ミリヤ=アゲット=ロックフェラーの、真に畏るべきにして特筆すべき点は、「人材の運用、並びに起用」と云う点にありました。

それは、自分の下で動いている者達は元より、構築させた「コネクション」を最大限に活かす・・・と云う事でもあったのです。

 

そしてミリヤは、今回のある件に措いて、構築されたコネクションの一人に、ある依頼(たのみごと)を申し出ていたのでした。

 

 

 

第二百九十七話;ミリヤからの依頼(たのみごと)

 

 

 

ミ:お忙しい処を、失礼致します。

  私も恥を忍んで申し上げるのですが、この度うちのメイが、また単独で・・・

リ:あ゛〜〜そこは判った・・・気の毒に思うんだけどさあ〜〜

  なんか、頼む処が間違ってやしないか?

 

ミ:いえ、私はあなたで妥当―――だと思っていますよ。

  何よりこの地球には、他に頼れる者がいませんから。

 

 

 

ミリヤから依頼(たのみごと)を申し込まれた人物こそ、リリア―――

しかしリリアは、ミリヤからの依頼が、お門違いなのではないか・・・と思うのでしたが、

次のミリヤの科白に「グゥ」の音も出なかったのです。

 

それと云うのも、そのミリヤの科白には、現在の地球で頼れるべき人物・・・

「大皇」のジョカリーヌや、ユリアの存在が欠落している事を、暗に物語っていたからなのです。

 

それに・・・実は―――そこの処の事情を、リリアは知っていた・・・。

だから、「あなたしか頼れる者がいない」と、ミリヤから申し立てられ、返す言葉が見つからなかったのです。

 

しかし、この時ミリヤからなされた依頼と云うのも、またしても、ミリヤの付き人(メ イ ド)であるメイベルが、

主人であるミリヤの断りもなく、どこかへ出かけた・・・それも、メイベル自身の「師」に逢う為に・・・

だから、メイベルを見つけて欲しい―――の、だ・・・と、そうとばかり思っていたら・・・

 

 

 

ミ:(・・・)そこの処は違います。

  私があなたに頼みたいのは、あなたに、この私の車椅子を押して欲しいのです。

リ:(・・・)はああ〜っ?! そ―――そんな??

 

ミ:あなたにしてみれば、所詮「そんな事」なのかも知れませんが、この私にとっては大問題なのです。

リ:い・・・いやあ〜〜それにしてもだな・・・

 

ミ:それに―――こんな事を頼むのですから、それなりの「報酬」も考えております。

リ:ホウ・・・シュウ・・・ねえ―――

 

ミ:はい・・・あなたの望むモノを、なんなりと・・・この私の出来うる限りの範囲内で奉仕したいと思います。

 

 

 

なんとも、ミリヤからの依頼(たのみごと)とは、今までメイベルが押していたミリヤ自身の車椅子の、「押し手」だったのです。

しかし、そんなことならば、何もリリアではなくてもいいのではないのか―――と、思うのでしたが・・・

ミリヤから提示された、今回の依頼の「報酬」・・・

リリアが思うがままのモノ―――・・・

 

そのことに、リリアの内で、ある欲望が沸々と湧いてくるのでした。

 

しかも、その・・・リリアの内で沸々と湧いてきた、「欲望」と云うのも・・・

 

 

 

ミ:(・・・)ま・・・まあ―――その程度の事でしたら…いいでしょう・・・

リ:え? いいの〜? ふんとにぃ?♪ やた―――っ!♪

 

ミ:(ま・・・まあ・・・これも私から云い出してしまった事ですし・・・

  それに、「ある程度」ならば、メイと同じと考えてもいいでしょう。)

 

 

 

リリアの思考を詠み、知ることとなったリリア自身の「欲望」・・・

実は、その事自体は、普段からメイドにやられている事だったので、そんなに大仰には捉えてはいなかったのですが・・・

許可が得られた途端、垣間見られた、どこか黒々しい感情・・・

その事に、ミリヤは躊躇せざるを得なかったのです。

 

欲望の為に眸をギラつかせ、どことなく息も荒くなってきている―――・・・

ひょっとすると自分は、早まった行為に申し出をしてしまったのかもしれない・・・

これがミリヤの躊躇の原因だったのですが、どこかミリヤも自分のメイドと同程度だろう・・・と、思ってしまっていたのです。

 

と・こ・ろ・が――――

 

 

 

リ:キア〜〜♪ チッキショウ! もぉ〜たまんねぇよなあ〜〜♪

 

 

 

つまり・・・早い話しが、「早まってしまった」処の問題ではありませんでした。

それと云うのも、そこにはまさしく、可愛さ余り過ぎて愛で過ぎている感も否めなくもない状況が・・・

その「程度」も、メイベルを上回る可愛がりように、ミリヤはもみくちゃにされていたのです。

 

その事にミリヤは、「しまった」と、後悔することしきり・・・なのでしたが、

「棄てる神あれば、拾う神あり」の如く、助け手として現れたのは―――・・・

 

 

 

た:くりゃああ〜〜ナニやっとるか!バカモン!!

  ミリヤ殿が草臥(く た び)れておるでわないかーっ!

 

リ:あて☆ なんだ・・・たまじゃねえか―――

  いやあ〜〜そうは云ってもなぁ〜〜キシシシシwww

 

た:な・・・なんじゃ・・・お主・・・

 

リ:ウヘヘヘw なんか最近、ついてやがることばかりだなあ〜〜てw

  だってさあ〜〜私ん(なか)の「ど直球(ストライク)」が、近場に二人もいるんだぜぇ〜?♪

 

た:ええ加減にせんと・・・仕置くぞ

 

リ:ああん〜♪ それもまた、たまんねえんだよなあ〜♪

 

 

 

現在リリアの補助手を担っている「たまも」が、リリアの漏れない愛情を受け過ぎて弱ってきているミリヤの仲裁役を買って出てきたのですが・・・

今度は、そのたまもに、リリアの漏れない愛情が注がれようとしていた・・・

 

の、でしたが、たまもの日常は、いかにしてリリアからの愛情を逸らせるか・・・が日課としてあり、

どうにかこの時も、リリアからの「魔の手」(?w)を払い除ける事が出来ていたのです。

(ところで―――どうしてリリアの性格が、こんな風に変わってしまったのか・・・なのですが。

以前にリリアは、ある人物によって記憶を失われた事があり、その時に表に出てきた性格が、「可愛らしいモノ好き」だったのです。

しかし―――紆余曲折あり、記憶は取り戻せたのに、ならばどうしてそんな性格に趣向が消えなかったのか・・・

それは、逆説的に云えば、元々のリリアの性格と云うモノが、「そう」ではなかったか―――と云う事。

確かに、幼い頃には「男勝り」や「豪放磊落」な面が強くはあったものの、やはり所詮は「女の子」・・・

それがまた、こうした機会に表へ出てきたと云うのは、ある意味では記憶を失わされた時の「功罪」ではなかっただろうか。)

 

―――とまあ・・・本題より著しく逸脱しそうになったので、ここで強制的に話しの筋を戻すとして・・・

 

 

 

ミ:私とした事が・・・リリアさんの程度を見誤るなんて・・・。

  それはそうと、リリアさん―――それにたまもさんも、この際ですからご一緒していただけないでしょうか。

 

た:それは別に構わぬが・・・それよりミリヤ殿、こ奴に何用だったのですかな?

 

リ:ああ―――それだったら・・・

  今この人の付き人、単独で行動してるんだってさ。

  そこで私が、その人の代理で、この人の車椅子を・・・

 

た:その様な事を聞いているのではない―――

  いかがですかな、ミリヤ殿・・・ここは一つ、肚を割って・・・

 

ミ:ウフフフ・・・さすがはたまもさん、既に私の考えている事を見抜いていらっしゃったみたいですわね。

 

リ:はあぁ〜? んじゃ―――すると・・・

 

ミ:そう云う事です、この私の車椅子を押す程度ならば、ジゼルにでもさせればいい事。

  実は・・・これから赴く処が、リリアさん程度の武の見込みがないと、難しい―――と、私が判断したのです。

  それでは―――参りましょうか・・・

 

 

 

なぜミリヤが、リリアに依頼を申し出たのか・・・

それは、自分の車椅子を押して貰う―――と云うのではなく、これからミリヤが会いに行く人物との交渉が、もし決裂した場合・・・

リリア程度の武がなければ、到底無事には済まないだろう―――との判断からだったのです。

 

そう・・・「ある人物」―――・・・

今はとりわけ、「手負いの獣」に等しい「暗殺者」・・・

 

聞けば、何者かに追われており、その心当たりもない・・・

そこで「暗殺者」は、自らの「プライド」を担保に、敵対者にも等しい「ディーヴァ」のトップである自分に亘りを付けてきた・・・

 

しかし―――そこからは交渉次第・・・

自分達に利があるようならば、快く受けて良いモノだろうけれども、その時の感情だけで引き受け、後の禍根(トラブル)の素となるようならば・・・

 

トップになるのならば、その時の損得勘定のみで動いてはならない、もう少し長期的に措いて見据えなければ・・・

そうした考えに基づき、もしこの交渉が決裂した場合、一番危険なのは自分の身となるだろう・・・

 

それにもし―――その「暗殺者」の愛弟子である、自分のメイドが、そうした危機に直面した時に果たして正しく機能するモノかどうか・・・

 

ミリヤは、あらゆることを考えた上で、リリアに依頼するのが最善だと思っていたのです。

 

 

しかし―――実はこの時点では、流石のミリヤも、なぜフランソワが追われる身となったのかは判りませんでした。

(とは云え、ミリヤの推測では、フランソワはまさしく、暗殺者として「超一流」であり、そのことによる「怨恨」なのではないか・・・とは思っていたようなのですが・・・)

 

ところが、リリアに依頼をした事自体が「僥倖」と云うべきか・・・はたまた「重畳」とでも云うべきか・・・

(まこと)(もっ)て「(えにし)」と云うモノは、複雑にして奇妙であり、また面白きだ・・・と、この現場に立ち会うこととなった、たまもは思うのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと