意外な処から知ることができた―――意外な人物の、意外なルーツ・・・
ヴァンパイア一族の「ヴァルドノフスク家」の一員、「子爵」サヤ=ヴェダ=ゲオルグは、
実は、地球が含まれている「太陽系」・・・さらには「銀河系」がある、「第71号宇宙」に存在しない存在だったのです。
そんな・・・意外過ぎる事実を知り、当然の様に混乱に陥るリリア達が・・・
リ:意外―――っちゃあ、意外・・・だけど、そう云えばサヤさん、エルムさんやマキさんとは違う肌の色をしてたよな。
蓮:それに、唯一武器を用いて闘っておりまする。
た:ふぅ〜む・・・つまり、案外簡単な処に見落としがあった―――と云うわけじゃな。
市:けれど・・・ではどうして、ああも円満な関係なのでしょうか。
サヤ自体の正体は、朧げながらも判ってきました・・・が―――
ならばどうして、「そう」だと判っていながらも、サヤを取り巻いている人間関係は円滑にして円満なのか・・・
その理由は、すぐに判ってくるのでした。
ある日―――丞相・ジィルガに呼ばれたエルムは・・・
ジ:あなたに、この子の教育を任せたいと思います。
エ:あの・・・私に? それはまたどうして・・・
ジ:だってこの子、系統は違うけれど、同じ「ヴァンパイア」なんだもの。
エ:(「同じ」・・・)そう・・・なのですか・・・
判りました、委細承知いたします。
「系統」は違うと云っても、同じ種族と云う事で、やはりサヤの養育はエルムに託されたのでした。
それにエルムは、永らく「例の件」を引きずっている節もみられたので、ここでひと思いに気分の転換を図ろうとしていたのです。
(ここで云う「例の件」とは、エルムが可愛がっていた少年―――ロデリックを、どう云った経緯とは云え、自分の手で殺してしまった件の事を指している。)
すると、この事は図にはまり、サヤを我が子を想う様に育てていくエルムの姿があったのです。
そんなエルムの姿を・・・物陰から見ていた視線の主たちは・・・
リ:は〜〜すんげぇ猫っ可愛がり・・・つか、私達の知ってるエルムさんのまんまだよな。
市:なんだか・・・赤ん坊のサヤさんが、嫌がっているように見えているのは、果たして私だけなのでしょうか・・・。
た:いいや―――市子殿だけとは限らんとは思いますぞ。
斯く言うわしも、そう見えるでなwww
蓮:だからでござろうか・・・拙者達の時代のサヤ殿が、どことなくエルム殿を避けておられるように見えるのは・・・
「そんことはないけれど―――」とは、サヤ本人の弁。
だけれども、この頃のトラウマは確実にあった模様です。
それはそうと、この同じ頃―――「ハイランダー」にもおめでたい動きが・・・
それが―――・・・
ヱ:シュターデン聞いて?! 人工授精させた私の卵が、人工孵化に成功したらしいの!!
エ:驚かすんじゃないよ〜お前サマ・・・
おお〜〜よちよち、ビックリしましたね〜〜
折角今、寝就いたばかりなのに・・・けど―――それ、本当なのかい?
ヱ:ええ、本当―――なんだけど・・・ちょっと不安材料もなくはないの。
ヱリヤの種族「ハイランダー」の血統を受け継ぐ者の誕生・・・
その報は大変喜ばしい事だったのですが、なにも手離しで喜べる事態ではなかったようなのです。
それと云うのも―――・・・
その様子を窺う為、サヤを保育器に入れ、研究施設へと赴いた時・・・
エ:(これ・・・は―――)
ヱ:―――・・・
ヱリヤの卵巣から摘出した卵には、同系統と見られる種族の精子を人工的に受精させていました。
その内の一つ・・・と云うより、たった一つだけ、孵化に成功したモノがありましたが、
卵の殻を破って出てきた存在を見て、ヱリヤは愕然とするしかありませんでした。
なぜなら―――・・・
ヱ:そんっ・・・な・・・下半身が―――竜??
丞相―――ジィルガ様・・・これは一体??
ジ:ああ、これはね、「スキュラ」と云う種族の精を掛け合わせたのだけど―――
どうやらこのケースは、その種族とあなたの種族とが、奇蹟的に配合された事例とも云えるわね。
ヱ:そんな事を・・・云っているのでは―――・・・
ジ:かぁ〜ん違いをしないの、血統的に見ても、遺伝学的に見ても、「ハイランダー」の占有率の方が高く、
目下の処の外見上は、半々―――と云う処になるかしらね。
上半身は「人間」―――下半身は「竜」―――
以前のお話しである「XANADO」の「第一部」では、その姿で勇躍するキリエの姿があったわけですが、
当初は親であるヱリヤでさえも、目を背けたくなる実情もあった様です。
けれども、その様子を見ていた・・・
エ:(ふぅ〜ん・・・)おや―――ウフフフ・・・
お〜いお前サマ、ちょっと来てみなよ。
ヱ:(え・・・)なぁに―――
エ:ほぉぅら―――お母ちゃまでちゅよ〜〜
ヱ:ん・もう・・・からかわないでよ―――
エ:ほいよ、お前サマの子だろ。
サヤやロデリックの世話をした事があるからか、子供の扱いに慣れているエルムが、
ヱリヤの子供が他への警戒心を失くした処で、実の親であるヱリヤに預けたのです。
それに・・・ヱリヤも当初は困惑気味で、どこか迷惑気味だったモノでしたが、
これから自分の跡目を継いでくれる者への情からか、次第に愛おしくなり始め、
今にも壊れてしまいそうな貴重品を、優しく抱きかかえていたのです。
そしてヱリヤは―――この我が子の名を、キリエ=ルクスゥ=アトーカシャと名付けるのでした。
(現在のキリエの名は、「キリエ=ルクスゥ=アグリシャス」となっているが、これは今回の表記が間違っているのではなく、
後に、ハイランダーの名家「アトーカシャ家」と二分する勢力を誇っていた、「アグリシャス家」の復興を視野に入れていたからなのである。)
こうして・・・多少なりともの「ご都合主義」と嗤われようと―――また罵られようと・・・
恐らくは、最後ともなる「タイム・リープ」を終えさせた一行は・・・
リ:ウィ〜〜気分悪っ―――・・・
もうこれ以上は沢山だよ〜〜
市:と・・・ところで―――「今」は??
た:皆の者安心いたせ、どうやら「戻って」きたようじゃぞ。
リ:つかお前・・・スゲー縮んじまったな。
蓮:(そう云う解釈も、いかがなものと思われるでござるが・・・)
た:そう云う目で見るのはやめんか!
まあ確かに、わしも不本意ではあったが・・・わが身に起きた変化で、「そう」だと判った時には、少し哀しくはあったが・・・の。
「現在」―――自分達は一体、どの時間軸にいるのか・・・
しかしその状況を、ある人物の姿を以て、本来の・・・自分達が生きている時間軸に「戻れてきた」と判断したのです。
そう・・・それが「たまも」―――
彼女が、この一連の流れの騒動での「円熟した姿」―――のまま・・・ではなく、
いつもの自分達が知っている姿に戻っていた時に、「そうなのだ」と実感することができたのです。
(とは云え、たまも本人も、自分の姿が元に戻っている事で、「そう」だと判った時には、どことなく哀愁が漂っていたようではある)
(それと因みに・・・たまもの姿が「幼女」の姿に戻っていた―――というだけではなく、
式神を各方面へと飛ばし、更なる確証を得ていた事を、ここに付け加えておく。)
それはそうと―――・・・自分達がいなくなって、一体どの位が経っているのか・・・
知り合いは心配していないだろうか・・・と思い、至急テラ国・ノーブリック城を訪れたリリア達は・・・
リ:お〜〜す・・・
ソ:(・・・)あら? リリア―――に・・・市子さん? どうかしたの・・・
リ:え? ああ―――いや・・・私達がいなくなって〜まぁた心配してやしないか・・・と、思ってなw
ソ:(??)あなた―――またいなくなっていたと云うの??
それにしては・・・なんか変よね―――いつものあなたなら、何も云わずにいなくなって、また何も云わずに帰ってくるものなのに・・・
それに・・・ミトラ様から、「一時間前ほどに、そちらに帰ったから」―――と、お報せを頂いていたのに・・・
それがどう云った心境の変化なの??
リ:あ・・・あはははは―――いや、いいんだ、ちょっと云ってみただけ〜〜ww
ソ:あら、そう・・・と云って、私が納得するとでも思っていたのですか!!
それに、今の告白を以て知ってしまいましたからね、今までの様に容認するとでも思ったら、大間違いですよ!!
そしてそこで、体の好い返事をして、その場を凌ぐモノの、リリア達四人は互いに顔を見合すしか他はありませんでした。
それもそのはず―――彼女達は数百・・・数千・・・とは云わず、万の年を駆けて来て、ようやく「現代」に戻ってきたと云うのに・・・
それが・・・驚くほどに・・・
以前まで一緒にいたパライソ国の宰相から、一時間前に帰国の途に付いたとの報告を受けていたソフィアは、
まさか自分の幼馴染が、そんな短時間で、またどこか遠くに行っていた―――などとは思っていませんでした。
そう思った理由にも、前科のあるリリアは、そうした行動を起こす時には、事前・・・にしてもいざ知らず、事後の報告に措いても「しない」確率の方が高かったのですから。
いつも自分達が知るのは・・・巷の噂にて知り、リリアを問い詰めて、ようやく知ることができたと云うのに・・・
それが今回は、どう云った心境の変化からなのか―――・・・
どこか真面目に「してきた」事を報告するリリアに、喩えそうでなかったにしても、厳しい態度を取るソフィアの姿があったのです。
けれど・・・実体験をしてきたリリア達は違いました・・・
「現代」に戻れたのは良かった―――けれど、果たしてそれは「一年後」か、果てまたは「十年後」・・・下手をすれば「百年後」だったかもしれない・・・
なのに、リリア達が実体験をしてきた「時間の旅」は、周囲りが気付かないほどに短なモノであったのです。
第二百八十七話;邯鄲夢一炊如
=続く=