幾つもの巨木に周囲りを囲まれ、動きを封じられたかのように見えた「鉄の巨人」―――アイアン・ゴーレム・・・
しかし、その術式の道義の理に詳しかった者と、術式を発動させた本人からは、「木」では「金」で出来た傀儡の動きを、封じる事が出来ない―――と、云ったのです。
では、何のために、たまもはそうしたのか・・・
それは、総てが次に発動する―――この理の行使のため・・・
た:ふ・ふ―――確かに、「金」の前では、「木」は無力よ・・・
なれば、「金」の弱点は・・・?
それは、次に唱えるこれよ! 「五行相生」「木生火」―――!!
その二人からの説明の通り、巨木でさえも圧し折り、破砕するアイアン・ゴーレム。
しかし―――その総ては失われたわけではなく、砕けた木の破片は、アイアン・ゴーレムの身体の所々に垣間見られたのです。
そこを見逃さなかったたまもは、次なる理・・・「木生火」によって、木々から火を生じさせたのです。
すると、立ち待ち、辺りは焔の渦に見舞われ、それはやがて、「鉄の巨人」であるアイアン・ゴーレムまでも・・・
リ:お・お・お―――あの木偶の坊が・・・
タ:お見事―――「五行相克」「火克金」、確と伺わせて頂きましたぞ。
今までの、無駄とも思えた術式の行使により、更に威力を増した理・・・
この焔の発動により、脆くもアイアン・ゴーレムは、焔の中に消え去って行ったのです。
しかし―――・・・
た:かっかっかw ほれ、わしにかかれば、こんなものよww
リ:くっそ〜〜なんか納得いかねえけど・・・負けた―――
で〜なんで、まだこの状態のままなんだ?
タ:ふむ、どうやら時間稼ぎをしているようですな。
それにしても、あのアイアン・ゴーレムにしても、「手駒」の一つに過ぎなかったとは・・・
トロイア側にしてみれば、満を持した上で投入された「鉄の巨人」のはずなのに、それを、いとも簡単に撃破されてしまった―――
そのことにより、通常空間より隔離されてしまっていたリリア達は、元の空間に戻れるモノと思っていたのですが、
それが、未だもって元に戻っていない処を見ると、時間を稼がれているようだ―――と、タケルは推測したのです。
すると、ここで円陣を構成していた内の一人が―――・・・
術:フフフ―――どうやら、小賢しい奴がいたようだな・・・
我が名は、デイドリヒ―――故あって、邪魔者は消さねばならん・・・
タ:ふむ―――どうやら見た処、お主が術者の様だな。
デ:フン―――喰らえ! ――=真空波=――
し:おおっ―――と・・・
(!)お前の・・・その腕!!
リ:どうした、しの―――あいつの腕に見覚えがあるのか。
し:はい・・・あいつの様に、腕を複数持つ者―――
デイドリヒ、お前は、カイエンと云う奴を知っているのか!
デ:「カイエン」・・・奇遇だな、このオレも、そいつのことを探している―――
何しろ、見知らぬ土地のはずなのに、そいつに間違われたのは・・・お前で10人目だからだ!
だが、そうか・・・そいつの名は、「カイエン」と云うのか―――
し:(違う・・・?)それじゃ―――奴はどこへ?
デ:知らんな、その様な事―――だが、喩え知っていたとしても、お前達には教えるわけにはいかん!
フッ―――それに、どうしても教えて欲しくば・・・
た:ふむ、芸の莫き言葉よ―――よかろう、なれば、そなたの望み通り、そなたを倒してから聞くとしよう。
しかし、その内の一人が抜けたとはいえ、依然として円陣の構成・効果の崩れが見えないことから、
タケルは、この人物が、先程のアイアン・ゴーレムを嗾け、この円陣を形成させた、術者本人であることを断定しました。
そうした事実を看破されはしても、この術者―――デイドリヒは怯むことなく、対峙しているリリア達に、容赦ない攻撃を仕掛けてきたのです。
すると、その際に垣間見られた、デイドリヒなる者の、身体的特徴―――纏っていたマントから、覗いて見えた複数の腕・・・
その、複数の腕を見て、しのが思い当たる人物の名を叫んでみました。
すると、デイドリヒからは―――彼自身、初めて来た土地のはずなのに、見知らぬ人間に間違われたのは、これで「10人目」・・・
しかも、余程、悪い噂しかなかったモノだから、そうした者と同じ身体的特徴を持っていただけで、この土地の住人から白い目で見られるのは、余りいい気分がしなかったようです。
それに―――彼自身、負っていた使命の様なモノがあり、云わばリリア達は、自分が遂行しなければならない使命を邪魔する者・・・と、受け取られてしまったようなのです。
ですが、ここで貴重な情報が・・・
そう、このデイドリヒなる者の証言が確かだとしたなら、しの達が追っている「カイエン」は、確実にこの大陸に来ている―――と、云う事だったのです。
しかし、今もって尚、そうした者の足取りが掴めなかった・・・と、云うのは、「あと一歩遅かった」―――ようなのです。
その事が判っただけでも、今は、無駄な争いは避けたいモノ・・・なのですが、
双方が誤解をしたまま―――と、あれば、直接対決は避けられない処でもあったのです。
第七十話;仇敵の行方
リ:ケッ―――腕が、私達より多くあろうが、数では私達の方が多いんだ!
た:確かにのう・・・その事は、あ奴自身でも判っておるのだろうに―――なれば、なぜに出てきたのじゃ?
リ:お前なぁ〜〜タケルさん―――こいつになんか云ってやってくれよ。
タ:申し訳ございませんが、ワシは数に入れんで下され。
リ:はい? ―――なんで・・・
タ:ワシが持っていた得物は、今ではリリア殿とイリス殿のモノ。
それに加え、最近では、事務方の仕事の方が多くありまして、満足に武の鍛錬をする機会がなかったのでございます。
リ:え゛え゛え゛〜〜? ちよっと―――しっかりしてくれよ〜・・・
た:気を抜くでない―――それでも、数の上では勝っておるのだろう。
(・・・数の上「だけ」では―――な・・・)
確かに、数の上だけでは、リリア達の方に分がありました。
それに、もう少し贔屓目に見立てても、腕を複数持つ相手に、リリア達三人―――と、云う図式が成立するのです。
けれど―――・・・
し:―――ボクのお父を殺った奴の居場所・・・吐いて貰う!
リ:あっ―――しの・・・
(!)あれは―――・・・
この状況で、意外にも冷静さを失っていたのは、しのでした。
それもそのはず、永らく「カイエン」の行く先を追い始めてから、彼の存在の尻尾さえも掴めないまま―――だったと云うのに・・・
それが、ここへ来て、何らかの足取りが掴みかけ、所在を知っていそうな人物に、出会える事が出来たのだから。
それも、「敵」として―――・・・
ならば、理屈としては、至極簡単―――
この、デイドリヒなる人物を負かして、「カイエン」の手掛かりを聞けばいいだけの事―――・・・
その為にしのは、自らが得意としている忍術を―――なんと、事もあろうに、自分の好き敵だと認めているリリアの前で披露してしまったのです。
それが「紫電」―――
その術を操る人物が、トロイア国の疎村で、無体を働くトロイアの兵士達を蹴散らした事実を知ると、リリアは胸躍らせました。
まだ見ぬ、強いヤツ―――
そうした存在がいる事を知っただけで、自然に、リリアのボルテージが上がってきました。
そして・・・偶然にも、自分が手合わせをしたいと願っていた人物が―――こうまで近くに居てくれた事に・・・
リ:しのぉ・・・お前が「紫電」だったのか!
―――へっへ・・・こいつはいいや、こいつは傑作だ!
た:(やれやれ―――しのの奴にも困ったモノよ・・・この時機で、一番知られとうない奴に、知られてしまうとは・・・)
―――だとて、わしらが抜かってやる道理もない・・・しのよ、安心せい、お主の事は、わしが援けてやるからな!
しのが、自分が好敵手と認め、探していた「紫電」であることに、リリアは狂喜乱舞しました。
逆に、厄介な人間に目をつけられてしまったモノだと、友の行動の軽率さに苦笑するたまも、なのですが・・・
ここで思い留まっても、何もなりはしないので、「言の葉」による支援を始めたのです。
言葉とは・・・時に、「正」と「負」の霊力を持ち合わせ、その力は、人の魂を縛ることもあると云う―――
それが即ち、「言の葉」と云い、またを「言霊」と云うのです
そして、たまもからの「言の葉」により、勇気づけられたしのは、果敢にも、相手に真っ向から、向かって征ったのでした。
=続く=