「その者」は・・・本来は他人から「依頼」をされて、他人の生命を脅かせる存在でした・・・。

ですが、「今」は他人に自分の生命を―――存在の意義すら脅かされている・・・

こんな皮肉はないモノだ・・・と、半ば自嘲気味になる半面、どうにか生き永らえる為に、逃れ―――行き着いた先が・・・

 

 

 

し:(あっ―――・・・)

  蝉ちゃん、人が・・・人が倒れてるよ??

秋:なに? しかし・・・こりゃまた一体どうしたんでぇ・・・

 

 

 

地球は、エクステナー大陸にある、「常磐」と云う地域に住んでいる「しの」と「秋定」は、あるお役目上で、その地域一帯を巡回していました。

するとその時、道端で倒れている「女性」を見つけ、保護をしたのです。

 

しかし、その「女性」こそ―――・・・

 

 

 

フ:(う・・・っ、う・う―――・・・)

  ・・・こ、ここは―――・・・?

 

し:あっ、気が付いた・・・

  お姉さん、倒れてたんだよ。

 

フ:そう・・・それに、この傷の手当ては・・・

し:うん・・・ボクがやったの。

 

フ:(・・・「ボク」?)そう・・・ありがとう

 

 

 

フランソワ=エヴァ=ベアトリーチェ・・・一見して貞淑そうに見えるこの女性の正体こそ―――

この宇宙を席巻し、畏れられている存在・・・「暗殺者:ピース・メイカー」なのですが・・・

 

なぜかここ最近、何者かに追われており、そして行き着いた先が地球―――とは・・・

しかも匿われた先が、「ある機関」・・・「妖改方」だった―――とは・・・

何と云う偶然か―――いや、しかし・・・

実は「ここ」も、安全とは言い切れなかったのです。

 

 

 

フ:それより、あな―――・・・(!!)

 

 

 

取り敢えず、危機に陥っていた自分を救ってくれた事に、感謝の意を述べようとするフランソワを・・・躊躇させた事態。

 

それは、自分を救ってくれたと思われる、自称を「ボク」と云った「少女」が・・・

何者かによって害された???

 

フランソワは、「視覚」を持たない種族―――ですが、目の前で何が起きたのかは知覚出来ていました。

 

「しの」が、何者かによって存在を断たれた・・・

次第に薄らいで逝く、「しの」の存在を知覚して・・・

 

しかし、「何者か」―――も、すぐに推察出来ました。

 

何より自分は、「ある者達」・・・「アンフィス・バエナ」と「ローゼン・クロイツ」と云う、「この宇宙にはない闇組織」と「この宇宙きっての闇組織」に追われていたのですから。

 

だから・・・「しの」が殺害されてしまったのも、彼らに自分と一緒にいる処を知られて・・・と、思っていたのですが―――・・・

 

 

 

し:ふぅ・・・全く―――空気全然読まないんだもんなぁ・・・

九:ちぃ・・・仕損じたか?

 

フ:(!!?)―――・・・

し:えっへへへ、ちょっと驚かせちゃってゴメンね?

 

フ:(・・・)それより、この人達は―――

し:う〜〜ん・・・ちょっと事情が複雑でね・・・。

  元々は、ボクと「同じ里」の連中なんだ―――

 

フ:(・・・)そう云う事ね―――

し:あれっ? 判っちゃったの??

 

フ:割と・・・よく聞く話しよ―――さして驚きもしないわ。

  それよりも、私は、あなた方が私を追ってきた連中―――だと思ったのだけれど・・・

 

九:何の事を云っているのか知らんが・・・厄介な者だと云う事は理解出来た。

  ならばこの上は、そこな裏切り者と一緒に始末してくれん!!

 

し:く・・・させるかあ〜―――!

 

 

 

ところが・・・不意にフランソワの背後からは、先程から聞き慣れた声が・・・?

そんなはずはない―――たった今、自分と対面して会話をしていた人物が、瞬時に背後に回り込むなど・・・

 

しかし現実には、しのを仕留め損なった、九魔の忍びが見ていたモノとは・・・

 

「しの」を(かたど)っていた像は、崩れ・・・薄らいでいき―――代わりに「しの」の本体が、フランソワの背後に現れたのです。

 

その事に、あまり事情を知られ過ぎると、不具合が生じるモノと知覚した九魔の忍びは、

フランソワもろとも抹殺を計ろうとするのですが―――・・・

 

 

 

九:ぐ・・・っ―――はああ〜っ!!!

 

し:(え・・・?)今のは―――ナニ??

 

 

 

自分達に、害を為そうと跳びかかってくる者達を、迎撃―――・・・

 

しかし「それ」こそは、この部屋・・・播磨屋の一室に置かれている「碁石」なのでしたが―――

その総ての石が、何者かによって生命を吹き込まれたかの如く、九魔の忍のみを狙い澄まし、そして駆逐してしまったのです。

 

その・・・フランソワの畏るべき能力こそが、彼女を一世一代の暗殺者としてのし上がらせた・・・

ザミエル(魔 弾 の 射 手)』―――・・・

 

けれど・・・この地球上には、このフランソワの能力の事を、知る人物は・・・少ない―――

 

だからしのも―――・・・

 

 

 

フ:フ・フ―――驚いた?お嬢ちゃん・・・

  けれど、これで判ったでしょう・・・私が傷付いていた理由・・・

 

し:(・・・)それは判りましたけれど・・・だったらどうして、その能力―――ボクに見せたりしたんですか。

 

フ:だって、この身に振りかかろうとしている火の粉は、払わないと・・・ね。

 

し:そうだったんですか・・・そうですよね。

  あっ―――ボク、「加東しの」って云います。

  お姉さんは?

 

フ:フランソワ―――でいいわ・・・

  でも、しばらく休んだら、すぐに出て行くから・・・

 

 

 

その理由を、敢えてしのは聞きませんでした。

確かに、未だに九魔からの追撃は手を休めることなく―――だったのですが・・・

自分が帯びている使命―――妖魎の誅伐もあった上に、厄介な事情を抱え込んでいる人物を匿おうとしている事は、

しの自身にも・・・また「妖改方」の仲間達にも、非常に負担になるモノと考えられたから・・・

 

だから、もうしばらく―――と、思っていた処に・・・

 

 

 

第二百九十八話;師の影を追いし者

 

 

 

し:あっ―――メイベルさん・・・どうしたんですか。

メ:ここに―――レェラァの反応が・・・間違いありませんね。

 

し:え?「レェラァ」?? ・・・って―――ああっ、メイベルさん!!

 

 

 

現在、地球へと在留している、ある人物の付き人―――メイベル=ヴァイオレット=フォルゴーレが、

雇い主である「主人」を伴わずに、播磨屋を訪れていました。

 

そして、播磨屋の玄関口を清掃しているしのと、程度のやり取りを発生させると、

誰に断るでもなく、自分の「師」がいる部屋へと、足を向かわせたのです。

 

 

 

メ:―――・・・。

  ――――――・・・・・・。

  ―――――――――・・・・・・・・・。

  (・・・いない―――しかしミリヤ様は、確実にレェラァの反応を、この地点で捉えた・・・と、仰られていたのだが・・・)

 

 

 

ですが・・・各部屋をいくら改めても、フランソワがいた―――と云う痕跡は、見当たりませんでした。

けれど、この事を―――・・・

 

 

 

し:そろそろ・・・事情を話してくれませんか?

  お互い、知らない間柄じゃないわけだし・・・

 

メ:(・・・)レェラァは―――私の「師」は、何者かに追われている・・・と云う事を知りました。

  そして、不確定ながら、この地球に流れ着いた事を、ようやく掴んだ矢先―――・・・

  それを―――っ・・・

  (??!)しのさん?

 

し:(・・・)―――そこだっ!!

 

ア:ぐぅむ・・・ま・・・まさか―――この偽装迷彩が破られようとは・・・っ!!

 

メ:お前は―――「アンフィス・バエナ」の一員!!

  それにしても―――フフフ・・・お笑い草もいい処ね。

  感情を昂らせると、こうまで見境がなくなってしまうとは・・・

 

し:自分で自分を責めるのは止しましょう・・・そういうボクも、助けられた口なんですから・・・。

 

メ:それではやはり―――レェラァは・・・?!

 

し:「沈黙は、金」・・・ここには、聞いてはならない奴らがいる―――・・・

 

 

 

そう云うが早いか、床よりアンフィス・バエナの連中を、斬り裂いた刃がありました・・・

まるで、「死神の鎌」を思わせるかのような、大身の刃―――通称を「コール・ハーケーン」・・・

 

それは、「ウイッチ」の持つ、固有の(ユ ニ ー ク)スキルでした。

 

 

そして・・・改めて「師」の所在を問うと・・・

 

 

 

し:さすが・・・ですよね―――結局は、ボクにも正体を覚られることなく・・・

  しかも、「ここにいた事」の痕跡すらも残さずに・・・誰にも知られることなく、いなくなっちゃうんですからね・・・。

 

メ:では・・・やはりレェラァはここに―――

 

し:ええ、そうですよ―――

  確かに今日の今しがたまで、ここにいました・・・。

  なにより、今日の朝餉をボクが持って行ったときには、食べ終わるまで待っていたんですから。

 

  それが・・・メイベルさんが訪れたのと同時―――なんでしょうね・・・そこはボクも見習わないと。

 

 

 

確かに・・・メイベルが探していた人物は、ほんの数分前まで、播磨屋のこの部屋にいた・・・

 

けれど、そこにはなにも、ない―――・・・

 

敷かれていたと見える布団は、きちんと畳まれ、「押し入れ」と云う収納部に収まっている・・・

 

しかも、取り立てて不自然なのは、その部屋だけが、清掃が行き届いていたと云う事―――

それは勿論、他の部屋も清掃はされているのでしょうが・・・

その―――フランソワ某が留まっていたと見られる部屋のみが、塵・埃一つない・・・

まるで―――生活感を感じさせない・・・

況してや、指紋の一つさえ残されていない―――

 

そんな、徹底された痕跡の消し方に、逆説的には、「その事自体」が、紛れもなくフランソワがこの場所に「いた」事を、

強く証明づけていたのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと