婀娜那弔問の場で迸った衝撃の事実―――
そう・・・タケルに婀娜那は、共に齢500を越えていたのです。
けれども、そこで、まだ更なる疑問が噴出してきたのです。
そう・・・だとするならば―――
リ:―――だとしても・・・だ、だったら尚更、婀娜那さんだけが亡くなる理由が、判らないじゃないか!
そう、突き詰めて行くと、今のリリアの云うように、ならばなぜ、婀娜那「だけ」が逝去して、タケル「だけ」が生き残っているのか・・・
その真相は、タケル自身の口から零れてきたのです。
第六十五話;500年の真実A
タ:「生体強化」―――と、「延命調整」・・・この施術によって、ワシら有志は、500年前のあの時から、同じ姿で生き続けているのです。
それに、この技術は「恒久的」ではなく、100年毎の更新が必要なのです。
リ:(??)そ・・・それと、これと・・・なんの関係があるんだよぅ。
500年前の昔より、何一つとして変わらない者達―――その真相が、タケルの口より語られました。
そのまず最初に、「生体強化」―――
ある「施術」を前に、それに耐えられるように身体を「強化改造」すること。
そして次に、「延命調整」―――
この「施術」こそが、寿命を意図的に延ばす事が出来るモノだったのです。
しかもこの「施術」は、術式後も、そのまま放っていいモノではなく、定期的に―――100年に区切って、「検査」と「措置」を繰り返すことで、往時の若々しいままでの彼らの姿があったのです。
しかし―――だとしても、婀娜那の死の真相は、謎なまま・・・なのですが・・・
タ:―――迂闊でした・・・ワシの方は、万事須らく終えさせていたので、てっきり婀娜那も、そうとばかり思い込んでしまった・・・。
それでも、念の為に、「どうなのか」―――と、聞いた折、「心配はない」と返ってきたので、「ならば・・・」と、ワシも安心してしまっていたのです。
ところが―――・・・
イ:まさか・・・
タ:そう、婀娜那は、延命調整の更新を受けてはいなかったのです。
その事を、ワシが知ったのは・・・婀娜那が息を引き取る直前―――家内は、ワシに対して、初めて嘘を吐いたのです。
そう―――とどのつまり、婀娜那の「死因」は、「寿命」でした。
彼女自身、大きな怪我や病気もせず、寧ろ天寿を全うした―――と、云っても過言ではなかったのです。
しかし―――ならば、なぜ、婀娜那はタケルに嘘を吐いてまで、延命調整の更新を、受けなかったのでしょうか。
それには、やはり理由があったのです。
それよりも、ではどうして、タケルを含む「有志」達は、「生体強化」に「延命調整」を受けることになったのでしょうか。
それは、「ある方」からの「お願い」もあったから・・・。
ガルバディア大陸を統一し、ランド・マーヴルも、自分達の同志が統一した事を契機に、
「宇宙開拓機構・フロンティア」は、ある思い切った計画を、構成員の一人であるジョカリーヌに打診したのです。
けれど、ジョカリーヌは、初めの内には、あまり乗り気ではありませんでしたが、次第に姉達からの強い説得に折れ、応じてみようと云う気になったのです。
それに、ジョカリーヌの方でも、判ってはいたのです。
自分達が成そうとしている事業を、この惑星に根付かせるには、余りにも、この惑星に住んでいる種族は、寿命と云うモノが短すぎる・・・
折角、あらゆる知識や、技術のノウハウを教えた処で、次代に継承させる前に死なれてしまっては、元も子もない・・・
また一からの、やり直し―――・・・
かと云って、このままでは時間も多分にかかり、フロンティアの上層部も、いつまでも待っていられるほど寛容ではない事を、ジョカリーヌは知っていたのです。
だから、ジョカリーヌは、姉達の強い要望を、受けざるを得なかったのです。
それが「延命調整」―――また、その施術に耐えられるだけの、耐久力をつけて行く上での「生体強化」も、併せて・・・
しかし、それには「ある条件」が付き纏っていました。
それに・・・その事を知っていたからこそ、ジョカリーヌも、初めの内からいい返事が出来なかったのです。
所謂、これは、ジョカリーヌの苦渋の決断でもあったのです。
では、なぜ、ジョカリーヌほどの人物が、その事のみで、迷い悩んでいたのか・・・と、云うと―――
ジョカリーヌは、この惑星にある記録形態の一つである「書物」に、大変な興味を抱き、
過去には、総て―――と、云っても過言ではない程の書物に目を通していたのです。
その内に・・・「不死」を目指した者達の末路を描いた、面白おかしい「伝奇物」にも、目を通していた事があったから―――なのですが・・・
ではジョカリーヌは、その書物を読んだことによって、どんな知識を得られたのかと云うと・・・
人間の精神は、非常に脆いけれども、「不老不死」への羨望は、並みならぬモノがある―――と、云う、結論・・・。
確かに、短くも限られた寿命でしか生きられない人類にしてみれば、まさしく「不老不死」は、永遠のテーマに成りえる程に、興味の対象となっていたモノでした。
けれども・・・浅慮な人類は、知らなかったのです。
その浅慮さ故に―――
永遠の生命―――不老不死の行きつく先には・・・「何もない」と、云う事を。
そこにあるのは、ただ―――ただ―――寂寥さがあるのみ・・・
確かに、「不老不死」には、野望や希望が一杯詰まっており、それを得た瞬間、そこには幸福のみがある―――と、皆、誰しもが信じ、疑う事がありませんでした。
ですが、肝心なことを、誰しもが気付きだにしなかった・・・
幸福が訪れると―――必ずや、不幸も舞い込んでくる・・・
それに、人間と云うモノは、物事をネガティヴに捉え始めると、そこからが長くもあったのです。
だから、そこの処を知っていた為、ジョカリーヌは躊躇をしていたのです。
そこで、考えあぐねた結果、導き出したのが、後人達の為の、「モデル・ケース」と、なってくれる者達を探すこと・・・
そして、ジョカリーヌからのこの相談に、快く応じてくれたのが、以前からの同志だと云えた、「タケル」「ルリ」「セシル」達だったのです。
ところが―――そう・・・実はこの時、婀娜那は名前を連ねていませんでした。
そこをどうにか、タケルからの説得もあり、施術を受ける気にはなってはいたみたいなのですが・・・
今回の一件を見る限りでは、彼女の本心は―――・・・
そうした、事の顛末を、タケルから一通り聞き終えたリリア達は・・・
た:ふぅ〜む・・・皮肉なモノよのう―――お主にしてみれば、あたらよかろうと思ってのことだったのだろうに・・・
し:でも―――半分は、そうじゃなかったんじゃないかな・・・って、ボクは、そう思うな。
だって、全部がそうだったなら、こんな顔は見せてやしないんじゃないかな。
イ:・・・そうよ―――そうですよね、きっとそうですよ!
きっと奥様は、先生のそんな気持ちを汲んでいたのに違いありませんよ!
皆、口々に・・・一様にして、タケルを慰める為の言葉を掛けました。
そう、今一番―――愛する者を失って、哀しんでいるのは、タケルに違いはないのだから・・・
けれど、リリアは―――
リ:私は―――そうじゃないんじゃないかな・・・って、そう思う。
イ:なんですって?! あなたと云う人は―――
リ:そう怒るなよ。
だってさ―――この人ってば、この世でやりたい事を全部やり終えたからこそ、こんなにも満足気な顔をしてるんだよ。
だったらさ、お前達にも聞いてみるけど―――やりたい事を、途中で止めなくちゃならなくなった時、どんな気分になる。
蓮:ふぅむ・・・確かに、一理ありますな。
無念に相違ございませぬ。
市:ええ・・・それに、今もって尚、この方からは遺恨の念などは感じられませぬ。
リリアからのその一言に、イリスは思う処となりました。
確かにそうだ―――婀娜那程の信念の人が、もし、志半ばで事を終えなければならなかった時、どんなにか悔しがるだろう。
それは、自分も同じ―――
タケルと婀娜那の夫妻から、教えを受けた事により、イリスの内での、国に対しての危機感が急に高まりだした・・・
ここは、王族の一人である、自分が何とかしなければ―――
その事を、今回の婀娜那を自分と重ね合わせた時、その無念は、いかばかりのモノがあるだろうか・・・
そして、この、イリスの自問自答により、彼女が抱えている問題にも、或る一点の光明が差してくるのでした。
=続く=