五人の『歌姫』の一人である「ローレライ」・・・ヴィヴィアン=クワオアー=コーデリアがいる「第92宇宙」へは、
すでにエリス側の捕獲部隊が向かっており、早くもその魔手が、オネアミスの背後に忍び寄っていたのでした。
しかも、その部隊は・・・「三候」によって雇われた「仕事屋」―――
それに、その組織に所属する者たち全員が、「黒い薔薇に十字架」の紋章を掲げていたことから、
誰が云うでもなく、その組織の事を『黒薔薇十字同盟』と呼んでいたのです。
それでは・・・みすみす、「ローレライ」であるヴィヴィアンは、ローゼン・クロイツ達の手によって、拐されたのでしょうか・・・
黒:(・・・)ほう―――どうやら、間抜けじゃないのもいたようだな。
「三候」の一人である、あやつ自らが囮を買って出ていると云うのに・・・
マ:それはどうも―――お褒めに与った・・・と、見ていいのよね・・・。
では、始めましょうか―――闘争を・・・
依頼人からの期待に応える為、ローゼン・クロイツの方も精鋭を擁してきているモノと見え、
すぐさま―――ローゼン・クロイツ達を待ち受けていた、ある秘密組織・・・「ディーヴァ」と激しく火花を散らし合ったのです。
しかし、数的には圧倒的な不利・・・
それと云うのも、ローゼン側は、依頼を完璧にこなす為に必要な人数を動員―――その数、およそ20名・・・
かたや、ディーヴァ側は、マリアとヘレン・・・と、あとなぜかそこには、上背の低い女性が一人・・・
ヘ:だぁ〜から云ったでしょう・・・ここは、すぐに戦場になるから、逃げなさい―――って・・・
謎:――――・・・。
ヘ:あぁ〜ん・・・くそったれ―――こりゃ、完全に焼きが回ってきたかぁ?
いくらなんでも、私達二人だけで、マリアクラスの20人から相手・・・って―――
謎:―――・・・。
ヘ:それより・・・あいつは―――少尉殿は大丈夫なのよね?
あいつまで拉致られたら、私達がここにいる意味って・・・
謎:ごちゃごちゃと・・・雑言の多い姉ちゃんじゃわいのう。
ほじゃが―――その事なら心配いらんよ。
その為の「とっておき」を、あそこには配置しちょる・・・
それに―――の・・・
マ:(初めて喋った・・・と云うか、この言葉遣い―――・・・)
謎:今回は・・・邪魔なんが居らんけん、「好きにせい」と云いつけちょる。
まあ・・・無論、あんないつの「お手伝い」も、範疇の内・・・じゃろうがの。
マリアは、諦めにも似た境地からか、どちらかと云えば割り切っていました。
けれどヘレンは、冷静に戦力を分析し、寡勢の自分達が、どんなに善戦―――抵抗をした処で、数分保てば「最上」だとさえも思っていたのです。
しかし―――・・・
そう、そこには、戦力分析としては、決定的に欠けていた因子が・・・
それが、「上背の低い女性」・・・
しかして、その女性こそは―――・・・
マ:けれど・・・ここは、私の意地に掛けても、絶対に抜かせはしない―――!!
黒:フ―――ほう・・・これがお前の実力・・・
面白い、少しの時間だが、遊んでやるとするか・・・
ヘ:げ?! あいつ・・・マリアの突進技を、いとも簡単に流した―――?
謎:ほほぉ〜それにしても、ええ「拳」じゃ―――
ありゃあ、どっかで迷いが吹っ切れたようじゃのう・・・
ほれに〜〜・・・
黒:(む・ん? この気中り―――超達人級の・・・?)
謎:わての「流派」のクセが、所々に見え隠れしちょる・・・
のお―――紫の姉ちゃん、あんたぁの格闘の「師」は、どがァな奴ない。
マ:アシュクロフト・・・ですけど―――それが??
謎:ほお〜〜ほ・ほ・ほ・♪
あのガキんちょか―――w
わての門下に入りたいが為に、よう道場に通い詰めちょったもんよw
ほじゃが・・・わての「流派」は、業の深い拳じゃけん、門前払いよ―――
じゃがのう・・・諦めずに、通い詰めて・・・そこで、わての拳を盗んだんじゃのう―――
なにせ・・・わての拳は、「一子相伝」の「暗殺拳」じゃけんのう・・・
第三百七話:「一子相伝」の継承者
ヘ:(??!)「暗殺拳」?? ―――て、あんた一体・・・
その「上背の低い女性」は嘯く・・・
今、マリアが相手に仕掛けた攻撃の内に、自分の「流派」の流れを見た―――と・・・
そして、その源流を辿った処、やはり心当たりはあったモノと見え・・・
けれど、自分の「流派」は、「門外不出」にして「一子相伝」でもあったが為、
現在では、その女性しか使い手はいなかったのです。
・・・が―――しかし・・・
その技の数々を、双眸に修めている存在がいるとしたら・・・?
それこそが、マリアが放った一撃の内に、確と見えてしまった・・・
それにしても、なぜその「流派」は、「門外不出」にして「一子相伝」だったのでしようか・・・
それは、類稀に見る、「暗殺拳」だったから―――・・・
そして、こうも嘯くのです・・・
謎:フン―――フッフッフッフ・・・
あんたらも、所詮は銭で雇われた身・・・
じゃけん、そこんところは憐れみちゃろう・・・
ほじゃが―――ここにあんないつ、「リントヴルム」のグレーテルがおらんのは、ちと残念じゃわいのう。
黒:フン―――なにをごちゃごちゃと!!
所詮は、金銭で雇われた哀しき者達・・・
そこには、「賢下五人」と「三候」の因縁など、知ろうはずもない・・・また判ろうはずもない・・・
なぜ―――どうして―――・・・
自分達は、こうも争い続けるのか・・・
そう・・・総ては―――・・・
しかし、その女性目掛け、マリアと対峙していた団員とは別の団員が踊りかかった処・・・
黒:(!!!)ぐるぶぅおわあぁ〜〜!!
黒:なにっ―――?!
マ:(この技・・・?)
謎:気の早い阿呆もおったもんよ・・・
理由がどうあれ、おどれらは生きてこの地から出られんと思え。
このわて・・・「賢下五人」が一人「拳帝神皇」・・・レヴェッカ=ポルックス=フェルナンデスが、おる限りはのう!!
しかし・・・なぜか、背後から襲いかかろうとしたその団員は、血煙りを上げて弾き飛ばされてしまった―――
いえ、その表現は、実は妥当ではなかったのです。
それと云うのも、オート・カウンターとでも云うべき、レヴェッカの「ある技」が、炸裂していたのですから・・・
そう・・レヴェッカのみが、扱う事を赦された・・・『神聖皇琉拳』の奥義の一つ―――「無想陰殺」・・・
レ:フン―――フッフッフッフ・・・
ほぉ〜れ、次は誰が餌食になりたいんなら?
まあ・・・おどれらがこにゃ―――わてから・・・征くまでよ!
マ:(!!! 見えない―――いえ、私の目で捉えられない・・・?
これが・・・これこそが―――・・・)
レ:“聖”の拳「将」―――我が拳は、前進制圧あるのみ!!―――=極星十字拳=―――
“聖”の拳「仁」―――光を次代に託す為、我が拳を受けよ!!―――=列脚空舞=―――
“神”の拳「柔」―――我が拳は、痛みを伴わず快楽の内に果てよ・・・―――=有情断迅=―――
“神”の拳「剛」―――我が拳は、天をも凌駕する!!―――=天将奔烈=―――
“皇”の拳―――我が闘気は、光を纏う!!―――=衝の輪=―――
“琉”の拳―――我が不敗の拳総てを、見せてくれん!!―――=暗琉天破=―――
その瞬間・・・同時に6つの血飛沫が宙を舞いました・・・
しかし、それこそは、レヴェッカが放った彼女の奥義にて、哀れな飛沫と成り果てた者達の残骸だったのです。
けれどそのことは、逆にローゼン達を煽り立たせ―――・・・
レ:ほ・ほ・ほぉ―――中々見上げた奴らよ。
仲間を見捨てんとは・・・のう。
ほなら、褒美じゃ―――纏めて仲良くあの世へと送っちゃろう―――!
“神”の拳「宗」―――「一見必殺」これを見たモノ死あるのみ!!―――=万手魔音拳=―――
なんという・・・「強さ」―――圧倒的な数の不利を、瞬くの間に覆した、この人物の実力こそ「真の武力」。
以前に耳にした事のある、苦戦を強いられたと云うのは、当時未熟だった者達を庇いながら・・・と云うのも、強ち嘘ではなかったのです。
が・・・しかし―――
黒:ぐぶうっ―――!
・・・フ―――フフフ・・・な、中々やる・・・
だがしかし・・・最早これまで―――・・・
マ:(!)ま、まさか―――?!
黒:気付くのが少々遅かったようだな。
既に本懐は遂げさせて貰った・・・
ヘ:ちいっ―――用意周到な・・・二重の「囮」だったなんて!!
黒:そう云う事だ。
ゆえに、ここにも長居は無用―――私も去らさせて貰おう・・・と、云いたいところだが・・・
どうやら、そうはさせてくれないらしいな・・・
マ:当然―――こんなヘマをやらかして、その上あなたまで逃しては、この私のプライドが許さないわ・・・。
それに・・・これは、あなた様の「情け」ですか、レヴェッカ様・・・。
この者をわざと生かせておいて、私との一対一の勝負の場を作ったと云うのは・・・
レ:そう思うなら・・・勝手にそう思うちょけ。
ほじゃが―――わても興味があるけぇのぉ。
喩え「我流」とは云え、わての「流派」を身に付けた者の、実力云うモンを・・・
マリア達に課せられた、当初の任務―――「『歌姫:ローレライ』捕獲部隊を迎撃せよ」・・・
これは、残念ながら未遂に終わってしまいました・・・。
当初は、「ローレライ」を捕獲する為に、「三候」の一人である「リントヴルム」が直々に・・・と思われていたモノでしたが、
エリス側も策を講じていたモノと見え、敢えて「リントヴルム」を「囮」とし、
これを機に、新たに依頼契約を交わした「黒薔薇十字同盟」を別動部隊として、「ローレライ」捕獲作戦を実働させた・・・と思われていたのですが、
こちらも、敢えてそれを読んで、「ディーヴァ」+「拳帝神皇」をして待ち受けていたのでしたが・・・
敵も然る者、さらなる「二重の囮」をして、まんまと「ローレライ」捕獲作戦は功を奏したのです。
しかしながら―――・・・
「黒薔薇十字同盟」側の別動部隊Aは、「拳帝神皇」レヴェッカによって、ほぼ全滅―――・・・
そう・・・完全な全滅ではなく、別動部隊Aを率いていると見られている団員のみは、生かしておいたのです。
それはなぜか・・・
それは、幸か不幸か、自分の「流派」を、「我流」とは云えども、使える者に遭遇してしまった―――・・・
計らずとも、その場は、その「流派」の伝承の場ともなってしまっていたのです。
触れれば、星々をも砕く「剛」の拳―――
まるで舞うかのように、相手を甘美な死の世界へと誘いこむ「柔」の拳―――
その他には、相手に触れずして倒せる拳や、「闘気」を自在に操れる拳もあり、
その多彩な技の数々が、「観客」を魅了したモノでした。
そして、唯一残された生き残り・・・
その一人のみは、今のお前の実力の総てを注ぎ込み、そして倒して見せよ・・・
レヴェッカは、明確には、その事は口にはしませんでした・・・
口にはしませんでしたが、マリア当人からすれば、無言の内にそう云われている気がした・・・
その上で、生き残りの団員とマリアは、凄絶なまでの激闘を繰り広げ・・・
終に、マリアの手によって別動部隊Aは、壊滅してしまったのです・・・。
=続く=