トロイア国にある町の一つに住んでいる恩師を訪ね、イリスはその家まで来ていました。
そんな彼女に、しのとたまもは、付き添う象で、同じくその家まで来ていました。
けれど・・・思わぬ事実と衝撃を、イリス達は目撃してしまったのです。
そう・・・永らく、「XANADO」に措いて、重要なウエイトを占め、活躍をしてきた彼女―――
愛する漢と結ばれてからは、その仲睦まじさに、周囲りの誰もが羨んだ・・・
そして、500有余年の刻が過ぎ去き、現在―――
あの頃と、一つとして変わっていない容姿をしていた、彼らの真実とは―――・・・
第六十四話;500年の真実@
それにしても、そう―――イリスが会おうとしていたのは、紛れもなくタケルと婀娜那の夫婦だったのです。
しかし、どうして彼らはこの地へ―――?
それに、どうして婀娜那が―――?
すると、こんな時にでも、この家を訪ねてくる者は、引きも切らなかったのです。
しかも、この時に訪ねてきたのは、なんと―――・・・
リ:お〜〜い、お邪魔するぜ―――っと・・・・・・ん?あれ?
し:(えっ? この声・・・うわ、あの人達―――)
蓮:御免仕る。
(・・・うん?あそこにおられるは―――)玉藻前殿ではござらぬか?
た:うん? ほぉう―――そなた達は・・・なんと云う巡り合わせかのう。
リ:でも―――なんでお前らがこんなとこに?
それに、タケルさんじゃんか、で、もって―――なんで婀娜那さんが・・・
市:お待ち下さい―――その方からの、生気が感じられません!
リ:〜ん、だってぇ? じゃあ―――・・・
た:わしらは、臨終には立ち会うてはおらぬ。
わしらがここへと到着した時、既にこの女性は息絶えておったモノと見ゆる。
市:それであなた様が、「忌中」の結界を―――
た:いや、わしは大したことはしてはおらぬ。
この旦那が、それまでのことをしてくれておったのでな、わしは補足したにすぎぬよ。
なんとも、騒がしくも、この家に入ってきたのは、リリア達でした。
そこで彼女達も、婀娜那の死に目に遭遇してしまったのです。
けれども、リリアには信じられませんでした。
なにしろ、初めて出会った時には、自分に逼迫するくらいの、凛とした雰囲気を放つ人物でもあったのですから。
だから、再会ともなった今日、こんな事態になるモノだとは、努にも思っていなかったのです。
それに、こちらの人物も―――・・・
イ:・・・煩いっ!静かにして下さい・・・あなた達が騒いでしまったら、婀娜那さんが静かに眠れないじゃありませんか・・・。
リ:な・・・っ―――・・・悪かったよ。
死者を弔う礼儀として、霊前で騒ぎ立てると、その眠りを妨げてしまう・・・と、イリスは注意し、
その事に、一時リリアも「ムッ」とは来るのですが、イリスの云い分も判ってはいた為、敢えてそこでは素直に謝罪をしたのです。
そんな・・・彼女達のやり取りの一部始終を見ていた、故人の夫は―――
タ:いえ・・・淋しく見送られるよりは、幾分か賑やいだ方が、婀娜那も心地よく旅立てられるやもしれません。
た:(ほぉ〜う・・・随分と出来た御仁じゃのう。
愛する者と、死に別れたのであるから、辛いはずじゃろうに・・・)
リ:あ・・・ああ―――いや・・・でも、今のはどう見ても私が悪かったよ。
それにしても―――うん・・・なんだか幸せそうな顔だよな、悔いなんか残ってないみたいだ。
タ:そうですか、ではリリア殿からのお言葉、ありがたく頂戴いたしておきます。
本来ならば、厳しい言葉で責めてもおかしくなかったのに、寧ろ逆に感謝された事を、先程は大人気ない態度を取りかけたリリアは、省みました。
それに、婀娜那の死に顔を見ての一言に、イリスは気付く処となったのです。
この人物は、先程、急に押しかけてきて、騒ぎ立てていたこともあり、なんとも礼節を弁えないものだろうか―――と、そう思っていただけに、
今のリリアの態度を見るに至り、本当は教養もあり、礼儀節度も備えている人物だとの見方を変えたのです。
それにしても、婀娜那の死の真相に関しては、未だ謎は多くあり、そこを敢えてイリスは―――・・・
イ:―――あの、タケル先生。
タ:今・・・考え事をしておりました。
果たしてワシは、家内に対し、良き夫であったか―――と。
イ:何を仰られるのです・・・先生は奥様のことを―――奥様も先生のことを、愛していたではありませんか。
タ:果たして、そうと云い切れるでしょうか。
今にして思う処となるのですが、ワシは・・・ワシのやりたい事に、婀娜那を振り回していた―――そう思えなくもないのです。
それよりも・・・そうですね―――
一つ、訊いてもよろしいでしょうか。
イ:なにを・・・ですか―――
タ:今、ここにいるあなた達から見て・、ワシは一体幾つに見えますか。
これは、勿論婀娜那もそうですが―――・・・
リ:はあ? おかしな・・・つて、おかしなことを訊くもんだよな。
そうだな〜〜・・・どう贔屓目に見ても、20代後半から30代前半―――いや・・・40代くらいが妥当かな・・・
タ:はっはっは―――そうですか、いや、それは有り難い。
どうやら、過分に若く見られておるようですな。
イリスとリリアが、言い争いを起こし掛けそうになっていた最中、タケルは物想いに耽っていました。
自分は、よき伴侶であった婀娜那が死して今、彼女に対して良き夫であったか―――と・・・
その事を聞いたイリスは、文句一つ、厭な顔すらせず、タケルに献身を捧げる婀娜那を見てきているだけに、
「そんな事はない―――」と、反論したのです。
するとそこで、急に何を思ったのか、タケルは・・・突飛な事をイリスやリリア達に訊いてきたのです。
それは・・・婀娜那の享年と、現在の自分の年齢―――
その事をリリアは、見た目そのままを答えました。
視る分に措いても、そして又、行動に関しても、自分と見劣りがしなかった―――
それに、イリスや他の者達も、ほぼリリアの意見に一致していたのです。
けれど、次のタケルからの告白により、リリア達は更なる衝撃に包まれることとなるのでした。
なぜならば―――
タ:実は、ワシと婀娜那は、500有余年を生きております。
リ:―――・・・・・はあ゛あ゛〜〜?!
おいっ・・・ちょっと待て?! な、なんだってぇえ〜〜??
イ:ごっ・・・500―――? 何かの間違いなのでは・・・
蓮:戯れが・・・過ぎませぬかな・・・。
リ:そ、そうだとも〜! 第一、私が知ってる爺さんだって、今年80になるらしいけど、顔なんかしわくちゃなんだぜ?
それを・・・だなぁ―――どう見たって、タケルさんに婀娜那さんは、私達と比べても、そんなに変わりは・・・
そう、とどのつまり、リリアが例に挙げたように、この世界でも、人間の齢は100を越える事はなく、
もし越えたとしても、タケルや婀娜那の様に、瑞々しい若さまでは保てられなかったのです。
ですが・・・現実的に、二人を見ていると、まるで二人が、「時」から外れたかのような年の取り方をしているモノだから、
そこにいる全員が驚かずには居られなかったのです。
それに、サプライズは、これで終わったわけではなく―――・・・
タ:信じようと―――信じまいと―――これは事実。
それにリリア殿、既にあなたも会われているジョカリーヌ様やルリ様・・・それに、セシル殿も、ワシらと同じ年代・・・500有余年の長きを紡いでおられるのです。
この、タケルからの告白を聞き、更なる衝撃にリリアは包まれました。
「西の評議員」であるルリや、その彼女の参謀であるセシルまでも―――
いや、それよりも、リリアが尊敬する、「あの人物」までも―――??
しかし・・・この、一見して相応しくないかとする出来事も、そうなった理由を聞いて行く内に、全員理解する処となったのです。
=続く=