「奸計」とは知りつつも、大公爵・エルムドアに誘われ、『アンフィスバエナ』のメンデルスゾーンは、自分と何かしらの因縁を構築させていると云う、
エルムドアの「家族」が待つ、エグゼビア大陸の「ヴルートゥス台地」へと来ていました。
しかし・・・その場にいたのは―――
メ:(・・・うん?)「複数」―――いるようだけど・・・お前の「家族」とは、「四つ子」なのかな?
大:いや? だが、紛れもなく、あの中にいる一人が、余の「家族」なのだが・・・
それとも、こう観客がいては、負けた時の言い訳もできんかね。
メ:フ―――フフフ・・・面白い事を云うじゃない、いいだろう、お前は一番最後に殺してあげる。
「四人」―――その数に、メンデルスゾーンは、エルムドアの「家族」は、一卵性の多生児なのかと揶揄したのですが、
そこの処は、当のエルムドアより否定され、しかし・・・その「四人」のうちの一人は、紛れもなく「家族」であり、残りは「観客」だとしたのです。
それに・・・どこか挑発めいたエルムドアの言葉に、乗じなかったものの、いくらかは面白からぬ感情を持ち始めるメンデルスゾーン・・・
それよりも、これで舞台は整った―――あとは・・・
大:お膳立ては、ここまでだ・・・あとは、巧くやるがよい。
サ:(・・・)悪ぃ、あんがとな―――ジジィ・・・
お前の相手は、この私だ。
メ:フム・・・その前に、宜しいかな―――
お前は・・・どこの誰だったか―――そこのロマンス・グレーから、何やら因縁めいた事を聞かされたのだが・・・
この私も、一口に「因縁」と云われても、腐るほどあるわけだしなぁ・・・ククク―――
それに・・・お前程度のレベルでは、この私に髪の毛ほどの傷すら付けられないとは思うのだが・・・
サ:ぬううっ―――そこまで、この私を弄るかあっ!!
その―――エルムドアの「家族」こそ、サヤでした・・・
そして、そう・・・サヤこそは、エルムドア「達」と「同じ」ヴァンパイアながらにして、全く異なる種・・・
あれは・・・数万年も前に、「隕石」の形をした「脱出艇」が、地球へと不時着―――
その時、その「脱出艇」の中に入っていたのが、『SAYA』と、既に名付けられていた「赤子」だった・・・
そして、それからどうして、この「赤子」が、こうした象で地球に辿り着いたのか・・・その経緯を調査する時、
一つの手がかりとしてあったのが、同じく「脱出艇」の中にあった、『アンフィスバエナ』という「メモ書き」・・・
しかし―――いくら「第71宇宙」の犯罪組織を洗い直しても、その名称に当たるモノはありませんでした。
そうした時に、現在から28,000年前―――ジィルガが立ち上げた秘密の組織・・・
その名も「ディーヴァ」―――・・・
その「ディーヴァ」が、同じ時期に、外宇宙からの侵略を防ぐため、二人の「賢下五人」を援護する為に参戦してはいたのですが・・・
当時の彼女達二人では、お話しにならなかった―――・・・
そして、その後の調査により、あの当時侵略してきた側に、『アンフィスバエナ』の構成員がいた事が判ったのです。
すると、この報告を聞くに及び、すぐさまジィルガの脳裏には、「或る事」が浮かび上がって来ていたのでした。
そう―――・・・確か、この名称と同じ存在が、いつか保護した「SAYA」なる赤子の「一族」に、何らかを齎していたのだ・・・
その推測を基に、あらゆる手を尽くして、ようやく辿りついた「事実」―――
「第42宇宙」の、ある宙域に―――「ToMa」と云う、ヴァンパイアと程良く似通った種族が存在しており、
丁度あの当時―――約115万年前頃に、『アンフィスバエナ』によって、種を根絶やしにされた事実が拾えたのです。
当然その事実を、サヤは知る由もなかったのですが・・・
今般の事情もあり、この事実を知っていたジィルガより知らされる処となり、種族の仇を雪ぐ事を、胸に強く誓ったのです。
そして・・・ここに―――・・・怨みを雪ぐべき相手が、いる・・・
サヤは・・・いつになく、冷静ではいられませんでした・・・。
しかしそれは、折角相手を挑発し、戦局を優位にしてくれた、大公爵の好意を・・・
キ:ダメよっ・・・サヤさん―――!
冷静に・・・感情を昂らせては相手の思う壺よっ―――??!
サ:キリエさん―――・・・
でもさぁ・・・あたしは・・・あたしは、心の底から思うっ!!
あたしが今、こうして生きているのは、あたしの種族を鏖にしたこいつらを討て―――と、あたしに流れている血が教えてくれているんだっ!!
メ:フフフ―――なんて、おバぁカさん・・・
折角、お友達やロマンス・グレーが、お前に優位に運ぶようにしてくれたと云うのに・・・
サ:うるさいっ―――!!
『天は地に、地は人に、人は天に・・・』≪森羅万象≫―――・・・
メ:あっははは―――・・・
小賢しいわっ!!
そして、これで終わり・・・
お前も―――お前の種族も・・・ね!!
「殺られた」―――そう誰しもが思った時、思いもかけない出来事が、そこにはありました・・・
そう、「観客」の一人だと思われた・・・サヤの友人、キリエが・・・
いや―――そも、その場には、「観客」は、一人としていなかったのです。
それと云うのも―――
キ:サヤさんを・・・私の友を、殺させはしないっ―――!! ≪ホーロドニー・スメルチ≫―――・・・
イ:助太刀を致します――― ≪鳳燐剣≫―――・・・
ト:・・・フッ――― ≪イロリナズ・スター≫―――・・・
メ:・・・フッ―――やはり思った通りだな。
だが、こんな技が通用するかぁ〜!!!
―――ッハッハッハ! それにしても、馬脚を現すとは、まさにこの事!
それに・・・こいつらは、「観客」では、なかったのかな?
大:ふむ・・・どうやら、最近の客は、躾がなっていないモノとみえるな。
メ:フ・・・それで? 私が隙を見せた瞬間を狙って、四人で叩こう―――だなんて・・・
なんて哀れで、なんておかしいのやらw
それに・・・哀しむべき事は、お前達四人がかりをもってしても、この私を倒す―――どころか、傷付ける事さえ敵わなかった・・・
もう・・・終わりね―――対決勝負の約定を破ったのはお前達の方・・・
これで私も、心置きなく―――・・・
友人が、みすみす返り討ちにされるのを見ていられなかったか―――
キリエが、メンデルスゾーンに対し、自らの奥義である「ホーロドニー・スメルチ」を仕掛け・・・
すると、ほぼ同時に―――まるで示し合わせたかのように、他の二人・・・イリスとトーマスも、各々が持つ奥義を以て、メンデルスゾーンに放ったのでした。
けれど、この事態を完全に見越していたかのように、メンデルスゾーンは三人の奥義を完全防御・・・
そして、サヤとの一騎打ちを邪魔立てしたのは、キリエ達の方なのだと云い放ち、
まんまと、自分達の配下を呼びだてる、正当な口実を設けたのです。
そして、その数・・・およそ100―――・・・
これで、ここに進退窮まったか―――に、思えたのですが・・・
第三百四話;二つの「修羅場」
大:ほぉう―――これだけの数を擁してきたとは・・・
だが、この数ならば、まず不満はあるまいな。
メ:(??)やせ我慢・・・にしては、過ぎるのではないかね?
それと、こいつらの実力―――あまり過小評価しない方がよいぞ・・・
なんと、メンデルスゾーンが、配下を連れて来ている事など、先刻承知―――とでも言いたげに、エルムドアからは不敵過ぎる物言いが・・・
それを、単なる「やせ我慢」と、メンデルスゾーンは捉えたのですが・・・
実は―――・・・この場所には、彼ら四人だけではなく・・・
助:せ・・・先生〜〜早く―――早くしねぇと・・・
先:判っちょるよねぇ〜〜判っちょるけど・・・
ああ〜ん・・・人手が全く足りちょらんのんよぅ〜〜
サヤやキリエ達が、メンデルスゾーンと対峙していた場所から、程なく離れた場所にて・・・
何かを急かす言葉と、焦って半ベソをかいている声が―――・・・
そして、戦力差があり過ぎる為に、撤退を余儀なくされたサヤ達が、行き着いた場所・・・とは??
ト:―――どうだ、ハンス・・・捗っているか。
ハ:あっ―――兄貴ィ・・・いや、それがぁ〜〜
トーマスの事を「兄貴」と呼ぶ、この人物こそは・・・トーマスの実弟であるハンス=ベテルギュウス=フェルナンデス・・・
しかも、ハンスはここ最近、「ある人物」に気に入られ、半ば強制的に、その「ある人物」の「ある手伝い」をさせられていたのです。
(実を云うと・・・「エグゼビア大陸」にある国家の元首様も、知り合いであるキリエやサヤ、トーマスとの付き合いで、この「ある人物」の「ある手伝い」をする為に駆り出されていたのである。
それは当然、あとの三人も・・・
では、今回の件は、なんだったのか―――というと、「ある人物」からしてみれば、「休憩」の一種ではなかったかと・・・^^;
そして、その間―――ある作業は、その「ある人物」と、チーフ・アシスタントでもあるハンスのみ・・・とくれば??
しかも・・・「或る刻限」は、刻刻と迫ってきていたようで・・・^^;)
いや、しかし―――・・・
云うならくは、そこも「修羅場」・・・
「ある職業」にしてみれば、刻限でもある「締め切り」が―――・・・
エ:うわぁぁ〜〜ん! もぉ、どぉ〜しよ〜〜!!
うち一人じゃ、どーしても間に合わ〜〜ん!!
ねぇ―――ハンスさぁ〜ん、追加の助っ人の人ら、まぁだ・・・
ハ:え〜〜まあ〜〜一応、来ては貰ってるようなんですけどねぇ・・・
ねぇね兄貴、ちゃんと話してくれたんですよねぇ?
ト:知るか―――我々は、奴らをここまで誘ってやっただけだ、あとの事は貴様の役目だろう。
ハ:はあぁ〜? ちょっ―――ちゃあんと話しつけてくれねぇと・・・
なあ―――お姐さん方・・・
メ:(なんだ?この状況は・・・今一つ読めない・・
それに・・・あの女―――どこかで見た様な・・・)
エ:え〜と・・・ひのふのみのよのごの・・・
わあぁ〜〜じょおにおるよね〜♪
ほじゃ、コレお願いね〜〜♪
メ:(・・・?)なんだ? これは??
エ:ん〜とね・・・今月分の原稿―――
はよせにゃ、担当サンが取りに来るんよ〜〜
じゃけん、お願いね〜♪
そう・・・「漫画家」であるエリーゼは、「締め切り」まであと数時間と迫った現在でも、完成させている原稿が少なく、大量のアシスタントを欲していたのです。
(ここで、説明する余地すら無いだろうが、一応・・・サヤ・キリエ・イリス・トーマスは、エリーゼのアシスタントを、対決直前までしていたのである^^;)
そしてその場には・・・なんと、100名に余る大勢の人手(??)が???
それをみて、エリーゼは歓喜に沸き、また胸を撫で下ろすのでしたが・・・
メンデルスゾーンにしてみれば、現在自分達が置かれている状況が、把握できていない・・・
なにより、この女性は、どこかで一度見た事があるようでした。
しかし・・・次の、メンデルスゾーンの思いも掛けない行動が・・・
この場所を―――・・・
まさしく・・・
『地獄絵図』
と化してしまおうとは・・・
誰しもが、予測だに出来よう筈も、なかったのです・・・
=続く=