地球での騒動は、なぜかその場所に居合わせた「賢下五人」の一人、『破壊神』によって鎮圧されたモノでした・・・。
(聞いた処によると、今回『破壊神』と当たってしまった者達が云うのには、当局に引き渡される間まで「助手」をさせられていたという。
そしてまた、更には・・・引き渡しの時間も、「3時間後に」と云う時間の指定があったと云うが、
相互の関係者からは「ノー・コメント」ばかりで、当局としては、「これ以後は、相互の背後関係などを調査しなければならない」との見解を表明している。)
それにしても、気になるのは・・・当局に引き渡される際に、云い棄てられたメンデルスゾーンの科白・・・
サ:はあ〜〜あ、終わった終わった・・・。
キ:〜にしても、どうにかなったものね―――
イ:はい、お疲れ様・・・
ト:ふむ、眼精疲労に腱鞘炎・・・か、労災は利くのかな。
ハ:よせやい、兄貴・・・
それにしても、やっぱ数だよなあ〜〜100名余りいりゃ「あっ」と云う間だもんなぁ〜〜。
キ:それよりサヤさん・・・一つ訊いていい?
サ:ん? なんだい―――
キ:確か―――サヤさんの種族・・・この人達に滅ぼされた・・・って、大公爵様から聞かされていたんだけど・・・
サ:(・・・)ああ〜〜その事。
さぁてなぁ・・・私ゃ知らないよ・・・。
キ:(え?)知らない・・・って―――
サ:だってさぁ、そりゃ確かに、私だけが公爵さんやジジィとは違うけどさ。
私自身、こいつらには身に覚えのない事だし、それに、私の種族がこいつらに滅ぼされたかどうかも知らない・・・
第一、そう云うの・・・って、私が生まれる以前か直後の事だったんだろ?
だったら―――そんな事、私如きに判るわけないじゃない。
まあ・・・マエストロやジジィが云っているのは、信用できない・・・てワケじゃなくて、事実として私の種族は、この宇宙には私一人なんだろうからさ・・・
だから、「そう云う事があったんじゃないの?」くらいの感覚なんだよ。
ま・・・今回の事は、不運にも地球に来たこいつらを、誘き寄せる為に一芝居打った―――ってところかね。
メ:フ・・・ン―――フハハハハ!
呑気なモノだな・・・「それ」が真実だとも知らず・・・
キ:(!)なんですって―――・・・
メ:ああ、悪いが思い出してしまったよ・・・
そうさ、数十万年前―――先々代の時に、ある不死の種族を根絶やしにした事がある。
あの当時は、私はまだ駆け出しだったが、次々と狩られて逝くお前の種族達を見て、快感を覚えたモノさ・・・
イ:(・・・)こいつ―――
ト:上等だ・・・
メ:フ―――・・・殺るなら殺りなよ、私も「アンフィスバエナ」のトップとしてのプライドがある。
惨めに負けて、生き恥を晒すよりかは・・・
サ:な〜〜にを格好つけてんだか・・・逆に格好悪いよ、あんた・・・
だってさ―――そうだろ? せっかくこの世に生まれてきた・・・てのに、それを自ら「死のう」だなんて、格好悪さを通り越して滑稽だよ。
ま・・・私も、若気の至りにゃ、死に急いだ事もあったけども―――うちんとこの家長があんな人だからさ・・・
なんかもう、「どうでもいいや」ってな感じになってくるわけよ。
そう云う処を考えっと、あの人の存在―――って貴重だと、私は思うのよ・・・
妙に死にたがるメンデルスゾーンの言葉に、「それ」が、ある種の「誘い」だと感じたサヤは、取り立てて過敏な反応はしませんでした。
確かに、「アンフィスバエナ」のメンデルスゾーンの言い分には、真実があるのでしょう・・・
ですが、今更それを聞かされたところで、サヤにはメンデルスゾーンをどうにかしてやる気は、さらさらなかったのです。
だとしたら・・・先程の、種族を滅ぼされたことへの怒りと云うのは―――全くの偽り・・・?
実は、それこそが真実―――
ですが、それではあまりにも薄情と思われるのですが、サヤも・・・またフロンティアも、
サヤの種族「ToMa」が滅亡した―――と云う事実は把握済みでも、その実態までの根拠としては未確認だったのです。
確かに・・・種族を滅ぼされたことへの怨みはあった―――かもしれない・・・
しかし、実態が確認取れないままでは、ナニに対して憤っていいのかも判らない・・・
それに・・・現在の自分としては、「ヴァルドノフスク家」の一員としての生活がある―――・・・
実態のないモノより、実態のあるモノが、あるとすれば―――・・・
次第に、サヤにある蟠りと云うモノは希薄になり、やがて消滅して行った・・・
だから、その時のメンデルスゾーンの挑発めいた態度も、滑稽にしか映らなかったのです。
それよりも・・・そう、今回の「三候」の計画は、ほぼ「同時進行」―――
「ディーヴァ」を狙う「サトゥルヌス」、「サイレン」を狙う「アンフィスバエナ」・・・
そして―――「ローレライ」を狙う、「リントヴルム」・・・
その「ローレライ」を探し出す為、「第92宇宙」へと来ていた、「リントヴルム」のグレーテルは・・・
グ:ここ―――か・・・それにしても・・・フフフ―――
既に先客がいようとは・・・な、名は―――?
ヱ:「ハイランダー」『ファイア・ドレイク』の、エリア=プレイズ=アトーカシャ・・・と、申し上げる。
エ:「ヴァンパイア」は、『公爵』エルム=シュターデン=ヴァルドノフスク・・・だよ。
グ:(・・・)聞き覚えのない名―――だな。
なのに・・・貴君達からは、実に心地よいまでの「殺意」を感じる・・・
ヱ:それはなにより―――・・・実は私も、心なしか打ち奮えている・・・
良質の闘争を紡げる事が、何より・・・と、な。
別段、これと云って隠れるようでもなく、まさしく自分を待ち受けている―――と云った恰好の闘士が二人・・・
それはなんと、あのヱリヤとエルムだったのです。
しかし―――それにしても、この二人がなぜ・・・
その理由は追々語られる事になるのですが、まずは、「挨拶」代わりに―――と・・・
グレーテルとヱリヤとの間で、戦戟の火花が・・・
すると―――・・・
グ:ふむ―――・・・確かに・・・ここ最近では味わえていなかったが、実に好感触だ。
だが・・・不思議な事に、この感覚の持ち主には、記憶にはない・・・
普通ならば憶えているはずなのだが・・・その理由、貴君には覚えがあるのかな?
ヱ:(・・・)「ない」―――と云ってしまえば、嘘になるかな・・・
実は、これは私の母から聞かされていた事なのだが・・・貴様と同じ名を持つ者が、私の種族と私の惑星を、破壊したのだと・・・
グ:ほほう―――? 貴君の・・・? それより貴君は、「ハイランダー」だ・・・と?
ふぅむ―――・・・
「真紅の騎士」と「常闇の騎士」との前哨戦は、全くの五分と五分―――
(とは言え、双方の「手の内」は、まだ見せてはいない)
その内に、ヱリヤとしては珍しく、闘争本能を剥き出しにしている理由が、どことなくエルムには判ってきました。
そう・・・あれは・・・
ヱリヤの母であるスターシアが、まだ存命だった頃―――・・・
何者かに自分達の故郷である惑星を襲われ、たった一人ぼっちになったスターシアの前に、「フロンティア」と呼ばれる開拓事業団の・・・
その当時では、まだ「女禍」と名乗っていた人物に拾われ、彼女の庇護の下、生を繋いできた・・・
そしてその間に、開拓事業団が有する膨大な情報量のお陰もあり、あの当時では正体不明だった「何者か」・・・
それが、「リントヴルム」だと云う事を知ったのです。
その事実を娘であるヱリヤに伝え、何としても一族の無念を雪ぐよう、云い聞かされてきた・・・
なのに、「リントヴルム」からは、薄い反応・・・ならばまだしも―――・・・
第三百六話;運命と宿命の交錯
グ:フフフ―――・・・いや、すまないが、記憶の断片すら残されていないようだ・・・
残念だが・・・貴君の種族は、所詮―――それまでだった・・・と、云う事の様だな。
まさしくの「嘲り」・・・まさしくの「挑発」・・・
よくぞ、こんなにまで他人の神経を逆撫ですることができる様な言葉を紡げるモノだ・・・と、そう思っていたら―――
なんと、意外や意外な場所から・・・??
エ:(!?)お―――おっ??
フ:ぬぐぁあ゛〜〜! オレを・・・オレをここから出せぇ〜!!
この「気」には、身に覚えがあるぞぉぉ・・・!!
グ:ほぉう―――貴君・・・中々面白いモノを飼っているようではないか。
フ:ほざけえぇぇ・・・オレは忘れんぞ!!
今の・・・このオレの身が・・・こうなってしまったのは・・・半分はお前のせいなのだから・・・なあ!!
現在、エルムによって・・・命の等価とも云える血を吸われ、エルムの「従者」の一人となっている、フォルネウス=クシィ=ダグザ・・・
その彼が、宿主の許可無く実体化しようとしてきたのです。
それにしても、どうしてフォルネウスが、グレーテルの出現を機に、自己主張を強めてきたのか・・・
それは、それなりの理由が、やはりあったのです。
フ:このオレ様が・・・ヴァンパイアであるこいつとこいつの父親を憎むのは・・・長きに亘って闘争を続けてきたから・・・だが・・・
だが・・・こいつはっ!! オレ様達とヴァンパイア共との決戦を前に、突如として現れ・・・オレ様達の仲間を散々蹂躙した揚句、どこかへと去りやがったのだ・・・
あんなことさえなければ・・・こんな因縁の連鎖、オレ様で断ち切れたものを!!!
グ:フ・・・ッ―――それで、この私を逆恨み・・・か。
だから・・・ではないのか、現在のお前の身の上―――実にお似合い・・・と、云ったところだよ。
フ:(!!)ぬぅぉおお! 抜かせぇ〜〜―――!!!
エ:ちょいと待ちなよ・・・
フ:な! なにをする! エルムドアの娘!!
エ:エルム・・・だよ、自分のご主人様の名くらい覚えときなって。
それより―――・・・なぁンか今回、私・・・って関係ないかな〜〜なあんて思っちゃったりしてたんだけど・・・
そう云うわけにはいかなくなっちゃったようだねぇ・・・
グ:フ―――・・・興味本位は、身を滅ぼす羽目になるぞ、お嬢ちゃん。
エ:あ゛〜〜それよりさ・・・あんた、「ローレライ」てのを捜してんだろ・・・
じゃ―――私達と会っているってことは・・・
グ:ほほぅ―――お嬢ちゃんから、その様な指摘を受けるとは・・・
だが、心配は御無用、既にその手は打ってあるのだよ。
意外にも、「リントヴルム」のグレーテルとの因縁を構築させていたフォルネウス・・・
その彼が、自分の怨みを雪ぐ機会は永遠に失われていた・・・と思っていた処に―――の、偶然の邂逅・・・
しかし、その理由を聞くや否や、グレーテルからは一笑され、立場の無くなったフォルネウスは憤然たる勢いにて跳びかかろうとしましたが、
そこは宿主であるエルムより差しとめられてしまったのです。
それよりも、エルムとしては疑問がありました・・・
この出撃以前、エルムにヱリヤも、マエストロから一様に聞かされていた事とは、「歌姫」を確保する為に動いていると云う「三候」の存在でした。
その一人が、自分達の前にいると云うのに・・・この落ち着き払った態度は・・・ナニ??
そこでエルムは、グレーテルが「第92宇宙」に来た、本来の目的と云うモノを問うてみた処、
やはり、遠からずも近からずであった―――・・・
ただ―――その言葉の端々から読み取れるには、グレーテルは「囮」としての役割であり、
そして、本懐を遂げる「部隊」は、別行動を既に取っている・・・と云う事だったのです。
果たして・・・宇宙の運命や―――いかに・・・
=続く=