行動を起こした時、何一つとして判らなかった動機が、国と国を賭けた遊興で敗北を宣言された時に、初めて明らかとされました。
そう・・・リリアは当初から、自分の国を幼馴染に明け渡す為だけに、今回の騒動を仕掛けたのです。
しかし―――その事が判ったとしても、リリアがどうしてその事に踏み切ろうとしたのか・・・ソフィアにはまだ判りませんでした。
だから、そんな思案顔をリリアに覗かれ―――・・・
リ:どうした―――あんまし嬉しそうじゃないな・・・お前の領土が広くなったんだ、もう少し嬉しそうな顔をしろよ。
ソ:何を云っているんですか・・・こんなこと、素直に喜べるはずもありませんでしょう。
それに・・・ここ最近はおかしなことばかり―――プロメテウスが、この国に侵攻戦を仕掛けてきた時だって・・・
リ:ああ―――あれは中々傑作だったな♪
あれだけ大袈裟に仕掛けといて、結局四つある橋を越えた軍団は一つとしてない・・・それどころか、犠牲者は一人と来たもんだw
古今に見る、稀な不思議事じゃないか〜w
ソ:・・・なんのことを―――?
(!)―――では・・・するとあなたが・・・!
リ:・・・ああ―――その通りさ。
けどな―――ソフィア・・・あの戦で、オデッセイアの軍旗が一つでも翻っていた・・・と、報告にあったか。
リリアからのその言葉を聞くなり、ソフィアはリリアからの援軍要請拒絶の際の言葉を思い出していました。
「オデッセイアは、今回の事には一切関わりを持たない」
もし―――今回の防衛戦に参加した隊の内に、一本でもオデッセイアの軍旗が翻っていれば、それはオデッセイアと云う国が、サライを助ける為に援軍を派遣した証しとなる・・・
そこでリリアは、敢えて今回はそんなモノを持ち出さず、押し寄せてくるプロメテウス軍を迎撃して見せたのです。
そしてその後―――自分達の国は関わりはないとした上で、あわや「侵攻」と誤解され易い行動に出た時、人々はどう思うだろう・・・
オデッセイアも、所詮はプロメテウスと同じ―――・・・サライを狙う国家の一つであり、自分達の国主はオデッセイアの姫君の野望を打ち砕いた上に、彼の国を傘下の一つに加えた・・・
やはり、自分達の国主・・・ソフィア女王こそが自分達の頂点に立つべきであり、この土地を平安に導いてくれるのだろう・・・
それが・・・リリアが描いた謀略だとも知らずに―――
けれど、ソフィアはそう簡単にはいきませんでした。
経緯はどうであれ、今までのリリアの行動の謎を知ってしまった―――
曲がりなりにも、自分達の国を救ってくれた救世主が、今度は汚名を着せられようとしている・・・
とは云え、未だそこの処の謎は明かされてはいないのですが―――・・・
この時ソフィアは、少し前に巷で流れていた、ある奇妙な噂を思い出していたのでした。
ソ:・・・そう云えばあなた―――今より少し前に、またどこかへと行っていたみたいね・・・
リ:ほぉ〜〜―――誰から聞いた。
ソ:市子さんから・・・それにあの人には、私が事の真相を確かめさせる為に、オデッセイアへと送ったのだけれど・・・やはりどこかが可笑しい―――って・・・
リ:そか・・・市子は敏感だもんなw
ソ:では・・・やはり―――?!
リ:・・・ああ―――あの時私は、確かにノーブリックにはいなかった・・・
いや、オデッセイアにも・・・況してやエクステナーのどこにもいなかったのさ。
それこそは衝撃の事実―――
あの当時、巷に流れていた噂・・・「オデッセイアの姫君・リリアが、またもや失踪をした」―――
その噂こそが真実であり、リリア本人の口からも、この大陸・・・「エクステナー大陸」のどこにも存在してはいなかった―――と、告白を受けたのです。
では・・・一体どこに彼女はいたと云うのでしょうか―――
その事を知りたいのなら・・・と、リリアは―――ソフィアにある条件を突き付けるのでした。
第二十八話;斡旋者
而してその条件とは―――・・・
ソ:サライとオデッセイアを一つに・・・そして、その国の頂点には―――この私を??
リ:ああ、これで晴れてお前は、この大陸の2/3を占める大国の主となるわけだ。
そしてこれから・・・お前は、この私が会ってきた人に会わなければならない―――
ソ:それはもしかすると―――?!!
リ:フフッ・・・察しが好いな―――そうだ、私が「あの噂」が流れた時、お会いしていた方なのだ。
お前は私より幾分か賢いからな・・・呑みこみも早い―――そして、そこで知ることになるさ、私がどうしてこんなことをする気になったのかを・・・
やはり・・・今までとはどこかが違っていた―――
昔から知る自分の幼馴染は、昔のままの幼馴染ではなかった―――
あの噂が流れてより、その思考に影響を及ぼせるだけの人物と出会い、感化されて今回の様な謀略を乗ずるまでに至った―――
その人物とは一体誰なのだろうか―――・・・
ソフィアの興味は、最早その一点に絞られていました。
その事をリリアが察すると―――・・・
リ:ラスネール、マキさん・・・ソフィアが条件の受諾をした、これより後はあんた達に―――
ソ:・・・え? あなたは―――この方の命を狙っていたと云う・・・それに、そちらの方は・・・??
マ:ニュッフフ〜ン♪ ども―――ヨロピク〜〜♪ マキちゃんどえす!w
リ:この人は―――私がお会いした人の部下で、ラスネールはマキさんの従者に当たると云う・・・。
それにな―――ソフィア・・・あの防衛戦も、実を云うとこの人たちと同じ国に所属している将軍様を、一時的に貸してもらっていたんだ。
しかも、その人達も自分が所属している国の軍隊の証しなどは、何一つ身につけてはいない・・・
判るかソフィア―――私は、あの人達の真似事をしただけなんだよ・・・。
自分達の国が協力し合っても手に余る強国にして強兵―――プロメテウスを、犠牲をたった一人出しただけで退けてしまった・・・
そんな、プロメテウスをも凌ぐ強兵を擁しながらも、自分達の国家があるこの大陸には、そんな存在すら伺い知ることはありませんでした。
それもそのはず、彼女達が属する国家は、この大陸―――「エクステナー大陸」にはないのだから・・・
その国家「パライソ」がある大陸は―――「エクステナー大陸」から北西に向かう事、数百k・・・「ガルバディア大陸」―――
自分達が作成している地図にすら載らない、遙か遠くにある未知なる大陸―――・・・
そんな場所にどうやって行くのか―――ソフィアは不安を募らせるのですが・・・
マ:そこんとこはご心配なく〜〜。
この私が、ちょちょいのちょ〜〜い―――と、運んだけるヨン♪
ソ:あなたが??
リ:ああ―――それこそ、まさに「一瞬」だよ。
そして見て来い―――私がこの目に収めてきたモノと同じモノを・・・
そして感じて来い―――私が変わってきた、そのものを・・・
ソ:それは・・・どことなく判りましたけれど―――
そんなに急ぐ理由がどこに―――それに、私が居なくなってしまったら、あなたが構想に描いている事が台無しには・・・
リ:そこんところは心配する必要はない―――
お前が居なくなっている間、この私が責任をもって私とお前の国を護ってやるさ。
未だあどけなさの抜けない「侯爵」を見て、先程感じていた不安をより一層強めてしまうソフィア・・・
しかし重要な事はそんな処にはなく、今もって尚―――目前で進行しているのでした。
それが、サライとオデッセイアを一つにする事然り―――
その統一国家の新たな当主に、ソフィアが就任することも然り―――
それに・・・そのソフィア自身も、この直後に別の場所に訪問しなければならないのも然り―――
その間、リリアがソフィアの代理を務めるのも、また然り―――
その事に気付くと、今・・・自分は、何かとんでもないことを決断してしまったのでは―――と、ソフィアは不安に駆られてしまうのですが、
自分が抱える不安などは、これから知りゆく「大義」に比べれば、実に小かき事だと気付くに至るのです。
=続く=