「なんだか、とんでもない時機に、とんでもない場所へと墜ちてきちゃったものだわ・・・」

「だけど、悪い事ばかりじゃない・・・(エネマ)を慕ってくれる、この惑星の少年や、見かけは成熟していても中身は子供の女性・・・」

「この二人を愛することが、今後の私の人生・・・」

 

生きて行くのに過酷な環境であるこの惑星で、これから生き続けて行くのに、ある措置の提案がなされました。

それが、自分(エ ネ マ)と同じ「Ma宙域」出身者であり、「魔貴族」としても知られているヴァンパイア―――の、「後継者」と見られる若い女性と「同化」するということ・・・

 

そして、その施術が終了すると共に、エネマは「自分が生きている」―――と云う事に歓喜したモノだったのです。

 

ですが、それから矢継ぎ早に―――・・・

 

 

 

大:早速で悪いのだが、この近辺を「カルマ」の奴らが横行していると聞く・・・さて、どうするね?

エ:(カルマ・・・)決まってるだろう―――当然行かさせて貰うよ。

  そこで私も奴らに云いたい事があるしね!!

 

大:フ・フ―――好い返事で何より・・・だ。

  余としては喜ばしく思う。

エ:あ〜〜それと〜〜ですね・・・ちょいと質問あるんだけど、いいかい?

  あんた―――この人(エ ル ム)の「父親」なんだよね・・・?

 

大:そうだが?

  但し―――遺伝学的に「そうか」・・・と問われれば、「そうではない」と云わざるをえんだろうな。

エ:それで〜〜なのかい・・・いやね? なんだかこの人(エ ル ム)・・・豪くあんたに他人行儀だからさ・・・

  だったらさ、「私」はこれから、あんたの事をどう呼んでいいのか〜なんてな事を思っちゃったりして・・・

 

 

 

すると、そこでエルムドアは、「どうとでも呼べばよかろう」―――とは、返しては来ませんでした。

その代わりに、「仮初にも「父」と「娘」になったのだから、そう呼んでくれても構わない」・・・

 

どこか―――強制的ではない・・・

どこか―――寂しげな横顔・・・

 

その時エルムの内に介在しているエネマの人格は、自分が出身としている「Ma宙域」にて君臨していた「魔貴族」の孤独と云うモノを、ほんの少しだけ理解したのでした・・・。

 

 

それはそれとして―――自分達ヴァンパイアが暮らしている地域にも、悪い噂しか聞かない組織の者達が横行している・・・

そんな情報を入手し、早速現地まで赴いてみれば・・・

 

 

 

エ:(あっ! あれは・・・キュクノス―――審問長に、あの時あの場所にいた、「三傑」のフォルネウス!!)

  私が・・・こんな目に遭ってしまったのは・・・総てはあの二人の所為!!

  赦さない・・・赦すわけにはいかない・・・お覚悟! キュクノスにフォルネウス!!

 

 

 

現場に着いた途端、明らかに見覚えのある二人に、すぐにエルムは激昂し、何も考えないまま―――突撃を敢行したのです。

 

一方、キュクノスとフォルネウスは・・・

 

 

 

フ:(フン・・・田舎臭い処だ)おい―――さっさと目的を果たすぞ。

キ:はぁん? 何を偉そうな口を―――確かにワシは、お前らに与しはしたが、お前の部下になった覚えなどないぞ・・・

 

フ:(ちっ・・・小生意気な口を―――だが・・・)

  フフフ・・・このオレに対しても不遜な口の利き方・・・気に入ったぞ。

  そうさ、オレ達「ブラック・ウィドウ」には、「上下」も「対等」も、ない・・・常に「己が一番」だ。

  まあ、人間だった頃のお前が、オレ達の事をどう見ていたかは知らんが・・・お前達の様な、お為ごかしの仲間意識などなかった―――と云う事さ。

 

  但し、「ブラック・ウィドウ」事実上のNo,1―――サウロン様こそは、至上・・・

  あの方の「上」には、なにもいない・・・だからこそオレ達は、あのお方からの命が下れば、それに従わねばならん。

 

キ:フム・・・誰か、その座を狙った事はあるのか―――

 

フ:「ない」・・・とでも思ったのか?

  それこそお笑いよ―――あの方に隙が見えれば、誰しもがその座を狙っている・・・斯く云う、このオレもそうだから・・・な。

  逆を云えば、そんな野心莫き者に、「ブラック・ウィドウ」にいる資格などない・・・即刻排除されるべきだろうな。

 

  だが、一つだけ忠告をしておいてやる―――あの方に挑むと云うのは、それなりの覚悟をしておくことだ。

  このオレも、何度となく、実力も度胸も覚悟もなく挑んで行く奴らを見た事はあるが―――そ奴らは、最後には泣いて命乞いをしたモノだ。

  それを見て、同じ回数だけ侮蔑と憐みを掛けてやったモノだが―――・・・

 

  あの方が偶に見せる隙・・・あれは、あの方にしてみれば「遊戯」に過ぎんのだ―――

  今の処、「フロンティア」との、目立った衝突は―――ない・・・

  あの方も・・・そしてオレ達も、退屈で仕様がないのだ。

 

  だから・・・まあ・・・今回の事も、奴らを刺激する意味では、やる価値はあるのだ・・・。

 

 

 

明らかに上下の関係は成り立っているはず―――なのに、フォルネウスに対して不遜な口の利き方を辞めないキュクノス・・・

そんな彼を、「不遜な奴」とはしながらも、自分達の事が良く理解出来ているモノと思い、少し小気味よくもなったのです。

 

そして彼らが唯一にして絶対に従わなければならない存在こそ―――

サウロン=カルマ=アドラレメク・・

この後、永き歳月を掛け、「フロンティア」と争いあって行く『魔皇』なのでした・・・。

 

 

そんな彼らに、まさに「奇襲」「急襲」を敢行してきたのは―――・・・

 

 

 

エ:やあああっ―――お覚悟!!

 

キ:(うん?)貴様は・・・エルム?

  なぜ貴様が生きておる―――貴様はあの時、このワシが息の根を止めた筈!!

 

フ:(・・・)いや・・・あの体色―――お前がオレ達に寝返った時、あの人間の娘に見覚えがあったが・・・あの時は、こんな肌の色はしていなかった・・・

  しかもその肌の色―――・・・考えられる事はただ一つ・・・

  奴だ・・・奴がここに来ていると云うのか!! エルムドア―――!!!

 

 

 

しかし、赤銅色の魔人が叫ぼうとも、彼方よりの返事はありませんでした。

 

そうした自分達の隙を衝き、ヴァンパイアに成り立ての女性は―――・・・

 

 

 

エ:喰らいなさい!          ―――=バーン・ナックル=―――

 

キ:(フン・・・)

  どうやら、技を仕掛けるタイミングを見誤ったようだな―――エルム・・・

  その技は、当たれば威力・破壊力ともに申し分ないが、技の終了後の硬直が大きいのだ!!

 

  しかも、その技も元はと云えば、ワシが授けた業・・・

  貴様が存在していた事には少々驚かされたが、そうか・・・貴様もどうやら、人間を棄てたようだな!!

 

フ:(!!)ち・・・バカな奴が、何を悦に浸っている―――!

  その技は囮だ!!

 

キ:なに・・・ぬぅおっ!

 

エ:(く・・・)        ―――=パワー・ゲイザー=―――

 

キ:ぬうぅぅ・・・味なマネを!!

  敢えて技を空振りさせておいて、技後の硬直を防ぐべく次なる技の布石としていたとはなあっ!!

  だが・・・甘いわあっ!! ぬうんっ―――!!

 

エ:(!)そんな・・・あの技のコンビネーションを・・・見切られた??

 

 

 

最初の、突撃の技を「見切り」で躱され、身体が宙に浮いた状態になるエルム・・・

それに、そもそもエルムにこの技を伝授したのは、他ならぬエルムの上司であったキュクノスだったのです。

 

が・・・しかし、実はその事も、エルムにしてみれば「織り込み済み」・・・

 

自分の体が宙を泳いでいる・・・そうしたエルムにしてみれば、不利な体勢すら利用した・・・

人間だった時分には、とてもそんな考えまで及びもつかなかった「連携(コンビネーション・アーツ)」を編み出し、実行に移せたのも、「ある存在」のお陰でもあったのです。

 

けれども、そんなエルムの連携技を嘲笑うかのように弾き返すキュクノス―――

そして、彼からの言葉を耳にしたエルムは・・・

 

 

 

キ:貴様が人間を棄てたのと同様に、ワシも既に人間を棄てておる・・・

  どうだ・・・素晴らしかろう―――惰弱な人間だった時分には、及びもつかなかった攻撃力に防御力・・・

  それを備えておるお陰で、貴様の「超必殺技」も、蚊が刺した程度にも感じぬわ!!

 

 

 

その・・・言葉・・・

かつての上司であり、敬愛していた者の口から吐かれた言葉に・・・

 

エルムは我が耳を疑いました

 

そして次に、自身の腕を見た時―――我が目を・・・身を疑いました

 

そう・・・自分は―――・・・

 

 

 

エ:そん・・・な? わ・・・私は・・・いつから人間ではなくなってしまったの・・・?

  私は・・・私は・・・人間を棄てたつもりなんてない!

  こんな・・・こんなのは、何かの冗談・・・そうよ―――これは悪い冗談なんだわ?!

 

 

 

「そうなんだ・・・この人は、現在の自分を、認識出来ていない・・・」

 

それは一種の「記憶の錯綜」―――

自ら望んで「復讐」を口にし、「契約」をしたはずなのに・・・

なぜかエルムはキュクノスの言葉に強く反応を示し、自らの意思で人間を棄ててしまった事など忘れてしまっていたのです。

 

その様子を見ていたフォルネウスは、これを機会に―――と、未だ混乱が収まらないでいる未熟なヴァンパイアを畳みかけるよう、周囲の部下にも指示を出したのです。

 

しかし・・・今回、ある契機をしてエルムと「同化」を果たしていた存在は・・・

 

 

 

第二百七十六話;見慣れぬ技

 

 

 

エ:フ・・・このまま、易々とやられるかってんだ!!              ―――=キャプチュード=―――

 

キ:(むっ?)技の毛並みが急に変わりおった・・・エルム、貴様―――なんなのだそれは!!

 

エ:あんたなんぞに教えてやる義理なんざ、これつぽっちもないね!!

 

フ:(あの喋り方・・・今までの「それ」ではないな―――)

  気をつけろキュクノス!

 

キ:フン・・・何を警戒しているのか知らんが、所詮は女―――ワシに敵うはずもなかろうが!!

 

エ:フン・・・女―――ねえ・・・

  その間違った見解、すぐにでも改めさせてやるよ!         ―――=飛燕原爆固め=―――

 

キ:ぐおお・・・? こ―――こやつ!!

 

フ:(ち・・・バカめが―――)

  どうやらお前は、己を過信し過ぎるきらいがあるようだな・・・

  それに、女ぁ―――どうやらお前、「総合格闘技(プ  ロ  レ  ス)」の覚えがあるようだな・・・

 

エ:おや、どうやらバレちまったようだよ・・・。

  ああ、そうさ・・・私こそは、現在では絶えて久しい、「宇宙プロレス」の「」テーズ道場」最後の門下生なのさ!!

 

フ:フン・・そう云う事か―――ならば、オレの相手にとっても不足はないみたいだな・・・

  ならば、手加減も無用・・・と、云う事だ―――・・・

  ぬうぅんっ―――!!!

 

エ:(!! こ・・・っ、これは―――!!)

 

 

 

「主人格」であるエルムの代わりとして出てきたエネマが放った技―――

自分が部下に伝授した技ではないモノを繰り出された事に、僅かにキュクノスに動揺が奔り、技を極められてしまいました。

 

しかし、フォルネウスはエネマが放った技に覚えがあり、即座に エルム(エ ネ マ) が何者であるかを特定したのです。

 

そう・・・肉体を武器とするという面では、キュクノス達の技とはそう変わりがありませんでしたが、

どちらかと云えば、エルムが使用した技の方が現実的・・・

現にキュクノスは、身体能力的にも劣っているはずの存在が極めてきた技から、逃げられずにいたのですから・・・

 

しかも、「宇宙プロレス界」に措いて、幾人ものチャンピオンを輩出させてきた「道場」の名前が出るに至り・・・

フォルネウスは、この後厄介な存在となりそうな未熟なヴァンパイアを、ここで徹底的に潰しておいた方が最善だと考え、

彼自身の本性を曝け出し始めたのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと