それは・・・ある・・・とてもとても古いお話し―――・・・

 

この世の総てを、一人占めにしようとした・・・「悪意ある者」と、「救世の勇者」を(たす)ける為に協力をした、「五人の歌姫」の・・・

闘いと淡い恋心を描いた「叙事詩(フ ァ ン タ ジ ー)」―――・・・

 

しかし、こう云った「お話し(ファンタジー)」のカテゴリー内である「このお話し」が、他の「お話し」と比較評価されないのは・・・

得てして「このお話し」の「主人公」が、「救世の勇者」・・・なのではなく―――

普通の、こう云った「お話し(ファンタジー)」では、どちらかと云えば「脇役」で収まりがちな、「五人の歌姫」にあったから。

 

それともう一つ―――・・・

この「お話し」は、事実を基にして創られたのだとしたら・・・?

 

だからこそ、観る者達に感動を与え―――皆、涕なくしては観れなかったのです。

 

では・・・この「お話し」の題目(タ イ ト ル)は―――?

 

 

第二百九十二話;『歌劇・歌姫』

 

 

そして―――今回、この歌劇を観た三者三様は・・・

 

 

 

ジ:いい〜お話しでしたねぇ〜〜・・・

ヘ:いや―――まさか・・・あそこでああなるとは・・・

マ:普通の「創作話」では、考えられないわよね。

 

ジ:そこが、この「お話し」の好い処なんですよ―――!!

  それに、事実に基づいてる〜って云うし・・・

ヘ:(やけに熱いわね・・・)いや〜それより驚いたのは、「私ら(ディーヴァ)」も出演(で て)た・・・ってことよね。

マ:(・・・)それはどうかしら―――

 

ヘ:あ゛? なんだって?マリア・・・

マ:いや―――だってそうでしょう?

  この歌劇の役目(キャスト)の一つと、「私達」とが同じ・・・って、そう思うのは少し強引だと思うわ。

 

ヘ:(・・・)まあ―――確かにねえ・・・

  でも、「事実」だ―――ってことは、あの五人は実在してたってことになるわよね。

 

 

 

宇宙の秩序を護るため、陰ながら活躍する「ディーヴァ」の三人も、今回何かの機会・・・と云う事もあり、

また、互いの親交を深める為か、一緒に観劇をしたモノだったのです。

 

すると、ここで意外な事実が―――・・・

普段は他人との交流を苦手とし、引っ込み思案なジゼルが・・・こう云ったモノに余程の興味があったのか、

いつになく熱弁をふるい、ヘレンを戸惑わせていた・・・と云う事。

 

それに―――ヘレンもマリアも一様にして感じた事・・・

それは、この「お話し」が、事実に基づいて作られている―――と云うのであれば、

この「お話し」の主人公である「五人の歌姫」・・・

『トゥルヴァドゥール』『プリマ・ドンナ』『サイレン』『ローレライ』そして・・・『ディーヴァ』―――

 

そう・・・この役目(キャスティング)の内に、「自分達」と同じ名を持つ「歌姫」がいた・・・

その事にヘレンは、「ならば、自分達の「誰か」が、「そう」ではないのか」・・・との疑惑を持ったのです。

 

しかしその事はすぐにマリアから否定をされ、ヘレンもまた、もし「そう」なのであれば、流石に出来過ぎている・・・と思い、納得はするのですが・・・

 

ならば・・・「真実」はどこに―――?

 

その「謎」を紐解く為、内容を垣間見てみましょう・・・

 

 

その国は―――平安であり穏やかでした・・・

 

しかしある時―――突如として、どこからともなく「悪意ある者」が忍び寄り、

瞬くの間に、人々に「混沌」を植え付けました。

 

それから人々は・・・猜疑心に凝り―――互いを信用せず―――争いを求め始めたのです。

 

そうした内・・・一人の―――「救世の勇者」とも云うべき一人の若者が立ち、果敢にも、その「悪意ある者」に立ち向かって行ったのです。

 

ところが・・・程なくして「救世の勇者」は敗れ去り、どうにか捕縛は免れたモノの、命辛々(いのちからがら)逃げ延びる事が出来たのでした。

 

その事実は、瞬くの間に国中に広がり―――この「救世の勇者」に淡い期待を寄せていた者達を、落胆させてしまったのです。

 

そしてその結果として・・・益々「混沌」は増大し、もう・・・あと一歩のところで、その国は「混沌」によって支配される処でした。

 

するとそこへ・・・「悪意ある者」や「救世の勇者」と同じくして、どこからともなく「五人の歌姫」が現れ、

その美しい歌声で・・・或いは人々の心から不安を取り除き―――或いは侵食している「混沌」を払い除け―――

或いは人々に希望と勇気を与えた・・・

 

そして、雌伏をしていた「救世の勇者」を復活させ、「悪意ある者」の能力(チ カ ラ)を弱めると、

(つい)には「悪意ある者」を撃退し、この世を救ったのです・・・。

 

―――と、ここまでならば、よくある「創作話(フ ァ ン タ ジ ー)」の「終劇(エンディング)」と然して変わりはないですが・・・

 

そう・・・この「お話し」には、まだ続きがあるのです。

 

 

外部からの大いなる脅威から守られた、その国ではありましたが・・・

次第にその恩恵は薄れ、それどころか、救いの手を差し伸べた筈の「五人の歌姫」に、あらぬ疑いをかけ始め、

各々(それぞれ)をその国から「放逐」してしまったのです。

 

しかし―――その内の一人・・・「ディーヴァ」は、「救世の勇者」と恋仲に陥っていた為、「救世の勇者」に匿われる処となるのですが・・・

既に人々の心は変わるモノではなく、「ディーヴァ」は見つかってしまい・・・「救世の勇者」と共に、処刑されてしまったのです・・・。

 

そして―――「得体の知れない何者か」が、いなくなったその国は、また元の様に平安と穏やかさを取り戻した・・・と云う処で、

この「お話し」は幕を閉じるのです。

 

(得てして、この歌劇での設定である、「得体の知れない何者か」とは、「悪意ある者」は勿論の事、「五人の歌姫」も「そう」なのですが・・・

実は、「救世の勇者」も「そう」であると云う事。

普通に生活をしていて、なぜか突然「戦闘(そう云う事)」に特化した技能(ス キ ル)を身に付けた者が現れる―――と云う事は、

「突然変異種」と云う事も考えられるが、「状況」がそうなるべくして生み出してしまった「存在」でもある・・・と云う事が考えられる。

 

つまりは、この「救世の勇者」も、「悪意ある者」「五人の歌姫」と同じくして、

どこからともなく来訪した「未曽有の存在」でもある・・・との解釈も為されるのです。)

 

そう―――・・・こうした「創作話(フ ァ ン タ ジ ー)」の多くは、「大団円(ハッピー・エンド)」で終わると云うのに・・

この「お話し」は、「そう」はならなかった・・・

 

しかも、その事が逆に「事実を基にして創られている」と云う説を根強く押し、

また、誰もが不幸な結末に終わってしまった「五人の歌姫」と「救世の勇者」に、同情的にもなったのです。

 

 

それに・・・そう―――・・・

今回の出来事が、この歌劇とは、全く関係がない―――とは云えなくなってしまっていたのです。

 

それよりもまず・・・今回の出来事の発端である、少なくとも「この宇宙」―――ではない・・・

「別の宇宙」から来訪してきた、「アンフィス・バエナ」と云う、比較的不確定な・・・それでいて、どこか犯罪性を臭わせる謎の組織が・・・

この歌劇の主人公の一人である、「サイレン」を見つけ出し、自分達側に引き入れようとしている・・・

 

しかも、ジゼルからの状況の説明により、なぜかフランソワが、この組織に狙われている―――と云うのです。

 

その・・・奇妙なまでの事実の一致に―――「或いは・・・」「もしや・・・」との憶測が飛び交うのですが・・・

まだどこか、事実と認定するには判断材料が足りなさ過ぎていたのです。

 

 

しかし・・・それ以上に危惧しなければならないのは、あとの四人・・・

『トゥルヴァドゥール』『プリマ・ドンナ』『ローレライ』『ディーヴァ』―――

 

彼女達とは何者なのか・・・本当に、この世に実在するのなら、悪の手先に先んじて、こちら側で匿わなければ・・・

 

あの歌劇の内容が、真実本当ならば、あの「五人の歌姫」の活躍によって、その国は救われたのだから・・・

 

だから・・・もし・・・彼女達が「悪意ある者」の側に付くようなことがあれば・・・

 

しかも、あの歌劇の「終劇」直前では、その国の人々は、恩のある者達に対し、仇で返してしまった・・・

 

ならば―――最早取り返しがつかないのでは・・・?

 

などと、悪い方向にしか推測は浮かんでこないのです。

 

 

―――と、そんな悩める彼女達を余所に、ジゼルからの忠告により、身の危険を感じたフランソワは、

自分の財を預けている「宇宙銀行」の、ある支店の自分の貸金庫の前に来ていました。

 

 

 

銀:おお―――フランソワ様・・・お待ちしておりました。

  ささ・・・どうぞこちらへ―――

 

 

 

するとそこでは、「暗殺者(こ の 稼 業)」に手を染めてから、永い付き合いだからか・・・

厳しいセキュリティも、ほぼ「顔パス」で通過するフランソワが―――

 

顧客の秘密を保持する為ならば、喩え軍事政権の高圧的な脅迫にも屈しない・・・

それが「宇宙銀行」であり、斯く云うフランソワも彼らを信用して利用していたのです。

 

が―――・・・

 

一つ奇妙だったのは、普段ならばそんな事をあまり口にすら出した事はない、この支店の頭取が―――

なぜかこの時ばかりは、その事を前面に出し、饒舌にすら聞こえるまでにフランソワに説明をした・・・と云う事。

 

なぜ・・・今更そんな事を―――?

 

しかし、たった一つだけ心当たりがあるとすれば、「彼ら」はすでに、

フランソワの近くまで忍び寄っていた・・・と云う事なのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと