大皇(おおきみ)が頭を悩ませていた問題―――「北の大陸」であるエグゼビアでの、状況の進展の遅延・・・

 

以前、話題にも取り上げられた事のある、「パルーシア」なる国家が、大皇(おおきみ)が治めるパライソとの国交があることを理由に、北の大陸での統一を優位に進めてはいましたが、

とある事情を知った大皇(おおきみ)から、大変な怒りを買ってしまい、国交・支援共に打ち切られてしまったのです。

 

その事により、「パルーシア」と云う国は一挙に衰退、代わりにエグゼビア大陸に覇を唱えるのに台頭してきたのは、「トロイア」と云う国家でした。

 

しかし、この「トロイア」と云う国は、元々、エグゼビア大陸に覇権を唱えられる程に力はなく、

云ってしまえば、「パルーシア公国」が、あのまま・・・何の障害もなく、「大陸統一」の事業を進めていれば、その内、併呑される運命にあった・・・

それがいつの間にか、この大陸に、覇を唱えられるまでに、大きくなってしまっている―――・・・

その原因を、イリスはどことなく判っているようでした。

 

 

そう―――確か、「アレクセイ=セルゲイビッチ=クドリャフカ」と名乗る呪術師を、父が迎え入れたのは、ここ最近のこと・・・

けれど、それ以前から、どことなく父の行動が、可笑しくなり始めていた―――・・・

以前までは、それほど外出をするものではなかったのに、(およ)そ5カ月ほど前から頻繁に・・・

それも、月に10回くらいは、どこかへと出かけていた―――

しかも、自分の妻である、王妃にも打ち明けないで・・・

 

それと、あとあとになって、よく考えてみると、この5カ月余りの間に、この国は急激に軍事力などを付け、次々と近隣諸国を侵攻―――版図に加えていった・・・

 

そう・・・総ては―――

 

 

 

タ:・・・ふぅむ、では恐らく、そのアレクセイなる者が、イリス殿のお父上に、何らかの(かたち)で接触をし、そうした際に、強力な洗脳を施した―――と、見るべきですかな。

イ:やはり・・・そうなのですか―――

  では、母や兄達は・・・

 

た:う〜む・・・無駄じゃろうのう。

  厳しい事を云うようだが、そなたの家族の魂の解放は、最早その死を(もっ)て―――と、云う事に他ならぬじゃろう。

イ:そんな―――っ・・・!

 

た:よろしいかな、恐らくはそのアレクセイなる者、奸智にも長けておると見た。

  それと云うのも、即効性のある術は、さあるきっかけをして解けてしまう場合が多いが、

  今しがたの、そなたの話しを聞く上では、ご母堂殿も兄者達も、変調を()たしたのは、ここ最近と聞く、その事に相違はありませぬな。

イ:・・・はい―――父が、あのような行動を取り始めてから約三ヶ月、父の行動を怪しんでいた母が同調するようになり・・・その一ヶ月後には、兄達も・・・

 

た:ふぅむ、やはり間違いはなさそうじゃな。

  恐らくそれは、潜伏性・・・並びに、遅効性のある術に相違なかろう。

  そう云った術の不便な処は、得てして時間のかかる場合が大きいが、そうした反面、周囲には判り難いし、また解除するにしても、難儀ときておるでな。

 

リ:―――それにしちゃ、なんだかやけに詳しいな。

 

た:いや、なに―――よくわしも、その手を使うておったことだしのう、カッカッカ―――w

市:玉藻前様・・・そこ、自慢する処ではないです。

 

リ:はっはぁ〜ん? じゃ、お前―――元々悪者だったんだ〜?w

  いや、また通りで―――怖い怖いw

た:にゅぐぐ〜・・・じゃ、じゃが―――今では、わしは改心して・・・

 

リ:はっ! そいつはどーだかな・・・私らが闘っている最中に、背後(う し)ろから〜ってのは、ヤだぜ。

 

た:しのぉ〜〜この莫迦に云ってやってくれい! わしがこれ程になるまでに、どんな苦労をしてきたか〜〜!

 

し:あっ・・・ははは・・・(はあぁ〜・・・)

 

 

 

現在(い ま)から五カ月ほど前―――それが総ての基軸でした。

 

恐らくは、不幸な旅人を装ったアレクセイに、偶然、領内を見回っていたイリスの父が近づき、そこで強力な催眠を施され、徐々に精神を乗っ取られ始めた・・・

そして、彼が云うがままの傀儡に仕立て上げられた次の標的には、イリスの母や兄達にまで、その魔手は及び、やがてはイリスも、その範疇には入っていたに違いはありませんでした。

 

けれども、母や兄達が、アレクセイからの洗脳を受けている間、偶然、トロイアを訪れていたタケルと婀娜那の夫妻に出会う機会が設けられ、

彼らの人柄に触れたお陰もあったからか、自分の家族達に及んでいる変調を察することが出来たのです。

 

それからの事は云わずもがな。

アレクセイからの洗脳を受ける事のないよう、家族からも離れて生活をしていたのです。

 

 

そうした事の顛末を、喩え、推測なりとは云え、たまもから説かれた一行は、一様にして理解を得たようでした。

 

それと云うのも、今でこそ、女児の姿をしているたまもは、以前は「玉藻前」として知られており、

そうした、「人心操術」にも長じており、時の常磐の国の朝廷を、意のままに裏から操っていた時期すらあったと云うのですから。

 

しかし、今では状況が違うと云った処でも、そうした事をリリアに取り上げられ、いびられてベソを掻いてしまったのです。

 

確かに―――現在の姿からは、嘗ての、三大妖怪の一つとして知られている「金毛白面九尾」の面影を、彷彿とさせるモノは、どこにも感じられなかったのではありますが・・・

 

ともあれ、今現在、自分達が何をするべきかの指標も立ったため、そこへと邁進することにしたのです。

そこで、()ずやるべきは、各々が何をするべきか―――の、役割分担・・・なのですが・・・

 

 

第六十八話;役割分担

 

 

タ:さて、それでは参ると致しましょう。

 

リ:ちょ〜い! ちょいちょいちょい! ちょっと待て―――って!

  な、なんで私が、「元・悪者」と組まなきゃなんないんだよう!!

た:それはわしの科白じゃっ!

  タケル殿―――お主、先程から一体何を見ておったのか・・・事と次第では―――

 

タ:はっはっは、まあ良いではありませんか。

  第一、こちらにはしの殿と・・・あと、ワシもおります。

  これにて、不案内は解消されるでしょう。

 

リ:そう云う事を、云ってるんじゃなくてだなぁ〜〜・・・

 

蓮:それでは、先に伺わせて貰うでござる―――御免。

 

リ:あ・・・あ・あ〜〜・・・行っちゃった―――

た:お? なんじゃお主―――あの男に「ほ」の字なのか?w

 

リ:るっせいなあ! ―――お前にゃ関係ねいだろが・・・

 

 

 

先行して、城内へと潜り込み、様子を伺おうとする、イリス・蓮也・市子の組―――と、

暫くは城下の様子を探り、後で、先行するイリス達の組と合流をする、リリア・タケル・しの・たまもの組。

 

しかし、ここでリリアは、自分が想いを寄せている蓮也とは、別の行動を取るようになっていると云う事に、些かの異議を申し立てるのですが・・・

なんともつれない事に、蓮也は先を急ぐ為、そうしたリリアの想いとは裏腹に、イリス達と行ってしまったのです。

 

こうしたやり取りを見て、先程の仕返しとばかりに、たまもは揶揄(からかう)のですが・・・

果たしてこの先、どうなる事やら―――

 

けれど、タケルには判っていました。

判っていたからこその、配役(キャスティング)―――・・・

それにタケルは、敢えてリリアと親しき者達を離す事で、ある事象(こ と)を見極めようとしていたのです。

 

 

それはそうと―――イリア達、先行組から(おく)れること10分・・・

城下の様子を探っている、リリア達の前に・・・

 

 

 

リ:〜〜―――・・・・。

た:〜〜―――・・・・。

 

し:あ・・・あのさあ〜いい加減、二人とも仲良くしようよ―――

た:()りとて! これは、いくらしのからの言葉だとて、聞き届けるわけには参らん!

リ:は! そりゃ、こつちもだ〜〜―――っつうの!

 

し:はあ〜・・・こうなると、たまちゃん意固地(い こ じ)だから―――(・・・!)

タ:気が付かれましたか・・・しの殿。

 

し:はい―――どうやら、囲まれつつあるようですね・・・。

 

リ:けっ! ヤリ方が回りクドイんだ〜っつうの!

  正々堂々と、正面からかかってこいや―――ごる゛ぁ゛!

 

し:(どっちが悪役なんだか・・・)

 

た:―――やれやれ、お主みたいな、莫迦もおったもんではないのぅ。

リ:あ゛・ん゛・だ・とおぅ〜?!

し:たまちゃあ〜ん・・・(なんでそこで、わざわざ・・・)

 

た:大体、そものこ奴らの価値は、人知れず処にて、障害を排除する―――云わゆるところの、「暗殺部隊」よ・・・

  そんな輩が、白昼堂々と火花を散らしてみよ、「隠密」もあったものではなかろうが。

 

リ:ン、なもん―――知るかよ! そんなのは、連中の勝手に都合だろうが!

  いいかぁ・・・今なあ、私はむしゃくしゃしてんだ―――そんな私が、いかばかりかの仏心として忠告をしといてやる・・・

  今の私の・・・怒りの炎に触れたらどうなるか―――肚ぁ括った奴から、かかってこいやあ!!

 

 

 

自分達を探ろうとしている、この界隈では見かけないリリア達を、城下の住人達の知られない処で始末をしようと動き出している「掃除屋」達・・・

それでなくても、イラついているリリアにとっては、彼らの行動は、癇の蟲に障る処でもあり、

それが喩え、王国の城下であっても、つい大声で「喧嘩上等」の啖呵を切ってしまうのです。

 

そんなリリアに、苦言を呈するたまもなのですが・・・そんなたまもからの忠告も、耳に入らないリリアの身体の一部に、

或る変調が訪れようとしていたのでした。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと