この度の出征は物別れに終わり、各々が一路、帰途についていた時―――
図らずも、天空より紅い光を帯びた物体が墜ちてきたのでした。
その件も併せて、丞相・ジィルガに報告をするエルムにヱリヤでしたが・・・
この話題は、彼女達が思っていた以上に大きかったのです。
ジ:それで・・・その物体は?
エ:はい―――丁度・・・このくらいの大きさの・・・球状形態でした。
女:ならば・・・周囲はさぞかし荒れているだろうな。
では、姉さ―――丞相、至急彼の地に人をやって・・・
ヱ:いえ、お言葉を返すようですが、周辺の土地は、これと云って目立った損害は見当たりませんでした。
ジ:(・・・)それは有り得ないわね。
先程エルムが指摘して見せた大きさのモノが、宇宙から飛来し、この地球上に墜ちてきたのであれば、
周辺は半径数kmに亘ってのクレーターが出来るはず・・・
なのに、それが「なにもなかった」とは・・・
そう―――宇宙の物理法則を無視するかのような出来事・・・
喩え、バスケットボール大の大きさとは云え、宇宙からの飛来物が地球の引力によって招き寄せられ、
大気圏に突入し地上に墜ちたとはしても、ジィルガが指摘して見せた損害は免れられない処だったのです。
それを・・・大気圏で燃え尽きもせず―――墜落した衝撃で砕けもせず―――しかも、周辺の土地を広大に亘って損傷すらもしなかったとは・・・
するとそこで、この報告を丞相・ジィルガと共に聞いていた皇・女禍は、何やら意味深な発言をしたのです。
女:するとなると・・・これはやはり、あの事と関係があるのでは―――?
エ:「あの事」?
ジ:ええ―――実は・・・
こうなる以前、私達は「救難信号」を受けていたの。
でもその「信号」は、私達の宇宙のモノではないし・・・どうするべきか迷っていた処なのよ。
ヱ:(「私達の」・・・?)でも、それでは―――
女:しかし、この地球上に墜ちてきた以上、私達はこれを保護しなければなりませんね。
ジ:そうね・・・それに、実は私も「それ」に興味があるのよね〜♪
上層の二人には、どうやら今回の物体の事が、事前に判っていたようでした。
それと云うのも、実はここ二・三日前から、救難を求める信号らしきモノを探知しており、その信号の出処を探っていた処・・・
この地球の大気圏に突入した辺りから、その信号が途絶えてしまっていた―――
つまり、時機的に見ても、その「隕石らしき」物体に、自分達が求める謎の答えが詰まっているのでは―――と、していたのです。
そして―――準備を整えて、件の落下物の地点まで足を運んでみた処・・・
エ:あっ―――ありました、アレです!
ジ:(・・・)ふ〜ん・・・やはりね―――
ヱ:えっ? なにか・・・どうかされたのですか? 丞相―――!!
ジ:この状況をよく御覧なさい、確かにあなた達の報告に、嘘偽りはありませんでした―――が・・・
この状況自体が、現在、私達「フロンティア」が所持している技術よりも、先端を行っている・・・と、云う事を。
その状況こそは、考えられもしない・・・
広大なクレーターの一つもなく、ただ平らかな平原に、放置されたままの球体が一つ・・・
この状況一つだけで、この宇宙からの飛来物が、どこか・・・自分達に対してのアンチ・テーゼであるようにも思われたのです。
しかし―――とは云っても、この状況を放って置くわけにもいかず・・・
ジ:さあ〜て・・・そうは云っても、どこから調べれば―――・・・
あら・・・これは?
女:姉さん、どうかしましたか?
ジ:ああ、女禍ちゃん・・・ちょっとこれ、メモっといて・・・
女:「機体番号」・・・しかし、私達の宇宙外―――と云う事も・・・
ジ:まあ、取り敢えず・・・ってことよ。
それより〜〜あっ、あった―――これが「脱出艇」なら、「出入り口」がなければね。
ヱ:「脱出艇」? ではこれは―――・・・
ジ:そうよ、とんだ「外宇宙からの贈り物」・・・ってことになるわね。
さあ〜て、内に入っているのは「眠り姫」なのかなあ〜?♪
すると果して―――「それ」が隕石ではない・・・
「機体番号」の発見から「出入り口」の発見―――と、この物体がコンパクトにまとめられた「脱出艇」である事が判明したのです。
それに、ここにきて・・・ジィルガのおどけた表現も、どこか確信があるらしく―――・・・
エ:あっ!? これは―――・・・
ヱ:赤ちゃん?
ジ:(やはり・・・ね)これはとんだ「お姫様」だわ。
だってそうでしょう―――この、「私達の宇宙からの〜」ではない・・・また別の・・・
他の宇宙からたった一人生き残ったこの赤ちゃんを、「どうかよろしくお願いします」―――ってことらしいから。
女:(・・・ん?)これは・・・この子の・・・名前??
S・・・A・・・Y―――・・・
第二百八十六話; S A Y A
エ:へえ〜〜この子「SAYA」ってんだ・・・可愛い名前だね〜♪
ヱ:コラ・・・シュターデンたら・・・
そう・・・ジィルガの云っていたように、こうした手段で脱出させるのは、その種族が絶滅の危機に瀕した機に取られる事が、儘にしてあった為、
恐らく「そうではないか」と思われていた処、なんと・・・発覚してきたのは、この「お話し」で、メイン・キャラクターの次に重きをなしている、あの人物・・・
リ:つて・・・ええええ〜〜〜っ??
サ―――サヤさん・・・この地球の人じゃなかったんだ??
た:いや・・・それよりも・・・この宇宙のモノでもないらしいが???
市:い・・・いずれにしても〜〜何か、聞いてはならない事を耳にしてしまった様な・・・
そう―――てっきり、自分達の知っているサヤが、エルムの血筋を引く者だと思っていたら、それが全く別の存在だった・・・
しかし、ここで一つの疑問も紐解かれるのです。
永らくサヤは、ヴァルドノフスク家の「子爵」ではありましたが―――
ならばなぜ、当家の跡目はエルムからサヤ・・・ではなく、マキへと受け継がれたのか。
それは、こうした理由が一つにはあったのではないでしょうか。
閑話休題―――
皇と丞相の話し合いの結果、偶然にも地球に流れ着いた「SAYA」なる赤ちゃんを、色々と調査すべく「ソレイユ」に預けた処・・・
この赤ちゃんの事が、判ってきたのです。
ジ:(あらあら、これはこれは・・・)
まさか・・・とは思っていたけど、この子「も」ヴァンパイアだった―――なんてね。
それにしては、マグラとは違う・・・別の亜種と見ていいのかしらね―――・・・
そう、皆様もご存知の通り、このお話しの「サヤ」は、ヴァンパイアの一族「ヴァルドノフスク家」の一員であり、
「侯爵」マキの出現以前では、マキやエルムに成り代わり、一族の統率を任されるほどの実力者だったのです。
ですが・・・エルムやマキは、その大元となる大公爵・エルムドアからの血筋を引いており、
けれどもサヤは、その三者とは全く別の・・・違った系統であることが、今回判明したのです。
それにしても・・・気になるのは、無敵とも思えるヴァンパイアの一族が、どうして「SAYA」のみを残して絶滅に瀕してしまったのか・・・
実は・・・これにはまだ余談が残されていたのです。
ジ:(あれから・・・色んな事が判ってきたけれど・・・一つ不思議なのは、ヴァンパイアが、こうした手段で種の存続を求めている・・・と、云う事。
考えられるとしたら、彼の種族の前に、とてつもない障害が現れた―――と云う事ね・・・
ならば・・・その謎を紐解く鍵は・・・)
知識欲の旺盛なジィルガは、あらゆる手で、その原因解明の究明を行いました。
そして終に、その謎を解く鍵が見つかったのです。
それは・・・「SAYA」が入っていた、隕石を模した「脱出艇」・・・
今にして思えば、こんなにも判別のし難いツールを使用すると云うのも、一族の未来に想いを託そうとした者の思惑にあったのかもしれない・・・
「脱出艇」を細かいパーツに分解して、ようやく見つけた一枚の「メモリー・ディスク」・・・
その媒体には、ただ一つ・・・「リント・ヴルム」とだけ記されていたのです。
=続く=