爆発による、閃光―――炸裂―――
尋常ならば、その場には、男女併せて計五名と、得体の知れない、黒く焦げた木の破片が存在するのみ・・・の、はずでした。
ところが―――・・・
そこでは、自分が持つ「伝説の名剣」の特性を、所有者自身が発揮したことにより、全員が助かった―――と、云う、少し不思議な現象が起こっているのでした。
信じられない―――
そこでは、誰しもがそう思うしかなかったことでしょう。
身に差し迫る危険により、自分達の生命が、ここで終わった―――そう、感じた・・・
けれどその時、リリアが持つ「緋刀・貮漣」が、持ち主の意思に反応するが如くに輝きを放ち、
蓮也の前に―――市子の前に―――しの・・・果ては、敵であったはずの源蔵の前にまで・・・
淡くも、薄い光の盾が示現し、彼らの生命を守ったのです。
『須らく、総ての護るべき対象を、護る』
それが、「緋刀・貮漣」の奥義の一つである、「晄楯」なのです。
しかし―――・・・
当の本人達は、自分たちの常識から逸脱している、非現実的な事が起きている事に、半ば呆けていました。
そのことは、当然、「晄楯」を発現した、リリア本人でさえも・・・
しばらくは、自爆志願者を、思い留めさせる為に差し伸べた、自分の左手を見つめながら、忘我の境地にいたのです。
ともあれ、混乱から持ち直したリリア達は、自分達を未曽有の混乱に陥れようとした張本人に、責任を取らせようとしたのですが、
相手も然る者、リリア達よりも先に回復し、既にその場から離脱をしていたのです。
ならば・・・と、云う事で、彼とは、何らかの関係があったと見られる、しの・・・「加東紫乃」に、詳細を訊こうとするものの、
どうやらこちらも、この混乱に乗じて、姿を眩ませた後だったのです。
このことにより、一同の、しのに対する疑念は深まるばかり―――でしたが、
その場にいない者を、問い詰めると云うのもどうかと思われた為、取り敢えずは今回の目的を優先させることにしたのです。
一方その頃、いち早く、あの場を離脱していたしのは、自分の目的の行方を捜す為、その歩を進めていました・。
そこで気になるのが、彼女の目的。
なぜ、厳格な「里の掟」に背いてまで、「抜け忍」と云う、危険な行為に踏み切れたのか・・・
どうやら、物事の発生の起源は、彼女の父親の死に関わりがあるようでした。
それと云うのも、道中―――しのの口からは、当事者の者と思われる固有名詞「カイエン」が、呟かれていたのですから・・・。
閑話休題―――
リリア達の今回の主目的である、パライソ国に向かう為、手っ取り早い移動手段でもある、侯爵・マキを訪ねようとした矢先・・・
リ:(・・・ん?)どうしたんだ―――
蓮:いかがしたのでござろうか・・・
侯爵・マキと、従者・ラスネールが逗留しているはずの、ユーニスの町酒場までの道程で、
一行は、不思議な感じのする女児に出会いました。
しかもこの女児、どう云った理由からか、リリアの後についてきたのです。
その理由を、この女児に訊ねてみるのですが、女児は、黙ってリリアの後をついてくるばかり・・・
そこで、思い切ってリリアは―――
リ:・・・なあ、どうして私の後についてくるんだ。
児:・・・・・・。
リ:(参ったなぁ〜・・・)
あのさぁ―――これから私達は・・・
市:(!)・・・リリアさん、ちょっと―――
自分達は、これから所用があるので、こんな女児には構ってなどいられない・・・
その旨の由を話そうとしたところ、鋭敏な感覚の持ち主である、座頭の市子は、この不思議な感じがする女児のことが、判ったモノと見え・・・
リ:どうしたんだ、市子―――
市:あの者・・・形は子供のように見えますが、恐ろしく強大な気を感じます・・・もしやすると、或いは―――
市子は、意図的に視界を塞いでいたので、或る意味では、盲目の者達と、そう違わない感覚を持ち合わせていました。
それに、得てして、そうした者達は、目が見えないが故の、他の五感の鋭さがあった・・・
そしてそこで、この不思議な感じがする女児の、普通ではない処を看破したのです。
とは云え・・・或いは、自分の思い過ごしではなかったかと思った為、その質問は、市子からその女児に投げかけられたのでした。
市:あなたに、一つモノを訪ねます―――あなたは、何者・・・名は・・・?
第四十七話;たまも
児:・・・フッフッフ―――中々に、侮れぬモノよ・・・。
このわしが怪しいとするとは。
わしの名は・・・「たまも」、そこな御仁の後についたのは、その御仁から、しのの匂いがしておったのでな―――
或いは・・・と、思ったまでじゃ。
「しの」の―――・・・?
その女児、「たまも」なる者から、しのの名前が紡ぎ出されると、つい最近まで自分達と行動を共にしていた、あの「抜け忍」のことを、思い出さずには居られなかったリリア達。
そう云えば、しのも、自分の出自を知られたくないが為に、飽くまで最初は黙秘を貫いていたモノでしたが、
ふとしたきっかけで、しのと同じ「忍の里」出身と見られる、「源蔵」なる者の手によって、正体を暴かれてしまった・・・
しかも、そこで源蔵は、しのを抹殺する為、「自爆」と云う行為にまで及んだのですが、その結末は、今までの語り草で語り継がれていること・・・
そして、その騒動が治まりかけた頃には、源蔵も、しのも行方知れず―――で、あることを、たまもに言い聞かせてみた処・・・
た:ふむ・・・なるほどな。
しかし、それにしても源蔵の奴、早まりおってからに・・・まあ、あ奴の事情も、判らぬではないのだがな―――
いや、それにしても、これまでの経緯は判った。
そのことに対してのお礼は云おう、そこで・・・なのじゃが、引き続いて、お主らと行動を共にしたいのだが・・・どうであろ。
リ:はあ? いや・・・けどなあ―――
奇しくも、年季の入った喋り方をする、不思議な女児―――「たまも」。
しかも、交渉事を得手としているらしく、今でも強引なまでに話しを持っていこうとする様子に、
流石のリリアも、気圧された感も、否めなくはなかったようです。
それに、市子も蓮也も、云わば客分であるからには、リリアの決定したことには、黙って従うのですが・・・
やはり、それでも、女児に気を許した処はなく、しかもそれは、当初この女児に感じていた雰囲気―――
畏ろしくも、危険を感じずにはいられない―――
得てして、それは・・・「妖気」―――?
そんな危険を感じる女児と、これから一緒に行動を共にする事に、市子は一抹の不安を抱かざるを得ないのでした・・・。
=続く=