「この宇宙」の、ケフェウス座方面にて・・・
「ディーヴァ」のトップ、「シャクティ」からの指令により、同組織の「ドゥルガー」であるマリアと、「パールヴァティ」であるヘレンが、任務を全うしようとしていた時・・・
その任務を阻む何者かが、現れたのでした・・・。
マ:お前は・・・何者―――?!
ヘ:私達の邪魔をするなんて・・・いい度胸をしているわね―――
すると、挨拶代わりに―――とばかりに、二人を同時に相手にしようとする、正体不明の何者か・・・
しかも、その者の実力に、マリアとヘレンも苦戦を強いられる処となり・・・
マ:(・・・っく―――こいつ、出来る!)
ヘ:(ち・・・厄介ね―――)
腕の達マリアやヘレンであっても、やはり彼女達自身の実力よりも実力を持っている者が相手になっている・・・とあれば、
苦戦を強いられてしまうのは無理らしからぬ処があった様で・・・
すると、そうした部下達を案じて・・・なのか、最近現場へと復帰をしたこの人物は―――・・・
バ:どうした・・・なにをしている―――
それしきの相手に時間をかけているようでは、連中が来た時に・・・
マ:あっ―――先輩!
ヘ:ちょっと・・・遅いわよ!
想定されていた時間より、任務遂行の報告がなされていなかった為、叱咤と激励を行う為に現れてきた―――
当初は、そのはず・・・だったのですが・・・
「シャクティ」ことバルディアが、現場に到着した時、正体不明だった何者かの正体が、次第に明らかになってきたのでした。
それと云うのも―――・・・
バ:(・・・)ほぉう―――お前は・・・
以外と、来るのが早かったな・・・と、云う事は、なるほど―――お前達が苦戦していた理由、良く判ったよ。
マ:あの・・・先輩、こいつは―――
バ:(・・・)フッ―――こちらとしても歓迎するとするよ、お前達がこちらに最初に来た頃、膝が震えて何も出来やしなかったが・・・
お陰で私自身の未熟さと云うモノを知ることができた・・・
今回は、この私が特別に―――相手をしてやろう・・・
そして、あの頃の私と違う事を、思い知るがいい!!
マリアとヘレンは、この正体不明の謎の人物の事など、何一つ知ろうはずもありませんでした。
しかしバルディアは、一目見ただけで、この正体不明の謎の人物の事が判ったのです。
遠い過去・・・現在から2800年くらい前に、実力の格差と云うモノを思い知らされた・・・
外宇宙からの、余り友好的ではない、急な来訪者・・・
しかし「現在」は、あの「過去」とは違う―――
反社会的な者達に対しての考えを改め、そうした者達には如何なる理由があろうとも、冷徹に・・・冷酷に・・・対処に当たる―――
けれど、その「やり方」が問われ、「現場」ではなく「管理職」に回され、その研ぎ澄まされた刃も、宝の持ち腐れに終わろうとしていた処でしたが・・・
自分達の、この秘密組織を設立した人物が、裏で工作をしていたことが実を結んだと見え、
晴れてこの度、現場に復帰することができた・・・
もう・・・なにも―――気兼ねをする事は、何一つない・・・
この上は・・・名刀の斬れ味を、心ゆくまで堪能するのみ・・・
そしてその事は、口先だけではなかった事が証明され―――
バ:ようやく・・・捉えたぞ―――どうだ、身動きとれまい・・・
ヘ:(先程までは・・・私のチャクラムや、マリアの一撃でさえも掠りもしなかったあいつの身体が・・・)
マ:捉え・・・られている・・・先輩の「糸」に、あいつが―――??!
先輩―――あいつは何者なのです!?
その謎の人物を覆っている物理的なモノ(主に服飾など)は散々に剥がされ、バルディアの「糸」によって拘束されました。
しかし、マリアやヘレンは、その謎の人物の物理的なモノすらも、触れる事すら適わなかったのですが・・・
それに、その謎の人物の肉質に当たる部分も、「当たった」・・・と思っていたにも拘らず、手応えを感じなかったモノを・・・
それがどうして、バルディアの「糸」は、その謎の人物を捉える事が出来たのか・・・
それは―――・・・
バ:その質問なら、至極簡単なモノだ・・・
この「糸」は、物理的なモノではないからな・・・
そう・・・云わば、この私の「念」によって創り出された・・・「念斬糸」とでもしておこうか―――
そして、この連中こそは・・・『アンフィス・バエナ』―――
さて・・・お名前出も伺おうか・・・?
ア:フ・フ・フ・・・おめでたいモノだ・・・
下っ端の私に、ようやく勝てた処で満足しているようでは・・・な。
それに・・・フッ―――フフフ・・・私の「名前」か?
そんなにも知りたいのなら教えてやらない事もないが・・・生憎、そんな御大層なモノは与えられていなくてね・・・
お前達は、おめでたいよ・・・そして恵まれている。
なにしろ、下っ端の―――この未熟に過ぎる私にでさえ敵わない弱者でさえも、一端の「名前」があるのだからな!
第二百八十九話;名すら与えられていない者
物理的な「肉体」ではないモノを捉える事が出来る「念糸」―――
それをより研ぎ澄まし、斬り刻む能力を加えたのが、バルディアの「念斬糸」―――
しかし・・・それにしても、マリアやヘレンすら敵わなかった相手に、「名前」がなかったとは・・・
けれどその事は、一人前の戦士―――千や万の屍を積み重ねる事が出来るようになって、
ようやく名乗る事を赦された者にのみ、与えられた「特権」である事が知れるのです。
その事は判ったのですが・・・肝心なのは、この名前を持たない強者達の、真の目的とは・・・?
バ:いつもなら・・・時間をかけて、ゆっくりと吐かせてやるところだが・・・
生憎と、時間の猶予と云うモノがなくてな・・・
だから・・・無理矢理にでも吐かせさせてもらうぞ・・・
マ:(え・・・?)時間の猶予が―――ない? それは・・・
ヘ:そ〜れに、どう見ても頑固そうだよ? そんなに簡単に、こいつが吐くとでも・・・
バ:吐いて貰うさ・・・その意思は、最早こいつとは、関係ない・・・
マ:(!!)まさか先輩―――「あれ」を??
ヘ:ナニ?マリア・・・なんのことを・・・
マリアは、知っていました・・・
自分の先輩である、バルディアの秘められた特技を・・・
しかもその仕様は、どこかミリヤの持つ「サード・インパクト」にも似通った処があるようで・・・
「念糸」を極めたバルディアならではの特技でもあったのです。
すると・・・バルディアが創り出した「念糸」は、対象者の脳内へと入り込み・・・
瞬くの間に、バルディアの意思のままに操れる「傀儡」に仕立て上げたのです。
そう・・・そこには、最早人道的な見地すらありませんでした。
その証明を、現在この場で、見せつけられているのだから・・・
この世のモノとは思えない大絶叫をあげ―――苦しむ名前の無い強者・・・
白目を剥き、穴と云う穴から分泌物を撒き散らしながら、それでも秘密を堅持しようとする姿は見習う処がありましたが・・・
傍らで見ていたマリアにヘレンにしてみれば、直視できない光景でもあったのです。
それでもバルディアは、厳しい尋問の手を緩める事はなく・・・
それどころか、その表情は、苦痛を与えんが為に愉悦を感じている・・・そうした歪んだモノと変わりつつあった為、マリアが―――
マ:先輩―――もう止めて下さい!!
これ以上・・・度が過ぎる様であれば・・・
バ:(・・・)甘いな、マリア―――
お前は、この連中の真の恐ろしさと云うモノを知らない・・・
だから、こんなヤツに対しても、見せかけの情けがかけてやれると云うモノだ!!
考えてもみるがいい・・・あの「拳帝神皇」や「破壊神」すらも、無傷ではいられなかったのだから・・・な!
ヘ:(!!)あの存在が・・・? そんな??!
バ:それに・・・今の、この私の仕様を批難しているようだが・・・この連中にかかってしまえば、こんなモノすら生温い・・・!
そのことをようく―――・・・ (!)フフフ・・・どうやら、「その気」になったようだな、そうら―――喋れ!!
どうにか穏便に・・・と云うより、人道的に―――と、諌めはするのですが、
過去に、この連中の非道さと云うモノを目の当たりにし、知っていたバルディアは、だからこそ「生温い」としたのでした。
この連中は・・・人を人とも思わない・・・況してや、生命を生命と思わない・・・
他人ならばまだしも、仲間内ですら容赦なく奪える・・・
そこには、憐憫はまだしも後悔の欠片すらない・・・
だからこそ、自分より小さく弱い存在でさえも、簡単に弄べるし
そしてそうした者を、何ら考える事もなく盾にも出来る・・・
対象が、盾突いたり刃向おうものならば、喜々として殺せるその思考・・・
あの当時の自分は、その事に躊躇し―――瞬時の判断を鈍らせた・・・
そこを、この連中が見逃そうはずもなく、容赦なく襲いかかってきた時、自分の前に立ち塞がり、連中の相手をしたのは「拳帝神皇」だった・・・
「拳帝神皇」の、左側面・・・首筋から肩にかけて、現在でも癒えない傷痕があるのは、未熟だった自分を庇うため・・・
あの当時は、やはり反社会勢力と云う事もあり、彼の者の組織を目の敵としていたモノだったが・・・
そうした者に、自分は助けられてしまった・・・
それは―――「警察機構」とか「反社会勢力」とか関係なく・・・
「この宇宙の未来の為に・・・」
その時ようやくにして、一気に理解をした・・・
なんて自分達は、狭い料簡でモノを考え、争い合っていたのか・・・
宇宙にはこんなにも、理屈にも合わない事を、しでかそうと云う連中がいると云うのに―――・・・
そして、自分は・・・変わった・・・変わらざるを得なかった・・・
だからこそ自分は・・・周囲りからはどう思われたとて構わない・・・
この自分の創る「念糸」によって、相手の自由を―――束縛し、意のままに操れる特技・・・「人形遣い」を習得したのだ・・・
こうしたバルディアの回想が為されている間に、「人形遣い」の業に屈したモノと見え・・・
ようやく対象が口を割るモノと思われたのでしたが・・・
ア:う゛・・・わ゛・・・わ・だ・じは・・・こ・・・っ―――この宇宙に゛隠れているとされ゛る゛・・・
「サ・・・レ・・・」
バ:ナニ? 何を云おうとしている―――もう少し明確に喋れ!!
ア:(・・・)クククク・・・ハハハハ―――も゛う゛遅い゛・・・
奴め゛の゛所在は・・・明らかとな゛っ゛だ・・・
あ゛・あ゛・あ゛とは・・・後続の者が・・・奴め゛を゛・・・「サイレン」を゛、我々の手に゛落とすの゛だ!!!
ぐる゛ぶあ゛あ゛あ゛!!!
しかし、得てして秘密を暴露しようとしたのも、自らの死期が近いと覚ったからで・・・
その証拠に、その者は・・・未だ自分達が耳にした事のないワード・・・
「サイレン」を、自分達の組織の下に勧誘・・・若しくは拉致する為に、この宇宙に来訪―――
(そして、この「名すら与えられていない者」は、この「先遣隊」と云うべきモノであった様です。)
その事のみを云い遺し終えると、彼の者は迷うことなく、自ら絶命の道を選んだのでした。
=続く=