エルムとロデリックの対決は、待ったなし―――の状況となりましたが・・・
その前に、なぜエルムの呪縛は解かれたのか・・・
それは―――・・・
リ:へっ―――見つけたぜ!
他人の決着に水を差そうなんざ・・・お前ら本当に、いけ好かねえ奴らだな!!
神:なに?! 何者だお前は!!
いや・・・それよりもどうしてこの場所が・・・
リ:うるせえよ・・・お前の喋ってる言葉、金輪際聞きたくもねえ―――・・・
市:(・・・)これから逝く者達に、餞別などあり得ません、お覚悟なさい!
神:黙れぇ! 小癪な小娘が!!
市:愚かな・・・ ――=破邪顕正・流仙月花=――
蓮:この世に・・・云い遺しおく事は―――
神:洒落臭い―――我らの邪魔立て・・・
蓮:それが最後の辞とは・・・味気のない ――=無想陰殺=――
た:ふうむ・・・このような稚拙なモノで、わしの目を欺けられると思うておったとはのw
意外と・・・可愛い処があるようじゃな、お主たちww
神:おのれえぇ〜〜ふざけおって! 貴様―――・・・
た:ふ・ふ・ふ・・・それにしても、あまりにも可愛うていぢめとうなってきたわ・・・ ――=凶冥十殺陣=――
リリア達に見つかってしまったのが運の尽き―――
マハトマ教の神祇官に扮したカルマ達(いずれもキュクノス配下と断定)は、一瞬の下に葬り去られてしまいました。
しかし―――?
この時代の、こうした一つの事件性に関わり合いそうな事に関与をしてしまったら、この後の歴史に大きく影響するのでは―――と、思えてくるのですが・・・
それが実は、事態がこうなる少し前に、ある人物の訪問を受けていた・・・と、したなら?
ジ:ハァロォ〜♪
リ:(ン・ゲ・・・)あ〜〜〜あははは・・・い、好い天気っすねえ?!w
ジ:アン、もう・・・白々しいんだから―――
けれど、今回はちょっとばかり手を貸して欲しくって、こうして私自身が足を運んでいる〜〜ってことなのよ。
リ:エ・・・エ〜〜ト? ハハ・・・しょおなのでしゅか??
た:それより・・・いいのですかな?
時代の違うわしらが、この時代で「動く」―――となると、後の作用が・・・
ジ:そこんところは、心配ご無用!♪
こちらが指示した通りにやってもらえれば、歴史に干渉した事にはならないらしいから。
「またしてもの「大人の事情」の発動・・・」と、市子は云い掛けましたが、
そうしたこともないと、こうした無茶な設定は無理があるらしく、今は口を噤むしか他はなかったようです。
しかし、そう・・・あの時なぜ、偽神祇官達がエルムの馘を断ち切る為に現れなかったのか・・・これで納得が出来ると云うモノ―――
それはさておき・・・こちらではまさに修羅場―――
「吸血鬼」と「聖騎士」の一騎討ち―――
しかし、所詮・・・
エ:そう・・・この「私」に闘争を仕掛ける意味・・・充分に理解していると云うのね・・・。
「判った」わ―――
先刻までは消極的で、彼自身がそう望むなら、為すがままでも構わない―――とさえ思っていたエルム・・・
が、しかし―――・・・一度「闘争」と聞くと、態度は一変したのでした。
そう・・・紛れもなくエルムは―――「理解して」いました・・・
自分が成った、種族の事を・・・
「闘争」を、愛して已まない、「闘争嗜好者」の流儀を・・・
そして勝負は、一瞬にして着い―――
エ:――=瞬極殺=――
ロ:―――・・・
いえ、しかし・・・それは最早「勝負」と云うのもおこがましい有様でした・・・。
それ程一方的―――エルムが放った強烈な拳は、ロデリックの鋼で出来た鎧の胸部を突き破り、彼の肉体をも破壊・・・
文字通り、一瞬の下にして地獄へと叩き落としたのです。
ですが・・・これだけでは説明不足、何しろロデリックは―――
エ:(!!)どうし・・・どうして防御の構えを解いたの? ロデリック―――!
ロ:フ・・・フフフ・・・様はない・・・
先程まで、お前を殺す・・・だのと・・・云っておきながら・・・
結局の処・・・オレが一番・・・なにも判っちゃいなかった・・・のさ・・・
ああ・・・そうさ・・・お前に云われるまでもなく・・・気付いていたよ・・・
だけど・・・気付くのが遅かった・・・のさ・・・
もう・・・元の・・・あの頃の関係に・・・戻れないまでに・・・
エ:そんな・・・そんなこと、私は気になんかしちゃいないよ!!
ロ:フフ・・・フ・・・泣くなよ―――なぜ、「鬼」が泣く・・・童にでも追われたのか・・・
「鬼」が・・・泣くな―――泣きたくないから、「鬼」になったのだろう・・・
「人」は、泣いて、涙が枯れて果てるから・・・
「鬼」になり、化け物に成り果て・・・成って、果てるのだ・・・
ならば、笑え・・・傲岸に、不遜に、笑ってくれ・・・いつもの様に―――
第二百八十三話;吸血への覚醒
自分の所業など、判っていた―――
あたら、恩を仇で返す―――ということを・・・
そのことに、彼はいつしか気付きました・・・
ですが、気付いた処で遅過ぎた・・・
自分は、全くの「道化師」―――
自分を、立派になるまで育ててくれた人に、唾棄をして去り―――
そしてまた・・・今は・・・恩のある人を、討とうとまでしていた・・・
「なにをやっていたんだ、オレは―――」
「こんなにも可愛くて、美しい・・・それでいて愛すべき人を、泣かせるなんて・・・」
「オレは・・・一人の人間の前に、男として失格だ・・・」
「だから・・・オレは―――・・・」
考察が、その域まで達すると、後は・・・自然と防ぐ手が下がっていました。
いや―――それよりも以前に、彼は気付いていたのかもしれません。
だからこそ、「道化師」に成り下がってしまった自分を、叱咤して貰いたいがため、エルムを誘い出し・・・
エルムもまた、ロデリックに応えたのではないか―――・・・
そうリリアとたまもは理解しました。
ですが、いずれにしても結果は、ただ一つ―――
新興国「クーナ」の国主でもあるロデリック=フェデラー=クズィールフは、ヴァンパイアの「男爵」エルム=シュターデン=カーミラとの闘争に敗れ・・・
エ:あなたは・・・私! あなたは・・・私・・・だったのよ―――
私も・・・この通りの有様だった・・・私も、この通りの様だったのよ!!
本当は・・・気付いていた・・・知らない間に・・・私でも、知らない間に!
闘争ことへの愉悦感―――次の・・・次の為の闘争が繰り広げられる事が、どんなにか愉しいモノか・・・
人間だった頃には味わえなかった悦楽が・・・ヴァンパイアになって判ってきた・・・
私が・・・本当の意味で謝らなくてはならなかったのは、私の方だったのよ!!
あ・あ・・・それに・・・もう―――・・・
その時―――史実では、目撃者はいなかった・・・と、されてはいましたが、
なぜそれが「初めて」だったかは、後のエルムの行動に、如実に・・・顕著に表れていたからなのでした。
それよりも、史実「的」には、「目撃者はいなかった」とされていた、今回の出来事ではありましたが・・・
実はそれを、はっきりと「目撃者達」はいたのです。
そう―――・・・
リ:(あ・・・っ、ああ―――っ!!)
市:(エルム様が・・・)
蓮:(あの騎士を・・・)
た:(自らの意思で、血を吸いおったな・・・じゃが―――)
「偽神祇官達」を始末してきたリリア達が、事の成り行きを大人しく見守っていた時、
エルムは・・・自分の意思で、既に亡くなっているロデリックの首筋に牙を立て、自らの気の向くまま・・・咽喉の渇きを潤したのです。
而してそう―――これが最初の・・・今までロクに、満足に生き血を吸えなかった者が、
初めて自らの意思によって、行為に及んだ最初の事例・・・
それが・・・幼い頃、自分を慕ってくれていた、愛する者の血を吸った事により、顕れてきた変化とは・・・
一つ云えた事と云えば、その後の「男爵」の動向は、前にも況してヴァンパイア然としてきたということです。
=続く=