国内で猛威を振るっていた、「賊」討伐の報を、国王であるソフィアに奏上するリリア。
しかし、実際に賊を討伐したのは、他国出身である「タケル某」なる人物だったのです。
それに、その人物は、その場には居合わせてはおらず・・・
リ:おう、ソフィア―――依頼があった、賊討伐の件、片付いたぞ。
ソ:それは有難う。
それにしてもどうしたの、浮かない顔をして―――
リ:う・・・ん、いや、実はな―――
そこでリリアは、今回の一件で感じたことを、忌憚なくソフィアに話してみました。
今回の「賊」達の「頭」が、実は「人間」ではなかったことや、
その「頭」を、一撃の下に倒したのは自分ではなく、他国の人間であったこと・・・
更には―――その人物から譲られた、例の・・・
ソ:これは―――何?
まるで「木の枝」のような・・・
リ:いやいや、ところがな、コレが伝説にもなっている剣―――らしいんだよ。
まあ、見てろ・・・今から刃を出して―――・・・・・・って、あれぇえ? おっかしいなぁ・・・あの化け物倒した時には、ちゃんと・・・
ソ:・・・・・・。
リ:い・い―――ちょ、ちょっ?? 本当なんだってば〜信じてくれよぅ!
自分でも、目にした不思議な現象を、見よう見まねでやってみせよう―――と、云うのですが、
所詮は付け焼刃・・・と、云うべきか、そこでいくらリリアが念を込めても、出るモノが出ず―――
ソフィアから白い目で見られ、慌てて弁解に走るリリアの姿があったのです。
それはそうと、以前のこの剣―――「緋刀・貮漣」の持ち主であった、タケルと、その妻婀娜那は・・・
婀:―――本当に、あの者でよろしかったのですか。
タ:ああ、間違いない。
それに、彼女は、あの方の遠大な計画の一つとも云える、「南方大陸の統括」を任せられているとも聞いている。
まあワシも、話しの上で聞いていただけなのだがな・・・。
タケルと婀娜那は、未だこの地方に逗留をしていました。
本来なら、自分の目的は遂げられたのだから、来た路を元に戻ればいいだけなのに―――・・・
しかし、ふとした「きっかけ」で、知ることが出来た重要案件を、「早急」に、報せなければならないとの見解に至り、
現在はその機会を伺っていたのです。
そう―――「早急」に・・・
元々、タケルと婀娜那は、今回の件―――『「緋刀・貮漣」を、次期後継者に譲る』・・・
この件が済んだら、この地方や、今まで通過してきた地方を、「巡礼」などと称して、旅して周ろうと思っていたのに・・・
今件に係わったお陰で、重要な問題が浮上していたことを知り、これはのんびりと旅をして帰国などしていられない・・・との、見解にまで至り、
少しばかり「都合主義」的に、現在、リリアの補佐的立場でこの地にいると云う、ある人物との接触を図るため、
その人物が出没しやすいと云われている、ある地点を張っていたのです。
すると、予測通りに―――・・・
マ:ちゃ〜〜っす! 取り敢えず、大蒜の生焼二人前ね〜〜―――
・・・って、あれぇ―――っ、タケルさんに婀娜那さんじゃないっすかぁ!
いつこっちに来たんですぅ?!
婀:―――っはっは、相変わらずじゃな、マキ殿は。
タ:お待ち申しておりました、それよりも侯爵様、改まってお願いの儀が・・・
マ:ぷ〜! そうじゃないっしょ!
元々、あたしの主人さまだったタケルさんから、「侯爵様」〜〜って、なんだか背中がこそばゆいですっ!
タ:はは―――そいつは済まなかったな。
それではマキ、お前に頼みがあるのだ。
第三十九話;気に留めるべきこと
そう・・・タケルは、この地に定住していると云う、ヴァンパイアの侯爵、マキ=キンメル=ヴァルドノフスクを待っていたのです。
実は元々、彼女は、タケルが組織をしていた「禽」と云う、諜報集団の一員であり、紆余曲折があって現在、ヴァンパイアの一族としてその活動の域を広めていたのです。
そして、その一族になるのと同時に、数々の術式を習得しなければならない義務も背負う事になったのです。
その中でも、各大陸間を「移動」するという術式の習得は、云わば必須のモノであり、
こうした緊急性を擁する場合、なくてはならない存在でもあったのです。
こうして、彼らは一瞬の内に、パライソ国は大皇であるジョカリーヌの下に―――
ジ:タケル―――お帰りなさい・・・それに、婀娜那さんも。
タ:ジョカリーヌ様、実は折入って話しておきたい事が・・・
実は今回、タケルは、事の次第の報告を、現在の自分達の主―――ではなく、以前仕えていたことのある、この人物にしようとしていたのです。
しかしこれでは、全くのお門違いではないのか―――と、誰もがそう思ってしまうのですが、この時の彼らは、「目的」も「手段」も、一向に違えてはいなかったのです。
それと云うのも、これにはある理由があるのですが・・・その事は、現在のリリア達には語られていない事実であり、
それはまた、そう云った時期にも来ていなかったことから、見送られてしまった嫌いはあるのです。
そして、今回の報告で、タケルは、彼自身が今回感じたことを、有り体のままに、大皇・ジョカリーヌに述べてみたのです。
ジ:―――なるほど、彼の地に、「入星」する際の、「管理」も「登録」もされていない者がいたと・・・。
タ:そうです。
あなた様には、以前、そちらの事情なりを教えて頂き、どうにかこちら側でも、それなりの機構を立ち上げては来ましたが・・・
婀:やはり、あちら側としては、つけ入り易い処と見られ、いいカモにされているのが現状のように思われます。
この事実―――あなた様には、どのように映っておられましょうか。
ジ:システムも最初期型で、稼働したのも初期段階だから、致し方のないことだ―――とは云え、放置しておけるほどではない・・・由々しき事態だ。
ここはやはり、「東」と「西」―――この二大陸の「評議員」と膝を交り合わせて意見交換し、結論を出さなければならないことだと、私は思う。
タケルが、この程「エクステナー大陸」にて、討ち果たした存在・・・
それこそ、ジョカリーヌ達が構築させていた、「入星管理システム」から洩れていた存在―――
確かに、現在では閉ざされているとはいえ、この惑星を訪れてくる者達はいないわけではなく、
ならば出来るだけ水際で―――いわゆる、月の裏側にあると云う、そうした施設にて判別をすることで、
害のない者達のみに限り、地球への降下を許可し、活動してよい機会を与えてもいたのです。
ところが・・・このシステムも、現在汎用されている「最新型」ならば良いのですが―――
彼らが使用していたのは、もっとも古い「型」であり、また、それに准ずる「ソフト・ウエア」も、プログラミングに欠落の多いモノだっただけに、ジョカリーヌも憂慮はしていたようです。
そこで、ジョカリーヌが下した判断が、「東」と「西」の大陸にいると云う、「評議員」なる者達を、一度招集し、彼ら二人の意見で、今後の方策を話し合おうとしていたのです。
処変わって・・・エクステナー大陸の、サライ・オデッセイア共和国では―――
リ:あ〜あ・・・失敗しちゃった―――
つか、なんで肝心な時に出てくれないんだよ。
ラ:ハッ―――そりゃ、その剣だって、自分が見せモンにされるのが、耐えられなかったんだろうさ。
リ:そんなもんかなあ〜―――・・・
マ:そ〜そ〜、そんなモン―――そんなモン♪
リ:・・・って―――おわっ?! マキさんにラスネール? いつの間に・・・
マ:ニャッハハ〜ンw そりゃ、オトナノジジョーってなもんにゃそw
それよりか、ジョカリーヌ様よりの伝言だにょ〜ん。
今回の失敗(ソフィアの前で、「緋刀・貮漣」の刃を出す件)により、意気消沈―――反省していたリリアの下に、
パライソ国から戻ってきた、マキとラスネールが、リリア宛の伝言をジョカリーヌから授かってきました。
その伝言の内容と云うのが、近く、他の大陸にいる「評議員」達を集めての話し合いがしたい―――との主旨だったのです。
その事にリリアは、別にこれと云って断る理由もなかったことだし、なにより、今回の失敗の御詫びも兼ねて、ソフィアも同席させてみようとしていたのです。
そしてもう一つ―――「友」にも等しき者達にも、この話しを持ちかけてみよう・・・と、自分の好き相棒である、蓮也の屋敷を訪ねることにしたのです。
その道中、彼女はまた、ある一つの「出会い」をしてしまうのでした。
=続く=