ここは・・・星域・星界の果てか―――・・・
想えば遠くへと来たモノだ―――・・・
それよりも、五人いる「歌姫」のうち、『トゥルヴァドゥール』と『プリマドンナ』の二人は、既にこちらが確保をしている・・・
あと残るのは『ローレライ』『サイレン』『ディーヴァ』のみ・・・
なんとしても、『サイレン』の確保を早急にしなくては・・・
そうしなければ、私は、永遠にあの二人の風下に立ってしまう事になる・・・
「三候」の一人である、「アンフィスバエナ」のメンデルスゾーンは、焦っていました・・・
仲間・同志である「サトゥルヌス」「リントヴルム」は、着々と与えられた使命を果たしていると云うのに、
自分は・・・組織的に人を動かしながらも、なにも成し得てはいない・・・
そのことを「サトゥルヌス」から痛罵されたモノでしたが、ようやくにして掴んだ『サイレン』の現在の所在・・・
それは、「第71宇宙」にある「銀河太陽系第三惑星:地球」―――なのでした・・・
そして、早急に降り立ってみれば・・・
メ:ちっ―――田舎臭い処ね・・・
けれど、隠れると云うのなら、最適かしら・・・
それに―――フフフ・・・
この私の、手を煩わせてくれたお礼に―――この惑星は、軽く消滅してあげるとしよう・・・
数ある「宇宙」の中で、地球が属する「第71宇宙」は、比較的過疎で「辺境」の部類に属していました。
更に、その中でも「銀河太陽系」は辺境中の辺境で、よもや「アンフィスバエナ」のメンデルスゾーンも、
自分が探そうとしている人物が、こんな処に潜伏しているなどとは、思いも寄らなかったのです。
(余談ではあるが、「サイレン」であるフランソワは、地球の出身では、ない。
つまりこれは、メンデルスゾーンが勝手に解釈したモノである。)
しかし―――ある時・・・
自分宛てのメールに、『サイレン』が現在どこにいるかを臭わせる様な、匿名からの情報を貰い、
今までの自分の評価を拭うと共に、ここまで自分を貶めてくれたお礼に―――と、地球の破壊消滅も視野に入れていたのです。
(なお、この時メンデルスゾーン宛てにメールをした「匿名」とは、通称を『誰でもない者』と云う・・・)
そんな凶悪な思考を持つ者が地球へと降り立っているとは露知らず、自分の幼馴染が「歌姫」の一人だと知ったリリアは―――・・・
リ:いっやあ〜〜しっかし、お前が『ディーヴァ』・・・だ、なんてなあ〜〜w 意外や意外www
た:それはーどう云う事じゃ?
リ:いやw だってさ、こいつ―――めっちゃ歌下手だぜ?www
ソ:リリアっ―――!!
リ:だって、本当だろうによwww
あ―――でも・・・
ミ:・・・「でも」?
リ:「踊り」は巧かったんだよなあ・・・。
ミ:!(「踊り」・・・)
リ:あれ? どったの―――ミリヤさん・・・
ミ:(・・・)偶然かどうかまでは判りませんが―――私達の組織も「Diva」と云うのは、ご存知でしょう・・・
実はこの名称、マエストロ様より頂いたのですけれど、丁度その時にご説明いただいたのが―――・・・
『舞踏の女神』―――そして「舞踏」は「武闘」に通ずる・・・と。
た:ふむ・・・なるほどな。
しかし、今となっては存外狙っておったのやも知れませんな。
ミ:たまもさんもそう思われますか・・・
それに私も、「歌劇」の事を知って以降は、疑問に抱いていたのです。
なぜ・・・「私達」と同じ、「ディーヴァ」が・・・と、ね。
不思議とも思える、偶然性の一致―――
しかし、こうも偶然性が重なり合ってしまえば、それは最早「偶然」とは呼ばず・・・
それは、そうなるべくして仕掛けられた「必然の罠」となってくるのです。
その事は判ったのですが、現在地球は、畏るべき者の侵入を既に受けており―――・・・
ミ:(!!)―――く・・・
た:ミリヤ殿??
ミ:こっ―――この感覚は・・・忘れもしない、この感覚は!!
リ:どうしたってんだ、ミリヤさん!
ミ:逃げて・・・早くフランソワを連れて、どこか遠くへ―――
畏るべき「破壊」と「殺戮」の意思を、その優れた感応にて検知したミリヤは、
すぐさま『ディーヴァ』であるフランソワを連れ、どこか遠く―――被害が及ばない処へと逃げる様に諭しました。
しかし―――・・・
謎:フッフフフ―――それは、あまりにも哀しいではありませんか・・・
折角、こうしてお目に掛かれたばかりだと云うのに・・・それなのに、もうお別れしなくてはならないとは・・・
た:(!)お主―――いつの間に?!
リ:誰だぁ? お前・・・
謎:(・・・)フン―――・・・
リ:(!)にゃろう〜〜!!
た:やめい!リリア―――お主とて、判らぬではあるまい!!
謎:フン・・・命拾いをしたようだなぁ・・・お前。
そこの小さいのに感謝しておくがよいぞ・・・
さて―――では・・・(うん?)
・・・お前は―――?
ソ:ナ・・・なに?
謎:フッフフフ―――ハハハハ!
いや、これはこれは! 本来の目的には入ってはいなかったが、どうやら私にも運が向いてきたようだ・・・
さあ・・・共に来て頂きましょうか―――『サイレン』に『ディーヴァ』・・・
私達は・・・誰もいない処で、もっと話し合うべきだ―――そうは思わないかね?
既に、畏るべき者・・・「アンフィスバエナ」のメンデルスゾーンは、そこに来ていました・・・
そして、不敵―――かつ、傍若無人・・・慇懃無礼な立ち居振る舞いに、ついリリアも誘われそうになったのです。
(そこを、たまもが抑制し、余計な犠牲が出るのを防いだのではありますが・・・)
しかし・・・メンデルスゾーンには、興味が・・・関心が、なかった―――
自分に盾突き、足下を穢すも、好し―――また、無駄な抵抗なく、必要最低限が為せれば、それも好し―――
だからフランソワを・・・ソフィアを・・・彼女達の意思とは関係なく、連れ去ろう―――と、した時・・・
謎:フフフフ―――ハハハ・・・!
メ:何奴―――?!
リ:(この笑い声・・・って―――)
ノーブリックの城内に・・・木霊する、不敵な笑い声・・・
その笑い声の主を、リリア達は知っていました―――
そう―――・・・
謎:それは、あまりにも哀しいではありませんか・・・
折角、こうしてお目に掛かれたばかりだと云うのに・・・それなのに、もうお別れしなくてはならないとは・・・
メ:(!)この私の〜〜・・・どこだ!姿を現せ―――この不届き者め!!
大:ご所望とあらば―――・・・
リ:ああっ・・・やっぱり―――エルムさんの親父さん!
「闘争」を、この上なく・・・こよなく愛する種族―――「ヴァンパイア」の「大公爵」・・・
この彼の出現によって、不利な状況も些か好転するモノ・・・と、そう思われたのですが・・・
ところが大公爵は―――・・・
メ:なんだ・・・貴様は―――
大:ナニ、ちょっとした余興だよ。
それに、汝と余は、運命を交錯させてはいない―――故に、闘争を紡ぐ理由も動機も、見つからない・・・
リ:へ? あの・・・じゃあ、なにしにきたんすか??
大:フ―――フフ・・・だが、余の「家族」に、汝と運命を交錯させている者がいるとしたら、いかが・・・かね?
メ:(・・・)フン―――だがしかし、そんな者達の事など、いちいち覚えていられんよ。
なにより、弱いヤツの事など、記憶の妨げとしかならんではないか・・・
大:フム―――まあそう云わず、顔を見るだけでもいかがなものかね。
メ:しつこい客引きだな・・・
エルムドア大公爵が、この場に現れた事も驚きだったのですが、更に驚いたのは、エルムドア大公爵自身は、闘争の意思は明確にはせず・・・
しかし、彼の「家族」の内に、「アンフィスバエナ」と運命を交錯させている者がいる―――としたのです。
そう・・・「彼の家族」―――
しかし、「娘」であるエルムは現在、地球や・・・況してやその近辺にすらいない―――
そして「孫」のマキも、エルム同様―――・・・
ならば、エルムドア大公爵の、「家族」の誰が―――・・・
第三百三話;忌み深き因縁
大:その事に関しては、既に当事者は別の場所にてスタンバイしていてね。
できれば・・・ご足労ではあるのだが、そこまで来て貰えないモノかな。
それに、汝としても、こんな窮屈な戦場では、息がつまるだろう。
メ:強引もあったモノではないわね。
けれど、そう云うのも嫌いではないわ・・・
それに―――ちょっとお前の「家族」とやらと遊んであげても、充分余り過ぎるほど時間はありそうだ・・・
よかろう―――罠とは判っていても、お前のお誘いに乗るとしようではないか・・・。
大:フ・フ―――それはまた、好い返事で何よりだ・・・
では、参ろうか―――
メ:良かったわね、『サイレン』に『ディーヴァ』、ほんの少しだけど、馴染みの者達と別離の挨拶が出来るくらいの猶予が出来て・・・
お前達も、これから会えなくなるのだから・・・精々、別離を惜しんでおくが良い・・・フハハハハ―――!
現在の、この場所―――ノーブリック城とは別の場所・・・と云う、どこか罠の臭いのする言葉ではありましたが、
そうとは判ってはいても、メンデルスゾーンはエルムドアの誘いに乗じたのです。
それもこれも、メンデルスゾーン自身が、「第71宇宙」にいる誰よりも、「強い」―――と、自負・自覚していたから・・・
だから、何者の邪魔が入ろうとも、片手間で片づけられる自信があった―――
しかし、それはまさしくの「奸計」―――
メンデルスゾーンでさえも、遙か遠い過去の記憶に埋もれた、「或る存在」の事など覚えてはいなかった・・・
けれども、「エルムドアの家族」は、知っていた・・・いや、知らされていた―――・・・
自分が成長していく上での、その経緯で、生まれ故郷とは違う「この宇宙」に来た事を、知らされていた・・・
では、「エルムドアの家族」とは、一体誰の事なのでしょう・・・
それはそうと―――・・・
ミ:(!)はあっ・・・はあっ―――・・・
た:ミリヤ殿・・・
ミ:あの者・・・以前よりも更に・・・更に凶悪さを増しています・・・
リ:―――ヘッ・・・の、ようだな・・・。
ミ:(?)リリアさん・・・あなた―――
リ:「知って」は、いたよ。
けど、聞いてただけじゃ、どうにも実感が湧かなくてな・・・
しっかし―――ありゃあ、聞いてた以上の化け物だわwww
ソ:でっ―――では・・・どうすれば・・・
リ:さぁ〜て・・・な―――
「なんとかなる」かも知れないし、「なんともならない」かも知れない・・・
それに、じたばたしても始まらない状況になってる―――てことは・・・
肚ぁ括らなきゃならないんだよ―――
ソフィア、お前もそこんところ、よぅく判ってんな。
た:(・・・)変わったのう―――お主・・・
リ:そか??
けどなぁ・・・もうどうにもなんない時にゃ、案外どうにかなる―――ってことも、ある・・・
そう「あの人」も云ってたけどなw
ミ:・・・「あの人」?
そう云えば―――先程から、匿名性の高い事を云っていましたわね・・・。
それに・・・そろそろ話して頂けませんか、あなたのみが知り得る「真実」と云うモノを・・・
「賢下五人」の一人、『話術師』・・・
その名を聞くに及び、またひと波乱もふた波乱も起きそうな予感がしたモノでした。
そう・・・リリアが、ここまでの事情に通じていたのも、総ては『話術師』からの口伝によるもの・・・
しかし、「その名」や「存在自体」は、今まで秘匿とされてきたモノであるから、未だ以て誰もが知り得る事はなかったのです。
しかし―――・・・
「秘」が「秘」ではなくなった時・・・
また一つの「謎」が、紐解かれるのです。
=続く=