(かね)てからの約束通り、パライソ国の大皇(おおきみ)に接見する事を赦されたリリア達は、引率者である侯爵・マキを先頭に、玉座の間まで案内されたのです。

そしてそこには、当然の如く、この国に仕える諸百官が脇を固め、自分達を出迎えてくれるに違いない・・・と、思えば―――

 

 

 

蓮:妙な事があるモノでござるな。

  拙者達が、安土の城に、使いの者の供として赴いた時には、織田の家臣共に大勢出迎えられたモノを・・・

市:―――確かに、人のいる気配は感じられません。

  それに、私の知る作法に()いても、(なら)う処がないとは・・・よもや無人?

 

 

 

「象徴」と、云われていても、一国の主にしては、実に不用心―――に、無警戒。

つまり、この時リリア達を出迎えたのは、人っ子一人としていない、玉座の間だったのです。

 

しかし、この事を、以前から大皇(おおきみ)のことを知っていると思われる、リリアからは―――

 

 

 

リ:あっははは、お前達がそんなに驚くのも、無理はない。

  斯く云う、私やソフィアの奴も、そうだったんだが―――・・・

マ:ジョカリーヌ様って、そんなに形式ばったこととか、仰々(ぎょうぎょう)しい事は嫌いだかんね〜。

  あ、だからと云って、そう云った「儀式礼法」は、苦手〜〜って、事じゃないんだよな〜。

 

 

 

リリアやマキからの説明を受け、殊の外、この国の「大皇(おおきみ)」なる人物の考え方が、

(かつ)て、自分達が仕えていた事のある「上様(うえさま)」や「大殿(おおとの)」とは違っている事に、市子や蓮也は驚きの色を隠せませんでした。

 

そして、それは同じく、たまものほうでも―――

未だに封建色の強い「常磐(と き わ)」にはない、比較的自由な発想をする、この国の統治者に、密かに(うな)らざるを得なかったようです。

 

ともあれ、客人(まれびと)が来た事を、大皇(おおきみ)に伝える段取りとなってきたのですが―――・・・

 

 

 

マ:―――あっれぇ〜っ??!! まったいないぢゃん・・・

リ:〜てことは・・・もしかして〜〜―――

 

マ:え゛! またあそこっすか・・・ヤだよ、まぁた空振りは。

リ:なははは・・・そこんところは同情するわ―――

 

蓮:いかがされたのでござるか。

リ:え? ああ―――いや・・・これから私達が会おうって人が、ちょっとまた別の処にいるらしくってさぁ・・・

市:・・・でしたら、探すか呼び出すしか、方法が―――

 

リ:それが出来りゃ、苦労なねえっての。

  云うよりかは、一筋縄じゃいかないんだから・・・

 

 

 

ここでお約束通り、大皇(おおきみ)・ジョカリーヌは、玉座ではなく、空中庭園の方にいるモノだと思ったリリアとマキ―――

だからそこで、あのただっ(ぴろ)い場所にいる、たった一人を見つけ、探し出す苦労に努力は、並大抵ではないことを説明したのです。

 

―――と、そんな処に・・・

頭を抱えているリリアやマキ達の前に、形式の上では、この国の政治の実権を握っている、「総統」のあの人物―――

 

 

 

ミ:どうしたのだ―――おや、侯爵様ではありませんか。

  今お帰りになられたので。

マ:あっ、ミトラちゃ〜ん―――そうなんですけど、ジョカリーヌ様・・・どこへ行っちゃったんです?

 

ミ:ん? ああ―――あの方ならば、ふとした思いつきで、あの「お二人」を臨時招集されてな―――

  今、そちらの方に出迎えに、向かわれているはずだ。

マ:・・・えええ〜〜っ??! あの・・・「お二人」―――って・・・「東」と「西」の評議員のことですよね!

  じ・・・じゃあ〜〜ルリちゃんも?!

 

ミ:そう云う事に、なりますかな―――

マ:うわっはぁ〜♪ ジョカリーヌ様ったら、人が悪いんだ〜〜♪

  あたしにも内緒で、こんな粋な計らいをしてくれるなんて♪♪

 

 

 

今現在、この城の玉座にいない方の所在を、詳しく説明できる人物が登場したことによって、大皇(おおきみ)の現在位置が明らかになった―――

それどころか、マキにしてみれば、飛び上がって喜ぶほどに、喜ばしい出来事が起きている事を、総統・ミトラ自身の口から述べられていたのです。

 

しかし―――ここで一つ、ミトラは敢えての言及を、避けていました。

それは、(さき)のお話しでも語られたように、深い関係性があるとみられている、二人の再会・・・

感動の再会は、劇的でなくてはならない―――

ミトラも、ジョカリーヌとの付き合いが長かったことから、彼女自身、意識すらしていない処で、感化された部分があったのかもしれない―――

 

それに―――自分が言及しなくとも、当人同士は判りあえるはずである・・・そう信じてもいたからなのですが・・・

 

 

しばらくして、迎えに行ったと思われる方角から、三人・・・いや、数人の気配を感じ取り、そちらを向いてみれば―――・・・

 

 

 

ジ:やあ―――どうやら、お待たせをさせてしまったようだね。

 

 

 

その人の、器の余りの大きさに、蓮也は―――市子は―――たまもは―――ただ、たじろぐばかりでした。

 

気取った感じもしなければ、取り立てて偉そうにしている感じも見受けられない―――

恐らくは、そう云った地位にいなければ、この国の民衆の(なか)にいても、全く違和感がない・・・そう云った人物なのでした。

 

しかし、やはり自分達の仲間である、あのリリアが、敬服をしてしまっている雰囲気は、どこか感じるところがある―――ともしていたのです。

 

それに、大皇(おおきみ)自身が出迎えた二人の人物も、注目すべき処となりました。

その一人目の人物が、(よもぎ)色の髪をした、剣士らしき女性を同伴させていましたが、どうやらこの人物が、侯爵・マキとは、所縁(ゆ か り)のある人物らしく・・・

 

 

 

マ:ルっリちゃ〜〜ん! おっ久しぶり〜〜♪

ル:マキ―――相変わらずね、あなたは。

 

マ:ニヘへへ〜〜w あ、セシルちゃんも、ついでに〜〜ww

セ:あら、失礼しちゃうわね。

  けど、変わりがないようで、何よりだわ。

 

 

 

まるで、昔の友人同士が、その旧友を温め合うかのように、親交を深める(さま)に、リリアは、この三人が、本当にそうではないかと思い始めていました。

 

そんなリリアの顔色を、伺ったかのようにミトラは―――

 

 

 

ミ:どうした・・・そう云えば、お互い顔を合わせるのは、初めてになるな。

リ:あ―――ああ・・・けど、聞いていたよりかは・・・

 

ミ:ハハハハ、噂とはそう云うモノだ。

  だが、現在の処、このお三方の働きかけによって、宇宙に()ける、この天体の運営は、成り立っていると云っても、過言ではないのだがな・・・。

 

蓮:(!?)―――今、なんと??

市:天体・・・??

 

リ:おいおい―――気をつけてくれよ? お陰で、愉しみが半分減っちまったじゃないか〜。

ミ:ああ、そいつは済まなかったな。

  だが、今私が云った事は、紛れもない真実なのだ―――

 

  現在この惑星は、中央に、この「ガルバディア大陸」を配し、それから「東」「西」「南」「北」の方角に、各大陸が存在し、

  その各大陸を統一している国家の代表が、それぞれの大陸の代表である「評議員」となって、各大陸(ごと)の意見を一つに纏め、

  定期的に、「評議長」を兼ねておられる「大皇(おおきみ)」の召集に応じ、互いに討議を交り合わせる・・・。

 

  だが―――哀しむべき事に、今もって尚、「南」と「北」は、一つには定まらず、(もっぱ)ら、「東」と「西」と「評議長」の三者のみで、

  この惑星の未来は、決まっていた―――と、云っても、差し支えなかったのだ。

 

 

 

思わぬ処で・・・しかも、思わぬ(かたち)で、自分たちの将来や未来が、作為的であった事を知らされる、市子や蓮也達・・・

いや―――それよりも、今、自分達が、両の足で踏みしめている大地が、実は、夜空にさんざめく月や星達と、そう変わりはないと云う事に、

受けた衝撃は、並みならぬモノがあったようです。

 

そんな時―――こんなにも重要な事を申し述べられても、全くと云っていいほど、耳に入っていない人物が、一人存在していました。

 

それは―――・・・

同じくして、大皇(おおきみ)自身が出迎えに行った、二人の人物の内の、「もう一人」・・・

その「もう一人」に、随伴している(とも)の中に、自身、見覚えのある顔なのではないか―――と、していた、たまもは・・・

 

 

 

た:(し・・・しの―――? あれは・・・しのではないのか??

  いや―――しかし・・・しのは、あのような服などは身につけぬ・・・

  なれど―――アレは確かに、どこからどう見ても・・・)

 

市:(?)たまもさん―――・・・どうしたのです、たま・・・

  (!!)・・・あれは―――・・・まさか!

 

 

 

先程から、たまもの様子が違ってきている事に気が付いた市子は、その原因を突き止める為、動揺している理由を、たまもに訪ねようとしました。

それと同時に―――以前感じた事のある気配に、反射的に目を開き、たまもの動揺の原因となった理由を、はっきりと市子は見納めてしまったのです。

 

 

片や、しのの方でも、緊張に次ぐ緊張で、いつものように、周囲(ま わ)りに気を配れるほどの余裕はなかったようで、

だからこの時、不思議な女児が、(そば)に近寄ってきたことすら、気付けなかったモノと見受けられました・・・。

 

そして―――・・・

 

第五十五話;再び、巡り逢う―――時

 

た:し・・・しの―――・・・しの、なのであろう?

し:・・・え? ・・・たま―――も?

  ・・・・・・たまちゃんなの??!

 

た:〜〜〜このっ・・・大莫迦者めが! 死ぬほどまでに、わしを心配させおってからに!!

  なぜ、わしにまで黙って、里を抜けたりしたのだ!!

 

 

 

久方ぶりに再会したと云うのに、(なみだ)交じりでの怒鳴り声―――

けれど、今のたまもには、それが精一杯の、愛情表現でもありました。

 

「死ぬほどまでに」・・・その表現からは、一分(いちぶん)の偽りがないほど、たまもはしのの安否を気遣っていました。

 

もし、万が一・・・自分の友に何かがあれば―――

・・・あった時には、また以前のように「悪堕ち」をし、この世に(わざわい)(もたら)すだけの存在となっていただろう・・・

 

現在の自分があるのは、この娘のお陰―――

 

それなのに、しのは、自分にすら相談をせず、父親の仇敵(か た き)憎さに九魔の里を抜け―――嘗ての同胞にまで、命を狙われる羽目になってしまった・・・

 

こんな時に、自分に相談をしてさえくれれば、智慧を貸してやれるのに―――・・・

 

当面は、そんな腹立たしさがありながらも、やはり会えた嬉しさばかりが先に立ち、

二人の友は、お互いを抱きしめ合いながら、互いの友情を確かめ合ったのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと