あの子が・・・見ず知らずの人間に対し、ここまでの便宜を図ってくれた事を―――
つまりはね、あの子も見えていたのよ・・・あなたが、「宇宙の真理を覗いてきた存在」である事の証しを・・・。
つまりジィルガは、クラリスからの「予言」を授かって以来、近々こうなるであろうことを予感し、「そう」だと云ってくる者達の事を待ち受けていた・・・と云うのです。
それに、ジィルガには見えていたのでした。
仮面をした、女性の雑技団員の一人・・・これは云うまでもなくリリアだったのですが―――その彼女が、「天帝の后」を経験している・・・と云う事を。
そして、なぜリリアとその一行達が、「過去」であるこの時代に飛ばされてきたのか・・・
それは、そう云う事が出来る、唯一無二の存在を知っていたから―――・・・
『不和と争いの女神』―――「エリス」の存在を・・・
=続く=