行き倒れていたしのを介抱する為、近くにある「知り合い」の家に連れ込んだサヤ―――

 

この辺りの語りを見聞(けんぶん)した処で、誰しもが、現在彼女達がいる場所を、「パライソ国・皇城・シャクラディア」―――だと、思ったことでしょう。

 

しかし、現実としては、そうではなく・・・

それと云うのも、サヤは、「エクステナー大陸」から、「ガルバディア大陸」へ戻る途中・・・

つまりは、距離の相対として、「こちら」の方が、「シャクラディア城」よりも近いと思った為に、敢えてそちらを選択したに過ぎなかったのです。

 

その事の理由の一つに、それだけ、しのの身体が衰弱していたからもあるのですが―――

ならば、余計にこの場所と云うモノが、気になって来ようと云うモノ。

 

そうする内に、恐らくは、この家の「所有者」と見られる人物が、しのの容態(ようだい)を伺いに来たと見え・・・

 

 

 

誰:おう―――サヤ、お客人の様子はどうだ。

サ:なんだ・・・お前かよ、セルバンテス―――

 

第五十話;居候達

 

セ:「なんだ」とは、ご挨拶じゃねぇか。

  それより、どうなんだ。

サ:見ての通りさ―――手当の仕方が良かったと見える。

  (ま・・・それは、「あの人」の、「アーティファクト」のお陰なんだけどね・・・)

  それより―――家主はいるのか。

 

セ:「家主」? ・・・ああ―――「じじぃ」のことか。

サ:(じじぃ―――って・・・)おま・・・あのなぁ〜そんな事知れたら、殺されっぞ。

 

セ:ケケケ―――もう死んでるってのにか?w

  まあ〜ンな事云えるのも、じじぃがここにはいないから―――なんだけどなw

サ:懲りねぇやっちゃ・・・けどな、今、私が云ってるのは―――

 

 

 

この二人の会話に、聞き耳を立てて行く内に、新たな事が判ってきました。

どうやら、しのの容態を伺いに来たのは、この家の(あるじ)ではなく、恐らくは、厄介になっている「居候」・・・でしょうか、

名は、「セルバンテス」―――と、云うようでした。

 

それに、今一つ謎であった、しのを救ってくれた「お人好し」の名も、セルバンテス(なにがし)より明らかにされたのです。

名は、「サヤ」―――

どことなく、自分の故郷(お く に)である、「常磐(と き わ)」の香りがする名前―――と、思いながらも、

そこでしのは、更なる情報の収集に、余念がなかったのです。

 

そして、これまで判ってきたことは、少なくとも、この二名・・・「セルバンテス」と「サヤ」は、この家の所有者ではない―――

それに、この家屋(か お く)は、「共同管理」である―――そのことは、セルバンテスが示した、特定の個人が判るような名称と、サヤが云いかけた、「本来の所有者」・・・この、食い違い。

この「食い違い」の原因も、実際に支配されている側と、そうでない者との、認識の違いが出ているから、そうなるのも当然なのですが―――

 

それよりも、セルバンテスの云っていた人物の方が、今の処、この家には不在だと云う事も判ってきたのです。

 

 

そうしていると、いつまで経っても、客人の様子を見てくると云いながら、戻ってこない者に注意をする為に、この部屋を訪れた人物が・・・

 

 

 

誰:どうしたの―――二人とも・・・

誰:スターシアさんが、遅いって怒ってるよ。

 

 

 

それも、「二人」―――、一人は、妙齢の女性・・・一人は、男児・・・

一体、この家には、何人の居候がいるのか・・・

 

すると、男児が口にした名前の人物こそが、本来の家主なのでは・・・と、思ってしまうのですが―――

 

 

 

サ:う゛へ―――さいですか・・・それより、ルカにヨハン、「あの人」は・・・?

 

 

 

「違う」―――??」

「「スターシア」と云う人物が、この家の所有者ではない・・・?」

「だとしたら、この人達は、一体何者―――?」

 

しのは、サヤ達が交わす会話のみで、実は、家主「も」、この建物内には不在であることが判ってきました。

 

すると、しばらくすると・・・実に興味深い事が、ルカ(なにがし)の口から、語られたのです。

 

 

 

ル:ああ―――「あの人」ならば・・・「公爵様」とご一緒に、「大皇(おおきみ)様」の処へ行かれているはずですよ。

  それに・・・この子を介抱する為に、ご自分の「アーティファクト」を、置いて行かれたんだもの・・・

サ:ああ、そうか・・・で、帰るのいつになるって?

 

ル:もう少しで戻れそうだ―――って・・・先程連絡が入ったばかりです。

  まあ、今回は定例のことですから、そんなに時間はかからないと思うんですけれどね。

 

 

 

また一つ、新たな、貴重な情報―――

この家の(あるじ)は、「大皇(おおきみ)」と云う人物の(もと)へ、「公爵」と云う人物と一緒に出掛け、現在の処、不在―――

それに、用向きも、形式の行事に出席中のようであり、そんなには長く逗留しない意味合いにも取れたモノでした。

 

それよりも、自分の体力が、快復(かいふく)できた要因を知る処となり、また大きな興味を惹かれもしたのです。

それが・・・自分の枕元に置いてある、「宝玉」の様なモノ―――・・・

 

 

 

し:(これが―――・・・)

 

セ:へへ〜綺麗だろ。

  なにしろ、「元始(げ ん し)の火」―――って、云われてるくらいだからなぁ。

ル:そうね―――様々な、秘められた能力(ち か ら)を持っている・・・。

サ:けど―――使う者によっちゃ、大過を招きかねない・・・ってか♪

ヨ:もぅ〜〜子爵様ったら―――・・・

 

 

 

緋色をした宝珠の(なか)に、まるで焔が、光の加減で、揺らめいているかのように見える―――

それが、とある人物の持ち物(アーティファクト)である、「ツアラツストラ」なのでした。

 

それに、この宝珠は、ある特定の人物にのみ所有を(ゆる)された、強力かつ優れた能力(ち か ら)を秘めたモノだったのです。

 

 

それはそうと、病人の部屋に行ったっきり―――この家の手伝いをしようともしない、サボタージュ達に業を煮やした人物が・・・

 

 

 

ス:コラ!お前達―――さっさと戻って来んか!!

  全く・・・私が目を離した隙に、サボろうとして―――

 

セ:うげ、ばばぁ―――

サ:じ、じゃあ〜〜私はこれで・・・

ヨ:あっ!サヤちゃんずッこい!

ル:あわわ・・・す、すみません―――すぐに戻ります!

 

ス:バカ共が・・・今更遅いわ。

 

サ:え? ・・・て、ことは―――

 

ス:そう云う事だ、今、お戻りになられた。

  店の手伝いをサボったこと、こってりと絞られるがいい。

 

 

 

よもや、この怒り心頭の人物が、自分達の会話の(なか)での、話題の人物ではあるまい―――

果たしてそうでした。

 

その人物こそは、しのが珍しいので、一目見ようと見物に来た四人の、誰しもが畏れている存在・・・スターシア=ラゼッタ=アトーカシャ―――その人だったのです。

 

それにしても、スターシアが、殊更に憤っていた理由は、この家の(あるじ)が、所要から戻ってくるまでの間、

云い付けられていた、「店」の手伝いを、放り出してサボっていた者達に対して―――も、でしたが・・・

(あるじ)が戻ってくることに気を(とら)われ、サボタージュ達にその間隙(かんげき)を衝かれた、自分自身に対しても―――だったのです。

 

そして、スターシアの口からは、(いよいよ)、この家の(あるじ)が、所要から戻ってきたことを―――

遠からず・・・しのの前に、姿を現わせることを、示唆していたのです。

 

そしてこれより、しのの運命は、大きく流転することとなる―――

この「地球」にある、「大陸」の一つ―――「ロマリア大陸」の意思を反映する、「評議員」に出会う事によって・・・。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと