第五十九話;「テラ」その意味
ソ:えっ・・・「テラ」?
リ:ん〜ま、そう云う事だ。
なんだか「お寺」と同じ発音だけど―――まあ、気にすることはない。
この度、リリアが「南の評議員」になった際、ジョカリーヌ達の間では、以前から話し合われていたとみられる議決―――
「サライ・オデッセイア共和国」の、国の呼び名を改めてはどうか・・・と、云う意見を、ジョカリーヌから提示されたモノでした。
けれど、「国」としての決定権は、「国王」でもあるソフィアが出さないといけないと思い、この時リリアは、その意見の是非を問うてみたのです。
すると、ソフィアも、その事に関しては思う処があったのか、国名を替えることには一定の理解を示し、
ならば、新たな国名をどうするか―――と、云う時に、満を持してリリアは、「東の評議員」であるユリアから推薦されたモノを提示したのです。
その名称が―――「テラ」・・・
「XANADO」を、最初の「一話目」から読んで頂いている方々なら、すぐに判ったであろう・・・
けれど―――リリア達にしてみれば、その言葉の意味する処が判りませんでした。
徒・・・短く簡潔で、覚え易く・・・音感も語呂も、そう悪くはなかった―――
その語彙が、意味する処の深い部分を除いては―――・・・
すると、リリアが持ちかけてきたこの話しを、安易な判断で―――と、嘲ら笑う人物がいたのでした。
?:ン・フフ―――単ァん純、その言葉の意味も判らないなんて、サ。
リ:(!)なんだと―――?!
あっ・・・あんたたちは―――
ヱ:それにしても、随分と思いきった事をしたモノね。
なんだか、自分を小莫迦にした様な声―――その方向を見てみると、この度の出師で、プロメテウスの残党たちを掃討してきた、二人の猛将がいたのでした。
それに、どうやらこの二人・・・この「テラ」と云う語句の意味に、些か詳しくあったようなので、リリアは恥を忍んで訊いてみることにしたのです。
リ:あんた達・・・知っているなら教えてくれないか。
徒、私は、「ユリア」って人から云われたままを、鵜呑みにしてるだけで・・・
エ:(・・・。)
「テラ」って云うのは、サ。
あの人の「前世」・・・「アヱカ」って名乗っていた時の、あの人自身の故国なんだよ。
けどさ・・・その国は、敵だった国に滅ぼされて―――・・・
リ:(!)そんな・・・事が―――
ヱ:ええ、なんでも話しに聞くには、役人も民衆も、鏖にされたみたい。
ただ、あの人の事だから、懐古の情ではない―――と、私は思うのだけれど・・・。
エ:そ〜そ〜♪ それに、その言葉には、色んな意味が含まれててさ―――
一番判り易い処だったら、「兆」って云う、数の単位を示すモノがあるんだよね。
そこで思わずも知ってしまう、過去に実在した、もう一つの「テラ」の歴史・・・
その国は、隣接する強大な敵―――「カルマ」に侵攻され、その悉くを・・・
住民を―――父を―――母を―――慕う友達を・・・蹂躙されていった事を、知ってしまったのです。
けれど、ユリアがこの国の名称を譲渡しようとしたのには、云わば、そんな「懐古の情」などではなく、もっと大義的な事なのだと、ヱリヤは説いたのです。
そこでエルムとヱリヤは、リリア達にも、判り易い意味を教えてあげました。
でも・・・最も肝心な意味の事は、敢えて云わずにおいたのです。
それも、その意味が・・・或る意味でリリア達に重く圧し掛からないように―――
徒、結論を急ぐばかりでは、元も子もなくなってしまう事でもあり、それでは、折角ユリアが託そうとした「想い」を、無駄にしたくはない―――との配慮もあったからなのです。
ともあれ、今度から自分達の、新しい国の呼び名の意味する処が判ってきたリリアは、厄介な敵を掃討してくれたお礼に・・・と、
エルムとヱリヤに感謝し、褒美の品を与えるつもりでいたのですが―――・・・
リ:え? いらない??
どうして―――またぁ・・・いいじゃんよ、遠慮しなくても。
ヱ:あら、でも私達は、別に遠慮をしているわけではありませんよ。
ただ、今回の事は、当然のことをしたまで・・・。
エ:それに、サ―――褒美なんて、貰う程の事でもないんだヨ。
早い話しがだね、今回の事は、私達にとって、退屈凌ぎにゃ最適だったのサ♪
リ:は・・・「退屈凌ぎ」―――いや、でもな、それじゃ私の収まり処がないんだって。
とは云え・・・どしよっかな〜〜―――あっ、それじゃあさ、この剣・・・
なんとも、慾がない―――と、云ってしまえばそうなのか、二人は、リリアから提示された褒美の悉くを、断ってしまったのです。
それもそのはず、なんと云っても、彼女達の本当の「褒美」とは、「戦場に立てた事」・・・これに尽きたのですから。
しかし、それではリリアの気が収まらないからか、次には、タケル某より譲り受けた、「あの剣」・・・
「緋刀・貮漣」を、その引き合いに出そうとしたところ―――・・・
ヱ:ダメよ、それは尚更受け取れないわ。
それに、第一その剣は、先代の清廉の騎士より伝授されたのでしょう。
リ:は? ナニ・・・その―――セイレンのなんとか〜〜って・・・
エ:や〜れやれ―――ターさんも人の悪いったら・・・
その剣は、サ、剣自身が主を決めてるのさ。
だから、私達なんかが持っていても、何の役にも立ちやしないんだヨ。
リ:そうなのか・・・それは残念だな―――
ヱ:そのお気持ちだけでも、嬉しいモノですよ・・・評議員閣下。
リ:・・・ええ〜〜っ? いつそのことを??
エ:私達が、知らないことなんてないんだってばw
既に、「緋刀・貮漣」の所有者が、リリアである事を知っていたからなのか、エルムとヱリヤは、ある事を引き合いに出し、頑なに断りました。
それに、リリアが出す事が出来たとはいえ、それは「偶然の産物」なのではないか・・・と、リリア自身が思ってしまってもいた為、
あの事件以来、意図的に何度か試してみたモノの・・・「晄剣」はおろか、「晄楯」すら出せずにいたのです。
だからリリアは、使えない武器は必要ない―――と、思ったのですが・・・
実は、それは、「その機」がまだだから、発現をしないだけ―――
しかし、その刻は、刻々と近づいていたのです。
それよりも―――・・・
ヱ:それより、思わず長居してしまったようですね。
そろそろ戻るとしましょう―――
リ:ああ・・・そか、帰ってしまうのか―――済まなかったな、色々と・・
エ:ど〜して、そんな難っ苦しいことを云っちゃったりするんだヨ。
リリアちゃんが、「済まない」って、思わなきゃならない事ってあったわけ?
リ:いや・・・そじゃないんだけど―――・・・プロメテウスの奴らを懲らしめて貰ったのにさ、お礼も十分に出来ないなんて・・・
そんなの・・・失格だよな、人間として―――
エ:(・・・。)
―――莫迦なことを云うもんじゃないよ、この子は・・・。
充分だって云っただろう、「その気持ちだけで」―――って・・・。
リ:(・・・。)
あ―――ああ・・・そうだった・・・な。
ジョカリーヌさんに会いに行った時、また会えるといいな―――
そん時は、美味しい酒と、食べ物持って行くから・・・さ。
青褪めて冷たいはずなのに・・・なぜかリリアは、抱擁をしてきたそのヴァンパイアの肌が、心なしか暖かく感じられました。
その事で感激をしそうになり、涕を眸の奥で「ぐっ」とこらえたのです。
こうして、リリア達と別れた後―――任地先である、エクステナー大陸から戻ってきたエルムとヱリヤは・・・
ヱ:全く・・・涕脆くなってきたモノね、あなたは。
エ:だって・・・仕方がないだろう、あんな可愛い事云っちゃってくれんだからさぁ〜〜
ヱ:・・・そうね、だからかも知れない―――ユリアさんが、この惑星の隠語を、譲ったと云うのも・・・
今回、ユリアからリリアへと譲られたモノ・・・それが、「テラ」と云う言葉でした。
そして、その意味する処は、この「地球」の、「隠語」であるとも考えられていたのです。
ですが、今回のお話しの内で、敢えてその事をエルムにヱリヤは意図的に避け、単純ながらも納得し易いモノを説明したのです。
それと云うのも・・・そうすることで却って、逆にリリア達に変なプレッシャーとして圧し掛かりはしないか―――と、危惧したからなのです。
けれど、いつかは知ってしまう・・・
今回、新たに自分の国を呼ぶ名となった、「テラ」と云う意味を・・・
しかし、その頃には既に、精神的にも成長を果たしている事を期待し、
いずれは、この「地球」を背負って立つ程の人物になってくれればいい・・・との、願いも込められていたのです。
処、話しは一変し―――ロマリア共和国では・・・
この度から、こちらへと定住することとなった、しのとたまもが、フラワーショップ「フォゲットミーノット」の居候達に挨拶をしている処でした。
し:これからもご厄介になります―――宜しくお願いしますっ!
た:しばらく厄介になるぞぃ。
なに・・・カイエンの奴を見つけるまでじゃ、そう長くはあるまい。
セ:あんだぁ〜? このチビ助は―――あの、コミュと乃亜を思い出しちまったぜ。
ル:乃亜ちゃんも、あれで面倒見はいいのですけどね・・・
た:かぁ〜〜っ! あんな奴と、一緒くたにするではないわ〜〜!!
わしは、あ奴よりは数倍可愛げがあるぞぃ!
ヨ:まあまあ―――そんなにカッカせず、これでも食べて機嫌直して。
た:のほ〜〜♪ こっ・・・これは!!
なんと云う、芳しき匂いに油ののり! 洛の「淡路屋」の油揚げと同じでわないか〜〜っ!!
し:あっははは・・・どうもすいません、たまちゃんたら、あれには眼がなくて・・・
ユ:ウフフ・・・それは良かった。
あのお二人も、好物は一緒ですものね。
それより、あなた達にやって頂きたい事があるのですが―――
新しき居候との兼ね合いは、最早「お約束」であるとして・・・
この度、新しく仲間に加わった、しのにたまもを、ユリアは歓迎しました。
そしてユリアは、彼女達にある任務を与えたのです。
それが、「北へ・・・」
その言葉の―――任務の意味する処を、立ち所に理解したしのは、息つく暇もなく、身支度をする為、自分に与えられた部屋へと戻りました。
そこへ向かえば・・・亡き父の仇敵に会える―――そう、仄めかされていたから。
しかし、意見役のスターシアからは、「それでは危険なのではないか」と抗議がありましたが・・・
ユリアは、この件に関して、しの達を抜擢した理由を述べると、スターシアもその事には順応したのでした。
=続く=