ジ:「争い」には、「良い争い」と「悪い争い」がある―――とは言っても、「争う」事自体に、良し悪しの区別を付けるのも、おかしな話なんだけれどね。
リ:ふ〜〜ん・・・でも、それはどうして?
ジ:う〜ん・・・そうだね・・・どう説明すれば、理解ってくれるかな。
そうだね―――例えば、「進化」に「発展」も、理論と理論を「争わ」せることで、また新たな理論を産み出す「きっかけ」となる。
極端な喩えをすると、「戦争」というのも、いわば相互が理解り合える「材料」の一つだと思えば、この宇宙には必要な事だとも云えるんだ。
けれどね・・・どちらかと云えば、私は―――
「傷付きあって理解り合おう・・・だなんて、そんな事は私にしてみれば、最終にして最後の手段だと、そう思っているんだよ。」
「争う」ことの愚かしさと、そこから生まれることの素晴らしさの、両極端がある事を、リリアはジョカリーヌから教わっていた事がありました。
とは言っても、その頃のリリアは、血気盛んにして自分の前に立ちはだかる障害は、総て自分の力で排除してきた経歴がある為、
中々「現在」の様な理解までには至らなかったのです。
けれど・・・そう、「現在」ならば理解る―――・・・
あの時、ジョカリーヌが云っていた、総ての「理」が・・・
人間は、「争う」ことによって「新しい理」を見つけ―――同時に、大切なモノを失くしてきた・・・
それで総てを「帳尻合わせ」にしてきた・・・と云えば云い過ぎになるかもしれないけれど、
そうやって人間達は、「進化」し続けてきたのです。
その事を、無論―――エリスは知っていました・・・
知ってはいましたが―――・・・
エ:う・・・うぅぅ―――き、聴かぬ・・・媚びぬ・・・省みぬ!!
妾は、もう既に取り返しのつかぬ領域まで―――
リ:なら、こっちへ戻ってこいよ! 私が受け止めてやる!!
他の皆が受け入れなくても、私だけはお前を・・・一人ぽっちになんてさせやしない―――!!!
「そう・・・その言葉だ―――その言葉こそが、ソロンが口にして云い出せなかった事・・・」
ソロン自身が知っている―――想い合っていた存在とは、かけ離れてしまった存在・・・
『僕は・・・変わり果ててしまったこの女を、果たして受け入れられる事が出来るだろうか・・・』
その迷いは、一瞬の内にして対峙していたエリスに見抜かれ、致命傷を負わされてしまった・・・
『総ては・・・僕の甘さの所為・・・』
しかし、ソロンがここで絶えてしまえば、この宇宙は滅んだのも同然・・・
だからこそ、生き恥とは知りながらも、逃げ延び―――どうにか雌伏の時機を得たのです。
そして―――時は巡りて・・・
現在の「勇者の宿」を持つリリアは、あの当時ソロンが云えなかった言葉を、エリスに対して発信したのです。
すると―――・・・
エ:その言葉・・・その言葉を・・・あの男から聞きたかった―――
その言葉を聞きさえすれば、妾はあの男に討たれても良かった・・・
けれど・・・あの男は、妾の事を想い―――同時に、宇宙に生ける者達の事も想った・・・
それであるが故に、迷いを生じ―――そこを妾は、あの男の事を憎んでしまった・・・
どうして、妾一人を選んでくれなかったのかと―――
けれどそれは・・・してはならなかった事―――「妾一人」と「宇宙に生ける者達」を、同じ天秤に掛ける事など愚行も同然・・・
しかし妾は・・「そう」思ってしまった―――
赦しておくれ、我が想い人よ・・・決して赦してはもらえぬ、妾の愚行を!!
市:(エリスの表情から「険」が取れて・・・ああっ―――!)
蓮:(あれこそは、まさしく・・・ジョカリーヌ殿そのものではござらぬか!)
先程までは「総て」を・・・自分自身も想い人も・・・そして、宇宙に生ける者達をも憎んでいた、その凶相からは考えられないほど穏やかな表情となり、
自身の愚行を悔い改めるエリス―――・・・
それをリリアは―――
リ:いいや―――「赦す」!
あんたは、広く大きく物事を捉え過ぎたのさ・・・
だから逆に、私達が心の底で思っていることでさえも、あんたの耳に入ってきた・・・
それは―――「喜び」も「哀しみ」も「怒り」も「楽しさ」も、それと同時に「妬み」や「憎しみ」「怨み」までも・・・
辛かったろうさ―――この宇宙にある負の感情を、一手に引き受けちまって…
だからと云って、あんたが及んだ行為は、本来ならば赦されるべきじゃないと思う・・・
市:(!)リリアさん―――?
蓮:(!)リリア殿・・・
リ:けどな・・・だけど―――それを、私は「赦す」・・・。
それに、こうなった原因も、一つには「賢下五人」にあったみたいだからなぁ。
市:(?)それは??
蓮:どう云う・・・事でござるか?
ガ:フッ・・・なぁに云ってんだか―――だから私達全員が、ここに集まって・・・
レ:リリアちゃんからの「罰」を、甘んじて受けちょるワケよ。
エリーゼ:もう・・・うちらの顕現云うて、拝められるほどのもんじゃないけぇね・・・。
ル:ほむ―――これであちしも、ようやく眠れると云うモノ・・・zzz
ミ:いかにも―――つまり吾等の持つ各々の顕現は、現時点を以て吾等だけが持ち得る顕現ではなくなった・・・
「言葉を操り」「物事を考え」「壊し」「創造し」「障害を排除する」・・・
顕現なぞと、最早今となっては、吾等には過ぎたるモノでしか有り得ぬからな・・・。
「赦す」―――この一言に、どれだけの思惑が詰まっていた事でしょうか・・・
それに、「賢下五人」達が一同に会し、リリアからの「无」の力を受け入れたと云うのも、
開闢未明の時代には必要有益だったとしても、発展・進化を遂げた現在の時代にはそぐわないものであるとし、
一同の合意を得て今回の計画に組み入れた・・・と、云う事だったのです。
そして―――ようやく、146億の永き年月を経て・・・
メ:なれば・・・吾からは最後にこの言の葉を―――
第三百十五話;遂に 竪子の名を 為さしむ
ミ:それと・・・永き間ご苦労であったな―――エリス・・・
エリス:はい・・・ですが、やはり妾は、妾がしてきた事を赦せそうにありませぬ・・・
リ:はあ?! いや、もういいじゃんよ―――私が「赦す」って云ったんだからさぁ・・・
エリス:それでも、尚―――なのじゃ・・・それでは、妾の「けじめ」と云うモノが付かぬ・・・
リ:(けじめ・・・)―――・・・
ガ:(・・・)なら、どうしたがいいかい、私が考えているのには、丁度いいのがあるんだけどねぇ。
エリス:「次元の狭間」・・・で、あるか―――承服致した・・・。
今の妾には、その場所こそが似つかわしかろう・・・。
「和解」―――相互が歩み寄り、分かち合える機・・・
その為に、エリスは自分なりの「けじめ」を付ける為、自身が償うべき「懲罰」について考えを述べました。
(そこを・・・リリアにしてみれば、予めミリティアに云われた事を云ったまでだから、いいじゃないか―――とは口にするのでしたが、
エリスからの「けじめ」の一言に、どこか思う処があった様です。)
そこで、ガラティアからの提案に―――以前ガラティアが使用した事のある「次元の狭間」という「システム」・・・
(この「システム」の事を知らないリリア達は、一様にして疑問を感じるのですが、説明を面倒と感じていたガラティアは、
自分が使用した時点での資料を彼女達に見せた処・・・三人とも絶句したそうである。)
その提案に賛同をしたエリスではありましたが、市子に蓮也は、先程から気にはなっていた「ある言の葉」について疑問を感じており・・・
市:そう云えばあの方・・・またリリアさんを「竪子」と―――
蓮:うむ、ですがなぜか今回は、揶揄している様には聞こえなかったでござる。
ジ:その事は、私から説明してあげよう。
市:(!)ジョカリーヌ様。
ジ:元々の、その言葉・・・「竪子」の意味は、君達も良く存じているね・・・そう、「小僧」「未熟者」等と云う、あまり好くない意味なのだけれど・・・
けれど、その言葉を用い、ある偉人を嘲罵していた人物が、今わの際に口にした言葉が、例の言葉だったそうだ。
そして、その言葉には次のような解釈が付けられている・・・
『私は、小僧には及ばなかったばかりか、彼の才を畏れ、遠ざけたものだった・・・』
『だが結果、小僧の“偉業”と云うモノを、私自身が実証して見せたのだ』
『そう・・・私自身が、小僧によって敗れ、滅び逝くことによって―――』
この人物は、ある偉人を陥れ遠隔へと追いやり、自身の栄華を極めた―――処までは良かったんだけれどね・・・
やがては、偉人が属した国と戦争をする事になり、彼は偉人の手によって敗れてしまい、滅びる事になってしまったんだ。
その結果、彼が否定していた偉人の功績・偉業と云うモノを証明して見せたんだね・・・。
そして意外な事に、彼とその偉人とは、朋友でもあったそうだ。
つまり・・・「竪子」とは、他人を云い貶める為に使う反面、成りあがり者が成功を掴む為に使用した「虚偽」「流言」の類でもあったのです。
そして今回、ミリティアもその故事に倣い、わざとリリアを云い貶めてリリアがどう行動をするかを見極めて行こうとしていたのです。
結果・・・思惑通り、いや―――それ以上の働きをリリアは成し遂げてくれた・・・
宇宙危急の存亡を、収まらせたばかりではなく、また元の鞘へと戻してくれた・・・
最早、感謝以外の辞を、申しべく他は、ない―――・・・
そう・・・あとは―――・・・
=続く=