再会を涕に暮れ、嗚咽交じりに喜びあう親しき友二人に、そこでもらい泣きをしない者はいませんでした。
しかし、こうしてたまもの当初の目的は達せられたわけなのですが、しのの目的である、父の仇敵・・・「カイエン」に関しては、何一つ進展したわけではなく、
いや、それよりも―――・・・
リ:いや・・・いつ見てもいいもんだな、ああ云うモノは―――
私もそう云った柄じゃないけど、つい涕を貰っちまったよ。
市:そうですね・・・でも、彼女の目的は、しのさんとの合流を果たしたあと、どうすると云うのでしょうか・・・。
そう・・・たまもが、しのを見つけた後―――どうするかと云うのは、一緒に行動をしていたリリア達ですら、判り兼ねるモノだったのです。
このまま・・・しのと一緒に、「カイエン」を探すのか―――
或いは・・・一旦、しのと共に常磐へと戻り、九魔の里の者達に釈明を果たすのか―――
それとも、或いは・・・たまもこそが、しのの刺客なのか―――
するとこの時、ジョカリーヌからの一言が、今まで謎だった、たまもの正体を暴き、これからどうするのかを訊いてきたのです。
ジ:それよりも君―――どうやら、人間ではないようだね。
ひょっとすると、「金毛白面九尾」―――なのかな・・・。
市:「白面」!! すると、やはり―――
た:ふふ・・・ふふふ―――そう云う、ぬしこそ人ではあるまい・・・
いかにも、わしの名は「玉藻前」じゃ。
今まで、巧みに姿を変えておったと云うのに・・・それを、こうも容易く見抜きおるとは―――な。
ジ:それこそお互い様だよ・・・だからと云って、この私が、「宇宙からやって来た」―――と云って、信じて貰えるモノなのかな。
た:「宇宙」・・・とな? そう云えば、先程も異な事を―――ここを、「天体」だとか申しておったな。
ジ:それでは、こうではどうだろう、ここへ初めて来た人達にも判って貰えるよう、空中庭園の屋上で、これからのことを話し合ってみる・・・と、云うのは。
ル:あら、それは素敵な提案ですね。
ユ:ウフフ―――あなたも随分と、策略を巡らせるのが巧くなりましたね。
ス:それをお前が云うな―――元はと云えば、事の発端を作ったのは・・・
ミ:なるほどな―――そうではないかと思ってはいたが・・・
セ:でも、また再びあの感動を味わえるのならば、私は歓迎しますよ。
ジョカリーヌが、たまもの正体を言及したことについて、やはり以前から「そうではないか」と、勘付いていた市子がいましたが・・・
一目見て、自分の正体を見破ったジョカリーヌに対しても、普通の人間ではない―――と、疑いを掛けるたまももいたのです。
しかし、そんな彼女からの追求を、半ば冗談交じりの様な釈明の仕様に、ならば―――・・・と、云う事で、
話題ともなっている、空中庭園の屋上に、お話しの舞台を移すことになったのです。
ところが・・・その場にいた、半数以上の人間は、先程ジョカリーヌが口にした言葉に疑問を抱くどころか、
例の場所に場所を移す事の方が、本来の目的であるかのように悦び・・・
初体験である、蓮也や市子やたまもにしの―――は、目を丸くするばかりだったのです。
こうして、今まで非常識でもあった「常識」を体感する為、空中庭園最上階に到着した、彼らが目にしたモノとは―――・・・
し:うわっ・・・!? うわわわっ??! な―――なんだあれ・・・見た事もないや!!
た:こっ・・・これが―――わしらが今まで、地に足をつけて歩いておった処だと申すのか・・・
蓮:い―――未だに信じられぬ事でござる・・・
リ:と〜ころが、これが本当なんだな〜〜―――♪
どうした、市子、余りの感動に、声すらも出ないか。
市:は・・・い―――正直私は、夢でも見ているのかと・・・
セ:けれど、それが当然の反応なんですよ。
実は・・・ここだけの話なんですけど、私はジョカリーヌ様に騙されて、ここへと上がってきたとき、余りものことに腰を抜かしてしまったくらいですからね。
ジ:セシル―――私が騙しただなんて・・・けれど、あれは傑作だったね。
セ:もう―――ジョカリーヌ様ったら。
ル:けど―――こう云ったモノは、幾つ見ても飽きがこない・・・
いかがです、先程の私達の反応が、どことなく判っては来ませんか。
し:うん!うん! 判る判る―――なんだったらボク・・・ずっとここに居てもいいよ!
ユ:ウフフ―――けれど、そう云えるのは、度々だから云えるのです。
もし逆に・・・四六時中、見続けていたら、今度は地上が恋しくなってくるモノ―――どうしてそうなるのかは、不思議ですけれどね。
暗き闇に、一際輝く蒼き水の惑星―――
それはまるで、一個の宝玉の様でもあり、目に見えているそのままの大きさだったらば、嚢の中に入れて、そのまま持ち去りたい―――
そんな妄想や、衝動に駆られそうにはなるのですが、所詮それは、現実では現わせられないと云うモノ―――
なぜならば、今、現実に見ている地球は、現在リリア達がいる場所から、何十万kmも離れた場所に在るモノなのですから・・・。
それはそうと、真実を見せられた「今」なら判る―――先程の、ジョカリーヌの言葉・・・
その事に、今一度たまもは一石を投じてみたのです。
第五十六話;宇宙より来りし者達
た:なるほどのぅ・・・つまり、この「闇」自体が「宇宙」で、彼の宝玉みたいなのが「天体」だと・・・
ならば、ぬしが申していた、「宇宙から来た」―――と、云うのは・・・
ジ:単なる、「喩え話」だと云ったら―――
た:フッ・・・そのような騙り、今更わしが信じると思うたか! わしの目は・・・節穴ではないモノぞ!
自分の正体を、暴いたのではない―――まるで、初めから知っていたかのような物云い・・・
そんな事が出来るのは、自分よりも上位・高位の存在でしか成し得られない事を、たまもは知っていました。
それに第一、たまも自身は、「妖」の内でも最高位の存在でもあったがため、すぐさまその存在を見破ったジョカリーヌに対しても、
まるで逃げるかのような弁明の仕方に、厳しく追及をしてきたのです。
しかし、そこへ―――・・・
ユ:そこまでです―――この一件は、一時このわたくしが預かりましょう。
た:なんと? ぬしはこやつのことを―――・・・
ユ:ジョカリーヌ、失言でしたね。
ジ:ああ―――全く、自分の軽率さに、呆れ果てている処だよ。
ユ:と、云う事で玉藻前さん、今は矛先を収めて頂けませんか。
それに、今はこの人も・・・そしてこのわたくしも、歴とした宇宙人ではないのですから。
し:う・・・宇宙人? あなたも―――・・・?
ス:ヤレヤレ・・・お前まで要らん事を―――この収集を、どうつけるつもりだったのだ、ヱニグマ・・・
し:ヱニグマ?? でもこの人の名前―――・・・
次から次へと出されてくる新事実に、目を白黒とさせる者達・・・
そんな者達の中には、リリアも含まれていました。
当初リリアは、この地球が、「宇宙」を構成する「天体」の一つ・・・だと云う事までは理解できてはいましたが、
地球の行く末を左右する、三人の内・・・実に二人までもが、「外宇宙」から来訪してきた「宇宙人」と云う事までは知らなかったのです。
けれども、今にして思う処がある・・・
こんなに非常識で、高度な技術を、どうして次から次へ―――?
それは最早云うまでもなく、そうした連中が、地球の外から持ち込んできたから・・・
そして知ることとなるのです、この惑星は、一度滅びに瀕した事がある事を・・・
しかも、その当時に対立していたと云うのが、現在では「大皇」となっている、ジョカリーヌこと「女禍」―――・・・「東の評議員」となっている、ユリアこと「ヱニグマ」・・・
その凄まじい闘争の歴史は、今や追憶の彼方に消え去ろうとしていましたが、「ソレイユ」に残されている「記録媒体」などによって、いつでも呼び出す事が出来ていたのです。
そこで知る―――おぞましき、凄惨な事実の数々・・・
斯くも戦争とは、何も産みはしない事を、過去に収めてきたデーターは如実に物語ってくれたのです。
それに・・・だからこそリリアは、今回ジョカリーヌが意図していた事を、感じ取る事が出来ていたのです。
=続く=