この(ひろ)い大宇宙に、遠征に出かけ、凱旋の途についている者達がいました・・・。

 

これは、その艦内にて―――

 

 

 

ヱ:どうしたの、シュターデン・・・考え込むなんて、あなたらしくないわね―――

エ:ああ・・・お前サマかい―――

  いやね・・・今回も、色々あったなあ〜なんて。

 

ヱ:(・・・)「色々」ね―――まあ、多くは聞かない事にするわ。

  誰かさんの下手糞なナビのお陰で、「マスターズ」は逃がしちゃったわけだし。

エ:アッハハ〜w それ、きっつぅ〜いww

  ま・・・それはそれでいいんだけどさ―――・・・

 

ヱ:(ん?)どうしたの―――・・・

エ:ん〜? う〜ん・・・

  なんだかさあ・・・急に、あの時の―――仮面をした「決して笑っちゃいけない雑技団」の事を思い出しちゃってね・・・

 

ヱ:ああ―――・・・そう云えば、そう云う事もあったわね。

  それが何か・・・?

 

 

 

その艦―――「ヴァルドノフスク」にて、この度7度目の防衛を果たし、「G−1」の一つを獲得してきたエルムとヱリヤがいました。

 

その会話の中で、ふとエルムは大昔の出来事の事を思い出していたのです。

 

そう・・・「あの頃」は、なにもかも―――自分も・・・隣りにいる友も、未熟だったあの頃・・・

強くなる事だけに躍起になり、周囲(ま わ)りも見えなくなりそうだったあの頃に、突然出会った者達・・・

そんなに「芸」は巧くはないのに、一所懸命で―――観る者達を笑わせようとしている・・・

 

けれど、決して・・・その懸命さゆえに、笑えはしない―――

しかしそこで、何かを教わった気分になったのです。

 

そんな彼ら彼女達に出会ったエルムにヱリヤ達ではありましたが、当時としての二人への風当たりは強く、

「決して笑ってはいけない雑技団」に出会った直後に、当時の「皇」である女禍から、血の封印である「八苦」を施されたのは、まだ記憶に新しかったのです。

 

 

ところで・・・そんな―――「決して笑ってはいけない雑技団」は・・・と、云うと・・・

 

 

 

リ:あ゛〜〜ってって・・・まぁだ頭ン内、クラックラするわ・・・

市:し―――しかし・・・これで終わり・・・と、云うワケでは・・・

蓮:ないようで、ござるな―――・・・

た:とは云え、そう悲観的にならずとも好い様じゃぞ。

 

市:(!)すると―――

た:うむ、また僅かながらに戻ってきておる。

  その証拠としてじゃな・・・

 

 

 

どうやら、また「タイム・リープ」をした形跡があり、自分達がどの時代にいるのかの検証を、たまもが行った処・・・

計らずとも、少しずつ「現代」に戻っている事が判ってきたのです。

 

それにしても・・・その事を、どうして判ったのか―――と、云うと・・・

 

 

 

リ:あ〜ら? ヱリヤさんまた縮んでら―――

蓮:・・・と云うよりは、拙者達が知っておる姿ですな。

市:―――と、云う事は・・・

た:うむ・・・しかも、周囲(ま わ)りの取り巻きも違っておる事だし―――なにより、この空間に漂ってきておる緊張感が、最早ただ事ではない・・・

 

 

 

当時の「皇」である女禍の御前に居並ぶ諸百官の内に、これまで目にしてきた「ある人物」の変化を以て、

自分達は少しずつながらも「現代」に戻ってきている事を知ることができたのでした。

 

そう・・・「ハイランダー」のヱリヤは、年齢を経る毎に、身体の成長が逆行してしまう、特殊な種族・・・

しかもその姿は、ようやく自分達が知っている姿だ―――と云うモノでしたが、

たまもによれば、「皇」を取り巻く他の官達の顔触れも違ってきていることから、現在自分達がいる時代の事を、「現代」だとは思わなかったのです。

 

それに・・・これまでにない緊張感―――

しかも、「皇」の御前に諸百官が居並んでいる・・・と、云うのも―――

 

 

 

ヱ:丞相―――お恐れながら、ご注進申し上げます!

ジ:なんでしょう―――驃騎将軍・ヱリヤ

 

ヱ:はい・・・ここの処のカルマの所業―――最早目に余る処があります。

  それに彼奴らめは、徐々に勢力を拡大し、今や帝国と二分する勢いさえあります。

  ここは一つ・・・出る杭は打った方が良い―――かと・・・

 

官:いやいや―――しかし、また戦となると、民達への損害・被害は増える一方ですぞ。

官:いかにも―――現に、前の出師で税を増やしたばかり・・・

  これ以上の戦を仕掛けて、国民への負担を強いるのは、あまり好いとは申せませんなぁ・・・

 

ヱ:(・・・)そんな事は判っている―――!

  だけど・・・このまま彼奴らめを、のさばらせていいモノなのでしょうか?

 

官:それこそ―――議題のすり替えと云うものでしょう・・・

  それは確かに、武官である「驃騎」「車騎」量将軍に置かれては、武の制圧にて、かの国を押しとどめる考えでありましょうが・・・

 

 

 

ここ近年に措いてのカルマの侵攻は目覚ましく、ガルヴァディア大陸の覇権を、シャクラディア帝国と二分する勢いだったのです。

それに、永年の宿敵の台頭に焦りを感じていた事もあり、今のこの時期にカルマを徹底的に叩くべし―――と、驃騎将軍・ヱリヤは声高に述べるのでしたが・・・

内政を司る分官からは、立て続けの出師は、国民に負担を強いるばかりであり―――と、暗に・・・これまでの出師で辛勝を修めてきた、軍部への批判も込められていたのです。

 

そう・・・「勝つ」には「勝つ」―――のですが・・・

これと云って期待されていた戦果もなく、ただ形の上だけの「勝利」・・・

かと云って、「カルマ侵略」―――の報があれば、出撃しないわけにもいかず・・・

その反面、戦費はかさむばかり・・・

 

そんな事に、当時の「皇」である女禍は、心を痛めているのでしたが・・・

 

 

 

ジ:(・・・)判りました―――では、驃騎将軍・ヱリヤの一隊は、ユグノスニア高原へ・・・

  車騎将軍・エルムは、グランガスニア平原へと陣を張りなさい。

女:(!!)姉さ―――丞相!! しかしそれでは・・・

 

ジ:陛下―――この私に、些かの考えがございますれば・・・

  それでもし、情勢が不利になるようでしたらば、この私を罰し下さいませ・・・。

 

 

 

「皇」を補佐する「丞相」であったジィルガは、なぜか一部に反対する者達の声があったにも拘らず、

驃騎・車騎の両将軍に出陣の令を云い渡したのです。

 

これには、流石の女禍も驚いていたようでしたが、どうやらジィルガには、一計の思案があった模様・・・

そしてその「一計」というのも・・・

 

 

 

ヱ:(!)この書状は―――

エ:なるほど・・・マハトマとの連携―――と云う事でしたか・・・

  いや、流石はお師様。

 

ヱ:しかし・・・こんな「お為ごかし」で、彼奴らが退き下がるほど・・・

ジ:「甘くはない」・・・フフ―――けれどね、実績はあるのよ。

  以前の会戦で、あなた達が苦戦していた時・・・急にカルマが退いた事例があったでしょう。

  では・・・アレは一体誰が?

 

エ:(!)まさか―――・・・

ジ:そう・・・マハトマ教・教主・ナユタ=ディーバ=シルメリア・・・

  彼の者が、魔皇・サウロンに親書を宛てたからなのよ。

  どうやらあの「小僧」も、まだ人の心は残っていたみたいね。

 

エ:それより・・・私達は、「ただ」出陣をするだけで良いのですか?

ジ:ええ―――あとの段取りは、彼らがしてくれるはずよ。

 

 

 

「永世の中立主義」―――であるマハトマ教の教主より、この度、一方的に緊張を醸しているカルマを説得するための、協力を要請する書状が届いていました。

しかも・・・この見返りに、マハトマ教を、国家単位で認める措置を求める意味のモノまで添えられていたのです。

(そしてこれ以降、マハトマ教を中心とする国家「サライ」は、「列強」入りを果たして行くのである)

 

この事にジィルガは、「虫が良過ぎる」―――と思う反面、この状況を利用する手はないモノとし、この条件を呑む事にしたのです。

 

こうして―――上辺だけの出征はなされ、「予定通り」両軍の緊張が張り詰める中、マハトマ教よりの使者が両軍の間を取り持ち、

ここにこうして、この度の出征は、両軍とも一兵の損害も出さず、物別れに終わったのです。

 

 

しかし―――・・・エルムが退き揚げる途中・・・

 

 

 

第二百八十五話;星が降って来た日

 

 

 

エ:あれ・・・は? 「流れ星」―――?!

 

 

 

紅く・・・煌めく・・・一条の光―――

その光が、地上に墜ちたか・・・に思えたのでしたが―――

不思議と、大音響・大爆音・・・それに大爆発までも伴う様な災害ではなかった為、逆に怪しいと思ったエルムは現場に急行してみると・・・

 

 

 

エ:あっ―――お前サマ・・・

ヱ:お前か・・・やはり、気になってきたようだな。

 

エ:そりゃそうだろう―――だって、宇宙(ソ ラ)からの落下物があって、何事もなかった・・・なんて、考えられないからね!?

ヱ:うむ・・・しかも、今回は隕石だ―――

 

エ:隕石・・・そう云えば―――「(エネマ)」の時の事を思い出してきたよ・・・

ヱ:はははっ―――あの頃は、私もシュターデンも、若かった・・・な。

  それより、事の次第を丞相に知らせなければ・・・今回の事態で争議されるきらいもある。

 

 

 

見た目では・・・「バスケット・ポール大」の隕石・・・

その大きさの隕石が、ほぼ元の大きさ質量を損なわずに墜ちて来て、一帯が無事なはずなどありませんでした。

 

しかし・・・それとは裏腹に、隕石が墜ちた地域には、これと云って騒ぐほどの損害は見られなかった・・・

 

この時の二人には、まだこの事自体の意味はよくは判りませんでしたが、上層部の二人にしてみれば、この事案だけでも「一大事」・・・

 

だから―――この隕石と見られる物体が、話題の中心となって行くのに、そう時間はかからなかったのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと