「この宇宙」―――と「侵略者」の間にて、「その者」は佇んでいました。
しかして、その場所こそは―――侵略してくる者達を、水際で食い止めるべくの「最前線」であり・・・
そして既に、激戦があった事を物語るかのように・・・
その、「佇みし者」の足下には、一つの馘が・・・転がっていたのでした。
そして、その馘に向かい―――「不和と争いの女神」と称された「エリス」は・・・
エ:フ・フ―――流石は「不死の賢者」・・・
馘と成り果てた処とて、まだ存在が紡げるか・・・
そう・・・その場に佇んでいた者こそ、「エリス」・・・
ならば、この存在の侵略を食い止めようとしていた、ジョカリーヌとミリティアは、どこに・・・?
いや―――今、「エリス」が述べた事が真実ならば、現在、首だけの存在になってしまった者こそ、
「賢下五人」の一人である、「ロア・マスター」のミリティアなのですが・・・
ならばジョカリーヌは―――?
すると、ミリティアの首の、目が開き・・・
賢:(・・・)フ―――ひとときの勝利に酔いしれておくが良い・・・
いずれ、汝の前には・・・
エ:それは、ご苦労な事―――
なれば、丁重に出迎えなければならぬかな・・・
敗れながらも、不敵な「言の葉」を紡ぐ、「ロア・マスター」・・・
それを受けながらも、こちらも不敵な態度で返す、「不和と争いの女神」・・・
しかし・・・そこに、ジョカリーヌの姿はありませんでした・・・
それもそのはず、今やエリスが―――
エ:それにしても・・・不便であった事よ―――
うぬらの奸計に加え、この存在を割かれたとあっては・・・
しかも、割いた存在をも手懐け、妾の最も忌み嫌う調和の世界を創り出そうとは・・・
賢:否―――なにより汝は、「サウロン」か「宇宙」かの選択に迫られし時、
迷いしの果てに「宇宙」を択んだ・・・それでも尚、択びしのち悩み抜かねば、状況もこうまで悪化することはなかったのだ。
そう・・・結論だけを述べてしまうと、その場にジョカリーヌは「いた」のですが・・・
その存在は、異にしていた・・・
いえ、もっと正確に伝えるならば、エリスはようやく、本来の存在へと戻る事が出来ていたのです。
つまり、この「最前線」とも云える地にて、ジョカリーヌとミリティアが、エリスを待ち受けていたと云うのも、
エリスが本来の存在に戻るのを、見届ける為にそうしていた・・・
しかしエリスは、元の鞘に戻った途端、自身に対し惨い仕打ちをした存在の一人の馘を刎ねた・・・
けれど、「不死の賢者」でもあったミリティアは、身体を消失させても、首のみでも存在を紡げる事が出来たのです。
それにしても・・・よもや、ジョカリーヌがエリスだったとは―――・・・
それに最早、最前線だった地は、侵略者たちにとって格好の「最前線基地」ともなりえ、
今も・・・予め指令を出しておいた手下達が、各々の戦果を持ちかえり・・・
エ:―――何者か・・・
ジ:「サトゥルヌス」のジェルソミナにございます・・・
お云いつけ通り、「プリマドンナ」は我が手に・・・
グ:「リント・ヴルム」のグレーテルに存じます・・・
「トゥルヴァドゥール」は、この通りに・・・
エ:それは重畳―――して、「アンフィス・バエナ」のメンデルスゾーンは・・・?
ジ:ウフフフ―――あの方ったら、また遊んでらしてるのね、悪い癖だわ。
グ:感心できかねますな、「サトゥルヌス」・・・仲間を貶めんとして、何を得ますか。
ジ:フ―――ですが、そう捉えられても致し方のない事・・・
あの方は、わたくし達の内では唯一、「組織」を持ち運営をしているのですから・・・
ですが、そこは批判の対象とはしていません・・・確実性を求めるのならば、他の者に託さず自らが動かねば・・・
そうでなくては、エリス様のご所望・・・また遅きに失する恐れがございますわよ。
ですから、この上は一刻も早く―――「サイレン」の確保を・・・メンデルスゾーンに急がせた方がよろしいかと・・・
確かに―――「サトゥルヌス」の言い分に一理あり・・・と思った「リント・ヴルム」は、そう思うしかありませんでした。
なにより、今回の指令の完遂―――その可否の報告にすら現れていないのですから・・・
だから、「アンフィス・バエナ」に批判の的は集中してしかるべきだったのです。
しかし―――前回までのお話しをご覧の通り、「アンフィス・バエナ」の一員は、「サイレン」の確保に失敗・・・
剩、彼の者の能力を覚醒させる手伝いまでしてしまった・・・
これ以上の不手際に失態を塗り重ねするわけにもいかず―――だから、この場にも姿を現わせないでいるのではないか・・・
そうした憶測も飛び交いはするのですが、果たして真相は―――?
それよりも、仲間の不手際は、この際本人に拭わせるとして・・・
「サトゥルヌス」と「リント・ヴルム」は各々―――
ジ:では―――わたくしは「ディーヴァ」の確保・・・並びに抹殺を視野に入れておきます。
グ:ならば、私は「ローレライ」か・・・健闘を祈ろう。
「5人の歌姫」の、残る二人・・・「ディーヴァ」を「サトゥルヌス」が―――そして「ローレライ」を「リント・ヴルム」が受け持つようですが・・・
云わば過去に、武力に長けた「死せる賢者」の二人・・・「ホプリタイ」と「ジャグワー・ノート」でさえ手を焼いた連中が、
リリア達の居る地球に押し寄せようとしている・・・??
それに現在、不確定ではありながらも、「サイレン」も地球にいる―――となれば、
いよいよ以て「この宇宙」の存続の危機が、近付いてきていると云って過言ではなくなってきているのです。
しかし―――・・・
ジ:(フ・・・今の処は、どうにかごまかしは効いているみたいですわね・・・。
しかしそれも、いつまで保つ事やら・・・
それに、現在わたくしが掴んでいる情報によると、「ディーヴァ」「サイレン」共に地球にいる・・・
しかも、「サイレン」の確保に「アンフィス・バエナ」が手間取っていると云う事は、どうやらこちらにも運が向いてくれているようですわね。)
何を隠そう・・・「サトゥルヌス」のジェルソミナは、その最初より存在を違えていました。
では、今回の報告で、ジェルソミナが確保できていたと云っていた「プリマドンナ」は・・・?
それは―――まだジェルソミナが、ジェルソミナだった頃の出来事・・・
現在のジェルソミナは、「ヱニグマ」によって取り込まれてしまった存在・・・
そう―――「誰でもない」彼女は、存在を取り込む事により、「誰にでも成れる、誰でもない者」と成っていたのです。
そして・・・「ヱニグマ」が入手していた情報・・・
「ディーヴァ」と「サイレン」は、現在同じ場所におり、確保するも保護するも、思いのまま―――だと云う事・・・
それはそうと―――地球では・・・
ミ:それにしても・・・意外でしたわ、あなたが「サイレン」だったなんて―――
フ:その事は、私自身でも知りませんでした・・・
ですが、こうなってしまった以上は―――・・・
ミ:それにしても・・・判らないのは、この地球に居るはずの「歌姫」の一人・・・「ディーヴァ」が誰なのか。
私ではない―――と云う事は、以前に連中に会った事のある私が、現在もこうして無事に居られると云う事で証明されているでしょう。
た:それでは、わしも・・・じゃな。
なにより、先程まで遭遇しておきながら、見向きすらされんかった事じゃしのぅw
リ:んじゃ―――私も・・・ってことになるのか。
なんだか、益々判らねぇことになって来てやがんなぁ〜。
ミ:(・・・)一つ提案があるのですが―――リリアさん、あなたが「インヴェクター」より授かった「コンタクトレンズ」・・・
それではどうなのですか?
リ:(・・・)あ! なるほど〜〜さぁっすがミリティアさん、頭いいわあ〜♪
ミ:(・・・褒められた実感が湧かないのは、どうしてなのでしょう―――・・・)
リ:とは云ってもだなあ〜〜私が、フランソワが「サイレン」だと判ったのは、本当に偶然―――なんだよなあ〜〜
た:なんじゃい―――頼りにならん奴じゃのう・・・
リ:そう云うなよう〜〜私だって、あの人から云われてるのには―――・・・
「連中より後れを取るな」〜ってことだけだしぃ・・・第一、ついさっきまで「歌姫」が何者かすら知らなかったんだぜえ?
それに・・・そう云えばさあ―――そのお芝居の舞台・・・て、この「地球」だったん?
ミ:いえ・・・私も詳しくまでは知りませんが、大きく捉えて云うのならば、この地球を含んだ「第71号宇宙」内での事のようなのです。
その内でも、更に条件が加えられ・・・この地球に―――と云う事のようですわね。
幸いにも―――「歌姫」の一人に遭遇することはできた・・・
しかしそれは、全くの偶然性の出来事だったようで、同じく、この地球にいるとされる「ディーヴァ」については、
いくら三人が頭をひねろうが、誰であるか特定すらままならなかったのです。
その事に・・・ミリヤは、リリアが「インヴェクター」より授かっていた「コンタクトレンズ」の事を思い出し、
「それ」を使用してみては―――と、助言したのです。
とは云っても、この「人探し」自体、砂浜に落ちた小物を探す感覚にも似たモノだったので、
そこでリリアは、国内についてはソフィアを頼り、相談を持ちかけようとした処・・・
第三百一話:「ディーヴァ」その意外なる正体
ソ:あらリリア・・・それに、そちらの方々は、どうしたのですか?
現在―――リリアの故郷でもある「テラ」の都は、リリア自身の生家でもある「ノーブリック」にあり、
しかし、リリア自身は自国の王としての身分を自らが放棄・・・
代わって「テラ」の国は、リリア自身の幼馴染でもあり、永年の付き合いもあった隣国・・・「サライ」の女王でもあったソフィアが治めていたのです。
そう・・・元々は、「テラ」はリリアのものだった―――にも拘らず、ある策略を期に、「王」としての地位・権力・名誉を他人に明け渡してしまった・・・
そう云ってしまえば、悪く聞こえてしまうモノなのですが、リリアにしてみれば、王族なんて窮屈なモノで、それから比べれば庶民の方が自由で気ままなモノだとさえ思っていたのです。
けれど・・・現在の彼女の身分は―――そんな「王族」よりも、まだ高きにある・・・「評議長」
人民達は、知らない・・・
自分達と同じ「庶民」の女性が、この惑星の運命を決めていた事など・・・
それはそれとして―――リリアに代わり、この国を治めていた女王陛下は、激務の合間を縫い一時のくつろぎを嗜んでいました。
―――と、そんな時に、自分の幼馴染が、久方ぶりに顔を覗かせてくれた事に、表情は和らぐのですが・・・
リリアは―――ソフィアを見た途端、声を失っていました・・・
それについて、不思議に感じたミリヤにたまもは・・・
ミ:私は、現在この方と行動を共にしているミリヤと申す者です。
それよりも―――・・・
た:わしも、ミリヤ殿とさして違いはありませぬが・・・
それよりリリアよ、お主何をおもろかしい顔をしておるのじゃ?
まさか―――そんな―――こんなにも都合のいい事があって、よかろうモノなのか???
とどのつまり、リリアが幼馴染を見た途端、開いた口が塞がらなくなってしまったのは、そうした状況が用意されていたからでした。
これから探し出そうとしている人物を、探し当てるのは容易ではない―――
相当に骨の折れる事だろう・・・と、そう覚悟をしていれば、なんと件の存在とは―――
リ:ま・ま・まさか・・・お前だったってぇのか?? ソフィア!!!
ソ:はあ? また何を訳の判らない事を・・・
ミ:リリア・・・さん? ひょっとしなくても・・・
た:しかし〜〜なんだか、大人の事情てんこもりじゃのう。
事情をよく知る者達の間だけで変に納得されても、当の本人であるソフィアにしてみれば、全く以て何が何やらさっぱり理解不能でした。
しかし・・・その疑問点も、ある者達の来訪により、明確になろうとは・・・
果たしてリリアは、「ディーヴァ」であるソフィアを、護り切る事が出来るのでしょうか・・・。
=続く=